穏やかな風が木々をそよぎ、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。
柔らかな日差しが注ぐ研究所の中庭には雄の雛がいる。彼は真っ白なガゼボの下、ひとりで読書をしており、そんな彼のもとに同じく雛である一匹の雌の星晶獣が向かっていた。
「こんにちは、サンディ」
「ジータ! ああ、こんにちは。ところで、その手に持っているのは?」
ジータ。そう雛に呼ばれた少女は太陽の光を受けて煌めく銀髪に、彼女を造った人物──所長補佐官であるベリアルと同じ緋色の瞳をしていた。服装は彼の軍服とお揃いながらも下はプリーツスカートと女の子らしい格好だ。
サンディ──サンダルフォンは天司長ルシフェルによって。ジータはベリアルによってほぼ同時期に造られた存在。雛同士、また、役割がないという同じ悩みを持つ者同士仲良くなるのは早かった。
ルシフェルの方からサンダルフォンと仲良くしてあげてほしいと言われ、許可も得ている今では多忙を極める彼が中庭に来れない時間にジータは顔を出していた。
会ったばかりの頃はサンダルフォン。やがて親愛を込めてサンディと呼び方が変わっていき、それは二匹の雛の間にある絆を示している。
「これね、アップルパイを焼いてきたの。あなたと食べたいなって」
ジータは蓋付きのバスケットを持つ方の腕を軽く上げて微笑む。
たまにルシフェルに誘われて中庭で三人で心穏やかに過ごす時間もあるが、基本彼女が訪れるときはルシフェルがいない時間である。それが彼女の中ではすでに日課になっていた。
サンダルフォンと同じく時間はたっぷりとあるので毎回のようになにかしら作って持って行き、彼と食べながらさらに絆を深めていく。
親であるベリアルがどこか艶がある男なので、その影響なのか彼女の笑みも妖艶だ。サンダルフォンは心を許している顔で返し、腰を浮かせた。
「なら珈琲を用意しよう」
「私はいつものでね」
「砂糖とミルクたっぷりだな。座って待っていてくれ。すぐに用意する」
いつもの。それで通じるほどの時間をふたりは過ごしている。それはまるで──番のようだ。
***
「でね、ベリアル様と一緒にアウギュステに行って“海”っていうのを見たの」
「海?」
「ええと……舐めると塩の味がする水が島のほとんどを覆っているの。深さもあって、泳げるんだよ」
「塩の味がする水……一度見てみたいものだ。それにしても君が羨ましいよ。ベリアル様と外出できるなんて」
「……たまたまだよ。私に景色を見せるというよりかは、ルシファー様の用事に人手が欲しいってだけ。彼はルシフェル様のように優しいけど──やっぱり、役割は教えてくれないの」
白い皿に置かれた切り分けられたアップルパイを食べ、サンダルフォンが用意してくれた珈琲を飲みながらの会話はゆったりとしたものだ。
外の世界をまともに知らぬサンダルフォンにジータは空の世界にあるアウギュステの話をし、彼は最後に羨む言葉とともに寂しげな表情を浮かべた。
同じ雛。役割がない者同士であるが、ジータはサンダルフォンと違って特定の場所にずっといるわけでなく、研究所内や話の中にあったようにベリアルに連れられて外出することもある。
だがそれも必要があったら程度。おそらくジータが望めば連れ出してくれるとは思うが、日々ルシファーの補佐で多忙な彼。余計な時間を使わせるのは忍びないと考えていた。
サンダルフォンからの答えを想像するのに難しくないと思いながらも、ジータは口にする。
「ルシフェル様にお願いしてみたら?」
「あの方は天司長として毎日を忙しく過ごしていらっしゃる。ここに来る時間を作るのも難しい日があるというのに来てくれて……。言えるわけがない」
ほら、やっぱり。
「じゃあ私とお揃いだ。……ね、サンディ。いつかふたりでアウギュステに行って海を見ようね」
そう言ってジータは片手を伸ばし、小指を立てた。だがサンダルフォンはこの動作を知らないのできょとんとするばかり。
「小指を突き出してどうした」
「えっと、空の民は約束をするとき小指同士を絡ませるんだって。だからそれに倣って。ね、約束」
「……ああ。いつか、必ず」
意味を知ったサンダルフォンはひとつ頷くと、ベリアルと同じグローブをはめているジータの小指に自らの小指を絡ませた。ジータは握手をするように数回指を上下させる。繋がれた小指。ゆらゆらと揺れる腕は小さな子どものような純粋な気持ち。
「ん……?」
「うそ、雨!? さっきまで晴れてたのに!」
ぽつり。小さな水の音を皮切りに中庭に降り注ぐのは雨だった。ジータが中庭に来たときには晴れており、とても雨など降る天気ではなかった。
急な悪天候により指切りはおしまい。ジータは思わず立ち上がると、その手をサンダルフォンが掴む。ほぼ反射的なもので本人も意識しての行動ではなかったようで、戸惑うジータを前になにかを言い淀み、視線は彷徨う。
だがずっとこのままというわけにはいかないと思ったのだろう。サンダルフォンは意を決したようにジータを見上げると、ジータとはまた違う赤。どこか幼さが残る眼差しで、
「もう少しいてくれないか」
だいぶ勇気を出したのだろう。その頬はほんのりと血色が良くなっており、言われた方のジータも顔に熱が集まってくるのを感じ始める。迷い子のような不安げな面様を前に胸を締め付けられるような気がしながら、ジータは頷くことでイエスの返事をするのだった。
***
中庭で過ごすサンダルフォンのために用意された小さな住まい、その寝室に現在ふたりはいた。ひとりで眠るには広すぎるベッド。真っ白なシーツに包まれた清潔な場所の中心部に両名とも向かい合って座っており、雨の音に混ざるのは可愛らしいリップ音と湿った息遣い。
「ん……。もう何回もしているのに全然慣れないんだね、サンディ。か〜わいい」
「は……、あまり、からかわないでくれ……」
互いの背中を抱きながらキスに耽っていたふたりは一旦ジータが離れたことで行為が中断された。それぞれの口元はいやらしく光っており、当然のように頬は赤い。
ルシフェルやベリアルには内緒の、自分たちだけの秘密の行為を持ちかけたのはジータからだった。
人間は好きな人同士で唇を合わせるんだって。そう彼女に言われたサンダルフォンはなんの疑いもなくジータにされるがまま、受け入れた。
唇を合わせるだけのキスはやがて舌を絡める深いモノに変わっていったが、サンダルフォンはジータならばとどんどんハマっていったのだ。
「ねえサンディ。私を引き止めたのって、やっぱり期待してたから? それともただ寂しかっただけ?」
ジータは片手をサンダルフォンの耳へと伸ばし、繊細な指でなぞったり、揉んだりしながら艶やかに笑う。快活な少女の大人な一面に、未だにうぶな少年はその手つきの気持ちよさに目を閉じる。
「……君は、たまに意地悪くなるんだな」
「フフ……。ところで、この先があるって知ってる?」
耳から頬へと移動する手。すりすりと親指で撫でるその手つきはいやらしさを醸し出す。なにも知らない無垢な雛鳥をさらなる深みへといざなうために。
「この先?」
「そう。ね、鎧を脱いで」
「君がそう言うなら……」
サンダルフォンは少々戸惑いながらもジータが言うならば、と素直に言うことを聞く。純粋に“この先”というものにも興味があった。互いの親にも内緒の行為。自分たちだけの秘密というものに背徳感が増していき、もう止まれなかった。
鎧を外し、黒のノースリーブ姿になったサンダルフォンを見てジータは恍惚な微笑を浮かべると、自らも上の服を脱ぐ。真っ白で露出も最低限の服の下には黒のブラジャー一枚のみ。
ガブリエルと比べるとやや小さいながらも、ヒューマンの少女の平均で考えると大きめなバストを強調するように胸上部は意図的に切り抜かれたデザインになっており、それによって乳房を隠す布と紐状になっている布に挟まれる白い膨らみが、目の前の雄の視線を奪う。
「うふふっ。女の子の胸を直に見るのは初めて?」
「あ、当たり前だ……! そもそも、なぜ脱ぐ必要が……!?」
基本中庭で過ごす彼。深く接触する雌は自分だけと分かっていながらの問いは、彼の可愛い一面を見たいから。
服越しではない生の乳房。しかもジータの。見つめては失礼だと思っているのか、視線を逸らすもチラチラと見てしまうのは雄の性なのか。
ジータはなにも知らないサンダルフォンに対してクスクスと笑うと、妖しい雰囲気を纏いながら胸を隠す下着を脱いだ。
「なぁッ……!?!?」
まろび出る白いたわわ。その中心の桃色はピンと硬くなっており、彼女が興奮しているのが見て分かるが、性知識が皆無のサンダルフォンが知ることはない。
彼は女子のように顔を羞恥に染め、顔を背けて目を閉じている。あまりにも可愛らしい反応にジータのコアは煮えたぎるように熱くなっていく。
サンダルフォンが見ていないからと少年を誘惑する悪女のように舌なめずりをすると、彼の両手を取って自らの乳房を正面から触れさせる。
むにゅぅ。と、指に沈む柔らかな感触に思わずサンダルフォンの視線はジータの剥き出しの胸へ。彼は手を離そうとするが、ジータの手がそれを許さない。逆にサンダルフォンの手を操って自分の胸を揉ませる始末。
「ジ、ジータ……! なにをするんだ……!」
「うふふっ……。柔らかいでしょ? 女の子の身体ってぜ〜んぶそうなの」
「そ、それとこれになんの関係が……!?」
急激な体温の上昇。激しく動揺しながらも、初めての女の身体の柔さに抵抗する力も虚しいサンダルフォンにジータは自ら抱きつくと、やや大振りな肉果実が男の平らな胸に押し付けられ柔らかく潰れた。
「人間は繁殖のために交尾をし、子を成すの。それだけじゃない。ときに愛する人とのコミュニケーションとしてや、ただ快楽のために交わることも。……私は、あなたのことを好き──ううん。愛してるの。サンダルフォン」
すり、とインナー越しに彼の胸を撫でるとジータは潤んだ唇に自分のを重ねた。ちゅっ、と愛らしいキスは今の言葉に嘘偽りがないことを誓うかのようなものだ。
特別に想っていると言葉にされ、サンダルフォンのレッドベリルが隠し切れない嬉しさに見開かれ、揺れる。
きゅっ、と真一文字に結ばれた口。縋るようにジータを深く抱きしめる彼は外の世界をまともに知らない。接する存在もほぼルシフェルとジータだけと箱庭で生きる彼にとって、同じ目線で隣に立ってくれる存在がどれだけ大きいか。
「俺も君のことが……きっと、君と同じ意味で好きだ。ずっとそばにいてほしい。俺の、隣に……」
「嬉しい……! なら、一緒に愛を深めましょう? サンディ。大丈夫。私が全部教えてあげるから……」
親指で彼の唇をなぞると、ジータはサンダルフォンの膝の上に跨った。先ほどよりかも大胆な雛の行動に番の雛は緊張した面持ちのまま。
ジータはどうすればいいのか分からぬサンダルフォンの片手を取ると、再び胸へと触れさせた。揉み込むように動かせば、胸から広がる甘やかな悦にジータの頬がさらに紅潮していく。
びりびりとジータを襲う胸快楽。彼の手によってぐにゃぐにゃと形を変える美乳に漏れ出る声を我慢することなく目の前の彼に聞かせてやれば、お揃いの赤い瞳がかち合う。
「サンディ……自分で触ってみて……! ぁンっ……、そう、そうやって……あはぁ、上手だね……っ」
ジータに軽く手ほどきを受けたサンダルフォンは自分の意思で手を動かしていく。支えるように彼女の背中にも手を回し、己にはない膨らみの感触を確かめるように指を沈ませれば、ぞわぞわとした痺れが背筋を駆け抜けてジータの顔は快楽に甘く歪む。
スイッチが入った身体は愛液を分泌させ、ぴったりと閉じられた秘裂にじゅわりと蜜を溢れさせる。今すぐにでも直接触れたいくらいの急激な性感の高まり。
本当は余裕を持って彼を導きたいところだが、彼女自身想像していなかった気持ちよさなのだ。
「……女性は、胸に触れられると気持ちがいいものなのか?」
「んっ……触ってくれるなら、誰でもいいわけじゃないよ。心を許している人だから気持ちがいいの。私の場合、サンディ。あなただから。それに男の子だって胸で気持ちよくなれるんだよ? また今度、教えてあげるね……」
落ち着いて喋っているふうに見えるが、そう装っているだけ。彼の手が刺激を送る度に顔が蕩けてしまいそうになる。
テクニックなどなく、ただ揉んでいるだけだが、サンダルフォンからはジータを気持ちよくしたいという純粋な思いが感じられてより強い悦へと変わるのだ。
「んんッ! ぁ……くうっ、あぁぁ……!」
「っ、すまない! 痛かったか?」
ジータの反応を見ながら胸を愛撫していたサンダルフォンだが乳首をかすめた瞬間、彼女が大きめな声を上げたものだから痛かったかと心配するが、
「ち、がうよ。気持ちいいから、声が……。は、んんッ、乳首っ、もっと触って……強くして、いいから……! あなたを感じたいの……!」
「ッ……!」
自分を求める言葉にサンダルフォンの中に激情が溢れる。役割がなく、いつもルシフェルの背中を追いかけるばかりだった自分を、こうして必要としてくれるのが嬉しくてたまらない。安心できる。それが僚機とも思えるジータだからこそより強く。
サンダルフォンの目の奥に淫靡な炎が宿っていく。目の前で乱れるジータを見ていると奥底から広がる不可解な熱に、無垢な少年は惑う。
長風呂でのぼせたように熱を持った顔。その視線の先で揺れる胸。手で触れているのとは逆側の赤い尖りはもどかしそうに天を仰いでおり、サンダルフォンは茹だった顔のまま、引き寄せられるようにジータの胸に近づき──先端を口に含んだ。
「ッん……、うふふ……」
ちゅぅ。と、口粘膜に包まれる乳首。出ない母乳をねだるような吸い付きにジータの中に優しい気持ちが溢れる。悦楽よりも愛情が湧き上がり、自然とサンダルフォンの髪の毛をジータは撫でていた。
頭を撫でる手がとても優しくて。恥ずかしいことをしているにも関わらずに逆に安寧に包まれているような。心安らぐのか、サンダルフォンの表情が安心しきった子どものようなものに変わる。
「ッ!? ジータ、ぁあ……!?」
「ごめんね、サンディ。甘えてくる君もすごく可愛いけど、そろそろ我慢できなくて。ね、続きをしよう?」
ずっとこうしていたい気持ちはあれど、今は愛を交わしている最中。サンダルフォンの意識が違うところに向いているので、ジータは彼の膨らんだ股間に手を伸ばしてタイツの上から撫で回してやる。
さすれば未知の快楽にサンダルフォンは一気に現実に戻り、胸に顔をうずめながら呻く。
「サンディの大事なトコ、えっちなお汁でグチョグチョだねぇ? 苦しそうにしてるし、外に出しちゃおっか」
「っ……!? は、ジータ……! だめだっ、そこはっ……!」
ジータの両手がサンダルフォンのタイツとその下に隠された下着をずらし、中から一度も使われたことがないであろう男性器を取り出す。
顔を上げたサンダルフォンの顔はこれでもかというほどに紅潮しており、その瞳は潤みを帯びていてジータの胸を躍らせる。彼のそういった表情をもっと見たいと、嗜虐心が膨らんでいく。
剥き出しの性器は顔を出している亀頭からとろとろと透明な汁を滴らせており、触れているジータの手を濡らし、それをローション代わりにして軽くスライドさせれば、サンダルフォンは想像どおりの声と顔で啼いた。
「うふふっ。ここ、触られると気持ちいいでしょう? 私もなの。だから……触り合いっこしよ」
一度サンダルフォンの膝から下り、一歩下がると観客は彼だけのストリップショーのようにジータは身体をいやらしく揺らしながらスカートに手をかけ、焦らすように時間をかけて脱いでいく。
徐々に露わになる黒い下着に白い太もも。当然のようにサンダルフォンは目を離せず、彼も興奮スイッチが深く入り始めたのか無意識のうちに童貞ペニスはビキビキとさらにその身を大きくしている。
「ほら、見える? これが女性器。ここに男性器を挿入して交尾──人間で言えばセックスをするの」
黒の下着も脱ぎ、全裸になるジータ。小柄ながらも凹凸のはっきりした柔らかな肉体はベリアル制作ということで無駄なところはない。
恥ずかしげもなく足を軽く開き、陰部に触れながら性知識に対して無知に等しい雛に簡単に説明する様は、少年に対してイケナイことを教えるお姉さん。
「セックス……」
「好きな人とする行為はとても気持ちいいんだって。でもまだ挿入はお預け。女の子のココはすごくデリケートなの。だからたくさん濡らさないと」
再びサンダルフォンの膝に乗ったジータは彼の片手を自らの女性器へと持っていくと、指を操って膨らんだ朱珠を弄り始める。まるで楽器を演奏するような指遣いでクリトリスを刺激すれば胸よりも強い快楽電流が広がり、ジータの顔が性快感に歪む。
「ここはね、クリトリス……。あぁん、簡単に強い快楽を感じることができる、ところ……。ほら、どんどん濡れてくのが分かるでしょ? ン……、あはぁ……サンダルフォンの指っ、すごくいい……! ナカも、触ってぇ……」
自由な方の腕でサンダルフォンに抱きつき、頬を彼の頬に甘えるように合わせながらジータは手淫を施しつつ導いていく。
慎ましやかながらも淫乱な核のさらに奥。膣前庭の中心へとサンダルフォンの手を持っていくと彼の中指を選ぶ。すでにふたりの手は淫汁で濡れているが、さらに濡らすようにサンダルフォンの指をジータは揉み込むように何回か握ると、小さな穴へと緩慢な動きで沈めていく。
「ッ……!」
ずぶりと肉穴に飲み込まれていく指。矮小な穴から内部へと侵入する手は中指といえど男のもの。骨張った異物はジータに若干の苦しみを与え、表情がほんのりと崩れる。
「ジータ!? 大丈夫なのか……?」
「だい、じょぶ……。はぁっ…………ん、ゆっくり、動かしてみて……」
苦しげな声にサンダルフォンは心配するが、それは無用というもの。ジータに促されると、最初はためらったものの、少しすると探るように動かし始める。
女の膣の感触を確かめるような、小さな動き。ジータのナカは細かい襞がみっちりとひしめいており、キュウキュウと男の指を締め付ける様子はまるでサンダルフォンを離したくないと訴えているようにも思えた。
熱を帯びるサンダルフォンの呼吸。初めての女体。しかも心を通じ合わせる相手だからこそ興奮が抑えられないようで、ジータの背中に回された彼の腕に彼女は抱き寄せられ、柔らかな流線を描く乳房がサンダルフォンの平らな胸と合わさり、むにゅりと押し潰される。
「ン……! ァアっ、私のえっちなお汁、どんどん出てるっ……。その調子でお願い……私も、あなたを気持ちよくしてあげるから……」
先ほどまでサンダルフォンを導いていた手が伸びる先は彼の屹立。一度も使われたことのない、射精すら知らない初心な熱塊。おぼこだというのに硬く、太くなっており、膣奥までしっかりと届く長さもある。
見た目の造りが似ているヒューマンの一般よりやや大きいサイズ。ジータを十分に喜ばせることができる大きさだ。
「っ!? ぁ……! ジータ、やめっ……」
「やめない。気持ちいいことは悪いコトじゃないんだよ?」
少女の小さな手が勃起ペニスを優しく握ると、上下に扱き始める。くちゅくちゅと粘った恥ずかしい音を立てながら、カウパーを砲身に塗りつけていく。
当然サンダルフォンは自慰すら知らないので、性器から這い上がる快楽に目に少しの恐怖を宿しながら声を上げるも、ジータは彼の耳孔に直接甘い言葉を囁き、それがまた官能熱となってサンダルフォンに襲いかかる。
「んっ……くちゅ、かわひぃよ……ふぁ、ん……ひゃんだる、ふぉん……!」
「ふぁ……! ん、く……! ちゅ、ぁ、じ……た、ふ……んぅっ……!」
キスをしながら互いに性感を高め合っていく。身体のナカで動く指は無自覚にクリトリスの裏側に位置する場所をこすり上げてきて、ジータを少しずつ快楽の扉の向こう側へと連れて行こうとしていく。
ジータも負けじとサンダルフォンの雄勃起を扱き、鋭敏な亀頭を手のひらで包みながら指先をバラバラに動かすことで刺激してやる。ドクドクと脈打つ怒張。サンダルフォンの限界を悟ると、このまま射精させるか、膣内で射精させるか一瞬悩む。
「待ってくれジータ! あっあぁッ、なにかでっ──」
「ッ、うふふ……。これが射精だよ。そしてこの白いのが精液。人間の男は女の膣内に射精することで相手を妊娠させ──遺伝子の螺旋を紡いでいくの」
ジータの手の中で振動する肉槍。鈴口からは濃厚な白い体液が噴き出し、女の白い手をさらに白くしていく。粘性のある白濁は彼女の手を伝いながら流れ落ち、サンダルフォンの肌を汚す。
サンダルフォン本人は射精後の脱力感にジータの背を抱いていた手を自分の後ろについて支えにすると倒れないようにしながら、彼女から少し身体を離した。
自らの性器に起きた出来事を知識として吸収するように、ジータの言葉を反芻する。
「これ……が、射精……精液……。……俺が、君の中に出したら……」
「サンディ。私たちはヒトの姿をしているけど獣だよ。……それよりも、んっ……、なるほどね」
自分が人間と同じ姿をしているからかサンダルフォンは自然な考えを零すが、ジータは否定する。私たちは星晶獣。中身は違うのだと。
話を切り替えるのと、単純な興味からジータは手にべっとりと付着している白い体液を唾液によって光沢のある赤い舌でべろりと舐め上げる。その行為もサンダルフォンの目を見ながら、しかも見せつけるように。
口内に広がるのは独特の味。己の片割れだとも思える存在の体液の味は正直美味しくはないものの、彼のものだからと思うと途端に愛おしく感じ、ジータは手についた全てを舐め取ると、おすそ分けと言わんばかりに口付けた。
「ん……!? んンっ……!! ちゅ、ぁ……ぷはっ……!」
汚れていない方の手をサンダルフォンの後頭部に回して逃げられないようにすると、乳白が絡む舌でサンダルフォンの舌を執拗に絡め、彼自身の味を教え込む。
広がる苦味に彼の端正な顔が歪み、逃げたくてもジータが頭を固定しているために動けない。舌に絡む残滓を彼の口の中に塗りつけるように蠢き、最後は逃げ惑う柔らかな舌を軽く吸ってジータは離れた。顔を離せばふたりの間には薄っすらと白い糸が引き、ぷつりと切れる。
はぁはぁと呼吸を乱し、意地が悪いとジータを涙目で睨むサンダルフォンだが、相変わらず顔が赤いので威圧感はゼロ。逆に可愛いと思われる始末だ。
「自分の味はどう? サンディ」
「……苦くてまずい。論外だ」
汚れた口元を腕で拭いながら呟く彼にジータはうっそりと笑みを深めると、とん、と彼の胸を押した。そのままぽすんと倒れる男の身体をベッドが受け止める。
この先の行為を示唆するジータの動き。どこか不安そうに見上げてくるサンダルフォンに対し、慈母のような微笑みを賛えながら彼女は未だに反り勃ったままの性器の上に跨った。
膝を立てた状態で膣口に彼の屹立の先を軽くキスさせれば、ようやく本番だと全身の血がたぎっていく感覚に陥る。
「サンディ。私のハジメテをあげる。だからあなたのハジメテも頂戴ね……っ……!」
そう言ってジータは片手を彼の腹部に置き、支えにすると残りの手は陰茎へ。ズレないように固定するとゆっくりと腰を下ろしていく。
「ッ……!!」
「ぃ……! っ、う……!」
ずぶずぶと女陰に飲み込まれていく太茎。指で慣らしたといってもそこまで時間をかけたわけではないし、そもそもの太さが違う。
指よりも太いモノが閉じられた秘処をこじ開ける感覚は敵の攻撃によって受ける外側の痛みとは違い、内部の痛みに耐性がないジータは片目を閉じて苦痛の感情を顔に出すが、腰の動きを止めようとはしなかった。
自分の初めてを捧げ、彼の初めてを貰う。特別な関係になるためには必要なこと。
「なんだ、これは……!? 細かい肉の壁が俺を包んで……! っ、ジータ!? 血が……!!」
「ン、ぁ……! ぜんぶ、挿入った……かな。心配しないでサンディ。これは私がハジメテだって証。大好きなあなただからあげたの」
まさか処女膜まで造ってあるとは。ベリアルらしいといえばらしいが。ジータは思考の片隅で艶冶に笑う親の顔を一瞬だけ思い浮かべると、出血したことにショックを受けている雛の頬を落ち着かせるために撫でた。
頬を何回か愛でてやれば彼の瞳が安心したように細められる。彼のメンタルケアや身体のナカに存在する異物感にも慣れたところで、ジータはようやく動き始めた。
「うぁ、んっ……! あぁ……っ、サンディの、サンディのがっ……! はぅ……!!」
「ジータ……っ、はぁっ……! ン、んんっ……! あっあっ、っひ!? ウネウネしたものが絡みついて、ぅああッ……!!」
痛みはありつつも、腰を浅く上下させて気持ちイイところに硬い亀頭を擦り付けていく。血と愛液が混ざったいやらしい水の音を立てながらも、じんわりと背中に広がっていく快感の大波に腰を止めることができない。
それにしても、とジータは自分の下で女のように喘ぐ雛の言葉に再び親の顔が浮かぶ。表では猫を被っている彼の本当の姿は、娘である自分から見ても淫らだ。そんな彼なのだ。いつか我が子が誰かとこうすることを想像して、ボディを造る際はいわゆる名器、男を虜にするために念入りに造ったのか。
(ふふっ……ママなら十分にあり得る。でもそのおかげで私はサンダルフォンの“特別”になれた。ルシフェル様とはまた違う特別に……)
つらつらと考えながらも、今は目の前のサンダルフォンに集中しようとジータは切り替える。
ジータにとってサンダルフォンは親であるベリアルとは違う“愛”を抱いているのは事実。しかし。
(純粋な愛だけじゃなくて、他の理由もあってあなたを籠絡しようとしてるって言ったら、悲しむかな)
「ひぐ……ッ、ぅ、ああ……! じーた、ジータぁ……!」
鮮烈な快楽から逃れようと幼子のようにこちらに手を伸ばしてくる彼を見て胸が苦しくなる。ジータは一瞬だけ寂しげに口角を上げると、自分からも両手を伸ばして互いに握る形にした。支えにもなるし、動きやすい。
(っ……ぁ、はぁン……! さっきイキ損ねたから、もうっ……!)
ぐっぽりと深く咥え込んだまま腰を前後に動かしたり、円を描くようにすれば違った角度に肉棒が当たってジータの視界に星が散り始める。子宮がじわじわと熱くなり、今にも弾けてしまいそうだ。
ぐぷぐぷと交接部の体液が泡立ち、なめらかな肌と肌がヌルついて気持ちがいい。もう限界も近い。
一緒にイキたいとジータはサンダルフォンへと倒れ込み、両腕で彼の頭部を抱きしめると口に吸い付き、突き上げる衝動のままに雄を喰らう。
蛇のようにうねる舌でサンダルフォンの口内を蹂躙し、下半身は抜ける寸前まで腰を上げ、叩きつけるように一気に振り下ろす。そうすればごちゅんっ、と子宮口と尖端が深いキスをし、軽くめり込む感覚にじんわりとした電流がジータの身体を駆け抜ける。
「あっあっああぁぁっ……! ジータっ……ンッ、あッくっ……! またッ……で、る……ッ……!! ッ〜〜!!!!」
「ンっ……! はぁん……あぁっ……! あ……ッ! サンディの、熱いよぉ……!!」
半泣きになりながら雌声を上げるサンダルフォンは見た目は青年でも中身はどこまでも無垢で幼い。外の世界を知らぬ雛が愛おしくてたまらないと、ジータは一層深い笑みを浮かべ、縋るように背中に回された腕に応えるように自分からも深くサンダルフォンを抱きしめ──果てた。
神秘の部屋の入り口にぴったりとくっついたまま、子宮内部に向かって放たれる精は二度目だというのに勢いがあり、下腹部が内側から温かくなっていくような感覚にジータは陥る。
抱き締めあったまま痙攣が止まらないふたり。繋がったままの場所のわずかな隙間からは受け止め切れなかった雄汁が溢れ、サンダルフォンの会陰へとどろりと流れ落ちる。
ジータの意思とは関係なく秘肉はうねり、その動きは男の性を最後の一滴まで搾り取ろうとするようだ。百戦錬磨であるならともかく、粘膜同士の接触が初めてのサンダルフォンが耐えられるわけがなく。
「ジータッ、待ってくれもう……! っひ、ぃ……ああアッ! もう、でな、あぁぁ……!!」
***
甘くて優しい秘密の時間は緩やかに流れていき、ふたりは乱れたシーツの上に隣同士で体を横たえていた。仰向けになっているサンダルフォンの方は顔に疲労の色が濃く見えており、慣れない快楽に翻弄されたのが見て分かる。
対するジータはやや倦怠感はあるものの、彼よりかはマシか。初めてではあるが、豊富すぎる性知識だけは最初からインプットされていたからだろう。サンダルフォンを自分の虜にするための技は他にもまだまだあるが、急がずとも時間をかけて堕としていけばいい。
「サンディ……気持ちよかった?」
隣にいる番を見つめながらおもむろに片手を伸ばし、彼の頬を撫でれば、汗でしっとりとしていながらも造られた存在ゆえに無駄な体毛がなく、卵の殻のようなつるりとした触り心地にジータのオルディネシュタインが細められる。
まるで愛玩動物を愛でる手つきながらも心を通じあわせた存在からの愛撫はサンダルフォンの精神を癒やすのか、気持ちよさそうにしながらもジータの質問はヴァージンを喪失したばかりの彼の頬をほんのりと染めさせるには十分。
「ぅ……それは、その。…………よかった」
居心地悪そうに視線を斜めに逸らしながらの言葉は最後はか細いながらも、しっかりとジータの耳には届いていた。
──君は? と、サンダルフォンはジータと向き合う。なにしろ射精すら知らなかった彼なのだ。全てジータにやってもらい、自分はただ知らない快楽に善がっていただけ。
不安げに揺れる瞳はジータの母性本能を刺激し、コアが激しく反応する。なんて可愛いのか。思わず守ってあげたくなる愛おしさにジータはサンダルフォンの顔を胸に抱き寄せると、そのまま深く抱擁する。
梳き心地のいいサラサラな髪に指を通せばふわりと珈琲の香りが漂い、リラックス効果にジータは喉の奥で小さく笑った。
「すごく良かったよ……。サンディのが私のお腹をいっぱいに満たして──ハァ……気を抜くと漏れてきちゃいそう」
足をすり合わせれば愛し合った証がヌチャッと音を立て、ジータの腕に閉じ込められている身体が分かりやすく固まる。
変な言い方をしないでくれとサンダルフォンは目で訴えてくるが、ジータは妖しい微笑みを返すばかり。どこまでも子ども扱いである。──実際、ジータの方が少しばかり早く稼働したので、お姉さんではあるが。
「……雨、やまないね」
窓の向こうはざあざあと音を立てて雨粒が降り注ぎ、一向にやむ気配がない。
「……ルシフェル様は、任務で今日は戻れないそうだ」
「ふふっ。もしかしてお泊りの誘い?」
「そ、そういうわけじゃ……! ただ、君といたくて……。でもあまり遅くなればベリアル様が心配して迎えに来るだろう? だからあと一時間──いや、もっと短くてもいいから、」
「ベリアル様はね、意外と放任主義なの。一晩くらい問題ないよ。…………ちょっと眠くなってきちゃった。私、寝るね」
「なっ……、君ってやつは……! ……はぁ」
なかなかに抱き心地のいい枕があるのだ。ジータは一方的に話を終えると目を閉じて本当に眠ってしまった。残されたサンダルフォンは彼女の自由人さと、自分がどれだけ悩んで一緒にいたいと告げたのかを比べて呆れ気味にため息をつくが、まだまだ彼女との時間を過ごせるという決定事項に喜びは隠し切れないようだ。
ジータの目が閉じられているからと柔らかく表情を崩すとサンダルフォンもジータの背を抱き、目を閉じる。
天からの恵みの調べに包まれながら、箱庭の雛鳥たちは安寧に身を委ねるのだった。
終