第一章
「はっ! はっ! はっ……!!」
呼吸が苦しくなっていくのを耐えながら走り、二人しかいない校舎の廊下に鋭い足音を刻みながら、未来は思考する。
あの男は異常だ。自分の知る織部よりかも危険な人物。彼が言った言葉の真偽は不明なものの、おかしな空間に囚われているのは本当だろう。……この悪夢から覚めるためには現実の自分が目覚めるしかないのか。
まずは一階の玄関に向かう。心の中では辿り着いた先に待っている答えなど分かっているのに、ほんの少しでも希望を諦めきれない。そして──落胆するのだ。
「やっぱり……駄目だ……」
中身が空な下駄箱たちを横目に出入り口である大きなガラスの扉へと駆け寄る。透明なガラスの向こう側には見慣れた光景が広がってはいるが、その扉は外と中を隔てるようにぴったりと閉まっている。
ひと呼吸置いてから取っ手へと手をかけ、力を込めてみるも、まるでコンクリートの壁を相手にしているかのようにビクともしない。
鍵が掛かっているわけでもないのに、だ。異常空間からそう簡単に逃げられるわけがない。分かっていたが、やはり絶望してしまう。
「み〜〜くちゃ〜〜ん?」
「ッ!?」
一番聞きたくない声が遠くから響く。ここから逃げることが叶わないと分かった今、いつまでもこの場にいるわけにはいかない。
行く宛もないまま、脚を動かす。悪魔と少しでも距離を取りたくて、階段を駆け上がり、とにかく逃げる。
だが未来は人間。さすがに呼吸の限界がやってきた。肩を大きく上下させ、大粒の汗を額から流しながら荒い呼吸を繰り返していると、階段の踊り場に設置されている窓が目に入った。
試しに解錠し、窓を開けようとしてみるも、やはり開かない。どう足掻いてもここから脱出するには自分が現実世界で目覚めるしかないようだ。
(酷い顔……)
同じく踊り場に設置されている大きな鏡。いつもは学校の背景として溶け込んでいる鏡面に映る自分の顔はとても疲れており、今まで見たことがないくらいだ。
(そういえば学校の七不思議でこの鏡が出てくるっけ)
どこの学校にもあるであろう七不思議は未来の通う学校にもある。その中の一つに鏡がテーマとなっている恐怖話があった。
丑三つ時。踊り場にある鏡に自分の姿を写すと、その背後には生者を恨む死者の憎悪の顔が──。
「えっ……?」
噂話を思い出していると、一瞬だけ背後に黒い男の姿が見えたような気がした。まさか!? と思い、体ごと振り返るも、ベリアルの姿はない。
あの男への例えようのない……“未知”という名の恐怖が幻覚を見せたのか。
精神的にも疲労を蓄積していく未来は背中にある鏡にくったりと寄りかかり、重い息を吐く。
極度の緊張状態のときに下らないホラー話を思い出して、脳がバグったのかもしれない。
呼吸もだいぶ落ち着いてきた。そろそろ動き始めねば。そう己に言い聞かせ、鏡から離れようとした刹那。
「捕まえた♡」
「ひっ──」
後ろから聞こえる低音。耳に吹き込まれる言葉はありえない場所から発せられていた。
震えながら首だけ動かせば、鏡の表面全体が水面のように揺れ、そこから男の腕が伸び、胸、腹部へと絡みついている。
そんな、まさか、と目の前で起きている超常的な出来事に頭が真っ白になるも、男の腕から逃げるために本能で前へと動く。しかし動けたのはせいぜいニ、三歩。金縛りに遭ったかのように脚は動かない。
「びっくりした? ウフフッ……恐怖に歪む顔も可愛いねぇ?」
「ひぅぅっ……! あなた、人間じゃ、ないの……!?」
勝手に溢れる涙をベリアルは艶めく赤い舌でべろりと舐め上げ、楽しそうに笑う。
彼は答えなかったが、それが目の前の男が人外という答えを示していた。
それでも思ったよりかは驚かなかった。最初に出会ったときからそんな感じはしていたのだ。
「特異点は人間を卒業しているからねぇ。今と同じことをしたら投げられるか、イキり勃ったモノで脇腹を刺されるか……。それに比べて未来ちゃんは本当に愛らしいよ。……食っちまいたいくらいに」
「ひ……ッ、ぁ……! いたっ……痛い……ッ!!」
首筋に顔をうずめ、乙女の香りを堪能しながら、告げる彼は言い終わるや否や少女の柔肌に犬歯を立て、食い込ませる。
皮膚を破り、噛みつかれているところから灼熱が広がり、ちりちりと内部を焦がすようだ。あまりの痛みにぽろぽろと雫がこぼれ落ち、服を濡らす。
傷口から赤い血が滲み出てるのが感覚で分かる。それをベリアルは吸い、火照った吐息を吐き出すと今度は別の場所に噛みつき、同じように吸血していく。
吸血鬼モノのホラー映画であるように今ここで全身の血を抜かれて殺されてしまうのか。それとも言葉の通り食べられてしまうのか。
「痛い、痛いよぉっ……! お願い、やめてぇっ……!」
傷つけられ、鋭敏になっている肌を舌が這うとそれだけで傷口に痛みが走る。熱に浮かされたように身体も熱い。チロチロとねぶるように蠢く舌肉となだめるように織り交ぜられる咬傷への口づけに思考が蕩けていく。
痛いはずなのに、気持ちよささえ感じ始めていた。
(あれ……? 私、いつの間に……?)
双眸を閉じ、耐えていた未来だが不意に閉じられた視界を開くと、目の前には鏡があった。鏡を背にする位置に立っていたはずなのにいつの間に。
鏡に映る己の姿は制服のボタンがいくつか外されており、ブラジャーが少しだけ見えている。さらには男の片手が服の中へと侵入しており、下着越しに胸に触れていた。
背後の男は未だに首筋に顔をうずめており、理由はどうであれ──眉目秀麗な男に背後から抱きしめられ、服をはだけられ、血を吸われて顔を赤くしている自分は信じられないほどに妖艶だった。
「フフ……噛まれて、吸血されて気持ちいいのかい? 顔が真っ赤だぜ? 未来ちゃん」
顔を上げたベリアルと鏡越しに目が合う。その赤い瞳は楽しげに歪み、煽ってくる。反射的に首を横に振って否定するも、劣化した機械のように動きは鈍かった。
「ところで未来ちゃんってヴァージン?」
「ゔぁ……?」
「処女? ってコト」
「そんなの……」
当たり前じゃないか。早い子は知らないが、一般的に自分の年齢で経験済みの子は少ないはず。
ベリアルは黙りこくる未来の瞳の揺らぎを鏡の中に見つけ、整った唇の端を優雅に持ち上げると腹部に触れていた手を下半身へと伸ばす。布に守られた乙女の場所を数回押すと腕の中の小さな身体は分かりやすく震えた。
「ならココで独り遊びしたことは?」
織部ならば今に至るまでの質問に簡単に答えられるだろうが、未来は性知識は授業でさらっと習ったくらい。なんとなく男の言いたいことは分かるものの、様々な感情が混沌として渦巻いている状況では答えることができない。
だがベリアルにとって未来の反応は想定の範囲内で口からの答えなど最初から求めていないのか、喉奥を小さく鳴らすと未来に絡みつきながら前へと回り込み、その場で膝を折る。
長い脚をM字に開くその姿は反対側から覗き込めば股間部分が痛いほどに勃起しているのがまる見えだ。
「きゃぁぁぁっ!! な、なにをして……!?」
顔の高さを股間の目の前に合わせた男に悲鳴が上がる。今まで生きてきて誰にもこんなことをされたことがないため、本当に男がなにをしたいのか理解できない。ただ、この鬼ごっこのルールからして──まだ一回目だとしても、自分にとって悪いことが起きるは確実。
(き、気持ち悪い……!)
すりすりと触り心地を確かめるように男の手が太ももを這い、ぞわりと背中に不快な痺れが走る。本当は振り払いたいのに身体は言うことを聞かず、ベリアルの一挙一動を受け入れることしか許されない。
そんな未来を放ってベリアルの両手はスカートの中に忍び込む。相変わらず少女の生肌を撫でながら親指にショーツの端を引っ掛け、さすがの未来もここまでされれば男がなにをしようとしているのかは理解し、甲高い悲鳴をあげて拒絶の絶叫を表に出すが、ベリアルは涼しい顔をしながら一気に下ろす。
膝より少し上まで下げられた真っ白な下着と剥き出しの局部を襲うひんやりとした外気は心身をも蝕み、涙がぽたりぽたりと暗い茶髪へと落ちた。
「やだっ! そんなところ汚いからぁっ……! やめて、やだったら!」
「これはキミのためでもあるんだぜ? 未来ちゃん。三回捕まったらイケナイこと──セックスをしようと言ったが、それの準備さ。いきなり突っ込まれたくないだろ? まあキミがマゾの変態で痛いのが好きっていうなら別だけど」
「っ……」
最終的に待っている結末に吐き気が込み上げてくる。好きでもない人、人間ですらない化け物との行為。果たしてその行為にどれほどの痛みが伴うものなのかは分からないが、少しでも軽減できるのなら……そもそも、この状況で逃げられるわけがないので、彼が飽きるまでこうしているしか未来にはできないのだが。
すっかりと大人しくなった未来にうっそりと目を三日月に歪めると、ベリアルは程よく肉が付いた太ももに吸い付く。唇に密着する柔い肌を舌先で舐め上げ、それはどんどん上へと向かう。
男の湿った息が肌にかかり、震えを止めることができない。心臓も痛いほどに鼓動を打ち鳴らし、はっきりと耳に聞こえるほどだ。これから自分はどうなってしまうのか。
恐怖と緊張。この二つを極度に感じながらベリアルを見下ろしていると、ついに彼の頭がスカートの中へと消えた。
(やだ……! 匂い嗅いでる……!?)
鼻先を割れ目へと押しつけ、大きく息を吸われ、まさかの変態的行為に声が引きつる。
寝る前にお風呂入ったから大丈夫だよね? 脚が動くなら今すぐに逃げるのに…! などの思いが浮かんでは消えていく。
「ハァ〜〜……」
ベリアルはというと、高級ワインを嗜むように数回香りを楽しんだ果てに満足げに息を吐き出す。
甘いボディソープと乙女の幽香は馥郁たる香りとなって身体の中へと入り込み、媚薬として全身を巡る。
その証拠に彼の陰部の膨らみがまた一つ大きくなった。
「ひぁぁっ!?」
突如として襲うぬめり快楽。それが舌で舐められた感覚と未来が気づくのは数秒後。その間も堅く閉ざされた赤い扉を優しくノックするように肉厚な舌が幼い膣前庭を行ったり来たり。
初めての快感に戸惑い、混乱している瞬間にも身体の方は素直に反応を示し、腹の奥から甘い液を滲ませて獣へと癒やしの雫を与える。
啜れば啜るほど溢れる甘露と、少女から絶え間なく発せられる嬌声にもっと聞きたいとでも言うように舌は淫らな秘肉を貪っていく。
溝に溜まったつゆを舌で掬い取られ、唾液と愛液によって濡れに濡れた肉花びらを軽くはまれれば痺れるような快感電撃に全身の振動を止めることができない。
(ひぅぅ……! だめ、こんなの気持ち良すぎて変になっちゃう……!!)
怯えの感情を軽々と超える悦楽。もし身体が自由だったならば、今頃は立っていられずに座り込んでしまっている。それくらいにベリアルから与えられる舌快楽は強く、まるで甘美な毒のようだ。
「未来ちゃんのココ、すごく綺麗だ。色も初々しい桃色で、快楽なんて知りませんって顔。この夢から覚めたらもう元のカラダには戻れないかもねぇ」
羞恥心を煽る言葉に顔が真っ赤になる。もし目が覚めてもこの記憶が鮮明に残っていたらと思うとどうにかなってしまいそうだ。
「やだっ……やだぁ……! ひゃぅぅっっ!? あっ、なに……んっ、んふぅぅぅ!?」
一本筋をねぶるばかりだった舌が新たな動きを見せた。線の上部に鎮座する小さな肉芽。皮を被ったソレを指先で優しく剥くと、現れた快楽核を舌の先でチロチロと弄ぶ。
今までとは違うもっと直接的な媚電撃が下半身から這い上がり、視界の端に星が散る。割れ目を舐められただけでも気持ちよかったのに、それを簡単に凌駕するほどの快楽。耐えるということすら、未経験の処女にはキツいものがあった。
「フフッ……想像通りのイイ反応をしてくれて嬉しいよ」
「そこっ、ひぁ……ああっ! やめてっ……ァっ!? あんっぁぁぁ! 吸わ……ない、でぇっっ……!!」
スカートによって隠されているがゆえに次になにをされるかが見えず、快感を増長させていく。
舌の先端での戯れるような触れ方から変わり、今度は口の中へと招かれると味わうように舌で舐められながら吸われ、淫らな悲鳴が階段に響き渡る。
(こんなの、無理……! あたま……まっしろに……)
気持ちよすぎて全身の力が抜けていき、頭の中で考えていたこと全てが悦楽の波に飲み込まれ、押し流されていく。新たになにかを考えようとする気力さえ白に塗り潰されて、どうでもよくなっていく。
「あっあっぁぁ! なにか来ちゃうぅぅ! やだっ、こわい、だめっ、だめぇぇぇぇぇっ!!!!」
張り詰めていた気配が弾け、意識が一瞬飛ぶ。少女器官の一点がビリビリと痺れ、雷に打たれたように全身痙攣が止まらない。
訳も分からず涙がこぼれ、はふはふと短く荒い呼吸に身を任せていると、ベリアルはスカートから頭を出して未来を見上げた。
その顔は心底楽しいと言わんばかりの奸悪なモノだ。
「へぇ……未来ちゃんのイキ顔、結構ソソるねぇ。とろっとろに蕩けて、雄を誘う雌の顔をしてるぜ? フフッ。まあイクのがちょっと早いんじゃないかとも思うけど、ハジメテだから仕方がないか」
「……? ……??」
「気持よすぎて気を遣っただろう? それを“イク”って言うんだ。絶頂、と表現した方がキミには分かりやすいかな」
夢見心地の薄い意識で絶頂というものを理解する未来ではあるが、同時にひと区切りついたのでもしかしたら解放してもらえるかも……という希望が芽生えた。しかし、その儚い願いはすぐに砕かれる。
性的な知識が皆無の初物少女に簡単に説明し終えたベリアルだがまだまだ遊び足りないようで指を鳴らすと、未来の手が勝手に動き出す。
(えっ!? なんで、なんで手が勝手に……!?)
両手でスカートの裾を摘み、吊り上げていく様子はまるで操り人形。空色の布が持ち上げられたことで再び股間に顔をうずめる男の頭部がよく見えるようになり、さらに鏡には自分でスカートを持ち上げて男に淫性器を舐めさせている卑猥な女子○学生の姿が映っていた。
「んっ、あぁンッ! 待って、まだ敏感になってて、あっ、ああぁぁ!」
強制絶頂をくらったばかりで鋭敏になっているというのにベリアルは責めを再開する。今度はわざを大きな音を立てて桃色性器をむしゃぶり、クリトリスをくすぐりながら不意打ちのようにその長く分厚い舌を閉ざされた秘裂へと捩じ込んだ。
しなやかな肉が胎内へと入り込み、まるで意思をもった別の生き物のように蠢き、びっしりと連なった肉襞を丁寧に愛撫すれば外を舐められたときとはまた違った快感に未来の口から悩ましげな声が漏れる。
誰も入ったことのない身体のナカ。そこに異物が入り込み、気持ち悪いという感情と下品な熱が下腹部をぐるぐると渦巻き、未来を奈落の底へと引きずり込んでいく。
(舌がっ、アソコの中を舐めてっ、掻き回してるっ……! ンッ、うぅぅ……!! 変な感じなのにっ、お腹が熱い、熱いよぉ……!)
ちらり、と俯きがちな顔を上げれば目の前に存在する大きな鏡には茹だったように顔を赤面させ、両眼からは涙、口からはだらしなく唾液を流している自分の姿が否応なしに目に入る。そして下半身にはご馳走にありつく犬のように顔を突っ込んでいる美丈夫。
まさか、本当にこれが自分の姿なの……!? と思わずにはいられない。
見ていられなくなって、目を背けたところで視界の中に赤い宝石が輝く。視線を合わせれば悪魔の男が膣内を蹂躙しながらこちらの方を凝視していた。その血の瞳を見ていると不思議なもので、吸い込まれるような感覚に陥る。人外の魔力なのか。目を逸らしたくてもできない。
(なに、これっ……!? この目を見ていると身体が疼いてたまらない……!)
妖しい光を宿す魔眼の魔力は未来の肉体に新たな変化をもたらす。全身──特に子宮がうずうずとしてたまらないのだ。感覚もさらに鋭さを増し、膣壁を舌でくすぐられるだけで官能熱がほとばしり、絶頂へと急速に近づいていく。
「ひゃあぅぅぅっ! ひゃんっ、やぁっ、そこぉっ! ベロベロだめぇ! またいく、イッちゃうからぁぁぁ!!」
未だに──ある意味では純潔のままの肉体は感度が数倍にもなったかのように激しく乱れ狂う。つい数分前では考えられないくらいに嬌声も大きくなり、学校全体に聞こえるのでは? というレベル。獣の咆哮にも近いか。
ぬめり快楽による涙を流すその目はもはやどこを写しているのか分からぬくらいに潤み、雌声を上げ続ける未来を満足そうに見つめながらベリアルはさらに奥深くへと舌を潜り込ませる。人の姿をしつつもその中身は化け物だからこそできる芸当だ。
硬く閉じられた子宮への入り口。張り出した口周辺を重点的に愛すれば愛するほどにその行動への対価として処女蜜が湧き出し、膣口から溢れ、ベリアルはなんなく己の身体に吸収していく。
自分が特別視している少女の別の姿。容姿は少しばかり違っても、声は同一のモノ。特異点の敵であるベリアルはその甘い少女声から辛辣な言葉しか浴びせられてないために、未来がよがり狂って喘ぐ様を見て加虐心が満たされていくのだ。
「あんっ! や、ンあぁぁぁっっ!! アソコ舐められてイクぅぅぅ!! もう止まんない、止まんないよぉぉぉぉぉぉっっっ!!」
すでに自由になっている手は無意識の内にベリアルの髪へと伸ばされ、掴むと雌性器へと押し付ける。ほぼベリアルの顔に乗っている状態だ。
「ッ……フフフフフッ……!」
無理やり押し付けられている水密桃からは濃厚な性汁がブシャリと弾け、ベリアルの美しい顔の半分を汚すものの、彼は逆に喜んでいる始末。
自分が今、なにをしているのかさえ舌アクメに夢中になっている未来には分かっていない。それが哀れでさらに愛おしさに拍車をかける。
「ぁ…………あぅ……」
快楽絶頂にその身を顫動させる未来だが、体力をかなり消耗したのかその息は疲れ切っている。
舌が彼女の胎内から抜け出すときに名残惜しそうに内部をなぞっても、反応は薄い。
ようやく未来の初々しい股から顔を離した男の顔は口の周辺、頬まで彼女の蜜で淫靡に輝いており、軽く口元を指で拭うとそのまま口の中へ。
何度口にしてもまた欲しくなる女蜜をゆっくりと味わい尽くしたところで顔に付いた残りの汚れを魔法で取り、中途半端に脱がしたままの未来の白いショーツを元通りに穿かせてあげた。
本来であれば自らの力では立っていられない未来だが、ベリアルの術によって未だに立ったまま。首は術をかけられていないのでだらんと力を無くし、光を失ったその目は虚空を見つめている。
「お〜い、未来ちゃ〜ん」
試しに彼女の目の前で手をヒラヒラと動かしてみるも、反応はなかった。仕方がないので術を解き、倒れないように抱きとめると、踊り場の壁に寄りかからせてやる。
「聞こえてるか分からないけど、しばらくは休憩タイムにしてあげるよ。キミの体力が回復したら、また遊ぼう」
がっくりと俯いたまま動かない未来の髪にとびきり優しい口づけを落とすと、ベリアルは笑いながら黒い霧に紛れて消えていく。その声は霧が霧散するまで響き、やがて静寂へと戻った。
鬼ごっこという名のベリアルの暇潰しは始まったばかり。さらなる淫地獄が幼い少女を襲う。
──悪夢はまだ、覚めない。