巧緻で狡知な人形④

「ん……ベリアル……?」
 それは深夜のこと。誰もが眠りの世界に旅立っている時間。ジータは唸り声が聞こえたような気がして起きた。
 ひょんなことから異世界に来てしまったジータとベリアル。ジータが元いた世界と全く同じ、映し鏡のようなこの世界にはジータと生命のリンクを繋いだルリアがおらず、瀕死のところをベリアルにリンクを繋いでもらい、ジータは生きながらえていた。
 自分たちの世界に帰るまで結ばれた協力関係。帰る方法を探すためにベリアルと共に各地を転々とし、今は交易の盛んな島に滞在していた。
 ダブルベッドで休んでいたジータは上体を起こして隣にいるベリアルを見る。ジータに背を向け、体を前屈みにしながらなにかに耐えるように苦しげな声を漏らす彼女。
 普段は余裕たっぷりでどんなに自分が追い詰められてもそれを崩さなかった。いったいどうしたというのか。
「ベリアル、どうしたの……? 苦しいの……? あっ──」
 雲が途切れ、月明かりが部屋に差し込むことで見えたベリアルの姿は異形だった。頭部からは悪魔を想像させる捻じくれた角が生えており、その姿はアバターの力を取り込んだ彼女とパンデモニウムで死闘を繰り広げたときと同じ。
 アバタール・ベリアル。神をも堕とす力を持つ存在。
 ルシファーと戦ったあとに現れた彼女の姿は異形ではなかった。なのでアバターの力を完璧にコントロールしているのだと思っていたが……。
「特……異点……」
「ベリアル。私にできること、ある?」
 振り向いたベリアルの体や腕、顔には禍々しい紋様が浮かび上がり、片方の目が黒く染まっている。
 ベリアルはアバターの破壊衝動をなんとか抑えようとしており、苦しむ彼女を前にこのまま見ているだけなんてジータにはできなかった。
「ハーッ……ハーッ……。できること、ねぇ……。じゃあ」
「いたっ……!」
 荒い呼吸をしながらベリアルはジータを乱暴に押し倒し、ベッドのスプリングが大きな音を立てた。
 強い力でいきなり倒され、ベリアルに掴まれている両肩が悲鳴を上げる。このままされたら骨が折れてしまうと思った矢先、ベリアルは湧き上がる衝動のままジータの寝間着の胸元を掴むと、真ん中から裂いた。
 寝間着と下着がまるで紙切れのように引き千切られたことに驚く暇はない。ベリアルはまろび出たジータの柔い果実に噛みつくと鋭い歯が薄い皮膚を破り、小さな赤い雫が浮き出る。
「いっ……!?」
 生命のリンクを繋いでもらっている代わりにジータはベリアルと体を重ねる関係になっているが、今のように肌を傷つけるような行為はしてこなかった。
 むしろ慣れていない自分を優しく絶頂に導いてくれていたが、今は体の中で渦巻く衝動をそのままジータにぶつけ、貪るだけ。
「痛いと言ってもやめないぜ?」
「んぐぅ……っ……!」
 首筋を噛まれた。鋭い痛みが駆け巡り、ジータは苦しげに眉間に皺を寄せるが、ベリアルを拒絶したりはしなかった。
 ベリアルの抱えている破壊衝動がどれほどのものかは分からない。それでもその矛先が自分だけに向けられているのなら。
 もしこれが町や島全体に及んだら大変なことになる。自分にぶつけるだけぶつけて収まるのなら、それでいい。
「んふうっっ!? ちゅ、ふぁぁ、ん……ンっ!」
 乱暴に重ねられた唇。長い舌が伸ばされ、ジータの呼吸を許さないかのように口腔を舐め回す。なんとか鼻呼吸をするも徐々に酸欠になってきた頭はぼうっとし、このままではまずいとぼんやりと思ったところで股間を襲う新たな刺激。
「特異点にもマゾの気があるんだなァ? 乱暴にされてるってのにココはぐちゃぐちゃだぜ?」
「うぁぁっ……! はぅ……!」
 ベリアルの片手が下着の中へと侵入し、淫裂を撫でれば粘った感触。普段と違って乱暴な愛撫だ。それでも快楽に貪欲になったジータの体は愛蜜を分泌させて喜んでいた。
 細指が膣前庭を往復しながらジータの秘部全体に愛液を塗り広げていく。衣服の中で蠢く指の動きを意識しながら与えられるゆるい快楽に陶酔していると、不意打ちのように二本の指が膣内へと挿入されてジータの弱点を責め立てる。
「あぁんっ、いきなりっ……あぅぅ、あッ……!」
「どんどん蜜が溢れてくる。ほら、分かるか? いやらしい音を立てて、ナカはワタシの指を歓迎するように絡みついてさぁ。この間まで処女だったキミもすっかり淫乱になったモンだ」
「ひっ! うぅ……耳はっ、ひゃぅぅぅっ!」
 性愛器官を襲う凄まじい快感に加えてベリアルはジータの耳元で囁き、脳へと直接的な快楽を叩きつける。
 湿った吐息と羞恥心を煽る言葉の羅列だけでもジータはいっぱいいっぱいだというのに、さらに耳穴に舌をねじ込まれて濡れた音が彼女を苛む。
 じわじわと股間が熱くなり、失禁しそうな感覚が芽生えてきた。このままだと漏らしてしまうと涙目になってベリアルに訴えるも、彼女は口角を邪悪に吊り上げて「漏らしちまえよ」と笑って指の動きをさらに激しくした。
 水の音が秘処から奏でられ、ジータはなんとか耐えようとするも上下に責められてそれもままならない。淫絶頂がすぐそこまで這い寄り、体が震え、腰が浮き始める。
「ダメっ! 出ちゃだめなのにぃっ! あぁァァぁッ……!!」
 悲鳴と一緒にジータの尿道からは水鉄砲のように体液が噴き出し、その激しさにそれが尿ではないことを示す。
 背を逸しながら潮吹きアクメをキメているジータをベリアルは楽しげに見つめ、濡れ花に触れている五本の指をバラバラに動かす。もっと出せと言わんばかりに。
 今でさえ強すぎる快感に頭がおかしくなりそうなのに、追い打ちをかけるように襲う絶妙なテクニックにジータは頭部を左右に振って悶える。
「あんっ! いったん止まって、止まってよぉ! ひぎぃぃっ!」
 下着を通り越して寝間着のズボンまで濡れて布が肌に張り付いて気持ち悪いのに、蕩けた肉筒からもたらされる雌絶頂に目の前がチカチカして連続アクメが止まらない。
「ふぁ、ああぁ……っ! あたま、変に、なるぅぅ……!」
 指による行為が飽きたのか、ベリアルは体を起こすとジータの下半身を隠す布を一気に引き下げた。
 現れる少女器官はシロップで覆われ、濡れに濡れたソコは月の光に照らされて卑猥な印象。ベリアルは獲物を前に舌なめずりをすると、ジータの両足を肩に担いで引き上げ、顔をオンナの香りを漂わせる場所にうずめた。
 媚肉を舌でかき分け、小陰唇を左右にねぶると、勃起して顔を出している淫核へと吸い付く。強い力で吸引され、舌で押し潰されて、快楽のためだけに存在してる器官はジータに強烈な刺激を伝え、あまりの気持ちよさに足を閉じてしまう。
「んンっ……! またイッちゃうよぉ……! ぁ……」
「なぁ特異点。今度はワタシを気持ちよくしてくれよ……」
 もう少しでまた昇天する──というところで快楽の波がやむ。急に足を下ろされたと思ったらベリアルは上着を脱いだ。ボトムも同じく。
 薄暗さに慣れたジータの目に映るのは白雪の肌。邪悪な模様が浮かんだ肉体はアバターの影響で筋肉質になっており、薄っすらと腹筋に溝が見える。
 ジータの目線はさらに下へと移動していく。きゅっ、と引き締まったくびれは相変わらず美しい。造られた存在だからこその“美”。
「え……なっ、え? おちんちん……?」
 惹き寄せられるように見てしまう股間に見えたモノは普段見慣れないもので、ジータは言葉を失ってしまう。
 膝立ちになっているベリアルの股間には小指を二本連ねたくらいの長さ、親指ほどの太さがある“なにか”があった。
「アバターの影響かねぇ? クリトリスがこんなにデカくなっちまった。ほら、キミのことをもっと気持ちよくするこのメスペニス、しゃぶれよ」
 ベリアルは女性型の天司で、その場所は自分と同じ形をしているのは何度も見たので知っている。
 それがまさかアバタール化して変化するなんて……と、ジータはベリアルの巨大化したクリトリスから目が離せない。
 だがぼーっとしている暇はない。腕を強い力で引っ張られ、無理やり起こされたと思った瞬間には顔をベリアルの股間に押し付けられ、ジータの口の中には細長い陰核が咥えさせられていた。
「んんっ……!」
 いきなりのことでびっくりはしたが、太さはそれほどでもないので苦しくはない。ジータは大人しくベリアルが望むように口淫に勤しむ。
 口の中を占める雌陰茎をちゅうちゅうと吸って舌を螺旋を描くように絡ませれば、ベリアルの下半身が震える。
 愛すれば愛するほど猛りが脈打つのを口粘膜で感じ、顔を上げてベリアルを見れば艶やかなまつ毛に縁取られた両目を閉じて悦に浸っていた。
 異形と化しているコレも元はクリトリス。快楽を得やすい場所で気持ちがいいのかベリアルは濡れた声を上げ、それを聞いていると子宮が甘く疼く。
 もっと深くクリトリスを感じたくてジータはベリアルの尻肉を両手で掴み、やわやわと揉む。そのなめらかな肌の感触と肉感を味わいながら頭部を前後させ、時折強く吸い上げれば女悪魔はいい声で啼いた。
「ハハハハッ……! 随分とうまそうにしゃぶるじゃないか。そんなに気に入ったかい? コレ」
 奥の奥までしゃぶり、熱塊を離そうとしないジータの顔を見ながらベリアルは笑うと、腰を引いて体を離した。唾液に濡れた巨大陰核が次になにをするのか。さすがのジータも理解できた。
 それを想像するだけでじゅわりと恥粘液が滴り、股を濡らす。快楽を中断させられたからという理由もあるが、ベリアルとの度重なる情交で体は作り変えられ、素直に快楽を享受する肉体に変貌していた。
 仰向けに寝ろという命令にジータはかろうじて残っていた上の服を全て脱ぐと、言うとおりの体勢になった。
 中心の桃色が天を仰ぐたわわな乳房が横に流れ、開かれた足の間にはベリアルの雌勃起を心待ちにするように収縮を繰り返す小さな穴。
 ジータの視線はどうしてもベリアルの股間へと向いてしまう。これから犯されるのは確定だが、その方法が今まで経験したことのないもの。
 そのクリトリスはどんな快楽をもたらすのか。最初はベリアルの衝動をなんとかしたくて身を捧げたジータではあるが、今はすっかりと快楽に堕ちていた。
 肉棒が近づくにつれてジータは自分の心臓の音が鮮明に聞こえてくるような気がした。目も恥部から逸らすことができない。
 雌亀頭が花びらを割り、ズズズ……と胎内へと身を沈ませるとジータは異物感に喘ぐ。
「あっ、あぅ……! はいって、きたぁ……!」
「っく……! ハハッ、挿れただけでイッちまいそうだ。童貞じゃあるまいに」
 ベリアルはジータの腰を掴むと秘所同士を密着させるように前進してきた。細い道を拡張するように進んでくる屹立は圧迫感こそないが、胎内に入っている感覚がありありと感じられて、ジータの顔は自然と喜悦に満ちたものになる。
 もし今のベリアルが普段のベリアルならばジータを気遣いながら挿入するだろうが、今の荒々しい彼女にはそんな気持ちは皆無。
「あぅっ! ひゃあんッ、あっアッあッ……!」
 根本まで膣に押し込んだところで抽送の開始。出たり入ったりする度に女根が膣肉を擦り、痺れるような淫熱気が体に広がり、ジータの口からは甘い嬌声が漏れる。
 どうしてだろうか。道具のように乱暴に扱われているというのに肉体的だけでなく、精神的な快感も感じる。
 以前の自分では絶対にあり得なかったことにほんの少しだけ悲しくなったが、思考することさえ許さないと言わんばかりの腰使いになにも考えられなくなる。
「ベリっ、アルぅっ! もうイク、んぁっ、ちゅ、ふぅ゛ぅ、ンーーッ!」
「ッ……!」
 張り詰める感覚に絶頂の気配を感じ取ったジータが声を上げると、ベリアルが体を屈ませてキスをしてきた。
 重ねた瞬間ににゅるりと口内に入ってくる灼熱の舌の温かさと唾液で濡れた舌同士の絡みが一気にエクスタシーの階段を駆け上り、内側から溢れる法悦にジータは体を震わせた。
 淫粘膜がうねり、埋まったままの尖りの形がより鮮明に感じられ、膣肉に包まれた欲の塊はビクビクとその身を振動させていた。
「ハッ……! っぐ」
 ジータにはベリアルがどれほどの快感を得ているのかは分からないが、なにかを堪えるような表情からして気持ちいいのが伝わってきて悪い気はしない。
 互いに無言のまま向き合っていると、ベリアルが起き上がって腰を引いた。ずるり、と体の中から抜けるクリトリスに少しだけ寂しさを感じてしまう。
「ベリアル。少しは落ち着いた……?」
 控えめな声で問いかければベリアルは「まさか」と口の端を吊り上げる。
「あれで終わりだと思うなよ? 次はうつ伏せになって尻を突き出せ」
 ジータは大人しく従い、枕に顔を乗せると下半身をベリアルに向かって高く上げた。ベリアルから見てアナルや淫部が丸見えの獣のポーズ。
 後ろを向いていても分かる。ベリアルの視線が淫乱性器に注がれていることが。意識すればするほど背筋にゾクゾクと性感が走り、視線に犯されて大量に分泌された膣蜜が一筋の線になってシーツへと落ち、染みを作った。
「特異点と言われる女も今はただのメス犬だなァ? 気づいてるか? ワタシのペニスをハメられたいって穴が涎を垂らしてるぜ?」
「きゃふぅっ!?」
 ベリアルは片腕を振り上げると、思い切りジータの臀部に叩き付けた。白くまろい尻に刺すような痛みが走り、ジータの目元には自然と涙が込み上げて枕を濡らす。
 お尻を叩かれるなんて今まで生きてきてされたことがなかった。部屋に二人きりだとしても恥ずかしくて顔から火が出そうなのに、外気に晒されているアソコが弱火でじわじわと炙られるように熱い。
 子宮が甘く疼く。中を激しくかき回されたくておかしくなりそうだ。それはジータの意識してないところで表層へと現れる。
 ベリアルを誘うように二つの丘が揺れ、特異点と呼ばれる人間の痴態にベリアルの口元にあざ笑うような笑みが浮かぶ。片手で口を隠してはいるが、指の隙間からはむき出しになった犬歯が鋭く光っているのが見える。
「つらそうだな? 挿入いれてほしかったらオネダリして、その気にさせてみろ。そうしたらそのメス穴にブチ込んでやるよ」
 ベリアルの言いように言葉を失う。尊厳というものを平気で踏み潰す彼女らしい言葉ではあるが、誘ってみろだなんて。
 あぁ、でもアソコが切ない。またあの快感が欲しい。ベリアルと深く繋がりたい。様々な思いが洪水となってジータの理性を押し流し、彼女を深い闇へといざなう。
 最初はベリアルの破壊衝動を受け止めて、この身を捧げることで鎮まるのなら。と、思っていた。それなのに今は自分が気持ちよくなりたいがためにベリアルを欲している。突き付けられる事実に自分の浅ましさを感じるも、その感情さえも流され消えていく。
「べ……ベリアルの」
 首だけで振り返り、背後にいるベリアルを見ながら腕を動かす。両手で恥肉を広げて淫穴を強調するジータの目からは、光が消えていた。
「ベリアルの女の子おちんちん、入れて……ほしいの……」
「どこに?」
「わ、私の……いやらしい穴に……」
「……淫乱さがイマイチだが……まぁいいか。ほらよ」
「あ゛ぁぅっ!」
 突然の衝撃にジータは首を反らせて嬌声を上げ、ベリアルは自分の快楽のためだけに出し入れをする。
 繋がっている部分の淫水が泡立ち、部屋には年頃の女が発しているとは思えない獣の声が満ちる。
 バチン! バチン! と尻肉を叩く鋭い音と一緒にジータの悲鳴が上がるも、痛みの感情の中に甘さも含まれており、本気で痛がってはいない様子。
「あっ、ぁ゛……! いっ……うぅ゛っ……!」
 獣の体位で内部を掘削されているとベリアルが屈み込んできた。背中にむにゅう、と巨乳が押し付けられ、柔らかくて気持ちがいいと思ったのも束の間。
 うなじに噛みつかれ、皮膚が容易く破られる。肉に食い込む牙に泣きたいくらい痛いはずなのに、下半身から這い上がる快感電撃がそれを打ち消し、上書きする。
「あ゛っ、あア゛っ! もう、ア゛っ、あ゛ぁぁっ!」
 背中にベリアルの熱と息遣いを感じながら、あと数回突かれたら達する……というところでぐるんと目の前が回った。
 バックから仰向けにされると繋がったまま抱き上げられ、その体勢のままベリアルはベッドから下りた。
 ジータを抱える腕が少し緩むと落ちると思った体が反射的に動き、足はクロスさせるようにベリアルの腰へと回り、腕は彼女の肩へと回される。
「ベリアル……」
 窓から差し込む月の光に照らされたベリアルの顔は邪悪な模様が浮かび、目の色も変わっているが、その美しさは変わらない。
 密着した肌から伝わる感触も心地よくてうっとりとしてしまう。きっとこの先、元の世界に帰れたとしても普通の恋愛なんてできない。そう確信するほどにベリアルに魅せられていた。
 駄目なのに、このままじゃ心まで彼女に堕ちてしまいそうだと。
 惹き寄せられるように唇が重なり、触れるだけのキスをするとジータは舌を出すように言い、ベリアルは言うとおりにした。
 伸ばされた長い舌をジータは目を閉じてぱくり、と食むとちゅるちゅると音を立てながら吸ったり、自分の舌と絡めたり。
「ふぁぁぁっ……! あんっっ……んふぁ……!」
 自分優位だった舌での戯れが逆転し、口腔の隅々まで舐められながらジータの胎内に埋まっている雌竿が何度も何度も串刺しにしてくる。
 アクメ寸前でストップさせられていた体は思い出したかのようの淫熱を発し、結合した場所が酷く熱い。
 細長クリトリスが下りてきた子宮の入り口をノックし、未知の快感がジータを襲う。
 熱くて熱くて体の境界線が溶けてしまいそうだと感じた矢先、ベリアルはジータを抱いたままベッドへと倒れ込む。
 M字に開かれたジータの足をお腹側に折り畳むとのしかかるようにして結合をより深いものにし、律動を繰り返す。
 絶頂に向かって速度が増す抜き差し。陰部を襲う摩擦熱が手足の先まで広がり、ジータは湧き出る感情のまま腕をベリアルの背へと回して引き寄せると、口付けを交わした。
 同時にベリアルの口の中に向かって甲高い濡れ声を吐き出し、襲い来る快感の大波にジータの足の指にギュッと力が入る。
 また、ベリアルもジータと同じタイミングで達したのか強く目を閉じて波が過ぎ去るのを待っていた。
「特異点……」
「ベリアル……ようやく、戻ってきたんだね……」
 膣内に存在していたクリトリスは少しずつ小さくなり、程なくしてジータの体の中から存在が消えた。
 目を開けたベリアルの瞳も普段の赤色に戻っており、顔や体の紋様も薄まっている。この様子なら角もすぐに消えるだろう。
「悪い……。無理をさせた」
「なにそれ。あなたらしくない」
 柄にもなく謝罪の言葉を告げるベリアルがおかしくて、ジータはくすくすと笑いながら続ける。
「もし本当にそう思ってるなら……続き、しよ?」
 軽くキスをし、誘うように首を軽く傾げれば、ベリアルはジータの答えに喉奥で笑いながらも了承の代わりに唇を重ねた。
 それはすぐに深いものへと変わり、二人の夜がまだまだ終わらないことを示していた。

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