同じ穴の狢

 壁には様々な賞状、この部屋で一番目を惹く大きいデスクの上には“署長”という札が置いてあり、その傍らには巨大な旗が立てて設置されている権力の部屋。現在この部屋の持ち主はそのデスクに一人の少年を組み敷きながら、女性にあるはずのない男性器を少年の尻穴に涼しい顔で出し入れしていた。
 少年──織部明彦は不良だ。そしてここは地元の警察署、その署長室。彼はいま、この組織のトップである女署長に身体を売っている最中だった。
「まったく。また派手に喧嘩をしてくれた。毎回処理するこちらの身にもなれ」
 無表情で腰を振る彼女は男女両方の性器を有するふたなりだ。デスクに織部の上半身だけをうつ伏せにし、尻を突き出させる形で立たせたバックの体位で抽送を繰り返す彼女に奥深くまで突かれる度に、織部の口からは女のような高い声が漏れ出る。
 制服のズボンと下着だけを下ろして上は全く脱いでいない織部の姿と、肉棒だけ露出して制服はきっちりと着ている女署長の姿を見れば分かるように二人の間には愛などない。
「だからこうして、ッあ、署長サマに肉体的ご奉仕をッ……! フフ……それに署長サマも文句を言ってもオレの身体、とても楽しんでらっしゃるようで? ッ゛!」
「いい気になるなよクソガキ。お前の大事な不破大黒も、お前自身も、事が起きる度に私が揉み消してやらなければ今頃は少年院行きだ。それを忘れるなよ?」
 首だけで振り返り、ナメた口を利く織部の態度が女性の癇に障ったのか片手で織部の髪の毛を乱暴に掴むとそのままデスクに叩きつける。鈍い音とともに吐き捨てる言葉のとおり、織部や不破が派手にやっても何事もなく──あっても停学くらいで済んでいるのは署長という権限を使って揉み消しているからだ。
「外だけでなく学校でも好き勝手やって軽い処分で済んでいるのは校長にも身体を売っているからか? それとも調教でもしているのか?」
 揶揄するように冷徹に口にすれば織部はデスクに押し付けられたまま、くぐもった声で「どっちだと思う?」と質問で返してくるのに対し女性は彼の肉付きのいい臀部を片手で思い切り打擲した。
「ぅぐッ!」
「質問に質問で──いや、お前の場合は分かった上で“そう”答えたんだろう。どこまでも快楽に貪欲な男。末恐ろしい○学生だ」
 乾いた音が響くのと同時に痛みに苦悶の声を上げる織部だがそれも己の快楽のためと分かっているため、女性は嘆息しながら引き締まった男の腰を両手で強く掴むと腰を引き、一気に──内部を抉るように巨大な肉槍で串刺しにする。
「ぅ゛あ! はっ、ぉごっ、オ゛っ! そんなっ、乱暴にされたらッ、おっ、ンぉっ……♡」
 彼の言葉には喜悦が混じっており、それが分かっているからこそ女性は何度も奥を突く。その度に腸壁がうねり、射精を促そうと締め付けてくる。男女ともに抱いてきたがこの男の具合はその誰よりかもいいと、自然と女性の口角がサディスティックに上がった。
「あァ゛〜〜っ゛! んぉ、ん、ン゛ッ♡ ぐぅっ……! ふッ、うぅ゛……!!」
 肌と肌がぶつかる乾いた音、織部のどこか媚びたような嬌声が部屋に響くがこの部屋は防音がしっかりとしており、また部屋の周囲は人払いがされている。そのため彼がどんな声を上げたとしても外には聞こえない。
 女性も早く出たいと訴える精子たちの圧に──織部の柔らかな尻肉を両手で鷲掴みにするとふたなり液を一気に吐き出す。
 肉の穴の内部にある鈴口から勢いよく発射される精。激しい放出音が聞こえてくるかのように大量のザーメンが織部の腹にブチ撒けられ、彼も達したのか声を引きつらせ、アヘ顔をしながら身を震わせるが性器からはなにも出ていない。ドライの快楽に何度もビクビクと全身を揺らしている。
 長めの射精を終え、雄膣から緩慢な動きで牝槍を抜去すれば粘性のある白濁が大量に溢れて脚を伝っていく。震える白い肌を流れる汚辱の証は酷く煽情的でさらなる行為を誘うが今は生オナホでこれ以上処理している時間は取れない。
 女性は身繕みづくろいをするとデスクとセットになっている革製の立派な椅子に腰掛け、尻たぶの間からは胎内で受け止めきれなかった白濁が、上気した顔の口の端からは唾液を垂らしてだらしのない顔をしている少年を冷たい眼差しで見下ろす。
「今夜、いつもの時間、いつもの部屋に来い。続きはそこでしてやる」
「……してやる、じゃなくて、したいの間違いじゃ?」
「まだまだ余裕そうだな? 今夜はたっぷりとその身体、使ってやろう」
「はぁ……はぁ……えぇ……、ちょっとは加減してくれよ……。コッチは明日も学校があるんだぜ?」
「ただの性処理の道具になぜ気を遣わなければならない? そもそもお前が持ち掛けた話だろう。身体を売るから多少のことには目を瞑ってほしいと」
 過去を想起する。あれはいつのことか。普段は公用車で自宅へと帰るがその日はなんとなく歩いて帰りたいと思って徒歩で帰宅。家も警察署からそこまで遠くないので許容範囲内だ。
 薄暗い道。あと少しで家に着くというところで現れたのが織部。彼は女性がお偉いさんというのを理解した上で女性がふたなりということ、その性欲の強さを挙げ、自分が相手になるから面倒事の処理をしてほしいと持ちかけてきたのだ。
 織部のことはある意味では有名なので女性も存在は知っていた。もちろん彼のお誘いに最初は拒否したが、どこから情報を仕入れたのか女性が署長という身でありながら自分と同じ穴のムジナ──汚職をしているということを暗に告げ、そこで女性は織部の提案を受け入れた。
 後腐れない性欲処理の相手を探していたところだし、どうせ知っているのなら彼の言うように同じ穴のムジナ。正しい道から外れた者同士の方が色々楽だ。
「ふたなりの……いや、私の性欲を舐めているからだ。今更後悔しても遅いぞ? フフッ……あぁ、健気じゃないか。大好きな不破大黒のために自分の身を売るなんて」
 指定された部屋に向かった日は織部は徹底的に抱き潰され、終わったあとは普段の余裕など微塵も感じさせないくらいにボロボロになる。何回も経験して多少は耐性がついたが、それでも彼にとっては憂鬱なのかその眉間には少し皺が寄っていた。
 そんな彼に対して女性は目を細めて愉快げに笑うと織部の髪の毛をまるで犬に触れるような手つきで撫でる。
 彼のように周りの人間を見下している男が自分に屈服する姿はいつ見てもいいものだと内心ほくそ笑みながら、ここまでになるとは思っていなかったと若干の後悔を滲ませる少年の浅はかさをほんの少しだけ愛おしく思いながら……。

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