悪魔召喚したマリシャスジータちゃんに喰われる不破くんの話

「これでよし……っと。準備オーケイだぜ、ファーさん」
 それはある日の夜。月が夜の世界を明るく照らす日だった。大人からも恐れられる不良の不破大黒の自宅、その敷地内にて。家から少し離れた場所で大きな魔法陣を描き終えた煤竹色の髪をした少年は織部明彦といい、不破とは小学生以来の付き合いである。
 彼は不破の命令で魔法陣を描く肉体労働をしていたのだ。それが完了したことを自宅の縁側に座り、本を読んでいた不破へと報告する。
 そんな不破の手には表紙、裏表紙ともに真っ黒な本があった。中身は黒魔術や悪魔召喚などが記されているいわくつきの古びた洋書。
 彼も思春期である。そういったものに少々興味がそそられてもおかしくない年齢だ。
「遅い」
「そう言ってくれるなって。この図面通りに描くの大変だったんだぜ?」
 織部を一瞥すらせずに不破は文章を読みながら吐き捨てる。これは彼らなりのコミュニケーションなので織部は特に気にすることもなく、手に持っている図面をひらひらと風に揺らしながらどこか嬉しそうに笑う。彼にとって不破に必要とされるのはこの上ない幸福なのだ。
 目的のものが完成したということで不破は魔法陣の前へ。成功する確率はほぼゼロだとは思うが、と思いながらも呪文を唱え始める。
 海外の言葉をすらすらと口にする彼の目は好奇心がありつつも、どこか冷めていて。気持ち半分で唱え終えれば──当たり前のようになにも起きない。むなしく風が吹き、不破の柔らかな銀髪をさらっていくだけ。
「あー……。まあ、やっぱりそう簡単にいくわけないよな。ファンタジーの世界じゃあるまいし」
「……下らんことに時間を浪費した」
 失敗が目に見えて分かってはいたものの、それ以上に好奇心が勝っての行動だ。不破はくるりと体を反転させるとそのまま家に向かって歩き出す、が。
「っ!? なんだ、魔法陣から光が……!? ファーさん!」
「っ……!」
「クソッ! なにも、見えねぇ……!」
 突如として魔法陣が反応を示し、闇色の光が天を突き抜けんばかりに迸る。陣の中心でなにかが現れようとしてる。中心から外側へと向かって強まるおどろおどろしい気配を纏った闇のオーラは不破と織部を包み込み──なにも見えなくなった。

   ***

「…………ここ、どこ?」
「…………」
「…………」
「ルシファーにベリアル? でもなんか雰囲気違うし……」
 光が収束すると、魔法陣の中心にいたのは短く切り揃えられた銀髪の少女。全体的に血色が悪く、目は織部と同じように赤い。耳にはチョーカーと繋がるピアスをしており、丈の短いキャミソールからは谷間がくっきりと見えていた。
 少しでも屈んだら後ろから中身が見えそうなほどのミニスカートから伸びるほどよい肉付きの太ももの片方は、網タイツを穿いていたりと全体的に攻撃的な印象だ。
 へそ出しスタイルの小悪魔美少女。見た目だけでもかなりのインパクトがあるのだが、ひときわ目を惹くのはオーバーサイズの上着に絡む深紫の羽根のファーか。まるで羽根の一つひとつが意識を持っているかのように揺らめき、惑わす。
 不破と織部のクラスメイトである田尻未来に顔・声が妙に似ている全身黒尽くめの少女は、少年たちを見てなにやら呟くと周囲を見渡し、最後に足元の魔法陣を見たことでなんとなく状況を察したらしい。ひとり「なるほど」とごちると、固まったまま動けないでいるふたりに明るい口調で声をかける。
「えーっと、私は君たちに喚ばれてこの世界に来たのかな?」
「…………ファーさん──オレの隣にいる人が悪魔召喚の儀式を行って現れたのがキミだ。だからその認識で間違いない」
「へぇ? やっぱりこの世界でもファーさんって呼ぶんだ」
「は……?」
「ううん。こっちの話」
「女の悪魔にその格好……アンタはサキュバスかなにかか?」
「サキュバス……。ふふっ! いいねそれ! で、偶然とはいえ私を喚び出したファーさんはなにを望む?」
 織部に向いていた少女の視線が不破を捉える。月の光を反射して爛々と輝く血のまなこはどこか寒気がするほどにおぞましいものだが、不破は臆することなく普段と変わらぬ様子で告げる。
「……異界の悪魔。俺はお前の持つ知識を望む」
「知識……やっぱりあなたは“ルシファー”なんだね。悪魔と認識する存在を前にして、普通の人間なら力とか、俗っぽいことを望むと思ったけど。異常なほどの知識欲。……まあ、いいよ。私の知識でよければいくらでも」
 少女の発する言葉の節々にルシファーという不破ではない誰かの存在が垣間見える。不破の知るその名前は天から堕ちた天使、地獄の王である者の名前。そもそも彼女が本当に悪魔なのかも不明だ。
 まあ追々聞いていけばいいと不破が考えたところで少女の姿が一瞬で消え、ようやく彼女の存在を認識したときには両頬を包まれ口づけをされていた。
 かさつきのない潤みを帯びた唇。ほんのりと温かい感触は彼にとって初めての経験。
 さすがの不破も悪魔の唐突な行動に瞠目し、体が動かない。まさに人外の動き。
「契約成立ってやつ? 私の名前は……──マリシャス。あなたは?」
「不破大黒」
「不破くんね。そっちの君は?」
「……織部明彦」
「織部くんと。それじゃあ二人とも、これからよろしくね?」

   ***

 こうして始まったマリシャスとの日々。彼女は不破の周囲をふわふわと浮遊しながら移動するが、認識阻害の魔法を使っているとかで不破と織部以外には見えないので騒ぎになることはなかった。
 マリシャスがいた世界は不破からすればファンタジーの世界だったのか、敵対する存在もいない平和な世界を思いのほか満喫している様子。
 この世界のルールを知ろうと不破に教わり、また、異世界の話を彼にしたりと関係性は良好。ただし、不破は纏わり付くマリシャスに対してウザったいという感情はあるようで何回も彼女に訴えるが、逆効果。
 だが彼女も本気の拒絶をしていないのを見極めている節はあり、不破とのやり取りそのものを楽しんでいた。
 しかし彼女は人外──“化け物”である。見た目は少女でも中身は違うのだ。それを不破や織部が再認識するきっかけになった出来事があった。
 とある日の夕方。と、いっても夕日は沈みかけ、夜の帳が徐々に下りてきている時間帯。不破と織部は周囲を田んぼに囲まれた道を歩いていた。不破宅への帰路。織部がベラベラと一方的に喋りながらだが、いつものことである。
 ちなみにマリシャスは不破に背後から抱きつき、彼の肩口から胸に向かって緩く両手を回しながら浮遊していた。腰に巻かれた長いベルトの余っている部分がゆらゆらと尻尾のように揺れ、まるで悪魔の尻尾のようにも思える。
 すると前方から不破たちとあまり変わらぬ年齢の少年の集団が歩いてくるではないか。その手には釘バットや鉄パイプなど物騒な物を持っており、明らかにヤバい雰囲気を醸し出しているが不破も織部も怖気づくことなく歩みを進める。
 衝突するのは必然。互いの顔がよく見えるくらいの距離で自然と歩みは止まり、集団の頭が話す内容は──簡単に言えば織部と不破を潰すこと。ふたりは恐れられることも多いが、その分敵も多いのだ。なにせどちらかを潰しただけで格が上がる。不良界隈ではそれほどの知名度だ。
 かといって相手をするのも面倒だ。そう考えた不破はマリシャスに向かってひとつの命令を下した。
「マリシャス。あいつらを消せ。目障りだ」
「え〜? 私がヤるの?」
 背後に漂うマリシャスに向かって声をかけるも、認識阻害魔法を使っている彼女の姿が見えるのは不破と織部のみ。なので相手の集団からすれば不破は不可解な独り言を言っている風にしか見えない。
「少しは働け」
 マリシャスは甘えるように不破の頭部を谷間に挟むように抱きしめ、顎を彼のふわふわの銀髪に乗せている。一般男子ならば妖しい雰囲気に満ちた危ない系美少女の積極性に平常心を保っていられないが、不破は極めて淡白で性に興味がないのか淡々と告げるのみ。
 織部も発言したりせず、成り行きを見守るようだ。悪魔を自称するマリシャスの力がどれほどか気になる様子。
「おい! 不破! テメェさっきからなにを、」
「……オーケイ。じゃあご主人様の仰せのとおりに。……えぃっ♡」
 刹那、不破と織部の前に広がったのは異様な光景だった。一瞬で消えたのだ。マリシャスが指を鳴らすと少年たちの足元から青い炎が噴き出し包み込み、悲鳴や塵ひとつすら残さずに文字どおり消失した。
 まさに人ならざる者の力。
「…………俺は、ここまでやれとは言ってない」
 不破の消せは痛めつける程度のニュアンスだったが、まさかこんなことをしでかすとは。殺人をなんの躊躇いもなく、まるで息を吸うように行うのは意外だったが人外という時点で予想の範囲内であったため、不破は今の今まで少年たちが立っていた場所を見つめながら告げた。
「え〜? 不破くんが消せって言ったんじゃない」
「アンタ……絶対分かってて殺っただろ」
 マリシャスは不破から離れるとそのまま彼の眼前に逆さまに浮遊して軽薄な笑みを貼り付けながら揶揄し、その反応から織部はすかさず呟く。しかしマリシャスは言葉では肯定も否定もせずに楽しげな微笑を浮かべるばかり。それが逆に暗に答えを示していた。
「ねえ不破くん。私のこと怖いと思った? でも安心して。あなたと織部くんにこんなことはしないから。誓ってもいい。私はこの世界のあなたたちがどんな人生を歩むのかすごく興味があるの。それを見届けたいと思ってる」
「お前は時折別の世界にも俺や織部がいたようなことを言うな」
「ふふっ! 実際にいるんだもの! 顔はそっくり。でも立ち振る舞いは──年齢的なものかな。違いはあるけど、君たちが大人になるにつれて似ていくのか……知りたい」
 マリシャスの白い手が不破の頬を包み込み、真紅の瞳は不破を見るも、彼を通して違う誰かを思い出しているのは明白。
「なあ……それよりもコレ、ファーさんに迷惑がかからねぇよな?」
 そんな不破とマリシャスの会話に入ってきたのは織部だ。不破に対して特別な感情を抱いている織部からすれば彼と彼女のやり取りは面白くない。そもそも常日頃からベタベタとし過ぎだ。
 非難するような口振りにマリシャスはその場で半回転。逆転の世界から織部と同じ世界に戻ると、なんの心配も要らないとウィンクしてみせた。
「ケーサツ? っていうのも心配しなくていいよ。死体も、燃えた痕跡もないから。行方不明扱いで終了。仮に燃えたことが分かっても真実にたどり着くことはない」
 薄暗く、周りには誰もいない。防犯カメラなんてものも当然ない。不破に繋がる証拠はなにも残っていないのだ。警察は彼にたどり着けない。仮に面倒なことになったとしても、マリシャスならばいくらでも対処のしようはあるのだから。

   ***

「っ……どけ」
「だ〜め♡ ほら、私サキュバスだから定期的に人間の精気を吸わないと生きられなくて。絶頂時の人間の発する性のオーラが必要なの」
 それは月が空高く輝く日だった。不破の部屋に置かれているベッドに彼は押し倒され、マリシャスが腹部に馬乗りになっていた。見た目から分かるように彼女の方から襲ったのだ。
 不破は不愉快だと冬空の瞳を細めながら低い声で言うも、マリシャスからすれば子猫の威嚇。思い出したようにサキュバスだからと告げるその口調はこのやり取りさえも楽しんでいた。
「ならば俺である必要はない。どこぞの男でも引っ掛けてくればいい」
「え〜、不破くん酷いなー。私から別世界の知識をいっぱい搾り取っておいて、その対価はないなんて。不破くんに教えていないこと、まだまだあるけど……もう私は要らない?」
「…………」
 性行為による精気が必要であれば自分である必要はないと不破はどこまでも冷静に言うが、その程度で折れるマリシャスではない。なにがなんでも不破とするという意思でさらに言葉を紡げば、彼の顔は忌々しげに顰められる。
 やはり彼の知識を求める欲望は底なしだとマリシャスは艶然と笑うと、半身を折り、不服ながらも受け入れることを決めた彼の顔を両手で包む。至近距離で見つめる彼の目はずっと見つめていたいくらいに美しいが、今はほどほどに留め、形の整った唇を動かしてさらに言葉を紡ぐ。
「不破くんは誰かとエッチしたことある?」
「性行為に興味はない」
「そう言うと思った。なら……初めてだし、いっぱい気持ちよくしてあげたいから、魔法をかけてあげるね。さあ──私の目を見て? ……アナゲンネーシス」
「ッ……!?」
「出力は下げておいたけど、病み付きになったらごめんね? フフ……」
 マリシャスのレッドスピネルが輝いた瞬間、不破の様子が一変する。熱を持ったように朱が差す頬に苦しげな呼吸。体温も上昇し、自らの身体に起きた状態異常に困惑するように青星の瞳が揺れる。
「今、不破くんには“魅了”をかけたの。媚薬のようなもの、と言えば分かりやすいかな。身体が疼いて仕方がないでしょう? エッチな気分が止まらなくて……。うふふっ。なんの耐性も持ってないし、本当にあなたって“ただの人間の男の子”なんだね」
「貴様ッ……!」
「あー、もう無理。そんな目で見つめないで。可愛すぎる。不破くんはただ寝転がっているだけでいいよ。私が全部するから。快楽だけをあなたにあげる」
 圧倒的上位者ゆえに不破のささやかな反抗の眼差しさえ可愛らしいものにしか思えない。マリシャスは獲物を前にいやらしく、ねっとりと見せつけるように舌なめずりをすると無防備な不破の唇に吸い付き、唾液でぬるついた舌を容赦なく割り入れる。
 口内の熱を感じながら不破というご馳走を味わうように丁寧に歯列をなぞれば、彼の歯が無体を働く舌を噛もうとするが力が入らないのか甘噛みにしかならない。
(ルシファーと同じ顔をしてるけど、本人の幼さも相まって本当に可愛い……。彼のような力を持ってないから私にされるがままだし。は〜♡ 理性保てそうにないかも)
 濃厚接吻をしながらマリシャスは両手を不破の頭を抱えるように回す。その際に腕部分が彼の耳を塞ぐ形になるので、キスの卑猥な音でも少年を攻める寸法だ。
「っ、ぐ……! ふーっ! ぁ、あ……!」
 絡みつくように不破との距離をさらに詰めたマリシャスはギュッと目を閉じて快楽になんとか耐えようとしている少年をじっくりと見つめながら、舌愛撫に熱中する。逃げようとする舌を捕まえ、フェラをするように吸いながら、もはや顔面を彼の口にうずめる勢いで攻め立てる。
 ちゅるっ、ちゅるっ♡ ぷちゅっ♡ くちゅっ、クチャッ♡♡
「ン、ふ……! ンン゛ッ゛……!! ング……ゥッ……!!!!」
「あ、ごめんごめん♡ つい熱中しちゃった♡」
 硬口蓋の襞を一本いっぽんなぞり、舌の裏側まで。不破の全てを知りたいと本能で行動していたマリシャスは、人間である彼には呼吸が必要というのをすっかりと失念していた。
 口はもちろん鼻呼吸も阻害してしまっていたが、限界を迎えた彼が思い切りマリシャスの髪を鷲掴み、後ろに引っ張ることでようやく気づき、淫らな女は上体を起こした。
 伸ばされたままの舌先からはどちらのものか分からぬ透明な糸が垂らされ、不破の肌に落ちると流れていく。
 普段の彼ならば不快だと眉を顰めるところだが、今は咳き込みながら肩で大きく呼吸をしていた。薄っすらと涙目にもなっており、本当に目の前の少年は自分からすればか弱い人間なのだとマリシャスは思い知る。
「落ち着いたかな〜? でも気持ちよかったでしょ? その証拠に不破くんのココはガッチガチ♡ 興味ないって言ってたけど、元気いっぱいの男の子で安心したよ」
 不破に馬乗りになったまま、片手を後ろへ。膨らんでいる股間部をなでなで♡ すれば布越しに感じる熱塊は震え、不破の整った顔が快楽に歪む。
「ごほっ……! ふざけるな……! お前の妙な術のせいだろう!」
 支配欲がマリシャスの胸を埋め尽くし、子宮から全身に熱が広がっていくようだ。彼の乱れる姿をもっと見たい。どのような声で啼くのか。ナカの具合は? 優しくしてあげたいという気持ちと、手酷く抱いて蹂躙したいという欲がせめぎ合う。
「怒らない怒らない♡ さ〜て、脱ぎ脱ぎしましょうねぇ〜」
「ッ……ぐ……!」
 不破から下りるとマリシャスは慣れた手つきで不破の衣服を脱がしていく。まずは上半身から。服が脱がされると少しずつ彼の白い肌が晒され、最後の一枚が床に放り投げられるとシミひとつない白磁の肌が現れた。
 まだまだ成長途中の肉体。織部に比べると筋肉の少ない身体は男なので少々硬いが、なめらかな肌の触り心地は最高。魅了の影響でしっとりとした肌はマリシャスの手に吸い付き、軽く撫でただけで過剰に反応する身体に彼女はほう……、と熱い息を吐き出す。まるで自身も魅了にかかってしまったように。
「ッン……! くっ……やめ、ろ……!」
「ふふ。エッチなことあんまり好きじゃないみたいだけど、ここは娯楽の少ない田舎だもの。きっと暇潰しの一貫としても楽しめるようになるよ」
 少年の平らな胸に付いている女と同じ飾り、そのひとつを軽く指で弄りながら妖艶に笑うと、マリシャスは彼のボトムに手をかけ、無機質な音とともにチャックを下ろす。
 黒い下着に包まれた陰茎は大きく膨らみ、先端部分が触れている場所周辺の布は先走りで湿っていた。
 口ではああ言っても身体は健全な男の子でよかったよかった。
 愛おしそうに目を細めると、もう待てないとボトムや下着を乱暴に下ろす。まろび出る屹立は腹に向かって反り返り、亀頭からはとろとろと透明な体液が溢れて止まらない。
 マリシャスは彼の膝辺りで絡まっている布を無視して伏臥位の体勢になると、犬のように息を荒くしながらも片手を肉棒に添え、裏筋に押し付けるようなキスをひとつ。
「ぅぐっ……!? っ、あ……! はな、せ……っ。ぁ……ああ……ッ……!!」
「不破くんのおちんぽおっきぃ〜♡ 見てるだけで子宮うずうずしちゃう♡♡ ん、ちゅっ……硬さも……ちゅるっ、ちゅ、あって……♡」
 手を支えにしながら裏筋を重点的に舌を伸ばす。火傷してしまいそうなくらいの熱源の硬さを確かめるようにぬめった舌が這いずり回り、フェラをされたことのない不破は投げ出されている両手でシーツを掴む。皺の刻まれ具合から彼がどれほど感じ、声も抑えているのか伺える。
 童貞ペニスに絡む濡れた舌によってすぐに砲身はぬるぬると卑猥に輝き、ビクッ! ビクッ! と震えるものだからマリシャスは楽しくなってさらに攻めの手を強めた。
 マリシャスの手が蟻の戸渡を伝って窄まりへ。その皺をほぐすように指先で触れながら、マリシャスは人差し指をゆっくりと沈めていく。見た目は堅く閉ざされている菊門も魅了効果で柔らかくなっており、ずぶずぶと指は前進する。体内ということで肌より熱く、性熱を感じながらマリシャスは場所がすでに分かっているようにとある部分を押せば、不破の腰がしなる。
「ッ……!? まて、そこはッ……! っひ!? なんだ、これは……!! うぅ゛ッ……!」
「男の子はねーぇ、おちんぽだけが気持ちよくなれる場所じゃないんだよ? なんとお尻の穴の中に前立腺っていう場所があって、すごいんだって♡ ほら、トントンっ♡」
「あ゛っ……! ぐ……、はっ、う゛ぅう゛う……!!」
 リズミカルに快楽スイッチをタップし、不破は白い喉を晒しながら仰け反る。白い肌ゆえに顔の熱が首元まで達しているのがよく見え、淡白な人間が未経験の快楽に酔う姿にマリシャスは艶冶な微笑みを浮かべ、さらに彼を追い詰めるべく行動する。
「あ〜んッ♡ ぢゅっ、ずずっ♡ ん〜♡ ンッ、ンッんッ……♡ ふふっ、お尻ほじられて……ちゅぷ、コッチも弄られて、不破くんはどっちでイクんだろうね♡♡」
 ぷっくりと膨らんだ先端を大きな口を開けて頬張り、舌でカウパー液を舐め取るようにしながら時折鈴口に舌先を突っ込んでほじったりとやりたい放題。
 さらには指でナカの快楽ボタンを何度も押し上げて不破は苦しげな声を上げながら身をよじるが、マリシャスからは逃げられない。
「ク……ソッ……! あっア゛ぁぁ゛ぁッ……! ッ……、ハ……あ゛っぁ……!」
「その嬌声、すっごくイイ……♡ 綺麗な顔も快楽で歪んで素敵……♡ フフッ、もう限界かな? 不破くんの恥ずかしいところ、射精したいってドクドクしてるよ……♡」
 ぎゅ、と握られるシーツと触れているペニスの様子から不破の限界を知ったマリシャスは一度絶頂をさせようと、改めて男根を頬張るとそのまま一気に喉奥まで咥え込む。
 唾液たっぷりぬるぬる口オナホで全体を包み、口内の温かさを感じさせながら舌で裏側を丁寧に愛撫し、喉を締めてやれば分かりやすく少年は呻く。
 頭を前後に振り、下品なフェラ音を立てながらマリシャスは楽しそうに攻め、また、その手を緩めることなく逆に強めていき不破の精液を搾り取ろうとする。
 ジュブッ! ズジュルルルルッ!! ぐぽっ、グジュッ!!
「ッ!? っ……ぐぅッ……!!!!」
「んっ……♡♡」
 不破の下半身が跳ね、ポンプに押し出されるように小さな穴から粘着質な白濁が放出された。半分ほど咥えていたときに射精されたので直接喉奥ではなく、口の中に吐き出される濃厚な精子。
 それをマリシャスは難なく飲み込んでいく。一滴も零さぬように喉を忙しなく上下させ、飲み下す。
 彼が精を処理する可能性があるといえば朝勃ちの生理現象くらい。だがそれも放置が常。
 不破と行動をともにしてそこまで長くはないが、彼がヌいているところを一度も見たことがないし、マリシャスが姿を消してこっそり観察している織部と比べても朝勃ち自体が少ない。
 まともにヌいていない濃厚ザーメンもいいけど、定期的に搾精して作られたばかりの白濁液も味わいたいな。
 淫らな妄想をしながらマリシャスはようやく終わった射精に口を離すかと思いきや、尿道に残っている残滓をお掃除してからやっとおしゃぶりをやめた。
「ハァ〜〜♡ 不破くん、いっぱい射精たねぇ♡ 美味しかったよ」
「食事は……もう済んだだろう。さっさと消えろ……」
 不破も射精したことで落ち着いたのか、相変わらず身体は動かせないようだが目を閉じて力なく吐き捨てる。しかしマリシャスが大人しく言うことを聞くわけがないので、
「やだやだ♡ まだ前戯だよ? 私、本番したくて──うふふふっ、アソコが勃起し過ぎて痛いくらいなの」
「は……?」
 マリシャスの発言に違和感を覚えた不破は開眼し、己の足の間に膝立ちになっている少女を見る。するとミニスカートを押し上げる妙な膨らみが見えた。女にはないはずの。
「その前に下も脱いじゃおうね」
 小悪魔な笑みを浮かべるとマリシャスは中途半端に脱がされたズボンと下着を完全に脱がせ、不破を全裸に剥く。陽根は萎えかけているが、今からすることには関係ないのでマリシャスは気にせず今度は「私も脱ぐね」と衣服を脱ぎ捨てていく。
 服に隠された血色が悪い肌が露わになり、見た目からして柔らかそうな乳房の飾りは凝り固まっている。キュッとくびれた腰、その下半身を隠すスカートと下着を下ろせば。
「な……!」
 少年は絶句する。下着を脱いだマリシャスの足の間には不破よりも巨大な逸物が我慢汁を滴らせながら首をもたげているではないか。
「お前男だったのか? だがその乳房は……」
「ふふっ。私ね、女の子だけど男の子の性器もあるの。“ふたなり”ってやつ。私の世界だと割といたけど、この世界だと珍しいと思うよ」
「両性具有……。聞いたことはあるが実際に目にするのは初めてだ。陰嚢の奥に女性器があるのか?」
「おー、さすが不破くん。こんなときでも興味が尽きないんだね。うん、あなたの言うとおりだよ。見えるかなー」
 セックスの最中だというのに不破の興味の強さにマリシャスは感心しながらも、重たそうにぶら下がる陰嚢を両手で持ち上げ、その奥に隠された女体の印を見せてやる。
 男体の証は雄々しいというのに、女性器は桜色に色づいていて初々しささえ感じる。しかし使うのはそこではない。マリシャスは見せるのはおしまいだと手を離して正座をし、不破の下半身を自らの太ももに乗せて勃起ペニスを彼の萎えたままの肉槍に押し付けた。
「……なにをしようとしてる」
「男同士──私は女だけど、のセックスはお尻を使うの。本当はもっと慣らさないといけないんだけど大丈夫、魅了のおかげで柔らかくなっているから」
「…………」
「抵抗しないんだ?」
「抵抗しようにも身体が思うように動かん。たとえ動けたとしてもお前相手では意味がない。……さっさとしろ」
 フイ、と顔を横に背け吐き捨てる不破は確かに先ほどと違って抵抗する様子はない。彼は無駄なことが嫌いだ。冷静になった今、どう足掻いても覆らぬ事象に余計な体力を使いたくないのか、早く終わらせろと逆にマリシャスに言う始末。
 マリシャスとしては嫌だ嫌だと言っている不破を快楽の坩堝に叩き堕とし、乱れる様を見て楽しみたいところだが──“受け入れてやる”スタンスの彼を堕とすのも一興。
「大人しくなった不破くんもソソるよ。じゃあ遠慮なく挿入いれさせてもらうね♡」
「ぐッ……!? は、ァ……ッ……! ぅ、あ……!!」
 不破の太ももの付け根辺りに片手を起き、もう片方で巨肉を掴むと大きく膨らんだ亀の頭を小さな穴へと狙いを定める。躊躇いなく、それでもゆっくりと腰を沈めていけば穴に先端が埋まっていき、徐々に飲み込まれていく。
 胎内の熱がふたなりペニスを包み込んでいき、尻穴の強い締め付けに湿った息を吐きながらマリシャスはさらに腰を進める。
「ぁがっ……! っ、っ……はぁ、あッ……!」
「お腹苦しいねぇ? フフ、よく頑張りました。全部挿入ったよ。すぐに気持ちよくしてあげるからね」
 身体の中に異物が侵入し、しかもそれが太くて長いものだから不破の氷色の目は強く閉じられ、眉間には当然深い皺。さらには額には汗が浮かび、歯を食いしばっている。
 マリシャスはいい子とでもいうように不破の腹部を撫で回し、それがまた刺激となって彼が呻く。
 さあ苦しみはここまで。あとは気持ちよくなるだけ。前後左右すら分からなくなるほどに堕としてあげる。
 マリシャスの真紅の瞳が爛々と輝き、ついに彼女が動き出す。
「ぁ、あ……! ッ゛〜〜!! く……、これ、はッ……!」
「お尻の穴って神経が集中しているから敏感だし、前立腺が大きなおちんぽで圧迫されて指とはまた違った気持ちよさがあるでしょ? 声も我慢しないで。君の恥ずかしい声も、顔も、身体も、私しか知らないから」
「ふざけ、ッあ゛!? ぁ、ア゛ぁっ、ン、んん゛んッッ……!!」
「っ♡ ハァ〜♡ 不破くんの処女アナルキッツい…♡♡」
 長大を包み込む灼熱や締め付けに腰が砕けそうになりながらマリシャスは顔を恍惚に歪め、少年の細いながらも男の腰を両手で掴み、内部を掘削するように浅いピストンをで不破を攻める。
 肉壁が蠢くのを感じながらまずは巨砲の幹部分で前立腺を腸越しに刺激してやれば、濁点混じりの嬌声が神に愛された容貌から放たれているギャップにマリシャスは昂ぶりを抑えられない。
 この世のものとは思えぬほどに美しい少年を犯す──こんなにも支配欲が湧き上がり、止まらないなんて。
「ほら? 聞こえる? 不破くんのふわとろケツマンがぐぽぐぽ♡ ってエッチな音を立ててるの」
 マリシャスの薄っすら白濁が混じったカウパーによってぐちょぐちょの尻穴はもはや雄膣と表現してもいいくらいに蕩け、マリシャスの雌肉を喜ばせる。
 わざと大きな音を立てるようにギリギリまで引き抜き、一気に押し上げれば陰嚢が不破の肌に当たる乾いた音や粘膜と粘膜が触れ合う水の音が混ざり合って、卑猥な音楽祭の始まりだ。
「ぐ、ッは……ぁあああ゛……! ッン、だ……まれ……ッ!!」
「はぁ〜♡ 不破くんかわいい♡ 女の子犯してるみたい♡」
 さらさらの銀糸に顔だけ見れば男にも女にも見える美貌。クールな印象の顔は茹だったように紅潮しており、美少女を抱いているのだと錯覚してしまいそうになる。
 ある意味自ら抱かれることを決めた不破ではあるが、プライドゆえに甘やかな快楽に堕ち切ることができずにマリシャスからすれば細やかな抵抗を続けるが、腹部から全身へと広がる淫熱に少年の身体はいやらしく波打つ。
「ッ、イキそ……♡ 最後は抱っこしてヤろっか♡」
「ぅあ゛……! っ、はぁ……はぁ……、なんの、真似だ……」
「不破くんをぎゅ〜ってしながらイキたいなって。ふふっ、私のおっぱいと不破くんのがキスしてるみたい。か〜わいい♡」
 正常位で繋がったまま、マリシャスは不破を抱き起こして座ると互いに向き合う対面座位へと変えた。密着すると丸みを帯びた乳房と不破の平らな胸が合わさり、マリシャスが身体を揺らせば互いの硬くなった乳飾りがこすれ、まるでそれはニップルキス。
 魅了効果が付与されている不破にとってはそれも淫らな刺激へと変換され、声は抑えられているが身体は素直なものでマリシャスの腕の中で微弱に揺れる。
「しがみつきたくなったら背中に爪立てても──っ♡ もう、不破くんったら♡ いきなり女の子の肌に食い込ませるなんて、他のコにしちゃ駄目だよ?」
 がり、と背中に走るわずかな痛み。だがマリシャスに痛がる素振りはなく、茶目っ気たっぷりに言うだけ。人間がつけた傷などすぐに塞がるし、その気になればそもそも傷をつけることさえ出来ないのだ。不破との交接だからこそ、許している。
「ぅ、う゛ッ……ぁああッ゛……! ンッ゛あ、ア……!!」
「んっ♡ ぁ、あぁぁああんっ♡♡ はぁ〜〜っ♡ 不破くんいい匂い……えっちな香りと混ざって最高……♡♡」
 不破の背中を抱きしめ、彼の頭を自分の肩口に乗せながらマリシャスは首筋に顔を寄せた。さすれば不破の涼やかな香りと、むせ返るような濃厚性臭が綯い交ぜになった媚香に全身の血が分身へ集中するような感覚とともに、不破の胎内に存在する雌ペニスがさらに大きくなる。
「ッ゛う……! 貴様、なぜ肥大化させるッ……!?」
 腹の中で膨れる極太。それでも不破の肉縁はぐっぽりと根本まで咥え込んでおり、内蔵を突き上げる動きにたまらずマリシャスの肩に顔を伏せ、少年の爪は女の白い肌に引っかき傷を作った。
 頭では縋りたくなんてないのに、身体は全身を飲み込む勢いの淫熱の逃げ場が欲しくて勝手にマリシャスを掻き抱いてしまう。彼の意思ではないものの、好意的な感情を抱いている相手に求められるというのは精神面に多大な影響を齎し、マリシャスに急激な性感の高まりを自覚させた。
「不破くん、そろそろイキそうだね?♡ ほらほら、遠慮せずアクメしてッ♡♡ 私でイッて!!」
 片手で彼の頭部を抱え、もう片方は背中を抱きしめて荒い呼吸を繰り返しながら腰を打ち付ける速度を上げる。のべつ幕なしに悲鳴を上げるベッドのスプリング、不破の苦しくも甘い嬌声にマリシャスも限界が近くなる。
「っぐ、うぐァ……ああ゛ァぁ! ────ッ゛ううううっ……!!」
「んっ♡ さっき射精したばっかなのにもう……♡ お腹にブッかけられちゃった♡♡ お返しに不破くんのナカにもい〜〜っぱい種付けしてあげるね♡♡♡♡」
 不破の身体が痙攣すると呼応するように彼の陰茎からは先ほどよりかは薄いながらも、ザーメンミルクが噴出し自分とマリシャスの腹部を汚した。
 優秀な子種の無駄打ちにサキュバスを自称するマリシャスの口元は艶っぽく上げられ彼の胎内の奥深くまで数回突き上げると──自らも達し、劣情の奔流が不破のナカで爆ぜると彼の目は見開かれ、声にならぬ声を上げ……一気に脱力した。
 身体のナカに突き刺さる巨根に大量射精。人間の、しかも初めてで耐えられるわけがない。不破は完全にグロッキー状態。目を開けているのも億劫なのか冬の輝きは閉じられ、マリシャスに身体を預けながら悦楽の波が過ぎ去るのを待っている。
 そんな彼とは打って変わってマリシャスはまだまだ元気である。正直あと数回は連続でできるくらい体力はあり余っているが、不破とはこの先も良好な関係を続けたい。
 それに彼の底なしの知識欲を考えればまた機会は訪れる。ここでがっつく必要もないと今回はこれでおしまいにすることを決めた。
「ごちそうサマ♡ 不破くんの恥ずかしい姿を見て大満足だよ♡ またシようね♡♡」

   ***

 不破が起きたのは次の日の昼近くだった。ベッドの上で目覚めた彼はぼんやりと天井を見つめ、下腹部に残っている違和感に昨夜の記憶を思い出す。
 サキュバスと自称するマリシャスは精気が必要だからと不破を求め、彼女の持つ異世界の知識と引き換えに渋々抱かれた。
 まさかの両性具有、加えて掘られることになるとは思わなかったが、意外と一度で終わったことにはマリシャスなりの思いやりを感じる。しかしそこに不破が感謝の念を抱くことはない。そもそもそういった感情は彼にはなかった。
 正直性行為をするための理由には欺瞞を感じるのも事実。けれど今後も求められたら応えてしまうのだろうなと不破は静かに目を閉じる。
 それほどに異界の知識は彼にとって大きな存在だ。自らの身体ひとつ差し出し引き出せるならば、それでいい。
 思考を巡らせるのを終えると、不破は自分の状態を確認するように目線を己の体へと向けた。服は上下ともに部屋着として使っているものに着替えさせられており、下着も着けている。身体にも体液によるベトつきはない。
 ベッドも清潔に保たれており、眠っている間にマリシャスが全て処理したのだと分かる。きっと魔法でも使ったのだろう。
 その肝心のマリシャスの姿は寝室にはなかった。普段は寝るときはいなかったはずが不破が起きると隣にいることが常になりつつあるのだが……。時間も時間だ。起きて別の部屋にいるのか。
「よかった、起きたんだ。おはよう不破くん。体の調子はどう?」
 寝室と机などが置かれている部屋は襖で仕切られており、それを開けて入ってきたのはマリシャスだ。普段は浮遊している彼女も家では素足で過ごすことが多い。
 服装はいつものへそ出しルック。ミニスカートに隠された局部はあの太茎が鎮座しているとは感じられない。平均的なサイズよりも大きなモノを持っているのだ。あんな丈のスカートならば見えてしまってもおかしくはないのだが、膨張率が異常なほどにあるだけで平常時は目立たないくらいに小さいのだろうか。
 どちらにせよ未だ身体のナカには存在感の名残があり、不破は起き上がると、
「不快だな」
「うん。問題なさそうだね。お腹空いてるでしょ? 織部くんが朝作ってくれたおかずもあるし、昼はお寿司なんてどう?」
 理由があり不破と織部は中学生ながらもひとり暮らし。家が隣同士ということで織部は不破の生活に世話を焼き、食事を作るのは当たり前、その他にも洗濯やら掃除やらと通い妻状態だ。不破も家事をする時間があるならば本を読んだり趣味の研究をしたいので織部の好きにさせていた。
 一応不破ひとりでも最低限の生活はできるが、織部が手を加えることで生活レベルがかなり向上しているのは事実。その生活にマリシャスが加わっても織部の不破に対する献身は変わらない。
「寿司?」
「こう見えても寿司職人をしていたことがあってね。お魚屋さんで買ってきた新鮮な魚を捌いて握るから、あとで食べにおいでよ」
 なぜ寿司なのかはさておき。特に食にこだわりは無いながらも、口に入れるのであれば不味いよりかは美味しい方がいいという一般的な感覚はあるので異論はないが、ますますマリシャスのバックグラウンドが分からなくなる。
 人外なのは確定だが妙に人間臭いところもあり、不破に付いていって学校に行ったときには一部の生徒や教師を見てどこか寂しげで、それでいて懐かしい人を見るような面様や眼差しを向けたりするが不破は興味がないのでそれに関してなにかを言うことはない。
 部屋をあとにするマリシャスの背を見送り、再びひとりになると鳴り響く腹の音。自覚する空腹に不破は諦めるようにベッドから下りると、部屋を出た。
 自称悪魔なマリシャスと不良少年である不破大黒の不思議な生活は、まだまだ始まったばかり。

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