少年罪流島双成逆穴成琉! ドモン編

 他の島と遮断された孤島。ここには全空捜査局管轄の矯正施設、少年しょうねん罪流島ざいるとう──通称“ネンショー”がある。
 外の世界で罪を犯した年齢的にも未熟な少年少女がここに送られ、更生を助ける施設。だが血気盛んな不良たちが跋扈するこの場所には平穏な日はない。そして、今日も。
「あらあら……」
 毎回返り討ちにされるというのにショウに絡み続け、ついにガチギレした彼に顔の原型を留めないほどに殴られたドモンが大泣きしながら土下座している部屋に、おっとりした声が一つ。
 すると部屋にいた少年全員が声のした方……扉に視線を向ければ、そこには何人かの看守の男を率いている女性の姿があった。ショウはその女性の姿を見るや否や不機嫌そうに舌打ちをする。
 荒々しい場にいるのが似合わない雰囲気を纏う女性は今にもショウを捕らえようと一歩踏み出した看守を制止するように腕を伸ばし、下がらせると、自らは泣き腫らした顔で見つめてくるドモンの前に両膝をついた。
 極めて優しく両頬に触れ、持ち上げると、はたから見れば伏せられたままの両目でも見えるのか、ドモンの傷の酷さに表情を歪めた。
「かわいそうに……。これはやり過ぎですよ。ショウ“ちゃん”」
「性懲りもせず仕掛けてきたのはそいつだが?」
「貴様! 所長に対してなんだその口の聞き方は!」
「おやめなさい」
 声を荒らげる看守の男に対し、静かに、だが芯の通っている声でやめるように言うと、再び場に静寂が戻る。
 女性は看守に言われたようにここの所長を務めていた。こんな場所に女性の身でありながら長を務める彼女は見た目のひ弱さからしてナメられておかしくないのだが、少年たちは牙を抜かれた虎のように大人しい。……ショウ以外、は。
 その理由はすぐに分かった。
「いま治してあげますからね。ドモンちゃん」
 そう女性が呟くとドモンに触れている手から緑色の暖かい光が溢れ、骨が折れて変形している顔が見る見るうちに元の形へと戻っていく。
 傷を塞ぐ、というよりかも内部から再生していると言った方が正しいか。たった数秒でドモンの顔は綺麗に元通り。
 女性の技に少年たちは「さすがママ……」「母さんすごい……!」などと女性を“母”と呼ぶ単語を交えながら感嘆し、ざわめく。
 女性は子供たちに自らのことを所長ではなくママや母さんなど“母”と呼ばせ、また、自分自身も本当の母親のように子供たちと接していた。
 最初は粗暴だった者も心がこもり、一人の人間として見てくれる女性に対して少しずつ態度を軟化させ、やがて自分から女性のことを母と呼び、慕う。
 そして閉ざされたこの世界から広い空の世界へと戻っていくのだ。
「もう痛くない?」
「あ、あぁ……。ありがとの、ママ……」
 血の繋がった我が子のように接する女性にドモンは自分の顔に触れながら痛みがないことを告げると、女性は白百合のような微笑みを向けるがそれも一瞬。次の瞬間には表情を硬いものへ変化させ、スッ、とその場に立ち上がった。
「静かに。ショウちゃんとドモンちゃん以外の子は自分たちの部屋にお戻りなさい。二人は私が呼ぶまで……懲罰房へ」
 女性の言葉に再び少年たちがざわめき立つ。ある者は顔を青くし、またある者はどこか羨ましげな視線をドモンとショウへと向ける。
「私が呼ぶまで?」
 様々な反応が見える部屋に、ショウだけが場の雰囲気に疑問を抱き、女性に対して胡乱な目を向けた。

   ***

「所長。入ります」
「いらっしゃい。ドモンちゃん。夜中に呼んでごめんなさいね。あなたはもう戻っていいわ。ドモンちゃんを連れてきてくれてありがとう」
 すっかりと夜も更けた頃。消灯時間もとっくに過ぎ、起きている人数の方が少ない時間。施設の奥まったところにある所長室にドモンの姿はあった。
 来客があったときにも使うであろう部屋は他の部屋と違い、どこかの貴族の部屋のように落ち着いた空間が広がっていた。
 綺麗に整理整頓されており、どこからか心地よい香りも漂ってくる。
 看守とドモンを快く迎えた女性はアンティーク調のソファーに座り、それに似合うデザインのローテーブルで紅茶を楽しんでいた。
 テーブルの上に置かれているトレイにはドモンの分と思われる空のカップとソーサーが置かれている。
 女性の命によりドモンを連れてきた看守の男は女性の言葉に一礼すると、部屋を出て行ってしまった。
 いくら手足を手錠で封じられているといっても一般人と比べて凶暴な少年と二人きり。だが女性はあろうことか指を鳴らすと魔法でドモンの手錠を外し、自分の目の前のソファーに向かって腕を伸ばし、座るように促す。
 武器がなくても、大人と子供であっても、男と女。危害を加えることなど簡単だが、ドモンはそういった行動を起こさずに大人しく女性に従う。
 傷を治してくれたから……など、そういった感情からではなく、仮に襲っても簡単に返り討ちになると分かってのこと。女性は優しいながらも得体の知れない存在で、ここにいる者たちにとって恐れの対象でもあった。
 ドモンが着席したのを見て、女性は彼の分の紅茶を淹れてやり、目の前にコツ、と置く。どうぞ、と言われ口にするも、緊張で美味しいのか不味いのかもドモンは分からないようだ。一口飲んだカップをソーサーに戻す。
「……ここに呼ばれた理由はなんとなく分かっていると思うけど、あえて言うわね。ドモンちゃんが負けず嫌いなのは知っているけど最近は度を越していると思うの。他の子も巻き込んで……なぜそこまでショウちゃんに執着するのかしら」
 口元に柔和な笑みを浮かべつつ、悪いことをしてしまった子供をたしなめるように女性は語りかける。敵意のない、どこまでも優しい雰囲気の女性にドモンは居心地が悪いのか、視線を斜め下へと逃し、悔しがるように拳を握る。
「ショウくんを見てっと……無性に腹が立ってしょうがないんじゃ……!」
「なるほど。プライドが高い者同士、気が合わない。……みんな仲良くしましょうなんて綺麗事を言う人もいるけど、私は無理に仲良くする必要はないと思うわ。だけど、直近のドモンちゃんの行動は所長の立場として看過できないものがある。だからドモンちゃんに“お仕置き”をするわね」
「なっ……!?」
 お仕置き。その言葉を口にするのと合わせて普段は閉じられている女性の両目が開眼される。きらりと光る妖しい目を見た瞬間、ドモンの意識は急激に混濁し、プツリと切れた。

   ***

「う……」
 意識を取り戻したドモンは妙な肌寒さを感じ、目を開けた。するとそこに広がるのは記憶が途切れる前までいた所長室ではなく、薄暗い部屋だった。
 光源は壁に取り付けられている蝋燭の火のみ。ドモンの目の前には鉄製の扉があり、確認できる範囲で分かったことはそこまで広くはないこの部屋は赤茶色のレンガの壁が囲み、まるで拷問部屋。
「な、なんじゃこれは……! っ……!? なんで裸……!? 腕も吊られて……!」
 視線を床へと向けて気づいた異常な状態。現在のドモンの姿は全裸で、鎖で繋がれた腕は天井へと伸び、足がギリギリ床に届かない位置で吊るされていた。
 あの場でドモンをどうにかできたのは所長のみ。彼女の怒った姿を誰も見たことがないくらいに温和な女性がなぜ……? そこでドモンは思い出した。彼女がお仕置きをすると言っていたことを。
 全裸に剥いてどう仕置きをするのか。未知への恐怖にドモンの心拍は上昇し、なんとか拘束から逃れようと藻掻くが、手首に何重にも巻かれた冷たい鉄の鎖は彼を繋ぎ止めたまま。
「起きたのね。ドモンちゃん」
 ギギ……と重い音を立てながら扉が開かれ、現れたのは所長の姿。普段と変わらぬ服装だというのに、ユラユラと揺れる蝋燭の光が照らす彼女はじわじわと背筋に這い寄るほの暗さがある。
「これはどういうことじゃ! なしてワシがこがいな格好……!」
 じゃらじゃらと鎖を鳴らしながら吠えるも、女性は微動だにしない。平時と変わらぬ穏やかな微笑みを顔に貼り付けたまま。それが余計に恐ろしい。
 女性は硬い床を靴音を鳴らしながら歩き、ドモンの背後へと回った。顔が見えないことに不安が積もるも、足が床と離れているので首を回してしか女性の行動を確認できない。
「さあドモンちゃん。お仕置きの時間ですよ」
「ひぎぃぃィィィっ!?」
 風を切る鋭い音を認識した途端、背中に走るいくつもの痛み。乾いた肌に打ち付けられた“なにか”は黒く、持ち手の部分は一本だが、先の方は馬の尻尾のように何本も分かれている。一般的にバラ鞭と呼ばれる物だった。
 そういったプレイをする際の鞭の中では初心者向けだが、当たる部分によってはミミズ腫れになるほどの威力を持つ。
 女性はドモンの悲鳴を聞いても情けをかけることなく、一定のリズムで鞭をしならせ、背中を打っていく。鞭を操る腕を見る限り相当慣れているようで、今までどれほどの人数にこうして折檻をしてきたのか。
「ま、ママぁ! ワシが悪かった! ワシが悪かった、がらぁ゛! あ゛ァッ゛!!」
 女性はドモンの謝罪を聞いても許さない。これはお仕置き。口先だけの言葉は聞き入れてもらえないようだ。
 肌を打擲ちょうちゃくする鞭の音とドモンの泣き声が交わり、どれくらいの時間音楽を奏でていただろうか。鼻水を垂らし、ぐずぐずと泣きじゃくるドモンの中に少しだけ変化が現れた。
 鞭打ちの痛みの中に快楽が交じるようになったのだ。痛めつけられて自分の体がおかしくなってしまったのかと、涙で濡れた視界で首を下へと向ければ、いつの間にか彼の男根は勃起しており、天を仰いでいた。
「あらあら。お仕置きなのに気持ちよくなってドモンちゃんは悪い子ね。でも……ふふ。ここに来る子たちのほとんどがそうなるから恥ずかしがる必要はないわ」
 可愛らしいものでも見るようにうふふと笑い、女性はドモンの頭を数回撫でると、その手の指先で肌をなぞりながら腕を下ろしていく。後頭部、うなじ、真っ赤になった背中に女性の指が触れたときは痛かったが、最後は臀部の割れ目で止まった。
「鞭を耐えたドモンちゃんには飴をあげましょう」
「な、なにする……ぐっ、ぁ……! あっ……!」
 割れ目へと指が沈み込み、奥に隠された窄まりへと中指が触れる。排泄のためだけに存在している場所を他人に、しかも異性に触れられ、ドモンはこれから自分の身に起こるであろうコトに歯をガチガチと鳴らす。
 またお得意の魔法を使ったのだろう。肛門に触れている女性の指からは粘性の液が溢れ、指を濡らしていく。
 切れないようにとローションをたっぷりと纏った指がドモンの尻穴へと沈み込み、内部を探るように指が蠢く。
 自分でも触れることのない体の内部に触れられていることにドモンの顔は青ざめ、目はこれでもかと見開かれ、呼吸も浅い。
 己の肛門に指が入っていることなど考えたくもないのに、不規則な動きをする指に意識が集中してしまう。
 ハァハァと犬のような声を出して耐えていると、女性は目的の場所を見つけたのか、探るような動きは止まった。が。
「ひぐぅっ!? な、なんじゃそごっ、ア゛ぁ、や、やめ゛ぇ……!」
 グッ、グッ、と腹側のとある一点を押されるとドモンの体が跳ねた。腸越しにコリコリとした硬い部分を刺激され、自慰などでは感じたことのない快感が少年を襲う。
「ここはね、男の子が女の子になっちゃうスイッチなの。ほら」
「あンっ……! ぁ……声が、ふっ、ぁ、勝手、に゛ぃ……!」
「女の子みたいな声で啼いて可愛いわね」
「もう勘弁してくれ……! 頼む、からぁ……!」
「うふふ。こんなところでやめていいの? あなたのココ、すごいことになっているけど」
 女のような甘さを含む声が自分の口から出ていることが信じられず、ドモンはかぶりを振って懇願するも、女性は後孔を弄りながら残りの手を前へと回した。
 ガチガチになっているペニスの竿部分を握る女性の手からは潤滑剤が勢いよく溢れ、塗り広げるように手コキの要領で手を動かせば前と後ろから同時に責められるドモンは激しく体を揺らし、鎖の冷たい音が鳴る。
「う゛ぁ、触る、なぁ゛ぁ……! なんで、なんでケツ弄られてワシ……!」
「さあ、湧き上がる衝動に身を任せて──果てなさい」
「ぁ、あ゛ぁっ! あひッ! いぐッ! いぐぅぅっ!!」
 全てを飲み込む悦にドモンは天井に向かって叫び、下半身から脳へと放たれる雷に体をビクン! ビクン! と跳ねさせる様子は釣りたての魚のようだ。
 女性の手によって与えられた強制快楽に全身から力が抜け、鎖で繋がれてなければ今頃は床とキスをしているだろう。
 かわいそうなくらいに体を痙攣させるドモンを見て、女性はもういいと判断したのか魔法で腕の鎖をほどくと、前に倒れるドモンの体をほっそりとした腕で抱きとめ、慎重に床に寝かせた。
 しかしここでドモンが動いた。体力を激しく消耗している彼を突き動かすのは女性への怒りの感情。仕置きだからと言って鞭を打ち続け、最後には不浄の穴まで弄くり回された。プライドの高い彼がそれを許せるわけがない。
「おんどれぇ! よくもッ……! ブッ殺される覚悟はできとんじゃろうなァ!?」
 自重をかけて女性を押し倒すとそのまま馬乗りになり、胸倉を掴んで凄むが、女性は笑ったまま。頭を床に打ち付けた痛みさえも感じていないようだ。
「なに笑っとんのじゃあ!」
「うふふふふ……。ドモンちゃんにはまだまだお仕置きが必要みたいね」
「あ、えっ……!?」
 女性が片手を軽く振るえば、ドモンの体が勝手に動き始める。その様はまるで操り人形。今のドモンの肉体は彼の思うようには動かない。
 ドモンの体は女性から下りると、尻を彼女に向かって高く上げる形で床に四つん這いになる。素肌に触れる石の床は冷たく、硬い。
 まるで金縛りにあったように指一本すらもドモンの意思では動かせない。
「う゛……! ケツん中になにをッ……!」
「これから行うお仕置きは滑りをよくしておかないとドモンちゃんのデリケートなところを傷つけちゃうからね。こうしてたっぷり濡らしてあげているの」
 起き上がった女性はドモンの背後に膝立ちになり、二つの丘に手を置くと、片手は外側に向かって力を入れて孔を広げ、残りの手は閉じられた蕾へ。
 人差し指を挿入すればついさっきまで触れていた影響ですんなりと飲み込まれた。するとドモンの腹の中に液体が放出され、苦しげに女性に訴えればローションを思わせる答え。
 さらなる肛虐の気配を感じ、ドモンは息を呑む。たしかに気持ちはよかったが、お尻の穴を掻き回されて女のような声が出てしまうのはもうごめんだ。だが彼には逃れる術はない。
「心配しなくても大丈夫。このローションは媚薬入りだから初めての子も気持ちよくなれるわ。うふふ。もしあなたがコレに病みつきになっちゃったらごめんなさいね」
「あ゛っ……! 腹がっ、あづい……!」
 胎内に埋まっていた指が媚薬を肉壁に塗りつけるように時計回りに動き、粘膜から直接与えられる甘い薬はすぐに効果が出てきた。
 腹の奥が淫猥な熱を持ち、性的な淀みを感じる。呼吸も荒くなり、ドモンの口からは生温かい息が漏れ始めた。
 この性熱を解放したくても体の自由は奪われたままなので自分ですることも叶わず。上昇していく淫熱に思考を奪われ、だらしなく口を開き、舌を突き出して重い息を吐き出すのみ。
「これくらいでいいわね。じゃあお邪魔しようかしら」
「かはっ……!? ぁ゛、なに、を」
 狭き門を硬くて熱いなにかが拡げながら体の中に入ってくる。本来ならば異物を挿入されて痛いはずなのに薬の効果なのか痛苦は感じられないが、腹を満たす苦しさはあった。
 肛門性交というものがあることをドモンは知っていたが、女性には挿入する物がないはず。ならばこれは男根を模した大人のオモチャなのか。だが感触は作られた物とは思えない。まるで本物の陰茎のようだ。
「うふふ。私にはね、おちんちんが付いているの。俗に言う“ふたなり”よ」
「ぁ……? ならワシの中に入っとるコレは……!」
「そう。ドモンちゃんのココと同じモノ」
 体を動かせず、振り向くことさえできないドモンに対して女性は答えを示すように彼の陰茎へと触れ、軽く扱く。
「ぐっ、ぅ……! まさか、そんな、んぐぅ!? はっ……! ぉ゛、そごっ、はぁ゛……! あ゛ぁッ゛!」
「ママのおちんぽの味はどう? ドモンちゃんを気持ちよくできてるかしらっ♡」
 閉ざされた部屋に満ちるのはドモンの喘ぎ声と結合部の粘った音、そして女性の楽しそうな声。彼女がリズミカルに腰を振る度にカリ高の亀頭が肉壁越しに前立腺を抉りながら行き止まりまで一気に突き刺す。
 肉槍で串刺しにされると快感電流が背筋を通って脳まで一気に駆け上り、指で弄られていたときとは違う未知の感覚にドモンの肌が粟立つ。
「んぉ゛お゛っ、頭がっ、はひゅ……ぉ゛、なにもっ、考えられ、な……!」
 媚薬が使われたせいか。女性に甚振られると信じられないくらいに気持ちがよくて、しだいにドモンからは反抗心が薄れていく。自分を辱める女性が許せないはずなのに、どうでもよくなってしまう。この法悦に浸りたくなる。
 半開きの口からは唾液が垂れ流し状態で床には小さな水溜りができ、目は蕩けて涙を流している。完全に淫楽の虜になってしまっていた。
「うふふっ♡ 心配しなくてもこの媚薬は人体に無害だから大丈夫よ♡ 存分に味わってちょうだい♡」
 冷静な口調だった女性も今では声音に色が交じるようになり、呼吸も上がってきた。ドモンもそれに合わせるように乱れ、堕ちきった淫乱声で啼き、それが女性にとってさらなる興奮材料になるとは本人も思ってないだろう。
「ンあ゛っ♡ ぁ、ン゛ン゛っ♡ やめでっ……ごれ以上はっ……! 頭、ぁア゛ッ! おが、じぐ……なるぅ゛♡」
 内部から自分が変えられていくような感覚。これ以上されたらどうなってしまうのか。ツッパっていてもドモンもまだ子供。恐怖心はそれなりにあるわけで。
 プライドやらなんやら、なにもかもを捨ててひんひん泣きながら揺さぶられ続けると、ついにそのときがやってきた。
 ラストスパートなのか女性の動きが激しさを増し、肌と肌がぶつかる音が大きくなると突然動きが止まり、女性は短く呻いた。
 ドクドクと脈打ちながら熱いモノが胎内に注がれ、誘発されるようにドモンの男性器からも精液が発射され、床を汚す。
(ようやく……終わった……?)
 さすがにもうされないはず。微かな希望を胸に抱くと、ぐい、と体が持ち上がった。
「ア゛ァ゛ッ!?」
 繋がったままの状態で体を起こされたドモンは床に座り込む女性に抱きかかえられ、膝に座らされた。すると自分の体重で肉茎はより深いところまで入り込み、彼の呼吸が詰まる。
 ようやく終わったと思ったのに、まだまだ行為は終わらない。その絶望感にドモンの体が勝手に震えてくる。
「ごめんねドモンちゃん。ちょっと興奮が収まらないの♡ もう少しお尻、使わせてもらうわね♡」
 震える少年の耳にいやらしく囁き、耳たぶを食み、濡れた舌で耳をねぶりながら女性の片手はドモンの乳首、残りは硬度を失いつつある雄棒へ伸びると下からの突き上げが開始された。
 耳、乳首、陰茎、そして肛門。一度に責められればかろうじて保っていた意識も底の見えない沼に沈むようにドモンを飲み込んでいく……。
 ──その後、所長による“お仕置き”を経験したドモンはショウに絡むことはなくなった。少年たちの前で大泣きして土下座させられた、という件もあるが、それ以上にまたお仕置きされることに恐怖した。
 あれ以上経験したらもう戻れなくなってしまう。そんな気がしたのだ。
 また、所長によるお仕置き後、大人しくなる者が多い理由を今回のことでドモンは身を持って知った。お仕置き後も暴れる者はいるにはいるが、今思えばまたお仕置きされたいから暴れていたに違いない。
 だが、そんな者もすぐに大人しくなる。きっとこれ以上生活態度を改めないのなら、もうお仕置きはしないとでも言われたのだろう。
 そして、先に娑婆に戻ったショウを追いかけるようにドモンも退院し外の世界へと舞い戻った。それはショウを巻き込む大事件へと繋がるのだが、それはまた別のお話……。

   ***

 全空捜査局で取り調べを受けたドモンはショウが収監されていた特級少年罪流島、通称“特級”に入ることになり、身体検査を終え、橙色の服に着替えるとヒューマンとドラフ、二人の看守の男に連れられて所長室へと来ていた。
「所長。ドモンを連れて参りました」
「どうぞお入りになって」
 真面目そうな看守がノックをしたのち、扉の向こう側へと声をかければ、中からは柔らかな女性の声。監獄とも呼べるこの場所に似つかわしくない。
 看守が「失礼します」という言葉とともに入室すれば、所長室という名前がふさわしい空間が広がっていた。ほのかにいい香りが漂っているのは女性の好みだろう。
 部屋の中心にある大きな机の向こう側には、男たちに背を向ける形で椅子に座る女性の後頭部が見えた。
「お手数をおかけしましたね。あなた方は持ち場に戻ってください」
「し、しかし所長……!」
 もう一人の看守、屈強なドラフの男が声を上げるも、女性は「大丈夫ですから」と極めて優しい声で告げるばかり。まだなにか言いたそうに口を開きかけた男をヒューマンの男は止め、言われた通りドモンを一人残して退室するのだった。
 一体なにが起きるというのか。困惑の瞳で女性の頭部を見つめていると、静かな空間に指を鳴らす乾いた音が広がり、その瞬間ドモンの手足に嵌められていた手錠が外れ、床へと落ちた。
 鍵がないと解錠できないはずの物をただの指パッチンで。自身の目の前で起きている不思議な現象にドモンは心当たりがあった。これは──そう、自分がネンショーにいた頃の……。
 ドモンの脳裏に浮かぶのは一人の女性の姿。すると、答え合わせをするかのように回転椅子がくるりと回り、謎の人物はドモンと向き合った。
「なっ……! ワレは……!」
「……あらあら。少し娑婆に出ている間に言葉遣いを忘れてしまったのね。ドモンちゃん」
 両目を閉じ、見る人の誰もが聖母だと思うような温かい笑みを浮かべている女性だったが、ドモンの言葉にえくぼを深め、小首を傾げながら悲しそうに呟く。
 その笑みを見ると封印していた記憶が溢れ、ドモンはその場で縮み上がった。
「ひぃっ……! マ……“ママ”。どうしてアンタがここに。アンタはネンショーの、」
「最近配置換えがあってね、少年罪流島の所長からこの特級少年罪流島の所長に就任したの。……さあ、そんなところに立ってないでお座りなさい」
 母と呼ぶに相違ない声音と言葉ながらも、ドモンは心の奥底から湧き出る恐怖心に女性と目を合わせられないでいた。
 それでも彼女の言うことに逆らうことは出来ないとアンティーク調のソファーに座るも、両脚をぴったりと閉じ、太ももの上に置かれている両手は力強く握りしめられている。
 恐れの感情を必死になって抑えるように体を小刻みに震えさせる今のドモンには、娑婆で暴れていた面影はない。
 女性はにこやかな表情のままドモンの横へと腰を下ろし、密着すると、彼の頭を両手で引き寄せて自らの胸へと抱き寄せた。
 母性をイメージさせる大きな膨らみに少年を抱き、子供をあやすようによしよしと頭を撫でながら鼻を軽く鳴らせば、今回の事件のキーでもある禁薬の甘ったるい香りが女性の鼻腔を掠める。
「まだアメイジングシガレットの香りが残っているし、薬が抜けるまで禁断症状がつらいと思うけどママと一緒に頑張ろうね。大丈夫。今度こそママがしっかりとドモンちゃんを更生させて、お外の世界に送り出してあげる。でも」
 迷える子羊を慈しむように撫でる手が、ぴたりと止まった。
「あなたがお外でしてきたことは“ツッパリ”じゃなくて“犯罪”。まずはそのお仕置きをしないとね」
「ご、ごめんなさい……! ごめんなさいママ……! ゆるしっ……許して……!」
 少年罪流島で経験した記憶がぶわりと全身を駆け巡り、ドモンの体の震えは大きくなるばかり。
 淫らに乱れながら自分を内側から作り変えられていくようなあの感覚を鮮烈に思い出し、情けなく涙を流しながらも女性から逃れようと腕に力を込めて体を離そうとするが、この細腕のどこにそんな力があるのか。全く離れることができず、逆に深く抱きしめられてしまう。
「っ゛……!」
 不意に感じたパラリ……と背中を撫でる感覚にドモンの体が女性の腕の中で大げさなほどに跳ねた。服越しでも感じる感覚は忘れたくても忘れられない。その鞭で肌が真っ赤になるほどに打たれ、そして──。
「うふふふふっ……だぁめ」
 おぞましき母の愛から、少年は逃れられない。

終幕

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