第二章
私は、剣を握れなくなった。
明確な理由は分からない。あるとしたら数ヶ月前にお忍びで城を抜け出したとき、偶然立ち寄った村を魔物たちから守るために戦ったとき。
途切れることなく現れる魔物は森の中から現れ、元凶を探りに単独で森を探索した私は気づけば自室のベッドの上。
グランやルリアに話を聞けば、私は森の中で倒れていたそう。彼らが言うには元凶を断ったあと、敵の術かなにかで気を失ったのではないか、という見解。
森に入ったのは覚えている。けれどその先がどうしても思い出せない。
剣が握れなくなったのを自覚したのはグランとの模擬戦のとき。十分休んだしそろそろ体を動かさないと鈍ってしまうと、どこか乗り気ではないグランに無理を言って鍛錬場で向かい合い、剣を──私は構えることができなかった。
怯えるように体が震え、剣を握る手からは力が抜けて得物が吸い寄せられるように地面へと落ちる。自分の身に起きたことが信じられなくて、剣を拾おうとすれば芯から溢れ出る恐怖に支配され、模擬戦どころではなかった。
その後、医者にも見てもらったけど体には問題はなかった。精神面からくるもの。無理に克服しようとすればどんな影響が出るか分からないと言われ、グランやルリア、お父さまたちに無理をして剣を握る必要はないと諭された。
そして私は、剣を手に戦う道を閉ざした。