ジータさんとベリアルくん

 前回のあらすじ(幻):生まれつき男性器と女性器を持つ“ふたなり”のジータは三十歳になっても恋人がいなかった。今の時代両性具有は珍しくはないとはいえ、臆病なジータは異性とも同性とも一歩進んだ関係になれない。
 そんなとき事情を知らない同僚に男に慣れた方がいいと言われ、勝手に出会い系アプリに登録されてしまう。
 そこで出会ったのがベリアルという名の大学生の青年だった。今まで会ったことのないレベルのイケメンにドキドキしつつも年上なのだからこちらがリードしなければ、と思うものの、いわゆる“デート”というものをしたことがないジータはベリアルに任せきりになってしまった。
 せめてデートにかかるお金だけは、と思ったジータは支払い関係は全て自分が持ち、最後はこんな年上のオバサンに付き合ってくれてありがとうという気持ちと共に封筒に入れたお金を渡して別れた。
 夢のような一日から日常に戻るジータだが初めてデートをした異性がとても美しい子で、いつの間にか彼のことばかり考えてしまう。
 連絡を取ろうと思えばとれる。しかし自分みたいな存在が……と思うと何度もメッセージ画面とにらめっこをして終わってしまう。
 そんなある日、ベリアルの方からまた会いたいとメッセージが届く。まさかの誘いにジータは悩みつつもOKの返事をし、再びデートするのだった。
 だが前回と違い、さりげないレベルでベリアルからのボディタッチが多く、また、女性がときめく仕草をしたりとジータを誘惑しにかかる。
 年上でも女なのでベリアルを意識してしまうが、自分の体を思うとこれ以上手を伸ばしてはいけないとジータは前回と同じように理性的に努め、お金を渡して別れた。
 その後もベリアルの方から会いたいと何度もメッセージが届き、その度にデートをした。
 最初はジータが払っていたお金もいつの間にかベリアルが支払いを終えていたり、最後に渡すお金も受け取ってもらえなくなった。
 一体彼はなにが目的で年上の自分に会いたいのか分からなかったが、ベリアルとの時間は日々のストレスを忘れさせ、楽しい時間を過ごせて幸せだった。
 不思議な関係を続けて数ヶ月。ついにベリアルから決定的な言葉で夜を誘われるが、ジータは「ベリアルくんを傷つけちゃうよ……」と悲しそうな顔をするばかり。
 理由が分からないベリアルは怪訝そうな顔をし、ジータは今日でこの幸福な時間は終わりだと自虐的な笑みを浮かべると彼を連れてホテルへと向かった。
 先にシャワーを浴びてベッドで待っていたベリアルの前で体に巻いていたタオルを取り去り、全てをさらけ出す。
 ジータの局部に本来ならあるはずのないモノを見つけたベリアルはようやく言葉の意味を理解し、泣きながら気持ち悪いよね、ごめんね、と繰り返すジータを抱きしめるとベッドに押し倒し、自分の体内にジータの男性部分を受け入れてやるのだった──。

   ***

 残業を終え、冷房の効いた屋内から一歩外に出れば生暖かい空気が肌にまとわりつき、一気に不快指数度が上昇する。
 まだ真夏ではないが徐々にその訪れを知らせる気温の高さに眉をひそめると、ジータは思い出したかのように首から提げた社員証を右肩に掛けていたバッグにしまった。
 数ヶ月前に比べて日が長くなったが、今の時間はすっかりと夜の帳が下りていた。ふと立ち止まり、空を見上げれば月が凜とした輝きを放っている。だが今のジータにそれを美しいと思う余裕はない。
 生温い風が彼女を撫で、ベージュのロングスカートがふわりと揺れた。顔に“疲れた”という文字を貼り付けながら帰路につく。
 重たい鉛を引きずっているような足取りでアスファルトを踏めば、パンプスを履いた足に鈍痛が走った。
 早く帰ってお風呂に入りたい。ゆっくり浸かればこの痛みを和らぐはず。けれど浴槽を洗ってお湯を溜めるのが億劫。
 そもそも夜ご飯はどうしようか。コンビニに寄るのも面倒だしもうカップ麺でいいか。つらつら考えていると一人の青年の顔が浮かぶ。
 ──ベリアル。普通ではない自分を受け入れてくれた人。よくよく話を聞いてみればだいぶ性に関して奔放だったが、別になにかを思うことはない。束縛は嫌うだろうし、するつもりもない。
 ときどき自分に会ってくれればそれでいい。他にはなにも望まない。やがて年老いた自分に飽きてどこかに行ってしまうと分かっているからこそだ。
(ベリアルくんに会いたい……)
 疲れたときこそ彼に会いたい。力いっぱい抱きしめて、彼の薫りを堪能したい。
(そういえば……)
 彼のここ何ヶ月の行動を思い出す。ジータに事前に確認を取りつつ、ベリアルは週に何回か彼女の自宅であるマンションを訪れて食事や風呂の用意など身の回りの世話をしてくれた。
 若い頃のような体力がなくなってきたジータにとっては嬉しいと同時に年下にお世話をされて少し恥ずかしいという気持ちを抱きつつも、彼の優しさに甘えていた。
 何度も連絡させるのも悪いと考え、来たいときにこれるようにスペアキーも渡してある。そのときの彼の顔が鳩が豆鉄砲を食らったかのようなものだったのを思い出し、ジータの頬が少し緩んだ。
 他人に自分のお城でもある鍵の予備を渡す。まさかそんな日が来るなんて。本当はずっと持っていて欲しい。けれどいつかは返してもらう日が来るんだろうな。
 上がっていた頬が想像したことで力をなくし、下がった。
 考えごとをしているとあっという間に駅についた。ここから電車で一駅。もうすぐ家に着く。帰ったら彼がいてくれればいいな……。心の中で呟くとジータはやってきた電車に乗り込んだ。

   ***

 ようやくマンションに着いたジータはエレベーターに乗り、自分の部屋がある階のボタンを押した。無機質な音と共に箱は上昇し、止まる。扉が開き、少し歩けば部屋がある。
 鞄からキーを出し、回して開ければいい匂いが鼻腔をくすぐった。本来ならばするはずのない匂い。ドクン、と心臓が高鳴る。
 腹の虫が鳴くも無視し、明かりを点けると玄関には黒い靴が綺麗に揃えられていた。
 求めていた人物がいることに疲れなど一気に吹き飛び、気分はそのまま天国に行けるのではないかというほどに舞い上がる。
 靴を乱暴に脱ぎ、走り出したい欲を抑えて一呼吸置くと、脱いだパンプスを黒い靴の横に揃え、上がった。
 玄関とリビングを隔てる扉を開けると黒いエプロンをしたベリアルが台所に立っていた。なにをしても様になる青年にジータの心臓は少女のように激しく脈打つ。
「おかえりジータさん。今日もお疲れさま」
「ベリアルくん……ただいま」
 老若男女を魅了する低い声でジータを労り、濡れた手をタオルで拭くとベリアルはおもむろに両手を広げた。
 彼のこういうところがジータは好きだ。したいこと、されたいことを察して行動してくれる。
 その胸に飛び込めば、しっかりと抱きしめられる。厚い胸板は柔らかくジータを癒やし、いつも彼がつけている香水の匂いを肺いっぱいに吸い込み、吐き出す。
 幸せすぎてこのまま死んでしまうのではないか。それほどの幸福感が心の奥底から湧き上がり、ジータはその気持ちを噛みしめた。
「お風呂も用意できているけど……どうする?」
「ううん。先にご飯が食べたいな」
「オーケイ。なら待ってて。もう盛り付けだけなんだ」

   ***

「ごちそうさまでした」
「片付けはオレがしておくから、お風呂に入ってきたら?」
「あ、うん……」
 食事を終えるとベリアルが風呂を勧めてくるが、それ以外はなにも言われない。いつもならそれとなく夜のお誘いがあるのだが……。そこでジータは気づいてしまった。彼の気遣いと、その瞳に宿る熱を。
 目には欲望の色が宿っているが、ジータが疲れているだろうと気を遣って欲を抑え込んでいる。
「ねえベリアルくん。今日……いい、かな?」
「ジータさん。キミは疲れているはずだ」
「ち、違うの! 私が……私が、ベリアルくんとシたいの」
 自分で言って恥ずかしくなって顔に熱が集まっていく。けれどジータ自身ベリアルが欲しかった。行為のとき、彼のナカに入り、その熱を思い出すだけで彼が愛おしくて愛おしくて仕方がない。何度体を重ねても足りないくらいに。
「ジータさんは優しいな」
 頬を真っ赤にしてぷるぷる震えているジータをベリアルは見つめ、ふっ、と目を細め告げる。了承の答えにジータは「すぐ出てくるからベッドで待ってて」と言い残し、脱衣所へと向かう。その間ベリアルの顔は見れなかった。
 せっかく湯を沸かしてくれたのにいま入らないのは申し訳ないが、一刻も早くシャワーを浴びて寝室に行きたかった。
 湯に入るのは後でベリアルと一緒、なんてのもいいかもしれない。頬の緩みを感じながら、ジータは丁寧に体を洗う。
 じわじわと体が熱くなる。シャワーを浴びているせいではない。明らかな興奮。触れられてもいないのにジータの男性部分は充血し、肥大化している。
 女性部分もお腹の奥から膣分泌液を滲ませ、ベリアルを求めていた。
 目を閉じれば情事の光景が浮かぶ。彼がどんなふうに自分に触れ、絶頂へと導いてくれるか。想像していると熱を放出したくなり、股間へと手が伸びるが、ベリアルを待たせていることを思い出してジータはシャワーを水に変えて頭から被った。
 冷えていく頭と体。モヤのかかった思考が晴れ、冷静になるとジータは浴室から出た。近くに置いてある白いバスタオルで体の水気を拭くと、そのまま巻く。今から裸になるのだ。このままでいい。とにかく早くベリアルに触れたかった。
 逸る気持ちを抑えて静かに寝室の扉を開けると、部屋の電気はサイドテーブルに置かれたテーブルランプのみで柔らかなオレンジ色の明かりがベッド周りを照らしている。
 壁側、真ん中辺りに置かれているシングルベッドにベリアルは腰掛けているが上半身は裸。ほどよく鍛えられた肉体はいつ見ても美しいとジータはほう、と息を吐いた。
「あれ? 服着ないんだ」
「だ、だってすぐ裸になるわけだし……」
「たしかにそうだ。来て、ジータさん」
 ベリアルが隣をぽんぽんと叩く。胸元でタオルを押さえている力を少し強め、ジータは誘われるがままに腰を下ろす。今日はどんなふうに触れてくれるのだろうか。
 まだ体のどこにも触れられていないというのに、妄想たくましいジータはバスタオルに隠された陰部を屹立させ、それを見たベリアルは人差し指でちょんちょん、とつついた。
「きゃっ、いきなりはだめっ……」
 ただ指で突かれただけなのに性感が体を駆け巡り、体を小さく跳ねさせてしまう。
「その駄目はもっとしてほしいって意味に聞こえるけど」
 ジータの頬に押し付けるだけのキスを送り、ベリアルはベッドから下りてジータの前に両膝をつく。タオル越しとはいえ恥ずかしい場所に美しい顔があるという事実にジータの股間は充血し、さらに膨らむ。
「ジータさんは分かりやすいな」
「あんっ♡ ベリアルくんに触られるのっ♡ すごく気持ちいい……!」
 白いバスタオルの上から完全に勃ち上がっている雌ペニスの先端を握られ、手の内側にぐりぐりと擦り付けられる。
 生地と擦れ合う絶妙な力加減と、ベリアルの白魚の手が大事な部分を触っているという視覚的情報にジータの脳は早々に沸騰し始めていた。
 もっとしてほしい。気持ちよくなりたい。
 ブラウンの瞳は切なげに潤み、頬には朱が差す。ねだるように彼の名前を呼び、頬を撫でればベリアルは聖母を連想させる慈悲深き笑みをたたえ、両手で白い布を外す。
 恥部だけ露出させられたことで男顔負けの怒張がその御身を現す。白く柔らかな肌に似合わぬ力強い隆起はいつ見てもウットリしてしまうのか、ベリアルの目尻が下がった。
 両手で砲身を包み、まずは挨拶代わりの亀頭キス。ふにゅ、と柔い唇が鋭敏な場所に触れ、ジータは息を呑む。そのままベリアルを見下ろしていると、顔を上げた彼と視線が重なる。
 ジータよりも白いのではと思う肌に輝くルビーレッドは、見つめていると魅了の魔法に掛かったように思考に霧がかかるほどの美しさ。
 その瞳で見つめられれば、誰だって堕ちてしまう。
「んんっ……!♡」
 小さな穴から流れ出す涙を肉厚な舌がひと舐めし、先っぽがベリアルの口に咥えられるとジータの内股が愛らしく振動する。温かくて、たっぷりの唾液でぬめった内部に包まれ、それだけで腰が砕けてしまいそう。
 フェラももう何回もされた。でも何度されたって慣れるわけがない。
 脚を震わせながら射精感を我慢していると、尖りをベロベロと這いずる舌がその我慢を崩そうと敏感な裏筋を襲い、頬を窄めるようにして吸引してくる。
「ひゃぁん! だめ、だめっ、あぁっん♡ まだ射精したくないの……♡ ね、お願い。私のおちんちん、ベリアルくんのえっちなお口でずぼずぼしてっ♡♡」
 快感に悶えながらもジータはベリアルに懇願し、その願いはすぐに叶えられた。ベリアルはジータの分身を口に含みながら満足そうに口角を上げると、今まで陰茎に触れていた両手はむっちりとした太ももへ。
 ベリアルの大きな手が脚に触れているという点でもジータの体は快楽を拾う。好きな人の前では全身が性感帯だ。
 ベリアルはそのまま頭を前進させ、それに合わせて淫棒が心地よい熱に包まれて頭がボーッとしてくる。ベリアルは根本付近まで飲み込むと喉奥も使ってジータを責め始めた。
 いわゆるディープ・スロート。自分では絶対にできない芸当に素直にすごいと思いつつ、ジータは快感を享受することに。
 ベリアルが頭部を前後させる度に大きな水音が立てられ、ぬるぬる口オナホがもたらす気持ちよさにジータの口からは甘い女の子の声がひっきりなしに上がる。
 小柄でもともと童顔でもあるので、今のジータは大人の女性というよりかは少女のように思えた。
「あぁん♡ ぁん! それっ、すごいよぉ……!」
 長大を咥えているというのにベリアルは全く苦しそうにしておらず、火照った顔と双眸でジータを見つめ続ける。彼のその表情を見ているだけで性感が走り、射精感が這い上がってくる。
 卑猥な音と一緒に激しく吸引され、早々に限界がやってきた。もう我慢できないと、ベリアルを離そうとしても彼はジータのふたなりペニスを奥深くまで咥えたまま動かない。
 逆に搾り取るように口をすぼめ、舌で舐め回されて、ジータは愛らしい悲鳴を上げる。
「もう……だめっ♡ そんなに吸われたら、っひぃ! ん、あッ、あぁぁぁ〜〜ッ……!」
 ベリアルの髪を掴む手や腰が震え、彼の口内に向かってドプッ、ドプッと粘った体液を放出する感覚にジータの顔は蕩け、陶酔状態。
 受け入れるベリアルはザーメンを難なく飲み下していき、最後はアリガトウとでも言うように先端に可愛らしいキスを一つ。出すものを出したばかりで鋭敏になっているので、ジータはその刺激だけでまた身を震わせた。
「フフ。やっぱりジータさんのココは元気いっぱいだねぇ。さて。オレもそろそろ楽しませてもらおうかな。ジータさん、仰向けになって」
 身に纏う物を外したジータはベリアルに言われた通りにベッドに寝転ぶ。全体的に丸みを帯びた乙女の柔らかな体は純粋に男を煽る。
 大きめな乳房の飾りは薄紅に色づき、とても可愛らしく、緩やかなくびれを辿っていけば下半身には雄々しい逸物。
 何本もの太い筋が巡る陰茎は反り返り、その質量は圧倒的。そこら辺の男よりも巨大だ。
「ベリアルくん……♡」
 全裸になった彼が跨ってきた。それでも体重をかけないように膝立ちになっている。
 ベリアルの陰部も痛いほどに勃起しており、ジータはお腹の中がキュン♡ と疼くのを自覚した。男性器が付いていても一人の女。好きな人に反応するのは当たり前。
 若い肉体は鍛えられており、何度見ても見惚れてしまうほどだ。胸筋も大きく、非常に魅力的。触らせてもらったときの柔らかさを思い出してジータは生唾を飲み込む。
挿入いれるよ、ジータさん……」
「わっ、ぁ……」
 ジータの陰茎を握り、固定すると落とされていく腰。尖りは難なく肉縁に飲み込まれていき、すんなりと受け入れてしまうベリアルに素直にすごいと思いつつ、感じる内部の熱にジータは大きく息を吐く。
 狭い場所を通り抜けると彼の熱を直に感じられて、なんとも言えない安心感に満ちる。まるで全身を抱きしめられているような……。
 心身を満たす心地にうっとりとしながらジータが両手を伸ばせば、彼からも握られた。
 ベリアルの猛りから滴る透明な涙がジータの腹を濡らし、力強さを感じる雄や、結合している部分から目を離せないでいると、彼が呟く。
「動くよ……」
「っう、あ、やぁ、はぅぅっ……!」
 肉壁がジータの分身を包み込み、ちゅうちゅうと吸い付いてくる。極上の肉穴に軽く上下されただけでジータの眉は苦しげに寄せられた。
「大丈夫? ジータさん」
「べ、ベリアルくんのナカ、熱くて、うねうねしてっ……気を張ってないとすぐ出ちゃいそう。何回もしてるのに全然慣れないよっ……!」
 顔が柔らかな薔薇色に染まるジータは挿入している側だというのに、これでは抱かれているのと同義。ベリアルは可愛らしい反応に気分を良くしたのか、軽く喉を鳴らすと腰を巧みに動かし、ジータをどんどん追い詰めていく。
 激しい動きに呼応してベリアルの怒張がびたん、びたんとジータの腹部に緩く叩きつけられる。なにもかもが卑猥で、頭の中が沸騰して、ジータはただ喘ぐばかり。
「あぅっ、ん……! はぁ、きもちぃ♡♡ んぁ♡ もう我慢できないよぉ……!」
 ジータの極太魔羅で前立腺をノックするようにベリアルが動くとぐじゅっ、ぐじゅっ、と水音は大きくなるばかり。
 組み敷く女性の乱れる様子にベリアルも気分がだいぶノッているのか、楽しそうだ。自然と口角が吊り上がっている。
「ふっ、ン……♡ オレもイキ……そう……♡」
 浮き出た汗がベリアルの頬を流れると、彼は半身を屈ませるとジータに口付ける。何度も角度を変えて愛を交わしながら絶頂へと向かって下半身を揺すっていると、ジータの顔は喜悦に満ちる。
 無駄毛が全く見当たらないベリアルのすべすべ肌や熱を持った体を全身で感じることができて、それだけでおかしいくらいに気持ちがよくて、無我夢中でジータはベリアルの背を抱きしめた。
「あぁっ♡ あっ、やっ……いく、イク……っ♡♡ ベリアルくんも一緒、にっ……!」
「っ、ッ〜〜〜〜!!!!♡♡」
「っあ、んんッ……! 止まる気配がないよぉ……♡ ベリアルくんに中出しっ、いっぱいシちゃってる……♡♡」
 愛しい人に包まれながらジータは限界を迎え、ベリアルのアナルに実ることのない子種を流し込む。互いに小刻みに震えながら種を植え付け、受け入れ、深く抱き合って終わりのときを待っている。
「ん……っ、ベリアルくん……好き……」
 真横に顔をうずめるベリアルを改めて抱きしめ、ジータは囁く。すると顔を上げた彼からも同意の言葉が返され、その掠れた熱声にジータは再び自身の陰茎が硬くなるのを感じた。
 一般的にふたなりの性欲は強め。まだまだ行為が続けられるとベリアルは薄っすらと微笑みながら上半身を起こし、見せつけるように脚を大きくM字に開くとゆっくりと腰を上げていく。
 もちろんジータの視線は結合部へ。ぐっぽりと咥え込んで離さなかった後孔から肉の槍が少しずつ抜けていき、最後はちゅぷっと名残惜しそうに淫穴から外れた。
 栓を失った肉壺からは粘った白濁が漏れ出てジータの肌を点々と白く染める。
「ね、今度は私が攻めたい」
 腫れぼったい乳房をふるりと震わせて起き上がるとジータは潤んだ目を向け、紅潮した顔に引かれる柔らかそうな唇を緩くカーブさせた。
 年上女性の可愛いお誘いにベリアルは喜んで体をベッドに預け、ジータは彼の脚の間に膝立ちになった。
 アナルセックスはバックの方がやりやすく、また深く挿入できるのが魅力的だが、今回は王道の正常位。互いに向き合っての愛し合い。
 一度達したことでベリアルの頬も血色がよくなり、ライトに照らされる肉体はため息が出るほどに美しい。
 隆起した胸の赤飾りはジータと同じように硬くなっており、舐めてしゃぶりたくなる衝動に駆られる。男の乳首だというのに、ジータにとっては誘惑の種そのもの。
「ん? どうしたのジータさん。……吸いたいの? オレの胸。それともパイズリしてあげようか」
「っ……」
 否定はできなかった。ベリアルは柔らかく笑うと誘うように両手で胸を寄せ、白い膨らみの間に深い谷間を作ると上下に動かす。
 ぷるぷると震える乳房の卑猥さにジータの喉が鳴る。普通男の胸は薄く、パイズリはできないのだがベリアルの胸はできるのだから恐ろしい。
 それに実際に何度かやってもらった。ベリアルの谷間に怒張を挟み込み、胸の感触を味わいながら、なめらかな肌を行き来するのは視覚的にも大変興奮したものだ。
 けれど今は彼のナカに入りたい。一つになりたい。
「ベリアルくん、私……」
「……来て、ジータさん」
 小首を傾げて誘うベリアルにジータは我慢できなくなり、砲身を握るとゆっくりと腰を沈めていく。再びの挿入は中出しした性液のおかげで非常にスムーズ。
「んっ……♡ ぁ、すっげ……、あ、ぁ……♡」
 ジータの極太魔羅を全て受け入れたベリアルは内蔵を埋め尽くす肉棒に顔から力が抜け、気持ちよさそうだ。
 挿入しているジータも絡みつく粘膜に小さく喘ぐ。
「すごっ……締め付けてくるぅ……♡ はぁぁぁ……♡♡」
 重くて熱い吐息。分身を包む灼熱に蕩け顔をすると、ベリアルの両脚がジータの腰に絡む。まるで離さないと言いたげに。それだけで下半身がさらに大きくなり、ミチミチと内部を拡張した。
「ベリアルっ、くん……♡」
 半身を折り畳み、ベリアルの胸に向かって顔を寄せる。ピンク色の美味しそうな果実にちゅぅ、と吸い付き、舌で舐めたり転がしたり。それだけでなく、片手で白桃を揉み、残りの手はベリアルの陰茎へ。
 手の中で脈打つペニスはマグマのように熱い。先ほどはドライオーガズムで射精はしておらず、未だ透明な汁を流す先端をくすぐるように触れれば、ベリアルは可愛く啼く。これもジータを高揚させる作戦ならば大成功。
 さらに興奮した様子のジータはふにゃっとした笑みを向けると腰を振り始める。ベリアルの脚が絡まっているので大きな動きはできないが、前立腺を的確に潰しながらパチュッ、パチュッと打ち付けられる甘い衝撃にベリアルはジータの背中に腕を回して抱きつく。
「あ、はぁ、アっ♡ 四点責めとかぁッ、気持ちよすぎっ……♡」
 舌で螺旋を描くように乳首を舐められ、手では触り心地を確かめるように揉まれ、痛いほど勃起した猛りは手でこすられ、肉筒にはふたなり娘の魔羅、しかもメスイキスイッチを何度も突いてくる。
 余裕ぶっていたベリアルからゆとりがなくなっていき、悩ましげに眉を寄せると両目を閉じて喘ぐ。彼の声が大好きなジータにとってそれは麻薬も同然。気分の高まりが抑えられないようで鼻息荒くしながら愛しい男を喰らっていく。
「ベリアルくん、おちんちんもナカもビクビクしてるね? かわいい」
「んくぅぅっ……! はっ、ジータさんエロすぎ……っ、あぁ♡」
「エッチなのはベリアルくんの方でしょ。男の子なのにこんなに乳首ぷっくりさせちゃって。ふふっ」
「くふっ、んんッ〜〜♡」
 発情しきったジータの表情はより強くオンナを感じさせ、舌を突き出すとチロチロと桃色突起をつつく。彼女の唾液で濡れてテカる乳頭は情欲をそそり、胸に触れている手も指先でぐにぐにと乳蕾を捏ねて遊んでいる。
 乳嘴にゅうしを愛でる度に開発済みのベリアルの体はいやらしく反応し、ジータは自分の下で乱れる男に終わりの見えない愛情が止まらない。
「はぁ……もう駄目。興奮し過ぎて頭がおかしくなりそう……」
 ベリアルの妖艶な表情。彼の体温、体臭。全てがジータを魅了し、彼の中に射精したいという激情が心の奥底から溢れ出る。
 重そうに身を起こすとベリアルの腰を掴み、浅い律動を開始する。腰を引けば陽根を離したくないように肉が絡み、押し込めば悦びを訴えるように締め付けてくる。
 結合部は一回目の際にジータが出した牝汁が泡立ち、腰の動きに合わせて白い糸が引く。
「アッ、ぁ゛っ! そこ、イイっ♡ ジータさん、もっとぉ♡♡」
「あんッ! ぁ、はぁ♡ 好きっ、好きだよベリアルくんっ♡♡」
 愛の言葉を紡ぎながらジータは身を巡る衝動のままに腰をぶつける。肉の快楽に取り憑かれた彼女の動きは射精をするためだけに激しくなり、ベリアルも叩きつけられる雌快楽に満足そうに顔を蕩けさせながら、体をジータに委ねていた。
 抽送をしながらベリアルの赤くなった体を見つめていると、反復運動によって大きく揺れる彼の太茎が目に入った。
 本来ならば女のソコに挿れて気持ちよくなる男性器。前立腺を刺激しての尻穴の快楽もいいが、それにプラスアルファできるならするのがパートナーとしての役目。
 好きな人にはたくさん気持ちよくなってほしいという優しい気持ちがジータの中に溢れる。
「んぁ゛ぁッ!♡ 両方はッ……♡」
「うふふっ! ベリアルくんにはいっぱい気持ちよくなってほしいもの」
 そう言って笑うジータは凄艶せいえんに見え、ベリアルはこれから与えられる連続絶頂の予感に犬歯が見えるほど口の端を上げ、舌なめずり。
 ジータは片手で作った輪を亀頭冠へ、残りは手のひらで亀頭を握り「いくよぉ……♡」の合図で激しい責めの開始だ。
「ン゛ぉッ!? ぉ、お゛ぉぉ゛ぉォっ♡」
 それぞれ逆の方向に向かっての扱きは上下にすり潰すような強烈な刺激で、ベリアルは喉を反らせながら悶える。
 手で鋭敏な場所を責めつつ、お尻も串刺しにするのをジータは忘れない。手を使っているので激しい動きはできないが、その代わりに一撃いちげきを意識してピストンを繰り返せば、行き止まりまで突かれる衝撃にセイレーンの如く魅惑的な声はのべつ幕なしに上がる。
「ま゛っ……♡ こんな、のォ゛っ! 教えて、ひぐぅぅっ! ない! あ゛ぁ、~~~ッ♡♡」
「私だってベリアルくんに教わってばかりじゃないんだから♡」
 ネットで見た男を気持ちよくする技を再現しながらジータは楽しそうに暴力的な快楽を叩き込む。こちらが動けば動くほどベリアルは顔を涙と唾液でくしゃくしゃにしながら乱れ咲き、ジータの胸は充足感に包まれる。
「ふふっ♡ お尻が締め付けてくるし、おちんちんもイキたがってるね♡ んっ、私も、そろそろ…………ッ♡」
「ぁ……あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!! イグゥっ!!♡♡ ァ゛っ、あ゛ぁ! ナカ、イッでる、のにぃ! お゛ッ、お゛ぉぉ〜〜♡♡♡」
 汚濁声を奏でる淫乱なメスを見下ろしてジータは片目を閉じると、最後のひと突きの果てに二発目とは思えないほどの大量の精をベリアルの雄膣に向かって放つ。
 ドプッ!! ドブッ!! ドピュルルルル!!!!
 そんな音が聞こえてきそうなくらいに力強い白濁のほとばしりにベリアルは瞠目し、舌を伸ばして背をアーチ状に何度も跳ねさせる。
 内部で射精しながらジータは手に持っているベリアルの愚息をテクニックなどない、めちゃくちゃな指の動きで扱き倒し、男を悶絶させる。
 SとM。両方の属性を持つベリアルにとって痛みは快楽。むしろ多少は乱暴にした方が感じるのをジータは知っての行為だ。その証拠にベリアルは白目を向きながら笑っている。
「おほぉ゛っ! ア゛っ、ん゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁあぁ~~ッ!!♡♡」
「わっ! こっちでもいっぱいイケたね♡ えらいえらい♡♡」
 隣の部屋に聞こえてしまうのではないかと思うほどの嬌声を上げながら、ベリアルの鈴口から精液が放たれる。
 ジータほどではないが年若い青年の射精量もなかなかのモノで自らの胸や腹を汚し尽くし、ようやく激しい快楽の波が収まったのか、呼吸は落ち着いたものの、ベリアルはぐったりとしている。
 そんな彼の様子に花の笑みをこぼしながら腰を引けば、ぽっかりと空いたままの肉穴からは恥ずかしい音と一緒に白い体液が流れ出た。

   ***

「ねえベリアルくん……」
「ん、なあに? ジータさん」
 現在ジータとベリアルは小休憩ということで横に並んで寝転がっていた。本当は体の汚れをリセットするために風呂に入るべきなのだが、激しいセックスの後すぐに動くのは気怠いものがあったのだ。
 火照りが少しずつ引いてきたかんばせのジータが声をかければ、あれだけ乱れていたのが嘘のように穏やかな声と顔で返事をされた。
「あの……今更だと思うけど、どうして私を好きになってくれたの? 私はあなたより年上だし……」
「そういえば話したことなかったな。……こんなことを言ったら笑われるかもしれないけど、物心ついた頃からずっと空虚だったんだ。なにをしてもココが満たされない」
 天井を仰ぎ見ながらベリアルは片手を胸の中心に当てた。その言葉にジータはドキッとしてしまう。
「なにをしようが、誰と寝ようが、ずっと隙間風が吹くばかり。そんなときにジータさんと出会って──理由は分からないけど、初めて満たされていく感覚が芽生えたんだ。それなのにジータさんは逃げるばかりで、人生で初めて追いかける側の気持ちを味わったよ」
 自嘲気味に笑うベリアル。だがジータが反応したのはそこではなかった。
 体ごとベリアルの方を向くと「私もなの」と彼の手を取り、自分の胸に重ねる。
「私もずっと、誰かを失ったような気持ちがあって……。楽しいことをしても、寂しいままだった。けど……ベリアルくんに出会って、その気持ちが少しずつなくなっていったの」
「……まさかそんな偶然があるなんてね。オレたち、前世で知り合いとかだったり──ってそんなわけないか。……ジータさんはオレといて、心の隙間が完全に埋まった?」
 恋人として、その問いには間髪を入れずに同意するべきなのだが──ジータはできなかった。ベリアルのことを愛しているはずなのに、頷くことができない。
 表情を曇らせるジータを見て、ベリアルは「気にしないで」と髪を撫でた。その手付きや声からは怒りの感情は微塵も感じられず、ジータは胸を撫で下ろす。
「実はオレもなんだ。ジータさんといてほぼと言っていいほど満ちてはいる。けど……どうしても最後の少しが足りないんだ。一体なにが足りないのか、この癒えぬ喪失感はなんなのか……。キミと一緒に過ごすうちに、分かればいいな」
「うん。私も……あなたと一緒に……」
 胸元にあるベリアルの手をジータは両手で握る。彼の言うように、いつかは満ち足りる条件が分かる日がくればいいと。
「フフ。ならそろそろ一緒に住んでもいいんじゃないか? ジータさん。通い妻をするのもいいがもっとそばにいたい」
「い、一緒……つまり、同棲……!?」
 しんみりとした話題はおしまいだと、ベリアルはお得意のアルカイックスマイルを浮かべるとジータにとっては爆弾レベルの発言をしてきた。
 確かに今の状況、ベリアルがジータのマンションに来る頻度を考えればもういっそのこと一緒に住んでしまった方が色々と都合がいい。
 そんなことを思い始めたのも束の間。ベリアルはジータの考えを軽々と超えるように再び口を開く。
「別にオレは結婚でも構わないが」
「け、けけけ結婚!?」
「おやぁ? ジータさんはオレ以外の誰かを選ぶつもり? こんなにも体の相性もいいのに。今さらオレ以外の誰かで満足するとも思えないけど」
「そ、それはその……。……次の休みにダブルベッド、買いに行こっか」