神様に、中指立てて②

「なあ、今日どうしても行かないとダメかい……?」
「ごめんねママ。今日はテストだから……」
「……そうだよな。……行ってらっしゃい。テスト頑張って」
「行ってきます。なるべく早く帰るから。……今日は家のこと、なにもしなくていいからね」
 朝。玄関にて。靴を履き、立ち上がったジータの背に絡みつくのは大人の腕。その手はジータを学校に行かせたくないように彼女の体を抱き寄せ、離そうとしない。
 娘であるジータと生みの親であるベリアルは血の繋がった親子でありながら運命の番という稀有な存在だ。そしてベリアルの様子からして彼はオメガの発情期、ヒートを起こしかけている。
 薬は毎日飲んでいるが、絶対にヒートを抑える薬など存在しないのだから。
 首筋に顔をうずめて擦り寄るベリアルにアルファであるジータも母親から漂う強いフェロモンにこのままベッドで愛を交わしたいと思うが、今日はテスト最終日。休むわけにはいかない。
 言えばベリアルも諦め、ジータを解放した。熱が離れていく感覚に寂しさを覚えるものの、ジータはその場で振り返り、熱があるかのように赤みが差す頬に口付けて扉の向こう、外の世界へと踏み出す。
 太陽の光を受けてジータの銀髪がキラキラと輝くほど外は雲ひとつ無い晴天日。とても気持ちのいい朝だがジータの気持ちは曇り模様。母親と同じ色をした瞳を伏せると大きなため息をつき、学校への道を歩き出した。

   ***

「先生。急用ができたので私、早退しますね」
「は……? ちょっと待て、テストは」
「もう全問埋めました。すみませんが急ぐので」
 テストが始まってもジータの頭の中はベリアルのことばかり。ヒートを起こし掛けているのに一人で大丈夫かな。早くそばに行って抱きしめて愛してあげたい。
 そんなことばかりを思って上の空ながらも天才ルシファーと、彼には及ばずとも優秀な頭脳を持つベリアルから生まれたジータは難なくテストの問題を解いていき、今は最終科目。
 開始から十分。答案用紙を教壇へと持ってきたジータは担任であり、この科目の教師であるサンダルフォンへと紙を提出すると早々に帰り支度。
 ざわつく教室を無視して廊下に出ると、早歩きで昇降口へと向かう。
「待つんだジータ……! 一体どうしたんだ」
 上履きからローファーへと履き替えたところで背後から声。ベリアルのことが気になって仕方がない今、その邪魔をする存在にどうしてもイラッとしてしまう。
 それでもこのイライラをぶつけるわけにはいかない。普段の穏やかな表情を意識して追いかけてきた人物、サンダルフォンへと向かい合う。
 くせ毛の茶髪に丸眼鏡の奥に光る赤い目は少し幼さを感じる。彼はジータの父親であるルシファーの弟、ルシフェルの番の青年。それだけでなく、ジータの母親のベリアルの弟でジータが幼い頃から付き合いがあり、学校ではよく気にかけてくれている。
 兄弟だからか。ベリアルを思い出させる容姿をし、自分のことを心配してくれるサンダルフォンのことをジータは好ましく思っているが、今は駄目だ。ベリアルのことで頭がいっぱいなのだから。
「……ママがヒートを起こし掛けてて。たぶん薬では抑えられない。早く帰って相手してあげないと」
「亡きルシファー……君の父親の代わりに処理すると。……君たち親子が特殊だとは理解しているが、子どもの君がそんなこと……」
「ねえ。サンダルフォンさんもオメガなら分かるでしょう? ヒートの辛さを」
 二人の事情は分かっているが、大人として看過できない部分があるのは事実。サンダルフォンは迷うように目を半分伏せる。
 ジータからすれば無意味な問答をしている暇はない。胸の内に秘めていた赤い感情の封が緩み、ほんの少しだけ苛立ちが表へと現れる。
「仮にサンダルフォンさんがヒートを起こしたとして、ルシフェルさんならずっと傍にいてくれますよね? ……それと同じですよ」
 怖いくらいににっこりと微笑み、サンダルフォンを牽制するも、すぐにその表情は眉をハの字に下げた悲しげなものへと変わった。
 サンダルフォンに向けられていた目線は彼の足元へ。目を閉じて思うのはヒート時に限り、普段は隠している気持ちを露見させるベリアルの姿。
 極度の興奮状態で意識が混濁しているベリアルはジータをルシファーに間違える。普段の彼が言うにはジータとルシファーの香りが似ているんだそうだ。
 うわ言のように“ファーさん”と呼び、もっと自分が休むように強く言えばよかったとか、どうしてイッちまったんだなど、後悔の念を涙とともに吐露する。
 ルシファーが死亡した理由は過労によるもので、命を落としたのもベリアルのせいではない。
 ルシファーは研究に没頭するとベリアルの言うことなどまともに聞かなかったのだから。
「ママは……最愛の人を亡くしてる。普段は平気そうにしているけど本当はまだ引きずってる。オメガだからこそ、番を失ったときの精神的負担は大きい。……私がそばにいてあげないと」
「本当に彼を愛しているんだな……」
「当たり前ですよ」
「それは……運命の番だから?」
「運命じゃなくても愛したと思います。でも……バース性がなかったら深い関係には──いや、私たち親子は普通の枠にいないから、今と変わらないかもしれませんね」
 諦めたように息をつくサンダルフォンに対してジータは苦笑しながら答える。緩やかにカーブする唇や纏う雰囲気は普段と同じで、先ほどまでの感情はもうないようだ。
 では、と最後に一礼してジータは踵を返す。もう彼女を止める声は、ない。

   ***

「ただいま〜……」
 急いで帰り、玄関の扉を開けるもなんの音もしない。ジータはベリアルがどこにいるのか分かっているので真っ直ぐ寝室へと向かう。
 扉の前に立てば、中から苦しげな声。紛れもなくベリアルの声だ。ジータは静かに目を伏せると、意を決して寝室の中へと入る。
 大きいベッドの上。ベリアルは白衣を手に息を荒げていた。近くにあるナイトテーブルには空のコップと錠剤のパッケージが残っており、抑制剤を飲んだがヒートは収まる気配がない様子。
 ベリアルの顔を隠す白衣は亡き父親ルシファーのもの。もう彼の匂いなどしないはずなのに、荒い呼吸とともに記憶の薫りに浸っている。
 ベッドのシーツは朝、最後に見たときよりも皺が深くなっており、波打っている。どれだけ一人で耐えていたのだろうか。自分がオメガならば身を以て彼の苦しみを知ることができるのに。
「ママ……」
 そんな思いに思考を絡め取られながらも、ジータはブレザーを脱ぎ、ワイシャツとスカート姿になるとベッドに上った。
 軋むスプリング。母親の顔の前辺りに正座をするとゆっくりと白衣を剥がしていく。途中で“いやだ”と訴えるようにベリアルの手の力が強くなったが、ジータがそのまま動かないでいると観念したのか、力が緩む。
 そっと、白衣を顔から離せば赤く腫れた目と視線が合う。目元の涙の理由は体を蝕む熱よりかも、番を失った悲しみ。
 普段は決して見せない弱々しい姿にジータの胸が苦しくなる。自分が運命の番なのに、この人の涙を止めることができない。いつまでも過去に囚われている最愛の人を救ってあげられない。
 少しだけ父親を恨む。死してなお、その心を放さないのだから。
「ファーさん……?」
「…………」
 ジータの姿をルシファーに重ねるベリアルに対して無言のまま、ジータはスカートのポケットからピルケースを取り出すと中の錠剤を無理やり口の中に突っ込む。
 今までも緊急用の抑制剤は与えてきたが、そのどれもがジータの期待する効果はなかった。心に癒えぬ傷を負ったせいなのか、ベリアルのヒートは中々に厄介だった。
 これは治験が完了していない新薬。当初はベリアルに対して使うつもりはなかったが、このまま見ているのがつらくて使用に踏み切った。
 ジータが日々研究と実験を繰り返す理由はただ一つ。母親であり、唯一の愛を向けるベリアルのため。他人に使う分には躊躇いはないが、ベリアルは別。
 副作用を心配するが、治験段階で重篤な副作用は出ていないのでそれを信じたい。
 一方のベリアルはルシファーに雑に扱われることが多かったので苦しそうにはせず、逆に嬉しそうに薬を飲み込むがすぐには効かない。
 ジータの開発した新薬は今までの緊急時の抑制剤と違って即効性があるが、どうしても個人差やヒートの度合いによっては安定しない。まだまだ改良の余地がある薬品。
「ファーさん……。ハハ……アンタが死ぬなんて悪い夢だよな……」
 妄想の世界に囚われるベリアルは重そうに上半身を動かすと、這うようにしてジータの腹辺りに下から抱きつく。
 布越しに感じる熱は酷く熱く、ベリアルから漂う濃厚なフェロモンはジータの理性を奪おうと襲いかかってくる。
 いつもそうだ。このままなし崩し的にベッドに押し倒して欲望のまま甚振って、ヒートが収まってベリアルが戻ってくるのを待つのみ。
(毎回のことなのに、どうしてこんなにも虚しいの。私はパパの代わり。分かりきっていることじゃない)
 渇望するように“ファーさん”とルシファーの名前を呼び、ジータの胸元に顔をうずめるベリアルを寂しげな目で見つめながら優しく抱きしめて髪を撫でてやれば、ベリアルの動きが止まった。
 繰り返しファーさんと呼んでいた声はやみ、代わりに出てきたのは“違う”となにかを否定するもの。
「ち……がう……ちが、う。ファーさんはオレに優しくなんて、しない……。ちがう、違う、オレに優しくしてくれるのは……」
「ママ……?」
「──ジータ……?」
 顔を上げたベリアルの目には正気が戻り、ジータをルシファーではなく、ジータとして認識していた。
「ママ、私が分かるの?」
 灼熱の体温も徐々に低くなっていき、薬の効果が現れたことを示す。
 探るように聞いてくるジータに対して、ベリアルはくったりと寄りかかり、目を閉じると「すまない……」と謝罪の言葉。
 それは娘に迷惑をかけたことに対するものではなく、娘を亡き夫として見てしまったことへの懺悔。
 今まではベリアルを抱き潰し、薬が効いて自分を取り戻したあとは記憶が曖昧なのか、手間をかけさせたことに謝るばかりだった。
 初めてだった。ジータをジータとして見ていなかったことを謝られたのは。
「……いいんだよ。私をパパの代わりにしてるって、分かってるから」
「ファーさんとジータは違うよ。……そうは言っても実際ジータの香りはファーさんに似てるし、周りを顧みず、自分の道を突き進むその姿もそっくりだ。ヒート時のオレはキミをファーさんと呼んでいたようだし、なにを今更と思うかもしれないが……」
「ママ……」
 自嘲し、半分ほど目を伏せるベリアルにジータは胸が締め付けられ、その衝動のままに唇を重ねた。ちゅぅ、と肉厚な舌を吸い、歯列を舐め、敏感な硬口蓋を舌先で撫でればくすぐったいのか隙間からベリアルの声が漏れる。
(なにもかもが、甘い……)
 唾液も、むせ返るような彼の香りも。甘い毒はジータを内部から侵食し、この男を犯し尽くせ! と本能が訴えてくる。
 逃げられないように両腕を首と後頭部に回し、貪るように激しく求めていると一旦顔を離してベリアルを勢いに任せて押し倒す。
 ベッドが揺れ、目に入るベリアルの股間は膨らんでいて窮屈そうだ。それはジータも同じなのだが。
 肩を上下させ、呼吸を乱しながらジータはベリアルに馬乗りになる。ボタンが全て外されている黒いシャツを左右に大きく開き、半裸にすれば極上の肉体が露わになる。
 飢えた獣の目に映る美肉はさぞ魅力的だろう。豊かな胸筋の飾りは尖っており、愛してほしそうに存在を訴えかけてきている。
 割れている腹の溝に舌を這わせたいなどと妄想を繰り広げながらジータは己のワイシャツを脱ぎ、その下に隠された下着類を外す。
 ぷるんと零れる乳房は見た目からして柔らかく、薄紅色の先端はベリアルと同じように凝り固まっている。
「ママ……。あんっ」
 熱っぽく吐き出し、ジータは上体を屈ませた。すると腫れぼったい乳房がベリアルの胸を包み込み、互いの桃色乳頭が絡み合う。その姿はまるで乳首同士のキス。
「ンあっ、ママのおっぱいとぉ、私のおっぱいがキスしてるぅっ♡」
 丸みを帯びた柔らかな印象の肉体は少女のものとは思えないほど。発育のいい胸はクラスの中でも大きい方に入り、キュッと引き締まった腰や大きめのヒップに心奪われる者は多い。
 けれどその身はベリアルだけのもの。彼だけがこの体を自由にする権利を持っている。
 母親譲りの魅力に溢れた体をくねらせながらジータは甘い声を上げる。勃起した乳首同士がくりっ、くりっ、とじゃれ合う度に微弱な性電気が胸に広がり、もっともっととこすりつける。
 胸からもたらされる快楽は弱いものの、視覚情報が興奮を煽るのだ。
「っ……ふふっ。ジータっ、コッチも……」
「ん……。ふあぁ……ママぁっ♡」
 焦れったさを感じたのかベリアルの腕がジータの後頭部を引き寄せ、抱きしめられる。ジータもベリアルの頭部を抱くと互いに深く求め合う。
 白桃を押し付けつつ、角度を変えながらジータはベリアルの口腔の隅々まで舌で愛撫し、自らの唾液を流し込めば彼はこくこくと飲み込む。
 好き。好きっ。大好きっ!
 母親としても、一人の男としてもジータはベリアルのことを心の底から愛おしいと感じていた。
 運命の番だからなのか。いいや。違う。私は私の意志でこの人を愛している! バース性なんて、運命なんて関係ない!
「ぷはっ……ちゅ、ちゅぅ……♡」
「ンっ♡ んん……! フフ、くすぐったいだろ……あっ、」
 離れた唇からは透明な糸が引き、切れるとベリアルの肌を濡らす。ジータは愛する男の頬に唇を寄せると、そのまま下へと移動して耳をねぶる。れろぉ、と唾液を纏った舌を伸ばし、形のいい耳をまずひと舐め。密着している体がぴくっ、と反応する。
 それに気をよくしたジータは弾力のある耳たぶを甘噛みし耳孔じこうへ向かって唇を寄せると優しく、そして熱っぽく息を吹きかけた。
 耳が弱い人間は多い。ベリアルもそれに漏れず、ビクッ! と今度は大きめの反応を示す。
「ママ、愛してる」
 脳に向かってダイレクトに響く愛念の言葉はジータを抱く力を強めた。それがベリアルから求められているのだと感じられて、ジータの気分はさらに高揚していく。
「はっ……ぅ、く、うぅぅ……!」
 ベリアルの声を間近で聞きながらくちゅっ、くちゅ、と舌で丁寧に耳の形をなぞりながら耳への口付けを何回か繰り返したところで、ジータはそのまま下へと移動して首筋を舐め、胸元にたどり着くと強く吸い上げて小さな花を刻む。
 それは一つだけではない。何個も、何個も。まるで自分のモノだと印を付けるように。ベリアルは着々と増えていく赤アザにどこか嬉しそうだ。我が子の行動を潤んだ瞳で見つめて、好きにさせている。
「ママのおっぱい美味しそう……♡」
 目の前の艶めく小山に理性を失った表情でうっとりと微笑み、ジータは大きく口を開けると小さな種にむしゃぶりついた。
 乳輪ごと口の中に含むと唾液に濡れた舌でベロベロと乳蕾を左右に舐め、吸い上げる。出ない母乳を求めるかのようにぢゅっ、ぢゅと下品な水音を立てながら舐めしゃぶり、残りの胸は指の間に肉が盛り上がるほど強く揉み、その感触を確かめている。
 吸っているだけなのに頭が沸騰するかのように熱く、冷静に思考することができない。今はただひたすらに肉欲に溺れていたい。この人を味わいたい。
 耐え難い性衝動を抱えながらジータは母親の乳房に夢中になり、下半身の怒張をベリアルの肌に擦り付けて快感を得ていた。
 汗でしっとりと濡れた白い肌にショーツから頭だけ出したふたなり勃起を滑らせる度に腰が砕けそうになって、射精感が込み上げてくる。
 だが我慢。この熱の全てをベリアルの子宮に注ぎ込みたい。ピルを飲んでいる影響でほぼ孕むことはないと分かってはいるが、ベリアルと遺伝子の螺旋を紡ぎたいと強く思う。もはや本能。
「ママぁ……♡」
 いい子いい子というようにベリアルに頭を撫でられ、ジータは眦を下げたとろりとした目で嬉しそうに微笑み、一旦起き上がってベリアルの足の間に移動するとボトムに手をかけた。
 するすると脱がしていけば下着の布地がこんもりと盛り上がっていて彼の興奮度が伺える。けれどジータの目的は奥に隠された蕾。
 ボトムと同じように脱がせばガチガチに勃起したベリアルのペニスが現れる。透明な汁を滴らせ、血管が浮き出ているモノは雄らしさを感じさせた。
「うッ♡ ハァァ……♡ 別にそんなことしなくたって、アッ♡ いいんだぜ、ジータ……」
 ベリアルの下半身を露出させるとジータはベッドにうつ伏せになった。ムダ毛一本もないすべすべの足をM字に開かせ、愛液で濡れた肛門へと顔を近づける。
 なんの躊躇いもなく穴へと口付けて舌先で皺をなぞり、尖らせた舌を挿入しながら肉襞を舐めればベリアルからは気持ちよさそうな声が発せられた。
 もっとその声が聞きたい。ジータは顔に当たる睾丸にさえも愛愛しさを感じながら片手でベリアルの砲身を握る。少女の手では一周すらできない巨砲。
 舌の動きに合わせて手も上下させ、陰茎全体にカウパー液を塗り広げていく。
 ハァ……ハァ……と獣の息遣いをしながらジータはベリアルへの愛撫を続ける。舐めたり手コキをしているだけでこちらも達してしまいそうになりながら、愛しい母を喰らっていく。
「ママ、気持ちいい?」
「ンンっ……♡ ああ、いいッ。気持ちいいよジータ……♡」
 体を起こして淫蜜を垂れ流す穴へと指を挿入し、前立腺を数回ノックすればベリアルは胎内からもたらされる快感に顔を紅潮させ、悩ましげに目を閉じる。
 なんて妖艶な人なんだとジータの股間が素直に反応する。ナカに挿入はいりたい。彼の熱を感じたい。その思いのままスカートとショーツを脱げばベリアルよりも大きいふたなり勃起が先端から涙を流していた。
 ビキッ、ビキッという擬音が聞こえてきそうな屹立は血管が浮き出ており、太さも硬さも極度の興奮からなのか普段の勃起状態と違う。
 白くなめらかな乙女の肌には似合わぬ赤黒い物体は、ベリアルを一刻も早く犯したいと言わんばかりにその身を震わせている。
 極限まで高まった興奮状態のソレは何度見ても圧倒的なのか、ベリアルはゴクリと喉を鳴らす。
 彼自身気づいているかは不明だが、より深くジータを受け入れようと両足が勝手に大きく開いている。
「ねえママぁ♡ 私のおちんちんすごいでしょ?♡ 濃厚フェロモンを受けて、ママを孕ませたくてしょうがなくて♡ こんなになっちゃった♡ きっとママが遊ぶ誰よりも私の方が立派なおちんちんだよね♡」
 ベリアルの足の上に跨がり、残りの片足を肩に担ぐと彼のアナルがぱっくりと口を開く。
 ジータは極太魔羅をベリアルの陰茎に押し付け、自慢げに腰を数回前後させて体液の交換をする。
「あぁ……♡ 本当だよ。男でも、女でも、こんなペニスをした奴はいなかった……♡♡ さあジータ。早くママのナカにおいで──ぁ、あ゛ぁァッ!?」
「はぁぁぁ〜〜っ……♡ ママのお尻あったかくてきもちい〜っ♡♡」
 ベリアルも興奮を抑えきれないという様子でジータの男根を撫で、誘えば彼の願った通りジータは一気に穿った。
 ジータを産んだ経産夫であり、普段からジータ以外と遊ぶことが多いベリアルの尻穴は使い込まれているにも関わらず処女のようにジータを締め付け、湯に浸かったときのような間の抜けた声と一緒にベリアルからは快楽の悲鳴が上がる。
 その証拠にジータに押し出される形でベリアルは勢いのない射精をし、自身の腹を汚した。いつもの彼ならばあり得ない現象。ジータもベリアルがトコロテンをしたのに数秒目を丸くし、いたずらっぽく口角を上げると腹にかかった白濁を塗り広げながら腰を揺り動かす。
「わぁ〜っ♡ 挿入いれた瞬間に出しちゃうなんて珍しいね? 収まったとはいえこれもヒートの影響かな?」
 持ち上げている足に唇を寄せ、すべすべの肌に頬を擦り付けて肌触りを堪能しながらジータは腰を揺り動かす。ギシッ! ギシッ! と鳴くスプリングの激しさがそのまま行為の荒々しさを物語っていた。
「ぐぅっ……ひっ、ヒィっ♡ そんなにガッつかなくても、ン、ぁ゛♡ う゛ぅっ、アァッ♡」
 長大が早いスパンで雄膣を蹂躙していく。愛液で潤った場所を行き来する際の粘着質な音が濡れ声と混ざり合い、淫らな音楽を奏でる。
 濡れに濡れた後孔。ジータが腰を引けば離したくないと絡みついた肉が表へと顔を出し、それを押し込むように力強く腰をぶつければベリアルは衝撃に舌を伸ばして首を反らす。その目は見開かれ、余裕は見られない。
「はっ♡ はぁっ♡ ママのナカに入ったばっかなのにぃ!♡ もう我慢できないよぉ!♡ ママっ、私のせーし受け取って、受精してっ♡♡ 私の赤ちゃん産んでっ♡♡」
 甲高い淫声と共にバジュッ! と最後の一突き。力強い突き上げはベリアルの雄子宮を突き破る勢いがあり、ジータは自らの分身に絡む肉襞に搾り取られる感覚に耐えることなく、孕み汁を流し込む。
 ドプッドプッと放出される体液。射精の快感に打ち震えつつもジータの中に湧き出る思いは止まらない。目を閉じて感じ入るベリアルを見て、ジータは一旦彼の足から下りると正常位へと体位を変えた。
 そのまま反復運動を再開させればメスイキしたばかりのベリアルは刺激の強さに片方の目を閉じて苦しげな表情をするも、口は笑っている。性欲が強めな我が子の相手には慣れたもの。そもそも彼はハードなプレイもお手の物だ。
「ママ好き♡ 大好きっ♡ 私のおちんちんでもっと気持ちよくなって♡♡」
「あッ……ンんッ゛! ジータっ、そう、そこをもっと、ひぐッ♡ お゛ぉっ♡♡」
 自慢の肉槍でベリアルの内部を掘削し続け、意識して前立腺を何度も何度も押し潰してやればベリアルは強すぎる刺激に顔を真っ赤にしながら悶える。
 もともと肌が白いので朱はよく映え、それは胸元まで達していた。キュウキュウと締め付けてくる熱にジータは身を委ねながら体を屈み込ませ、ベリアルに口付ける。
 舌を深く絡ませながら甚振ればベリアルの腕や足がジータへと回され、それは彼女を離したくないと言いたげで。
「んふぁぁぁっ♡ ママっ♡ そんなギュッギュッってしたらぁ! はっ、はぁぁ♡ 射精るうぅっ……♡」
「ハッ、ハハ……♡ 好きなだけママのナカに射精していいぜ、ジータ……」
 熱のこもった呼吸を繰り返すジータに前立腺を重点的に責められたベリアルの雌肉はうねりながらジータを包み、性器全体を覆う心地よい熱にジータは嬉しそうに声を上ずらせる。
 互いに抱きしめ合って密着状態での射精はジータの精神面に多大な幸福をもたらし、緩んだ顔は幸せに満ちている。
 量の衰えを知らない白露を奥に塗りつけるように腰を揺すればベリアルからは小さな喘ぎが漏れ、ジータの腹には粘った感触。
 重そうな動きで体を起こせば、ジータの腹部にはベリアルの精液が付着していた。それを目にすると片手は自然と腹へ。指で粘り液を掬うと躊躇いもなく口へと運ぶ。
「ハァ……ママの精液おいし♡ あっ、そうだ」
 双眸を閉じて味わってたジータだが、なにかを思いついたのか目を開くと悪戯っぽく笑う。小悪魔の笑みを浮かべた彼女の片手はベリアルの肉棒へ。
 少女の手には収まりきらない欲の塊。自らの体液で濡れた竿を行き来する手の動きはとても滑らか。丸みを帯びた先端を時折可愛がりながら未だに萎えず、ベリアルの胎内に埋まったままの剛直の動きを再開させれば、連続絶頂で敏感になっているベリアルの余裕はまたたく間に削り取られていく。
「ッ゛ハっ……! ジータ、あ゛ぁっ♡ 待っ、んおぉ゛! だめ、ぎ、ぁ゛あッ!?」
「男の人って射精した後も刺激し続ければ潮吹きするんだって。私それが見てみたいの♡ ママのおちんちんからお潮が出ちゃうところ♡」
 興味を持つと対象がなにを感じていようがお構いなしのところは父親の遺伝だろうか。ジータはベリアルが苦しげな声を上げても刺激を送ることをやめず、逆に強くする始末。
 ベリアルは茹だった顔でだらしなく口を開けたまま吠え、体は与えられる悦に喜ぶように波打つ。
「ひ、ひィ……イぐッ! 漏れちまう、漏れ──ぁ゛、あ゛ァぁ〜〜〜〜ッ゛!!」
「わぁ〜!♡」
 首を反らせ、舌を突き出しながら訴えるベリアルの尿道からはぷしゃぁぁぁ! と勢いよく透明な体液が噴き出し、その様子は“潮吹き”と呼ばれるのが納得のものだ。
 ジータは体を怖いくらいに振動させながら潮を噴くベリアルに目をキラキラとさせながら見入り、なにも出なくなるまでじっくりと観察していた。
「はぁ……はぁ……気は済んだかい……? ジータ……」
 強すぎる快楽に加えての潮吹きで体力をだいぶ消費したのかベリアルは倦怠感を含んだ声音で聞くも、ジータはまだ満足していないようだ。
 首を左右に振って否定しつつも、一旦は腰を引けば入り切らなかったザーメンがゴポゴポと尻穴から溢れ、それが少しもったいなく感じてしまう。
「ねえママ……寝ながらでいいから私のおちんちん扱いて……」
「若いのに加えてヒート時のオレのフェロモンに当てられたせいかねぇ……ほら、おいで」
 何度も射精したというのにジータの陰部は勃起状態のまま。まだまだ満足しない娘を見てベリアルは自分の隣に寝るように促すと、ジータは大人しく横になった。
 甘えるように顔をベリアルの胸へと寄せれば汗と彼そのものの香りに胸が熱くなる。たまらなく心地いい体臭はずっと嗅いでいたいほど。正直これだけで下半身はさらに身を硬くしてしまう。
「あっ……あぁ……♡ ママの手が私のおちんちん、ごしごししてるぅ……♡」
「普段から絶倫気味だけどオレの遺伝かな? フフフッ。ジータはここが好きだったよな」
「そうそれっ……! 気持ちいいよぉママぁ……♡」
 分身を何度もスライドしていく男の手を見ながらジータは顔を緩ませ、甘い鳴き声を上げて腰を揺らす。
 あと少しで射精するだろうが、正直足りない。少し休んだらまた激しく絡み合うのは確定事項。どちらかの体力が果てるまで交尾は終わらない。
 ヒート時のフェロモンに当てられてのセックスは何度も経験しているが今回の行為は今までよりかも気持ちがよくて依存性が高かった。そこにあるのはベリアルがルシファーではなく、ジータ自身を見ていることにある。
 たったそれだけで信じられないくらいに心身ともに満ちて快楽物質が矢継ぎ早に生み出され、ジータをさらに堕落させていくのだ。

   ***

「……でんわ……?」
 遠くから聞き慣れた着信音が聞こえ、意識が覚醒するにつれてその音はハッキリと聞こえるようになる。昨日は帰って来てすぐに寝室に直行したのでスマートフォンが入っている鞄は床に置かれたまま。数歩あるけば目的の物に触れることができるが、今はそうするのも気怠い。
 なので鳴りっぱなしのスマホは無視して横を見れば、ベリアルの寝顔が目に入った。寝ていても起きていても美しいだなんて。自分と同じ人間とは思えない。
 眠り姫に見入っていると不意に感じたのは不快感。自らの体を視認すれば全身に体液の残滓。
 一体どれほどの時間体を重ねていたのかも曖昧だが、どちらのものなのか分からない体液が体中に飛び散り、乾き、張り付いているのは気持ちがいいものではない。
「オハヨウ、ジータ……。この時間からすると……電話はサンディかな」
 ベリアルも起きたようだ。ナイトテーブルに置かれている時計を見ながらの寝起きの掠れた声や崩れた髪型は非常にセクシーで、ジータの情動を煽る。
「いいのかい? 出なくて」
「あとでかけ直す……」
 いつものジータならばもう学校に行って授業を受けている時間だ。だが今の彼女には遅刻してでも学校に行く、という選択肢はない。
 のそっ、とした動きでベリアルの胸に顔を乗せるとハリのある膨らみがジータの頬を包み込む。何度か頬を押し付け、感触を楽しむと胸の飾りに吸い付く。
 なにも出ないのは分かっている。それでも母親の胸に対してどうしても執着してしまう。こうして乳首を咥えて吸っているだけで安心感が身を包むのだから。
「こうしていると思い出すよ。赤ん坊の頃からオレの胸を全然放したがらなくて」
 頭上からくすくすと笑う声が聞こえる。
「……いいなぁ。赤ちゃんの頃の私は。だってママのミルクいっぱい飲めたんでしょ?」
「そうそう。毎回両方カラにするまで吸っていたな」
(今度母乳が出るようになる薬、作ってみようかなぁ……)
 過去の自分を羨ましく思いながらジータは考える。出ないのなら、出るようにすればいい。自分にはその頭脳がある。半分本気で思っていると、頭を撫でられた。
「まずはシャワーだな。そのあと遅い朝食にしよう」
「うん。ママ♡」
 互いに微笑み合って、おはようのキス。完全に二人の世界に入ってしまっている中に虚しく着信音が響くが、やがてプツリと切れた。

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