ファーさん♀のファーさん♂をお世話をするベリアルの話

「オハヨウ、ファーさん。そろそろ起きないと」
「…………」
「……まあ、いつものことなんだけどね」
 ルシファーの寝室。研究所所長を務める彼女の部屋に白い軍服の男の姿があった。彼の名前はベリアル。所長補佐官として稼働している天司だ。
 大きめなベッドの上で眠るルシファーはベリアルの声に一切反応を示さない。毎回のことなのでベリアルは苦笑すると、ルシファーが眠っているのをいいことに窓から入り込む太陽の光を受けて輝く銀髪に軽く指を通した。
 さらさらの髪は一度も引っかかることなく、ベリアルの指の間から落ちていく。しばらくそうして弄っていると、いい加減に起こさないとまずい時間なのかベリアルが動き出す。
 ルシファーに声をかけながら女体を隠す掛け布団をめくれば、レオタードタイプの黒いインナーに包まれた上半身がベリアルの前に現れる。
 ルシファーと同じ顔を持つ天司長ルシフェルと比べるとスレンダーな体だが、逆に彼女らしいとベリアルは思う。
 研究所に篭りきりというのもあるかもしれないが、肌はなめらかな白磁を思わせる。
 どんな女も霞むほどに美しい体だと思うのは、ベリアルが彼女の手によって造られた存在だからか。
 無防備な救世主の姿にベリアルの呼吸が乱れ、頬に朱が差す。自分自身を焦らすようにゆっくりと布団を剥いでいくにつれて彼の熱視線は布に隠された場所に注がれる。
 願わくば、彼女の腹から産まれたかった。薄い腹を見て思いながら緩慢な動きでさらに布団を肌から離していけば、とある部分を見てベリアルの動きが止まった。
 布団を手にし、真顔で絶句する彼の顔はなかなか見れるものではない。
 狡知を司り、あらゆる知識が詰まっている脳は目の前にあるモノを理解できないでいた。
「ん……。おいベリアル、なにを見て……」
 不機嫌を表現した低い声の持ち主はピタリと動かない被造物に対して眉をひそめると、自分も彼の視線の先にあるモノを見る。そして、ベリアルと同じように言葉を失った。
 ベリアルとルシファーの視線の先にある場所は女性にあるには不自然な膨らみ。ショーツやインナーを押し上げる屹立。女性であるルシファーにはありえないモノ。
「……ファーさんって男だったの?」
「ふざけるな。……チッ。昨日の星晶獣の影響か」
「あぁ……なるほど」
 ルシファーの身の回りの世話をする上で彼女の全裸を見ることもあるベリアルが呆けたことを言う辺り、相当な衝撃なのだろう。
 肝心のルシファーは昨日の出来事を思い出しながら口にすれば、ベリアルも納得したのか、同意した。
 たまにあることだ。星晶獣の暴走。それに巻き込まれた。
 特に大きな怪我もなく、ルシフェルやベリアルが処理したがその影響が今になって出た、というところか。
 ようやく冷静さを取り戻したベリアルは内側から突き上げる衝動が顔に出ないように努めるが、膨らむ期待にどうしても口元が緩んでしまう。
 いつも密かに妄想していた。愛するルシファーに男性器があったらと。その猛りに貫かれ、胎内に彼女の体液を腹が膨れるまで注がれたい。
 星の民を接待する度にこの精液が彼女のモノならばどれだけいいかと思ったか。
 そんな淫らな想像が今、叶おうとしている。おそらくこれは一時的なもの。いつ消えてもおかしくない。ならばある内に彼女に女にされたい。
「……忌々しい。切り落とすか」
「待って待って。物騒だなぁファーさんは。永続的なものじゃないと思うから様子を見よう。とりあえず一回抜いてみる?」
「抜く?」
「そう。射精してみればなにか変わるかもしれない。ファーさんは寝てて。オレが全部ヤるから」
 女性である己に異性器が生えたことに不快感を示すルシファーをなだめ、ベリアルは胸の奥に歓喜の気持ちを抱えながらベッドへと上がった。
 こんもりと盛り上がった陰部を見下ろし、唾液が溢れ、口の端を伝いそうになるのをこらえ、音を立てて飲み下す。
 一言断ってからルシファーの脚を開き、膝をついたまま屈み込み、熱気を感じる場所の布を目の前にしてベリアルは重い息を吐き出す。
 男女問わず誰かの性器を前にしてここまで興奮したことはない。ルシファーだからこそ、脳が破壊されそうなくらいに昂ぶるのだ。
「ファーさん。触るよ」
「……早く済ませろ」
「オーケイ、任せて。あっ……♡」
 許可を得て黒いインナーをショーツごと横にずらせば平均よりも大きな雄勃起が飛び出し、至近距離にあったベリアルの頬をなぞりながら反り返る。
 先走りが滲んでいたのか、触れた場所が濡れ、ベリアルの目尻が下がった。
 美少女に付いているのが酷くいびつな性器を前にしてじくじくと腹の奥が疼き、切なくなる。早く欲しい。串刺しにされて甚振られたい。彼女に手酷く抱かれたい。様々な願望が浮かんでは蓄積される。
 極悪の滾りに向けていた視線を再び秘処へと戻せばおそらく──否、そうであってほしいと切に願うが、男を知らぬ女性器が目に入った。
 グロテスクな色をしている男性器と違って女性器は色も形も綺麗。だが挿入したいとは思わなかった。自分も含め、男など知らなくていい。
 この先誰にも穢されることがありませんように。そう希求しながらもルシファーの熱杭に犯され、穢されたいという欲望が渦巻き、ベリアルの下腹部が痛みを感じるほどに腫れ上がる。
(ファーさんのちんぽ……♡)
 片手で竿に触れ、愛おしいと頬擦りしながら残りの手は自身のベルトへ。ガチャガチャと音を立てながら外し、ボトムと下着を下ろすとその手は白くまろい臀部の間にある窄まりへと伸びる。
 ルシファーとの交接時にスムーズに受け入れられるように雌穴を指でほぐしながら、上の口を大きく開けて彼女の逸物を喉奥まで一気に飲み込んだ。
 巨大な肉の塊が最部を抉り、嘔吐きそうになりながらも丁寧な愛撫を施していく。
 ベリアルの愛撫に対してルシファーは特に喘ぎ声を発したりせず、冷たいアイスブルーの双眸で勝手に発情する被造物を見つめるばかり。
 彼のフェラチオで乱れなかった者は今までいなかったので、そこは彼女らしいとベリアルは肉竿を頬張りながら嬉しそうに笑む。
「ふぁーふぁん、ひほひいい?」
「…………」
 熱く潤んだカーディナルレッドの瞳で造物主を見つめながら喉をキュッと締めたり、唾液まみれの幹や先端を真っ赤な舌で舐め回したりしながら聞くも、彼女は特に大きな反応を見せず、普段と変わらぬ様子。
 もしかしたら不感症なのかもしれない。考えながら口淫に耽り、同時に淫穴を拡げていく。
(ファーさんがイく前にオレがイッちまいそうだ……)
 ペニスを舐めているだけなのに目玉が引っ繰り返りそうになる。脳髄が痺れ、矢継ぎ早に生み出される快楽物質が全身へと広がっていく。
 このまま一回達するのも……。そんなベリアルの思考を読み取ったのか、今まで無言だったルシファーが口を開いた。
「ここで出すな。汚れる」
「さすがファーさん。オレの考えてることが分かるんだねぇ。……ベッドも、ファーさんの服も、全部オレが綺麗にするのにダメ?」
「一滴でも射精してみろ。出した瞬間お前は廃棄だ」
「ファーさんってこういうところ潔癖だよねぇ。……オーケイ。善処するよ」
 相手のことなど考えない物言いはまさに氷の女王。背筋にゾクゾクと走る甘やかな電流に体をぶるりと震わせると、ベリアルは体を起こした。
 ルシファーが欲しくて欲しくて頭がおかしくなりそうだ。今までどんなに性的興奮をしても常に理性があったのに、彼女相手では本能に身を任せて乱れ狂いたくなる。
 中途半端に脱いであるボトムと下着を取り去り、下半身を露出させるとビクビクと我慢汁を垂らすベリアルの雄が現れた。
 大きさも太さもルシファーの方が少しばかり上か。雄としての格を見せつけられ、普通の男ならば気後れするだろうがベリアルにはコレさえも興奮のスパイスになる。
「……ファーさんのペニスと一緒にオレの扱いていい?」
「去勢されたいのか?」
「ファーさんの手でされるなら大歓迎さ。……ははっ。そんな怖い顔しなくても」
「……これで終わりか? 全部自分がやると言っていたが口だけか」
 ああ言えばこう言うベリアルにルシファーは目を閉じて嘆息すると、ベリアルは「まさか」と呟く。彼にとってはまだ始まってさえいない。
 ルシファーの下腹部に跨り、巨砲を手で固定すると見せつけるように腰を下ろしておく。さすがのルシファーも粘膜の触れ合いには反応を示し、微かに眉が動く。
 柔らかい肉がルシファーを包み込み、前立腺を擦りながら行き止まりまで侵入する。腹が苦しく感じるほどに内部を満たす熱に、ベリアルは感嘆のため息を漏らした。
 何度願ったか。彼女に陰茎が生え、それに貫かれる妄想。それがいま現実になっている。
「オレのナカはどう? ファーさん。気持ちいいって評判なんだぜ?」
「なるほど。これが肛門性交の快感……。悪くはないが、想像の範囲内だ」
「ファーさんってやっぱり不感症? オレに喰われた奴らは全員善がり狂うんだが……まあいいや。動くよ、ファーさん」
 ルシファーが快楽に酔う姿はそれはそれで良いのだが、なかなかそうはいかない。どこまでも彼女らしい反応に口角を上げると、体重をかけないように気をつけながらベリアルは動き出す。
 味わうように腰を上げ、己のイイところを狙って落とす。
 既知の言葉では捉えられない感情を向けている相手のモノだからか。信じられないほどに気持ちがいい。
 今までの性行為では肉体的な満足感はそれなりに得られたが、精神は満たされることがなかった。
 それがいま、心身ともに満たされていく。空っぽの杯に少しずつ水が溜まるように。
「はっ♡ あっ♡ ファーさん♡ ファーさんっ♡♡」
 瞳は溶けたルビーチョコレートへと変わり、その目の奥には魅了状態を思わせるハートマークが見えるようだった。魅了に完全な耐性がある彼が、だ。
 頬は紅潮し、だらしなく開かれた口からは舌が覗き、舌先からはぼたぼたと唾液が垂れている。
 ルシファーの凶器に貫かれる度に下半身から脳天へと電撃が走り、あまりの気持ちよさに訳が分からなくなる。
 彼としては性行為に慣れている自分がルシファーを導くはずだった。それが今では余裕の“よ”の字も見られないほどに乱れていた。
「ぁ、ぁア゛っ!♡ ファーさんのちんぽ気持ちよすぎてっ♡ 腰止まんねぇ♡♡ あっ、ヤバ……! ッ〜〜!♡♡」
 それは不意に訪れた。限界近くまで膨らんでいた快楽の風船が弾け、射精の伴わないドライオーガズムがベリアルに襲いかかる。
 胎内がうねり、叩きつけられた雌絶頂に目の前がチカチカと明滅する。内側からは多幸感が溢れ、ベリアルを満たしていく。
 こんな快楽知らない。知りたくなかった。こんなにも満たされた快感を知ってしまったら、他の者相手に肉体的にも満足できなくなってしまう。
 倒れそうになる体をベッドに両手をつくことで支え、俯きながら体を震わせているベリアルを見つめるルシファーは不満そうだ。被造物の分際で先に達するとは、と。
「ぁ、え……?」
 呼吸も落ち着いてきたので動こうとしたときだ。目の前がぐるりと回った。
 うつ伏せに倒され、腰辺りには小さな手。ルシファーによって体勢が逆転されたと脳が理解するのと同時だった。彼女の肉槍の形に空いたままの孔に太茎がねじ込まれたのは。
「ぉごっ!? お゛っ!? ファーさんいきなり、んぁあ゛ッ!!♡♡ お゛ほっっ!」
「交接時までも姦しいとは。少しは静かにできないのか?」
「無理っ! ムリぃっ……! ん゛ぁっ゛! んぎっ♡ ファーさんの雌ちんぽにぃっ……!♡ んぐっ、メスにされてるぅ♡」
 腰使いは初心者で気遣いの一切ない乱暴な抽送だが、被虐嗜好もあるベリアルにとってはたまらないものがあった。
 さらには今までルシファーが体を横たえていた場所に自分の肌が触れ、彼女の温もりや香りだけで昇天しそうだった。
 腰に──軽いとはいえ、全体重をかけられ、ベリアルの口からは濁った喘ぎがひっきりなしに上がる。ルシファーには悪いが静かになど到底できないし、そもそもするつもりもない。
 激しい肛虐と体勢の苦しさから枕は彼の口から溢れる口内分泌液で濡れに濡れ、一部だけ濃い色に染まっている。
 目玉も上を向き、掘削に合わせて口から汚い声が絶え間なく発せられ、寝室に溶けていく。
 レースカーテン越しにきらきらとした日の光が差し込む部屋に似合わない声だ。
「ん゛ッお゛♡ ぉ、はへっ♡ ファーさんもっどぉ゛、もっと奥までっ♡ ひぃ♡ お゛っ、お゛ォっ♡♡」
「黙れ。私に指図するな」
 上から押さえつけられ、ドスッ! ドスッ! と遠慮なしにぶつけられる長大が男のスイッチを潰しながら一番奥をノックしてくる。
 雄子宮を突き破ろうとする激しい動きにもっととねだると、冷たい答えが返ってくるもベリアルを壊す勢いで滅多刺しにされ、ケダモノの声で狡知の男はいななく。
「あ゛っ! ぁ! ファーさんのでっ゛、ア゛っ!♡ ン゛ぉっ♡ ファーさん、イぐ……の?♡♡」
 結合部からバチュ、グチュ、と卑猥な水の音と肌と肌がぶつかる乾いた音がベリアルの鼓膜を犯していると、彼の腸内に埋まっているルシファーの分身が一層大きくなった。
 よく知った感覚に首だけで振り返れば、ルシファーの雪肌は若干赤くなり、額から一縷いちるの汗が流れ落ちた。
 見たことのない彼女の姿にベリアルの興奮は留まるところを知らない。性的な部分に潔癖の気がある造物主がベリアルをまるで──排泄のための便器のように扱い、射精のためだけに突き刺している。
 表情は無表情に近いので分かりづらいが、その氷の目の奥は欲望がマグマのように煮えたぎっていた。
「んグッ♡ ん゛ッ! んン゛ッ!♡」
 こちらを見るな、と言うようにルシファーはベリアルの髪を乱暴に掴むと、そのまま枕へと押し付け、くぐもった濡れ声に合わせて粘着質な音のスピードは早くなり──弾けた。
 ベリアルが達し、雄膣が収縮するとルシファーは短く唸り、熱いほとばしりがベリアルの胎内に吐き出され、雄子宮を満たす感覚に男はぶるぶると体を痙攣させた。
 普段から荒淫に身を沈める彼。まともに思考できない中、今までの経験の中でこんなにも幸福感に満ちた行為はあったか? と思えばすぐに否定される。
 体の縁から溶けてしまいそうな感覚。身も心もドロドロにされたベリアルは動くことができない。
「あ゛ッ!♡」
「……消えないか。私は風呂に入る。出てくるまでに片しておけ」
「はぁい……♡ ファーさん♡」
 ルシファーが離れていき、ぽっかりと空いたままの孔からは名残惜しそうに白濁が漏れ肌を伝う。
 出すものを出しても消えぬ陰茎を見てルシファーは軽く息を吐き出すと、ベリアルを気遣う様子も見せずに後始末をしておくように命令し、ベッドから下りて浴室へと消えてしまった。
 一人残されたベリアルは頭では動こうとするのだが、体が言うことを聞かない状態だった。叶うならばこのまま眠ってしまいたい。ルシファーの残り香と体温、胎内に感じる熱を思いながら……。
 せめて一分だけ。その時間が過ぎたら行動を開始しよう。そう自分に言い聞かせると、ベリアルは静かに目を閉じた。