とりま堕天司で。

「はぁ……」
 暗い部屋。夜空に浮かぶ寒月の光がジータの部屋を冷たく照らしていた。
 静まり返る空間に広がるのはこの部屋の持ち主であるジータの大きなため息。
 寝間着に着替え、ベッドに潜り、天井を見つめる彼女の顔はどこか赤い。
 ──簡単に言ってしまえば“欲求不満”。ジータは普通の女の子ではなく、女性器と男性器を持つふたなりという存在だった。
 ふたなりの性欲は男性よりも強く、その欲が膨らむとなかなか厄介。一回抜いた程度では淫熱を解放できないことが多い。
 普段は淫らな熱に体を侵されても自慰を何回かすれば収まるのだが、今回は違った。
 まさかこんなに強く発情してしまうなんて、とジータは歯噛みする。
 今だって寝る前に部屋に備え付けられている浴室で熱を解放したが、ムラムラとしたわだかまりが残ったまま。
 誰かの──いいや、××××の熱に包まれて果てたい──。
(ああもう! なんでアイツの顔が浮かぶの!?)
 脳が勝手に思い浮かべてしまうのは黒い男。ダークブラウンの髪に白い肌、その色によく映える赤星の瞳。深紫の羽根を使ったファーストールを纏う妖艶な男。
 彼の名前はベリアル。ジータたちと剣を交えた狡知の堕天司。ここ最近はなにが目的なのかジータの前に現れては姦淫に誘ったり、戦ったりと彼女にとっては迷惑な存在だ。
 それなのになぜ、彼を浮かべてしまうのか。たしかに顔や体は極上。声だって。
 ああ、あの白い肌を赤く染め上げ、啼かせてみたい。ラカムに対してソドミー……肛門性交を誘っていたのだ。アヌスファックもお手の物だろう。
 気づけば股間の大業物は反応を示し、快楽を求め始める。明日も朝早いのだ。いっときの欲望に流されてコンディションを落とすわけにはいかない。
 ジータは拒絶するように目を強く閉じると、無理やり夢の世界へと旅立つのだった。

   ***

「こら。消灯の時間はもうとっくに過ぎてるぜ?」
「ベリアル……さん……」
「ん? どうしたの? そんな潤んだ目をして。……なにか隠してる? オニイサンに言ってごらん」
 どこも見ても白、白、白な小さな部屋。小さいながらもトイレや洗面台が備え付けられており、部屋の大部分を占めるベッドを囲むようにカーテンが引かれている。
 カーテンの向こう側はアーム式のベッドライトによって照らされ、布に映されている二人分の影が揺れていた。
 カーテンの内側にいるのは白い服を着た茶髪の成人男性と、ベッドに横たわるパジャマ姿の金髪の少女だった。
 内装や彼らの服装からして分かるようにここは病院で少女は入院患者。ベリアルと呼ばれた男はジータの担当看護師でもあり、今日は夜勤だ。
 見回りにきたベリアルが一番奥にある個室、ジータのいる部屋に入ればオレンジ色の明かりが点いており、カーテンに揺らめく影が入室に合わせてピタリと止まった。
 そして今の状況へと繋がる。
 ベリアルに聞かれたジータは羞恥心から赤くなった顔を掛け布団を被ることで目元まで隠した。ベリアルはナニをしていたか知っている。それでいて聞いてくるのだからタチが悪い。
 ジータの担当であるベリアルは分かっているはずなのだ。彼女が普通の女の子でないことを。
「うぅ……ごめんなさい……」
「泣く必要はないさ。ツライだろう? オレに見せてごらん」
「……はい」
 諭すように告げるベリアルを見てジータは涙目になりながらも掛け布団をめくり、こちらを見つめる血の眼に含羞がんしゅうを感じながら自分の姿を大人の男性へとさらけ出す。
 ピンク色のパジャマのズボンは下着と一緒に少しだけ下げられ、可愛い女の子にあるのがいびつに感じられる雄勃起が顔を出していた。
 ジータはふたなりだったのだ。反応してしまった分身を落ち着かせるために自慰をしていたところ、ベリアルに見つかってしまって慌てて布団で隠したが、彼にはお見通しだったようだ。
 ビクビクとしながら涎を垂らす陰茎を見てベリアルは手に持っていた懐中電灯をキャスター付きのテーブルに置くと、近くにあった椅子をベッドの真横へと持ってきて座った。
 彼へと向けられるジータの瞳は疑問と不安に満ちていおり、そんな彼女の感情を読み取ったベリアルは安心させるように頭を撫で「オレに任せて」と口にすると、骨張った手を滾りへ。
「ひぅ!?」
「シー……。他の患者が起きるだろう? 声を抑えて」
 茶目っ気を含んだウィンクをすると残りの手の人差し指を唇に当て、声の音量を絞りながらジータに注意する。
 普段から艶っぽい雰囲気があるベリアルだが、今はいつも以上に色気が感じられ、ジータの顔がさらに熱くなっていく。
「はっ……はいぃ……!」
 蚊の鳴くような声にベリアルは喉の奥で笑うと大丈夫と言いたげにジータの手を握った。彼女の手よりも大きい男の手だが、触り心地はすべすべで荒れなどは見当たらない。爪の形もよく、美しい。
 そんな手が自分の手と大事な部分に触れていることに屹立はベリアルの手の中でさらに硬度を増す。
 男の手に包まれてもまだ収まりきらない長大は我慢ができないと訴えるように血管が浮き出ており、凶悪そのものだった。
 可愛らしい少女についている。というのもベリアルの性的興奮を増大させるのか、橙色のライトに照らされる横顔は赤みが差しており、若干呼吸も早い。
 獲物を見つけた獣の如く赤い目をギラつかせると、ベリアルは動き出した。
 人差し指と親指で輪を作り、亀頭に引っ掛けるように通すと、そのまま手を上下させる。ジータは自分でやるときと全く違う動きに身をくねらせ、ベリアルの手を握る力を強めた。
「あっ♡ なにこれ、なにこれぇっ……♡ きもちぃ……!♡♡」
「他人におちんちんをシコシコされると気持ちいいだろう? フフ」
 腰にズン、と纏わりつく声は理性を甘く溶かしていく。そんな声で卑猥な言葉を恥ずかしげもなく口にする美丈夫にジータは激しく興奮した。
 激しく脈打つ心臓に痛みを感じ、火照った体の穴という穴から汗の珠が吹き出て重力に沿って流れ落ちる。体中の血液が赤黒い物体に集中しているのか、頭に濃霧がかかり、まともな思考ができない。
 はあはあと肩で大きく息をしながら未知の体験へと堕ちていくばかり。
 熱の塊を少しばかり冷えた手が上下に滑る度に腰が砕けそうなくらいの甘さを孕んだ心地よい痺れが局部から脳へと走り、勝手に淫声が出てしまう。
 こんな声を出していたら誰かに気づかれてしまう。慌てたジータは空いている方の手を口に手を当てることで声を抑えようとするが、セルフプレジャーでは得られなかった快感にくぐもった嬌声がのべつ幕無しに上がり、耐えることができない。
「ぁん♡ でちゃっ、でちゃうよぉ!♡」
「ほ〜らジータ。いっぱいぴゅっぴゅっしような〜♡」
 心底楽しいと言わんばかりの軽快な声。溢れんばかりの色気がある大人の男性に恥ずかしい場所をこすられると張り詰めた感覚がどんどん強くなる。
 ジータはこの感覚を知っていた。体の奥底からなにかが出そうな官能熱。鈴口からとろとろと際限なく出てくる吐淫をローション代わりにし、強制的な射精を促すベリアルの手淫に童貞であり、処女であるジータが耐えられるはずもなく。
「んぅ! ンんーーッッ!!♡」
 でっぷりと太ったジータの魔羅からは白い灼熱がほとばしり、決していい香りとは言えない独特の臭いを放つ体液が彼女の素肌や服をベットリと汚す。
 涙を流し、衣服が乱れ、ぐったりとしている少女に汚辱の証。禁断的な姿がそこにはあった。
「ハァ……♡ いっぱい出たねぇ♡ だが──」
「な、なにを……?」
 蕩けた顔をしながら法悦に浸る少女を見て奸凶かんきょうな男は今の今まで太い杭を握り、粘った液で汚れた手を舌で舐め取りながらベッドへと上がり、ジータに跨った。
 突然のベリアルの行動にジータは体を震わせたが、すぐに動かなくなった。否。動けなかった。
 神話に名を連ねる蛇の髪を持つ怪物メドゥーサ。その瞳を見てしまうと石化してしまうという。昔、本で読んだ内容を思い出し、今の状態と同じだとジータは思う。
 ぐらぐらと煮え滾るマグマのようなルベライトの瞳には獲物を前にし、どんなふうに捕食しようかと考える獣の眼光が宿り、ジータは固唾を呑む。
 これからどうなってしまうのか分からず、怖いはずなのにジータの肉棒はもう回復していた。それを視認したベリアルは唇を真っ赤な舌でなぞるとベルトを緩め、ジータに見せつけるように緩慢な動きで白いボトムを下ろしていく。
 少しずつ露わになる白磁の肌と股間から生える男棒。ドクドクと脈打つ雄は勃起しており、少女の股間に生える屹立よりも立派だった。
「っ……!♡ おっきぃ……!」
 この際なぜ下着を穿いていないのかはどうでもいいこと。膝までボトムを下ろし、巨大な肉の塊を決して小さくはない剛直へと押し付けられたジータは雄としての優劣を叩き込まれ、胴震いする。
 腰を揺らし、じゃれるようにベリアルの陽物がジータの楔に触れ、くすぐったい感覚にジータはもどかしそうな目をベリアルへと向けた。
 下半身を露出して彼はなにをするつもりなのか。胸の鼓動が速くなるのを感じながら涙の膜が張った双眸で見つめ続ければ、ジータの考えを読み取ったベリアルは唇を半月の形に持ち上げ、妖艶に笑った。
 場の雰囲気も手伝って、あまりのセクシーさにクラクラとしてしまう。
 頭の中の濃霧が、さらに濃くなる気がした。
「なあジータ。オレも気持ちよくしてくれないか? さっきからナカが疼いてしょうがないんだよ……」
「ベリアルさんを……? でもどうやったら……」
「なに。キミはなにもしなくていい。ただ──」
「ぁ……! あ、ベリアルさんのお尻に、は、挿入はいってるぅ……!」
 淫穴にジータの股間が来るようにベリアルは移動し、バキバキに硬くなっているふたなりペニスを手に取り固定すると、天を向く肉槍に向かって腰を下ろしていく。
 ゆっくりと、味わうようにベリアルのアヌスに食べられていく肉竿の様子が彼の脚の間から見える。その光景が肉食の野生動物が草食動物を捕食するときのようにジータは思えた。
 呑気にそんなことを考えていられたのは一瞬。飲み込まれた部分から感じる熱は体の力が抜けてしまうくらいに極楽で、雄膣が蠢き、気を張っていないとすぐにでも射精してしまいそうだ。
「童貞卒業オメデトウ。みんなには内緒だぜ?」
「ひっ、いぃ……♡ ウネウネってしてっ!♡ すごく気持ちいい……!♡ ふぁ、んっ♡」
 顔を紅潮させ、矢継ぎ早に分泌される唾液がジータの口の端から流れ、顔を近づけたベリアルによって舐め取られる。
 そのまま口も塞がれ、ファーストキスなのに……! と刹那思ったが、ベリアルなら嫌じゃないとジータは素直に彼を受け入れた。
 子供のジータを喰らうベリアルは悪い大人だとは思うが、どうでもいい。それほどに場の雰囲気に彼女は飲み込まれていた。
 完全に受け身のジータはただベリアルにされるがまま。
 流し込まれる体液を喉を鳴らしながら飲み込み、濃厚な舌の触れ合いに乱れながら結合部からの快楽に喘ぐ。
 可愛らしい顔が涙や汗などの体液で汚れ、顔の赤さも手伝って非常に倒錯的な表情をジータはしていた。
 どうすればいいのか分からず、与えられる快楽に酔いしれる彼女の姿にベリアルは口を歪ませると、上半身を折り畳んだ状態のまま激しく腰を上下させる。
 振り上げたことでアヌスから顔を出した竿は卑猥に光り、ぬかるんだ粘膜に突き刺すように腰を下ろされれば性器が肉襞に扱かれ、ジータの口から愛らしい悲鳴が上がる。
「だめぇ♡ ベリアルさんっ、もうっ♡ もう射精ちゃうぅ!」
「もうかい? 早漏で可愛いなァ♡ いいぜ、そのままナカにブチ撒けろ」
「っ──ああアぁ゛ぁぁ゛ッ!♡ 射精っ♡ お尻にびゅぅびゅぅってぇ!♡♡ あっ、あ゛ぁっ! 搾り取られてるぅ♡♡」
「あァー……さすが十代。しかもふたなり。射精の勢いがすごいな。フフッ、多すぎだろぉ……♡」
 鋭敏な分身を襲う強すぎる快感とふわふわとした気持ちのいい熱にジータは甲高い声を上げながら下半身を痙攣させ、濃厚な孕み汁をベリアルの男膣に向かって放出した。
 若いというのと、ふたなりの精液の多さ・勢いの強さは相手を絶対に孕ませるという意志すらも感じられる。
 目を閉じ、内側に感じる熱に浸るベリアルの陰茎からは透明な汁が出るばかりで射精までには至っていない。
 俗に言うメスイキ。半永久的な快楽を得られる方法。
 ジータはというと、射精後の気怠さに虚ろな目をしていた。が、幸せそうな顔だ。人のナカで果てる、というのはこんなにも満たされる行為なのかと。
「もっと……したい……」
 ジータの顔の両側に手をつき、目と鼻の先で悩ましげな表情をしているベリアルを見ていると終わりが見えない欲望が膨れ上がり、もっとこの人を犯したいという背徳的な感情が湧き上がる。
 それは未だにベリアルの内部に埋まっているジータを猛り勃たせた。一度淫楽に囚われたふたなりの性欲はなかなかに強いのだ。
 ほんのりと赤く色づくベリアルの首へと腕を伸ばし、引き寄せ、啄むようにちゅっ、ちゅっ、と唇を重ねる。
 先ほどまでは快楽の波に飲まれて気づかなかったが、落ち着いた今ならば分かることがあった。
 唇の手入れをよくしているのか、ベリアルのそれは潤いがあり、みずみずしい。ケアというケアをしてないジータは少しばかり恥ずかしさを感じてしまう。
 肝心のベリアルはというと、少女の積極性に目を丸くし、そのあまりの愛おしさに今度はうっとりと細めた。
「そうだな……あと一回くらいなら大丈夫そうだ」
 顔も体もよし、股間には相反する性器。偏ったものが好きなベリアルにとってジータとの性行為はなかなか楽しいものなのか、触れるだけのキスから喰らうように深い口づけを交わす。
 入院患者と看護師の淫らな夜はまだまだ続く。

   ***

 外からは校庭で体育の授業をしている生徒たちの賑やかな声が聞こえ、消毒液の香りが仄かに香る部屋は白が多く、清潔感に溢れる。そんな清らかな空間には似合わない卑猥な音がどこからか聞こえてくる。
 ──保健室。怪我をした生徒や体調が悪い者など、色んな生徒が訪れる場所。教室から離れ、安寧を感じさせるここに不相応な音はカーテンが引かれている内側が発生源。
 白いシーツに包まれた硬めのマットレス。そのヘッドボードに寄り掛かるのは赤い薔薇柄の服に白衣を羽織り、タイトめな黒いパンツに身を包む艶っぽい雰囲気を纏う秀麗な男だった。
 煤竹色の短い髪を逆立て、伊達眼鏡の向こう側に光る赤い硝子玉は胸元に抱いている人物へと注がれている。
 彼のシャツのボタンは全て外されており、隆起した胸筋が外気に晒されていた。男性にしては膨らんだ乳の片側、その中心に吸い付くのは紺色の制服を着た金髪の少女。
 ピンク色のヘアバンドをし、髪を緩めの三つ編みにしているこの娘の名前はジータといい、この学校の生徒会長をしている。
 彼女は男──保健室の先生であるベリアルに横抱きにされ、頭部を腕で支えられていた。
 目を閉じ、一生懸命に成人男性の乳首を吸う彼女は赤子のよう。
 母乳など出ないというのに小さな尖りを乳暈ごと口に含み、音を立てながらチュパチュパと吸い上げる彼女にベリアルは我が子を慈しむ母のような眼差しを向け、歪んだ痴態を目に焼き付けていた。
「授業中にこんなコトをしていていいのかな? 優等生」
 遅効性の毒を孕む声で揶揄するも、ジータの頭を支える腕は胸へと押し付けるように動き、残りの手は彼女の三つ編みの先を軽く弄る。
 ジータは気怠そうに瞼を持ち上げて嫣然えんぜんと笑う男を見るが、その瞳はどこか不満げだ。
「熱は本当にあるよ? でもこの熱は先生じゃないと治せない。それに……先生こそ私が欲しいって目をしているよ」
「フフ……。たしかにキミのココはずいぶんと苦しそうだ。熱くて、硬くて……。このままじゃ教室に戻れないな。……この状態でヌいてやろうか? キミ、オレの胸を吸いながらの授乳プレイが大好きだろう?」
 膝下まで隠すスカート。その脚の付け根部分。そこには女の子であるジータにあるのが不自然な膨らみがあった。
 ベリアルは異性の、しかも年下の少女相手だというのに躊躇いなく制服のスカートの中へと手を入れ、股間部分へと伸ばす。
 熱く湿った下着。その上からイキり勃った男性器を撫でた。その際に白い指先がショーツからはみ出した亀頭に触れ、ジータの体がベリアルの腕の中でビクッ! と跳ねた。
「男のオレに父性を感じ、胸で母性。親からの愛に飢えたキミが性欲と同時に愛を満たせるプレイでさ」
 ジータの母親は彼女が小さい頃に亡くなり、父親はジータが高校生になると同時に海外赴任。本当は連れて行きたかったようだが、ジータ自身が拒否をした。
 慣れ親しんだこの地を離れたくないと。それからは近所に住むカタリナという女性や、親友のルリアたちに助けられながらこうして暮らしている。
 そんな彼女がベリアルに堕ちるのは早かった。なにがきっかけだったかはもう覚えていない。
 ジータは愛と強い性欲を満たす、ベリアルはジータのいびつな性器での快楽を得るという互いにメリットがある関係を結んでいた。
 快楽に囚われた淫らな目をしたジータだが、今回は授乳手コキは気が進まないようだ。ベリアルの膝からベッドに下りると、縁に腰掛けた。
「なんだ。もういいのか?」
「まさか。ねえ先生。おしゃぶりして」
 十代とは思えない大人のオンナの顔をして、スカートの裾をつまむと恥ずかしげもなく下半身を露出する。もちろんこんなことをするのはベリアル相手だけだ。
 桃色のレースがあしらわれたショーツはとても乙女チックで可愛らしいが、その布を押し上げ、顔を出しているモノは赤黒く、グロテスク。
 ビクビクと震えながらカウパーで先端や竿を濡らす長大を目にしてベリアルは己の唇を舐めると、満足そうに「オーケイ」と答え、長い脚をベッドから下ろしてジータの前に膝をついた。
 同年代の男子よりかも立派であろう肉棒を目の前にベリアルは熱い息を吐き出し、下着に指を引っ掛けると、ジータは軽く腰を浮かせて脱がしやすいようにした。
 脱がされていく濡れたショーツは太もも辺りで止まり、現れた滾りにベリアルの赤いビー玉が熱を孕む。
 ふたなりであるジータにはもちろん女の子の性器もついているが、大きめの睾丸によって今は見えない。
 個人的に──この学校にいる男性の中で一番容姿が整っていると思う男の熱視線に、ジータの加虐的な欲望が内側から溢れる。
 ベリアルと不健全性的行為を始めてから知った自分の一面。美しいもの……ベリアルを自分の手で穢したり、その綺麗な顔が快楽に歪むのを見てジータは興奮を覚えるのだ。
 日焼けとは無縁の白い手が怒張へと伸び、まん丸の睾丸をマッサージしながら残りの手は陰茎を支える。太い杭の熱が彼の少しばかり体温の低い手へと奪われるも、逆にそれが気持ちいい。
 根本からカリ首へと舌で舐められ、ぬめった快感にジータの呼吸が詰まる。さすが男女問わず気の向くまま喰い、喰われの関係を持つベリアルだ。
 鈴のような形をした先端、狭隘きょうあいな穴を指で引っ掻いたり、愛液を塗りつけたりしながらのキスを織り交ぜた愛撫にジータの腰が悩ましげにうねる。
 ああもどかしい。舌で全体を唾液まみれにされるのもいいが、早くその喉奥に突っ込み、その締め付けを味わいたい。頬の柔らかい場所に押し付けたい。
「んっ♡ もうそれはいいからっ♡ 先生の喉で扱いてっ!♡♡」
「性急だなぁキミは」
 堪え性のない生徒にしょうがないなという声音で返事をしつつも、ベリアルは大口を開けてジータの巨砲を一気に喉の奥までずっぷりと咥えた。口の中を満たす唾液が竿全体に絡みつき、その生温かさにジータは重く湿った息を深く吐き出す。
 キュウキュウと奥がきのこの傘を締め付けるのを堪能しながらジータは綺麗に整えられた指先でベリアルの両耳に触れた。
 いい子いい子、と言うように優しく撫で、揉む。ベリアルも耳を弄られて悪い気はしないのか目を閉じると、抽送を開始した。
 片手の親指と人差し指で作った輪で根本付近を固定し、頭を上下させる。ゴボッ、ボジュッ、と淫猥な音を立てながらブロウジョブに徹し、ジータを絶頂へと追いやる。
 美形の男が時折こちらに濡れた目を向けながら美味しそうに性器を頬張る姿は見ていると胸に熱いものが込み上げてくるようで、ジータの呼吸は徐々に荒くなり、顔も茹だってきた。
「っ、ふぁぁ……♡ 先生の口って本当に最高……♡ もう出るからごっくんしてぇッ!♡♡」
「ごッ、おえっ♡ おごっ、ぉ♡」
 とろとろに蕩けた雌顔をしたジータは天井を向き、真っ赤になった顔で喜悦の涙を流しながらベリアルの顔を掴むとその場で立ち上がり、無遠慮に腰を打ち付けた。
 彼女の様子からしてイラマチオによる口内射精でフィニッシュを迎えることは予想できていたものの、やはり苦しいのかベリアルの端正な顔が歪むが、サディストであり、マゾヒストである彼はすぐにジータとお揃いのかんばせに変わった。
 口をオナホ扱いされ、乱暴にされているというのに彼はどこか嬉しそう。
 水気のある音が大きくなり、最後に喉を抉る勢いで極太の雄肉を押し込むと限界まで膨らんだ肉槍から凄まじい勢いで熱い奔流がほとばしる。
 受けとめきれなかった白濁が逆流し、ベリアルの口の隙間から粘っこい液がだらり、と漏れた。
「はぁっ♡ はぁ……♡ 射精気持ちいい……♡♡」
「んっ、んぐっ……」
 意識をこことは違うところに飛ばし、射精の快感に感じ入るジータをよそにベリアルは流し込まれたザーメンを難なく胃へと下していく。その様子からして彼の性行為への慣れが見て取れた。
「はっ、ンっ……♡ あっ、あっ、ぁ♡ 顔ズリさいこぉ♡」
「こんなことして楽しいのかねぇ……」
「すっごく楽しい♡ それに綺麗なものって汚したくなりませんか? 先生の顔が私の精液でベトベトに汚れるの、ゾクゾクしちゃう♡」
 程よいところでジータは腰を引くと汚濁とベリアルの唾液が混ざった濃厚な糸が伸び、その卑猥な架け橋ごとベリアルの顔へ粘り液の残滓をぶっかけた。
 それぞれのパーツが完璧な位置に置かれた白い顔は濁った白に汚染され、興奮材料へと早変わり。ジータでなくても健全な性欲を持つ者ならば誰でもそうなるだろう。
 精液を全体に塗り広げるように女の子ペニスをにゅこ♡ にゅこ♡ とベリアルの顔に押し付ける。
 みんなからは憧れの感情を向けられるジータの変態的欲望。それを剥き出しにしてぶつけられ、ベリアルは呆れを口に出すも、決して彼女を否定したりはしない。
 ジータが満足するまでされるがまま。
 陶磁器のような肌はとてもなめらかで触れているととても気持ちがいい。
 ジータの淫汁によってべしょべしょに濡れた顔を見ているとこの先をしたいという欲求が鎌首をもたげ始める。
 彼のアヌスは柔らかくて、腸壁が肉棒にしっとりと絡みついてきて、排泄器官というより性器と言ったほうが正しいレベルのもの。
 ベリアルの胎内に侵入したときの記憶が再生され、今ここでしてしまおうか……とジータが思ったとき、保健室のスライドドアが静かに開かれ、控えめな音が耳に届く。
「……あれ? 先生いない……?」
「ベリアル先生は今いないよ。どうしたの?」
「生徒会長!? どうしてあなたが……」
「ちょっと体調が優れなくて」
 ベリアルが見えない位置からカーテンを小さく開け、ジータが姿を現す。さすがに精液まみれの顔をしたベリアルを出すわけにはいかないし、ここでナニをしていたのか知られるわけにはいかない。
 カーテンの向こうで息を殺しすベリアルは気づかれるかもしれないというスリルに今ごろ顔を蕩けさせているだろう。
 そう思いながらジータは部屋にやってきた男子生徒に花のかんばせを向けながら平然と嘘を告げれば、生徒は驚きの声を上げた。
 ジータは彼のことを知らないが、男子生徒はジータのことを知っていたようだ。
 なぜここにいるのか。当たり前の問いにみんなの憧れの優等生の顔を崩さずに答える。
 現に体調不良でここを訪れたのは本当だ。体の内側から熱くて熱くて仕方がなかった。
 今はベリアルによってその熱は引いたが、糸を引くようにその余韻は残っている。
「え、えっと、大した用事じゃないんです! 俺の方こそ寝ていたのに起こしちゃったみたいでごめんなさい!」
「あっ……」
 妙に乱れた髪型と制服は寝ていたから。艶冶えんやな雰囲気を体調不良……熱があるから。と生徒は勘違いし、どこか慌てたようにして部屋を去ってしまった。
 あまりの早さにジータがぽかん、としていると、背後からカーテンを開く音。
「フフ。あまりのウブさに愛おしく感じてしまうな」
「どういうこと?」
 白露の化粧を施されたベリアルがジータによって汚された伊達眼鏡を外しながら不敵に笑うも、ジータは意味が分からずに胡乱げな瞳を向けるばかり。
 ベリアルと一線を超えた関係を持ちながらも恋愛方面は未だに処女というアンバランスさを彼女は抱えていた。
「あの子には今のキミは刺激が強すぎたようだ。可愛いねぇ」
 ジータの問いにはあえて答えず、ベリアルは窓側に設置されている流し台へと向かい、蛇口を捻って顔の汚れを落とし始めた。
 汚水がシンクへ落ちる音を聞きながらジータはタオルがしまってある場所から一枚取り出すと、彼の隣に立って渡した。
「アリガトウ。……どうかした?」
 若干崩れた髪型に濡れた顔、その輪郭に沿って落ちる雫。平時と同じ状態に戻った少女を見つめる赤い尖晶石にジータは水も滴るいい男、というのはまさしくこの男のための言葉なのだろうとぼんやり思う。
 実際ベリアルは非常にモテる。男女問わずちょっと引っ掛ければすぐにホテルへ直行。セフレも途切れたことがないと前に言っていた。
 ジータもその中の一人。彼に恋慕する生徒は多く、ジータとベリアルの関係を知れば羨ましがる人物はたくさんいるだろうが、ジータ自身は彼に恋愛感情を向けたことはない。
 互いにメリットがあるからこそ続いている関係。顔もよし、体もよし、声もよしのベリアルだが、その性格だけは無理だとジータは思っていた。
 これで性格もよかったら……とは思うが、そもそも性格がよければこんな色情魔にはならないのでこの関係自体が生まれないだろう。
 先生と生徒。大人と子供。露見すればどちらが社会的に抹殺されるのかは言うまでもない。
「ねえ先生。今日先生の家に泊まりにいっていい? 明日休みだし」
「オーケイ。夕飯ご馳走するよ。なにが食べたい」
 周りの助けを得ながら生活をしているが、家には誰もいない。外泊を咎める人もいない。仮に聞かれても友達の家に泊まりに行っていたと言えばいい。
「うーん……。しっとりと柔らかくて、口にすると脳髄までビリビリと痺れるくらい濃厚なお肉が食べたいなー」
 タオルで顔を拭くベリアルの横に寄り添うように立ち、片手は臀部へと伸びる。校庭から二人の姿が見えてもただ隣同士に立っているだけにしか見えない。
 保健室の先生と優等生。その向こう側でいやらしいコトをしているなど誰が思うか。
 腹筋が綺麗に割れ、全体的に筋肉質だというのに白衣と細身のパンツ、下着に包まれている双丘はまろい。そして女性であるジータよりも張りがあって柔らかかった。
 今は布にガードされて触り心地は硬めだが、片方の尻たぶを円を描くように撫でたのち、孔がある場所へと触れればベリアルでなくてもジータの“肉”がなにを指しているかは明白。
「少しずつオレに似てきたな。キミは」
「そうかもしれないね。じゃあまた夜に」
 初めて会ったときは性的なことに嫌悪感を抱いていた少女。周囲には気丈に振る舞っているが、愛に飢えていた彼女が父性・母性・快楽をくれる魔性の男に堕ちないわけがなかった。
 ベリアル限定ではあるものの、今では積極的になったことにどこか嬉しそうに悪魔は微笑み、ジータも少女らしからぬ幽艶な笑みをベリアルへ送ると、淫欲の園を去るのだった。

   ***

「──はっ!」
 ふっ、と意識が浮上し目を覚ますと、その勢いのままにジータは上半身を起こした。暗かった部屋は窓から朝日が差し込み、扉の向こうでは生活音が微かに耳に届く。
 部屋に置いてある時計を見ればいつも起床する時間より少しばかり遅く、このままではルリアが起こしに来るだろう。
「……ん?」
 ふと、股間部分に違和感を感じ、掛け布団を捲って見ればジータは絶句した。それを認識した途端ついさっきまで見ていた淫夢を思い出し、餌を得ようと口を開閉する小魚と同じように唇を動かす。
 言葉が出ない。欲求不満の果てに淫らな夢を──しかもベリアル相手で性欲を満たす夢を見て夢精してしまうなんて!
 本当にあれは夢だったのだろうか。夢にしては肉の感触はリアルで肌を合わせて感じた熱は温かかった。
 彼も堕天司とはいえ天司。ミカエルたちと同じように夢枕に立つことができる。もしかしたら夢の中で本当に姦淫していた?
 彼に聞けば分かることだが、ベリアルが出てくる夢を見たなんて言いたくないし、言うつもりもない。
「そろそろルリアも来るし、考えるのやめよ……。それよりも、はぁぁぁ……」
 最悪。ひたすらにそれに尽きるが、今ここで考えても仕方のないこと。ジータは深い深いため息をつくと、処理のためにベッドを出るのだった。