禍々しい空。ところどころ抉れた地面。こびりつく血痕。死体の山。死の香り。立っているのは一組の男女だけ。
頭の片方に角が生え、顔や体に邪悪な印が浮かんでいる銀髪の少女の衣服はところどころ破れてボロボロで、激しい戦闘を行った後だと見て分かる。それでも目立った外傷はない。
そんな彼女から少し離れた場所には同じく傷ついた男が一人。背の高い男は少女と違って頭部からは悪魔を思わせる捻くれた角が二本生えていた。
こちらに背を向けて空を見上げる男に向かって彼女は歩むと、甘えるように後ろから抱きついた。
「終わったね。ベリアル」
両腕を腰に回し、大きな背中に頬を擦り付けて静かに告げる少女に対してベリアルと呼ばれた男は「ああ」と答えるとそのまま体を反転。少女を正面から抱きしめた。
「キミのお陰さ。ジータ。オレを受け入れ、得た力でようやく──終末を迎えられる。……フフ。終末を迎えれば全てが消滅する。かつての仲間を自分の手で屠ってやったのは、キミのせめてもの優しさなのかな」
ベリアルが言うようにジータは騎空団の団長であった。だがそれも過ぎ去りし思い出の中。光の中にいた少女は闇に染まり、その身に宿る破壊衝動のままに大切であった存在たちを手に掛けた。
ジータはベリアルの問いには答えず、片手で男の胸に触れ、そのまま脚の間へと下がっていく。
肌を滑りながら辿り着いた下腹部は戦闘による高揚なのか腫れ上がっており、窮屈そうに布地を押し上げていた。
スリスリとさすり、布の上から先端を指先で引っかけばベリアルからは湿った吐息。艶めかしい声にジータは体を密着させ、割れた腹筋に胸を押し付けながら男を見上げる。
その顔は愉悦に歪み、自由な方の腕をベリアルのうなじに向かって伸ばすと顔を引き寄せ、唇を重ねた。戦闘で切ったのかベリアルの口の中からは血の味がするが、それも興奮材料の一つに過ぎない。
ジータは深く繋がりたいと舌を絡ませ、ベリアルの赤くて肉厚な舌と唾液の交換。
大人と子どもの舌。体液を纏った舌先同士が戯れるように触れ、ベリアルの舌をジータが吸ったりと濃密なものだ。
「ん……、っ……」
キスをしながら股間を弄っていた白い手はベリアルのボトムスの中へと、前を寛げることなく侵入する。内部は熱気に包まれ、本体は火傷しそうなくらいに熱い。
ジータはこの先の展開を目尻を下げながら期待する男の顔を至近距離で視姦しながら、陰部に触れていく。
感触で分かる。アバターの影響でペニスが異形と化しているのが。こんなモノで気持ちよくなれるとしたらよっぽどの好き者か、魅了によって狂わされた者だけだろう。常人ならばすぐに壊れてしまう逸品。
「んッ、ハァ……、ぁ……あ……」
狭い布地の中からはベリアルの流すカウパーを棒や玉に塗りつける卑猥な音が奏でられ、それは彼の嬌声とハーモニーを織り成す。
淫靡な音楽祭にジータは満足そうに口角を吊り上げると、男根に触れるばかりだった手をさらに奥へと伸ばした。
透明汁をたっぷり纏い、ぐちょぐちょになっている繊細な指先はベリアルの菊門へと向かう。星の数ほどに姦淫したとは思えないほど彼の穴は小さく引き締まってはいるが、肉縁をほぐすように尻穴の皺を丁寧になぞってやれば貞淑な穴は淫乱穴へと早変わり。
ジータに寄り掛かるようにベリアルが抱きしめてきたため、いま彼女の前には男にしては丸くて大きく、女のように柔らかな乳房。
赤子が母親の乳首を探し出して吸うようにジータも口に含み、硬くなった乳蕾を舌先で弾いたり、甘噛みしたりと淫らな刺激を送るのを忘れない。
「はっ……、ヤバ……あっ……! いい、気持ちいい……そのままシてくれ、特異点……」
懇願するような声音にジータは言葉での返事の代わりに、乳首を思い切り吸い上げるのと同時に中指をアナルへと挿入した。
男が感じる場所、前立腺をすぐに見つけた彼女はリズムよく“それ”を押し潰しながら胸の飾りを乳輪ごと食べ、唾液まみれにしていく。
「ん゛ッ♡ は……、っあ♡ お、お゛ぉぉ……♡」
くちゅん♡ ぐちゅ♡ ぐちゅっ♡
ようやくベルトを外してボトムの前を開いたジータは両方の手でベリアルの気持ちいいところを責めていく。片方は胎内。残りは熱源と張り詰めた二つの鈴を。
愛らしく震える体を感じて声を上げて笑いたくなったが、その衝動はベリアルをいじめることに向ける。
「あぁ……すっごい♡ お尻も私の指を美味しそうに食べているし、おちんちんも射精したいってビクビクしてる♡」
唾液でテカテカと淫らに光る乳首を強めに噛めば、ベリアルの体は一層大きく震えた。強い男が抵抗もせずに受け入れるこの状況はジータのサドの部分を激しく煽り、満足感が全身に広がっていく。
戦闘で得られる高揚感とはまた違う感情に、どうしても口元が歪んでしまう。
「イキたい?」
誘惑するように聞けば、コクコクと首が動くのが感じられた。それを合図にジータはペニスを扱く手の動きを速める。
つぷつぷと湧き上がる吐淫をローション代わりにし、巨大な肉塊を愛でながら内部からメスイキスイッチを責めることも忘れない。
頭上から降ってくる甘い声は聞く誰もが体を熱くさせるものでジータも例外ではない。美しい男の肉体を余すところなく味わおうと舌がきめ細かな肌を滑る。
「ッ゛ハ……♡ っ……イク…………ッ……!♡」
ベリアルから一際強く抱きしめられると同時に肉穴が指を締め付け、鈴口からは粘性の液体が放出された。
男の顫動を感じながらしばらく余韻に浸ると、ジータは体を離した。ベリアルの頬は赤く染まり、双眸は潤んでいる。その妖艶さにジータは口の端を邪悪に吊り上げると、両腕を伸ばして彼の肩へ。
そのまま下へと力を入れればベリアルは簡単に両膝を地につくことになる。今まではベリアルを見上げていたジータだが、今は見下ろしている。そんな彼女の表情はかつての明るさは感じられず、悪鬼の笑みを浮かべるばかり。
「なんだい、いきなりこんなコトして……。酷いじゃないか」
ジータの行動にベリアルはわざとらしくなじるが、彼女は無言のままスカートをたくし上げると、中のモノをベリアルの顔面に擦り付ける。
それは極太の男根。ジータはふたなりだったのだ。アバターの力を得て、彼女の陰茎もベリアルと同じく異形へと変貌している。
赤黒いペニスには何本もの血管が浮き出ており、カリ首はエグいほどの高さ。こちらも受け入れる側が普通の者ならば壊してしまうほどの業物だが、ベリアルはこの後のことを想像してなのか、妖しい笑みを浮かべる。
「もうそろそろファーさんのところに行かないと──んグッ!?」
「まだ時間はあるでしょう? 私も気持ちよくしてよ。ベリアル」
ジータは問答無用と言わんばかりにベリアルの捻くれた角を両手で握ると、その口の中に無理やり逸物を捩じ込む。
顎が外れてしまいそうなほどの肉塊ながらも、ベリアルは人の姿をしてはいるが原初の星晶獣。しっかりとジータの滾りを収納している。
「あぁ〜〜っ♡ ベリアルのお口ヌルヌルしてて最ッ高……♡」
喉奥まで押し込むと、ジータは股間を包む温かさと唾液の海にだらしなく舌を伸ばしながら快感に悶える面様を晒す。悪に染まる前は決してしなかったであろう一面。もし仲間の誰かが見ていたのならば絶望するのは必至。
「エ゛っぉ゛♡ ぐっ、ぶぐっ、ぉ、オ゛ぉ……!」
操縦桿を握るようにしっかりと角を持つと、始まる抽送。奥の奥まで突く度に喉が締まり、非常に気持ちがいい。ベリアルも生理的な涙を流して苦しそうな顔をしながらも、されるがまま。無理やり口を犯されていることに対して快感を得ている。その証拠に彼の陰部は腫れ上がり、触れてほしそうに揺れていた。
「きゃははははっ! 苦しいのに気持ちいいんだ? 本当にあなたってどうしようもない変態ね」
嘲笑しながらジータはドスン! ドスン! と乱暴に腰を振り、自らの射精のために快楽を貪る。完全に彼のことをオナホ扱いだ。
溢れる唾液と先走りを肉槍でかき混ぜればぐぷっ♡ ぐじゅっ♡ といやらしい音が鳴り、ベリアルの口の隙間から流れ、ボタボタと落ちていく。
「はっ♡ ぁ♡ そろそろイク……っ……♡ っ、ふぁん♡ ん、ぁぁぁ〜〜っ♡♡」
「ッ゛〜〜!? ゲホッ! ガハッ! っ、おぇっ……」
ベリアルの後頭部に手を回すと前へと力を込め、ぐっぽりと咥え込ませるとジータは頬を染めて雌声を上げながら絶頂を迎えた。
瞬間、爆発するように吐き出された性液の量はベリアルの想像を超えており、彼は驚愕に目を丸くしながらただただ彼女の体液を飲み込むしかないのだが、粘性があるのと単純に量が多すぎて思うように嚥下できず、逆流してきた白濁が鼻からも噴き出し、さすがのベリアルも自らジータを押すことで離れた。
その場に手をついて激しく咳き込めば、血を吸った地面が白く染まる。それほどの量なのだ。
「ほら、休んでいる暇はないよ? 次はコッチ」
顔の下半分を精液で汚しているベリアルの片腕を掴んで腕力だけで立たせると、近場にあった大きな岩に彼を押し付ける。
ジータから見て尻を突き出す格好にさせると、黒のボトムに包まれたまろい丘を叩き、乾いた音が辺りに響いた。
「少し休ませてくれないか……と、言っても無理そうだな。くくくくっ……まさかキミにレイプされる日が来るとは」
「レイプ? 心外ね。これは合意でしょ? だってあなた、私に酷い扱いされているってのに雌犬の顔してる。ふふっ。左右に揺らしておねだりする尻尾が見えるくらいに」
「あッ、ん……♡ ン、んんッ……♡」
革のパンツを下げて白く、ふっくらとした臀部を露わにするとジータは迷いなく三本の指を肉筒に挿入した。
ベリアルのかんばせが甘く歪む。
内部の熱と感触を感じながら膨れた前立腺を指でバラバラに動かしつつ、覆い被さるように体を密着させ、顔を近づけて彼の様子を観察していると、目が蕩けていた。
終焉のときが近づいている。きっとこれが最後の交接。ベリアルも時間が許すまで楽しむつもりだ。
「どうしようもなく昂って、昂って……。あなたもそうでしょう?」
「ぐ、ぅぅぅ……! は、ドラフのちんぽよりデカいんじゃないか? 今のキミのはッ……!」
指を抜き、代わりに極太魔羅を矮小な穴へと宛てがう。ゆっくりと腰を前進させれば狭い内部が一気に広がり、ベリアルはギュッと両目を閉じた。
眉間に深く刻まれる皺。彼の言葉通りジータの陰茎はカリ首がおぞましいことになっており、茎も太くて長い。
受け入れられる存在が限られる逸物は熟れた肉穴に吸い込まれるように沈み、全て押し込むとベリアルの腹部がいびつに膨らんだ。
「はーーっ……全部入ったか……? ふはっ、ぽっこりと膨らんでやがる。妊婦にでもなったようだ……ッ」
軽口を叩くその額からは汗が一筋流れる。
「さて……と。入ったことだし、動くね」
残された時間は限られている。それを無駄にはできないと言いたげにジータはピストン運動を開始した。
臓器がひっくり返るかのような楔を引けば行かないでと肉が絡みつき、外へと顔を出す。その際にカリ首がメスボタンを刺激し、ベリアルの体が分かりやすく震える。
吸い付く肉を押し込み、強い締め付けと性器を包み込む心地よい熱にジータの頬も紅潮してくる。
完全に堕ちる前から彼の穴の味──逆レイプされたりなどして知っていたが、今までよりかも具合がいい。
体の相性もバッチリだというのに、もう彼とはこれ以降ソドミーできないのだと思うと性器の出し入れがより一層乱暴さを増していく。
パンッ! パンッ! と乾いた音と、男の艶声がおどろおどろしい景色に溶け込む。
「あ゛っ、ん゛ぁっ゛♡ ふっ、フフ……! 最後の相手が特異点だなんて、ぉ゛ほっ! 光栄っ、だなぁッ!」
顔は伏せているためジータからは見えないが、きっと口元には歪んだ笑みが浮かんでいるはず。
「そう? ルシファーが本命なのに?」
ジータは淡々と自らの快楽のために内部の掘削行為を続けるばかり。
ベリアルが愛するのはルシファーだ。だというのに“最後”だなんて。てっきり残り時間で──結果はどうであれ、姦淫に誘うと思っていたが……。
「ぐっ! ア゛ぁ゛ぁッ……! キミの言う通り、ン゛っ♡ だが……ファーさんはそういうコトに興味がなくてね。一度も、はっ、ンぅぅ゛ぅ゛!
彼とは、シたことがないんだ……」
「へぇ……」
あのベリアルが……と、意外に思うことはあれど、それだけ。
射精したいと迫り上がってくる白濁の欲望に素直に従い、肛門を抉る行為を繰り返す。
死屍累々の世界に生者の嬌声がのべつ幕なしに上がり、それが二人の異常性を際立たせる。
「はぁ、はぁ……そう、キミのペニスで奥の奥まで抉ってくれ。オレのナカを全部埋め尽くして、ッ゛は、射精してくれ……♡ 今なら、ン゛♡ キミの子どもを、孕めそうな気がするよ……♡♡」
「ボテ腹のあなたを見てみたい気もするし、星晶獣であり、オスであるあなたが本当に孕んだら面白いわね。うふふっ」
この先がないことを知りながらの冗談。けれどもし本当に孕んだら楽しいのにな、とジータは思う。ルシファーも興味を示すのでは?
──こんなことを考えても、もう意味のないことだけれど。
射精に向けて律動が激しくなる。衝撃に合わせて揺れるベリアルの剛直からは透明な汁が飛び散り、地面に染み込んでいく。
荒くなる二人の呼吸。あぁ、もうイク。刹那ジータは思い、完全に理性を失ってしまっている眼差しを結合部に向けてさあ種付け──。
「ぁ……え……?」
「ッ゛〜〜〜〜!!♡♡」
二人の声は反応が全く違うものだった。
漏れ出したように微かな声がベリアルの耳に届いた瞬間、精液がブチ撒けられる。信じられない量が一気に、勢いよく吐き出され、ボコッと下腹部が膨れ上がる。
首を反らし、白目を剥きながら打ち震えるベリアルは声すらも出せないようだ。ただただ身を歓喜に振動させている。
熱気極まった中、ゆらりとジータの体が揺れると、そのまま地面に倒れ込む。抜かれていく肉杭。栓を失ったことで噴き出すふたなり液は圧倒的だ。
「……ハァ。嫉妬かい? サンディ。特異点はキミを男……いや、この場合女か? フフ。一人前にしてくれた存在だからな。ハハハハッ……」
ジータによって下げられたボトムを引き上げ、服装を直すとベリアルは振り返った。その先にいるのは茶髪の天司。地面に這いつくばり、脂汗が浮かんでいる顔をなんとか上げている。
下手をすればベリアル以上の力を有するジータに敗北し、気絶していた彼。意識を取り戻した果てに最後の力を振り絞って魔力剣を顕現させ、ベリアルとの姦淫に耽るジータを背後から貫いたのだった。
「だが今更彼女を殺しても結末は変わらない。この世界は終わるんだよ。サンダルフォン」
「それでも……! 彼女を貴様から解放することに意味がある……!」
「ふぅ〜ん? オレから守ってやれなかったせめてもの償いか? 特異点を悪しき魂から救ってやると」
血の海に沈みながらもサンダルフォンはベリアルを睨みつけ、言葉を紡ぐ。そんな彼を見てベリアルは冷ややかな視線を向けるばかり。
「あ〜ぁ。酷いじゃない、サンダルフォン」
「!?」
淀みを増す空間に少女の声が広がる。自らの名前を呼ばれたサンダルフォンはベリアルから視線を外し、地面に倒れるジータを見た。
地面に横向きに倒れていた両足が立ち、足だけの力でゆらりと上半身が起き上がる。人間には出来ない動きに彼の目は大きく見開かれた。
「な……! そんな馬鹿な……!」
立ち上がったジータの胸には貫かれたはずの傷がなかった。あるのは肌についた血のみ。それが彼女が人間ではない別の“なにか”なのだと、知らしめていた。
信じられないと言葉を失うサンダルフォンを見てジータは不敵に笑う。元のジータを知る者からすれば戦慄を覚えるほどに悪辣だ。
「心臓を貫いたから死んだって? まったく。ナンセンスにも程があるわ。ねぇ? サンダルフォン」
「もう……人間ですらないのか……」
「うん。きっとそう。でもそんなことよりさぁ」
両目を閉じてにっこり笑顔で肯定し、開眼したジータはどろりとした血の眼に天司長を映す。
「せっかくベリアルとキモチイイことしていたのに。あなたのせいで私、イキ損ねちゃったじゃない」
頬を膨らませたジータはなんてことをしてくれたのよと言いたげに、ぷりぷりと怒る。その見た目だけは可愛らしいものだが、理由がよこしまなモノだった。
サンダルフォンの背筋が永久凍土に晒されたように冷えていく。
「あの量を射精しておいてイキ損ねたぁ?」
ベリアルが呆れたように揶揄するも、ジータは「だって本当なんだもん!」と小さな子どものように反応し、視線をサンダルフォンに戻す。
悪戯を思いついた悪ガキのような笑みを浮かべ、ベリアルに「まだ時間ある?」と問いかければ、ジータのしたいことを汲んだベリアルがため息をつきながらも「少しだけだぜ?」と時間が許すことを告げた。
「ありがとベリアル♡ じゃあ遊ぼっか? サンダルフォン♡」
無邪気な幼子の仮面を被りながらジータは一歩、また一歩サンダルフォンへと歩みを進める。
蹂躙の気配を感じ取った哀れな天司の赤い目は、絶望にその色を濁らせたのだった。
終