放課後。部活も引退した身なので授業が終わると未来は日課になっている不破の家へと来ていた。
いつもは特にすることは決まってないものの、今日は違うために未来の表情は固め。
昨夜の会話。月曜日、学校が終わったらいつもどおり不破の家に行くには行くが、そこでする内容は勉強ではなく性行為。
電話での行為は未来の不破に対する劣情をさらに膨らませ、直接会いたいと願った結果現在に至る。
「っ!? 不破君……!」
不破から渡されている鍵で玄関の引き戸を開ければ見える姿に未来は華奢な肩を震わせた。家にいるだろうとは思っていた。しかしこうしてすでに玄関にいるとは思いもしなかったのだ。
「そろそろ来る頃だと思っていた」
「う、うん……」
腕を組み、壁に寄りかかっていた不破が姿勢を直すのを見て、未来は座って靴を脱ぎ始める。いつもならこんなにも変な気分にはならない。最初から“そういうこと”をするのだという目的で来たからこそ妙に緊張してしまう。
「未来……」
「ぁ……、不破く……、ん、んっ……ぁ、あ……」
座って靴を脱ぐため当然不破に背を向ける形になり、小さな背を彼女に抱きしめられるとすぐに顎を取られた。斜め上へと向けさせられた先に見えるのは透き通る青。
いつだって不破の瞳は綺麗だ。冬を連想させる冷たさだというのにずっと見ていたいくらいの輝き。その綺羅星の中に情を宿す熱が見えた、と感じた刹那未来は唇を塞がれた。
潤いのあるふっくらとした感触。下唇を食まれ、啄むような接吻はより不破の唇の柔らかさを未来に分からせ、その先を願ってしまう。
未来の方から口を開きもっと、とねだると行動の意味を理解した不破の舌がすぐに侵入してきた。唾液を纏い、ぬるついた赤い舌同士が絡み合って卑猥な水音がくちゅりくちゅりと奏でられる。
はふはふと自然と鼻息が荒くなり、制服に包まれた、たわわな果実が上下に揺れて不破は視界の端で目に止めるもギュッと両目を閉じてキスに精一杯応えている未来が知るところなし。
不破の舌が蛇のように口内を蹂躙し、激しさにされるがままになりつつある未来はキュンキュンと反応を示す陰部にもどかしげに足を閉じる。
昨日の夜、電話越しに不破とした未来ではあるが、結局は自慰であるために不破とするときと同じ満足感は得られず。
ある意味では今の今までお預け状態なのでそのまま内腿を擦り合わせれば微弱ながらも秘部に悦を与え、秘裂の奥からは愛液が溢れ出して下着を濡らしていく。
「あッ、ン……! はひゅ……ぁ、だ、だめ……汗、かいちゃったから……。おふろ、貸して……」
唇が解放されると不破の片手は未来のスカートの中、汗と体液でじっとりと濡れている下着のクロッチ部分をなぞった。
ビリッ、と甘い電流が走るもそれが未来の理性を少しだけ取り戻させ、制止するように不破の手首を掴むと汗を流させてほしいと願った。
その言葉を発する口も唾液で濡れており、瞳は潤んで頬は火照っているために相手の情欲を煽るだけ。
「俺は別に気にしない」
「私は気にするよ……。ね、不破君。一緒にはいろ……?」
相変わらずの堂々とした態度に思わず眉尻が下がってしまうが、未来の方から触れるだけの可愛らしいキスを贈りながら誘えば不破も悪い気はしないのか大人しくスカートから手を抜いた。
「……まあ、お前が風呂を所望することは想定の範囲内。すでに湯の用意はしてある。鞄を居間に置いたら風呂場に来い」
***
あっさりと解放された未来は言われたとおり、今ではすっかりと慣れ親しんだ居間に荷物を置くと足早に風呂場へと向かう。
不破家は平家で彼女ひとりで住むには広すぎるほどに広い。現に使われていない部屋も多いが、織部が定期的に掃除をしているために清潔に保たれていた。
ここに初めて来たときはどこになにがあるのかさっぱり分からなかったが、不破と本当の意味での恋仲──すらも飛ばして婚約者状態の今では主要な場所は頭の中に入っていた。
迷いなく風呂場がある場所の引き戸の前で止まると、ひとつ深呼吸。
もう不破君は入っているかな? そんなことを思いながら引き戸の取っ手部分に手をかけ開けると、眼前には腕を組んで立つ不破の姿が。
どこかデジャヴを感じながらも待っていてくれたことが嬉しくて、自然と頬が緩んでしまう。つい数ヶ月前までは彼女に対して“怖い”以外の感情を持つなんて考えもしなかったのに。
「待っててくれたんだ?」
脱衣所に入り、後ろ手で引き戸を閉める。
「ああ」
「ふふっ。こういう小さいことでもなんか嬉しいなぁ。…………あの、服を脱ぐから後ろを向いててもらえると……」
和の趣を感じさせる空間には洗面所に洗濯機、こまごまとした日用品が棚に並び、生活感はあるもののすっきりと纏まっている。
綺麗に整理整頓された部屋は広々としており、自宅との違いを感じながらも未来は服を脱ごうとしたが、その手はワイシャツのボタンに伸びたまま止まってしまう。
風呂に入るのだから裸にならなければならない。つまり、服を脱ぐ行為が必要。
しかし不破は未来をジッと見つめたまま動こうとしない。彼女に裸を見られている身ではあるものの、服を脱ぐ過程を観察するような目つきで見られると恥ずかしい。
ましてや見せつけるように、誘うように脱ぐなんてできるわけがなく。控えめな声と表情でお願いすれば不破は腕組みを解き──後ろを向くかと思いきや、そのまま未来の背後に回ると逃げられぬように両腕を回し、鏡の前に押し出す。
「ひゃ……!?」
大きい鏡は未来の頭上から膝上までを映し、不破に抱きしめられている自分の姿を見ることに。真横にある顔は小さく、鏡越しに黄星と青星が交わる。──嫌な予感がする。
そう断定したとき、腹部に絡む手の片方が服越しに肌をいやらしく蛇行しながら撫で上げてきた。
膨らんだ乳房の輪郭を繊細な指先がなぞるに合わせてぴくぴくと未来の身体は振動し、小さな口からはどこか期待がこもった熱い息が漏れる。布の上からでもこれなのだ。生乳に触られたらどうなってしまうのか。
「脱がしてやるから大人しくしていろ」
「ひっ、ぃッ……! 耳は、だめぇ……!!」
唇を耳孔に押し当て、直接吹き込まれる低音と吐息に腰が砕けそうになりながらも、未来は足に力を入れることで耐えた。
昨日の電話で耳が弱いことは知られている。目と鼻の先に弱点が無防備に晒されているのだ。不破に攻めないという選択肢はない。
「ぁ……! ン、ふ……、ぁ、あ……! ひぅっ……、や、弱いからぁ……!」
電話でイメージしていた行為が現実となって襲いかかる。耳の外側に舌先が這い、背筋が粟立ち膝が笑う。湿った息が直接吹き込まれた際はついに崩れそうになったが、腹部に回されている腕一本で抱えられ、膝が床につくことはなかった。
(やだ……すごくエッチな顔してる……。私……)
涙で濡れた視界に広がる鏡。その中の自分は白銀の女神の腕の中で蕩けた顔をしており、本当に自分の顔なの? と思ってしまうほど。
普段ならば絶対にしないかんばせ。見せるのは、そしてそういう顔にさせるのは、不破だけ。
この先彼女以外の人なんて考えられない。幼少の頃から今に至るまで焦がれ続けた想い人なのだ。夢を見て泣くほどに。それほどに強い感情を抱く相手からの愛撫にすぐに堕ちてしまうのなんて当たり前。
鏡に映る淫らな少女の制服のリボンが床に落ち、焦らすような緩慢な動きでシャツのボタンが外されていく。
不破の呼吸音や衣擦れの音を聞きながらぼうっと、鏡を見ているとただ服を脱がされているという行為が酷く背徳的に思え、下腹部が反応し始める。
汗を流してから、と不破の手を止めたことで中途半端になっている“そこ”。今にも自分の手が伸びそうになるほどに疼く陰部からはとろぉりとした蜜が滲む。
「んッ、んっ……!」
トップスを脱がされ、さらにはキャミソールやブラジャーまで。瞬く間に上半身を裸に剥かれた未来の乳房はハリがあり、瑞々しい果実を思わせるほどの膨らみ。その中央に鎮座する紅い飾りは、
「乳首が勃っているな。ただ脱がせてやっているだけだというのに。──やらしい女」
「ひぅぅぅッ! はっ……ちが、不破君が……」
片方の乳首を指で捏ねられ未来の背がしなる。不破の指摘どおり乳頭は凝り固まり、愛してほしいように主張していた。
そんな鋭敏になっている先端には些細な刺激も快楽と若干の痛みとなり、少女に襲いかかる。
「俺のせい、と? そんな顔をして言っても説得力皆無だがな」
鏡の中の不破がこちらを見つめてくる。彼女の小さな顔の隣にはあられもない面様をした少女──というよりかは、オンナがいた。
今にも雫が零れてしまいそうなくらいに濡れた榛色。紅潮した顔に薄く開いた口は熱のこもった呼吸を繰り返し、その度に胸が上下している。
(ひゃうンッ! ん、んぁぁ……っ……! き、たっ……、やっぱり、不破君に揉まれるとすごく気持ちいいッ……!)
快楽ポイントを熟知しているかのように白魚の手が強弱をつけながら未来の膨らみを揉み込む。
自由になっているのが片方の手だけなので必然的に片胸だけ愛される形ではあるが、びくびくびくっ! と幼さが残る身体が愛撫に合わせて反応を示す。
「ひぃっ! ふ、ぅン、あぁぁっ……! くすぐったい、よぉ……」
腹に回されている手が腹部を撫で回し、脇腹を触れるか触れないかの加減で通り過ぎたときには声が上ずってしまった。元々くすぐったさを感じる場所。不破に触れられるだけでそこは性感帯のひとつとなる。
不破の手が動くだけで未来の身体はバイブレーターのように震えが止まらず、ようやくスカートの中に片手が忍び込んだときにはごくりと生唾を飲み込んだ。
淡い期待に胸を膨らませながら濡れた瞳で下半身を見れば、不破の手は核心までには至らず、その手前で止まった。未来はなんとなくそこは子宮だと感じる。
もしも不破君が男の子だったら……。でも、いいのだ。彼女が自分のそばにいてくれるだけでいい。それだけで幸せだ。未来は仮定の事象を数秒思い、“今”に集中を戻す。
「経験を積めば、外側から押すだけで強い快楽を得られるそうだ」
「きゅふっ、うぅぅ……! あぁ、あぁぁぁ……ッ!」
ぐっ、ぐっ、と一定のリズムで指が皮膚を押せばじんわりとした甘悦が広がり、下っていく。微弱な電流は切なさを増幅させ、未来は洗面台の縁に手をついた。
前かがみ気味になり、顔を上げれば先ほどよりかも乱れた女がそこにいた。その様子を鏡に映る銀の麗人はどこか楽しげに見ており、わずかに上げられている口角からは“いじわる”な印象を滲ませる。
けれどその顔を見ていると彼女にもっといじわるされたいという欲求が生まれる。今までこんな感情知らなかったし、きっと不破に対してだけ。
「ふぇっ……? ふわくん……?」
「お前の顔を見ていたら気が変わった」
身体から離れていく両の手はそのままスカートの金具とチャックを外し、ぱさりと乾いた音が一瞬。
想像とは違うことに鏡越しに困惑の眼差しを向ければ、やはりどこか楽しそうな顔で不破は簡素に告げると自分の衣服を脱いでいく。
羞恥心などない動きであっという間に全裸になり、凹凸の少ない身体を晒す。もともと身長が高いのと、男相手に喧嘩をしているために意外としっかりしている身体。
平たい胸、その中心の紅。自分と同じものがある“ソコ”ははっきりとは見えないが、存在を意識すると無性に変な気分になってしまう。そう、平たく言えばムラムラとした気持ち。
あぁ、自分は不破君に対して発情している。どうしようもなく。茹だった思考で思うのはお預けをされた物足りなさと、彼女を自分と同じように気持ちよくしたいという性欲。
キュンキュンと切なく収縮する子宮に思いを馳せながらも、未来は最後の砦である下着を脱いだ。
***
(なんか……ボーッとしている間に終わった……)
現在未来は不破と一緒に入浴中。薫り高い檜風呂がリラックス効果を齎すなか思うのは数分前のこと。
自分で洗うよという未来の訴えを不破は却下し、自らの手で洗った。その際も未来が達しないように極めて普通に洗い、放出されずに蓄積されるばかりの熱を抱える羽目に。
先に未来を湯に入らせ、その間に素早く洗い終えた不破も隣に入り、今に至る。
とにかく思考が纏まらない。下腹部に溜まっている熱を外に出したい。あの解放感が欲しい。もどかしさから足を擦り合わせて紛らわせていると、
「そこに座れ」
不破の視線を辿った先にあるのは浴槽の縁。壁に面している場所なので座っても後ろに倒れることはない。
なにを考えて指示を出したのかは不明だが、思考することを放棄している未来はふらふらとした動きで縁に座った。足だけ湯に浸かる状態になると、不破が近寄ってきて──。
「ひぁッ……!? なにするの、あうっっ」
濡れた両太ももを左右に開き、御開帳すれば驚きに生まれた隙を見逃さず、不破は顔を間に突っ込む。
漂白される脳内。まさかそんなところに顔を近づけるなんて思いもしなかった未来は反射的に「汚いから……!」と悲鳴に似た声を上げるが、目元しか見えない不破は青の煌めきを細めるとそのまま秘裂を軽く舐め上げた。
「だから入念に洗ってやっただろう」
「ひぁあああっ! そこで喋っちゃだめぇ!」
温かい呼気が敏感な秘部に当たり、浴室に淫らな声が反響する。追撃と言わんばかりにぬろぉ、と熱い舌が割れ目を上下を行き来してきて思わず内ももに力が入って彼女の顔を挟み込む。
初夜でもそこを舐めることはされなかったが、まさかこんなにも気持ちいいだなんて。あまりの衝撃に羞恥心を感じる余裕さえ吹き飛び、成長途中の肉体をくねらせながら溢れる声を抑えることができない。
「そんなに大きな声を出すと、外に聞こえるかもしれんな」
「んんんっ〜〜〜〜!!」
目をうっそりと細めながら言うものだから咄嗟に両手で口を押さえるも声自体は止められないので、くぐもった声が漏れ出る。だってしょうがないじゃないか。ずっとイかせてもらえなくて、お預け状態。
どこもかしこも鋭敏になっている身体。その一番の弱点をねぶってくるのだから。
すでに陰部は濡れ花と化しており、愛液と唾液にまみれていた。濡れているだけでも快楽を感じるというのに、より深いところに舌が入り込む。
(ああぁぁぁっ!! 不破君の舌が、私のナカ、にっ……!)
自分でも触れたことのない深み。閉じられた場所を開拓してくる柔らかい肉はまるで別の生き物のよう。ぐにぐにと入り口を左右に嬲られて腹部が張り詰めていく感覚が襲う。
ノックの返事もしていないというのに無法者はにゅるりと侵入し、襞の感触を確かめるように周囲を丹念に舐める。指とはまた違うソフトな心地に口を押さえる力が強まった。
「ンんんっっ、んふぅぅぅぅッ!! フーーッ!! ふうぅぅっーー!!」
身体の内側に不破の一部が存在し、じわじわと弱火で炙られるような、それでいて離し難い快楽に未来は両目を閉じて嬌声を上げる。
ばしゃばしゃと水面が音を立てて揺れ、太ももを閉じたくなったが間に不破の頭があるので閉じられない。
絶頂への階段を急速に駆け上がっていく感覚が支配する。快楽の雫を浮かばせながら自らの股間を見れば、銀糸と青い目が未来の視界を固定した。
観察するような目つきでじぃっ、と見つめられ、無性に恥ずかしくなってくる。少女のアクメを今か今かと待っている眼差しは熱せられた空気とは裏腹にどこまでも冷静だ。
(ぁ……!? また……。あとちょっとなのに……!)
あと数歩で、というところで引き抜かれる舌。少女器官と少し間ができる程度に顔を離した不破の顔半分は淫靡に光り、それは紛れもなく未来の蜜。
背徳的で、そして甘やかな熱が腰から脳天へと駆け抜ける。美しいものが自分のモノで汚れている事実にどうにかなってしまいそうだ。
「改めて見ても色も形も悪くないな」
(そんな、やだ……見られてる……! ひ、開かないでぇぇ……!)
実験対象を見るような視線が淫乱器官に注がれる。形の整った水密桃は甘い蜜を滴らせ、中心の穴は埋めるものを求めてヒクつき、ある意味では処女のままだというのに、非常に倒錯的な光景が不破の眼前には広がっていた。
彼女の指が興味本位から中心を開けば、陰唇に守られた粘膜が粘着質な音とともに外気を感じる。身体の中の一部を見られていることに未来はもう訳が分からない。
恥ずかしくてしょうがないのに、やめてとは言えない。性的よりかも単純な興味を宿す瞳が愛おしくてしょうがないのだ。
「物欲しそうな目だ……」
「ひぐうぅっ!? しょ、しょこぉ……! らめ、らめぇぇぇっ!」
呟きののちに襲ってきた電撃に未来は呂律の回らない声で喘ぐ。強烈な一撃の正体は女性器で一番敏感な淫核に吸い付かれたから。
唾液たっぷりの口内で吸引され、舌が縦横無尽に撫でてくる。今までの愛撫とは比べ物にならないほどの鮮烈な快楽は、未だ行為に慣れていない少女にはキツいものがあった。
「そんな、指まで挿れられたら……! ふ、んんっ、きゅふっ!? うぅ〜〜! こんなの変に、変になっちゃうよぉ!」
声を抑えることすらしなくなった未来を見上げながら不破は人差し指と中指をゆっくりと挿入した。ずぶぶっ……と飲み込まれていく細指たちは圧迫感を未来に与え、苦しさに眉を寄せる。
たっぷりと膣内は濡れているため痛みはない。はぁはぁと苦しげな呼吸を繰り返しながらも不破に与えられる悦を余すことなく享受する。
今回はイカせようとする気概があるのか、指はイイと感じる場所を的確にこすってきて未来の足がピン、と伸びた。指先は丸まり、下手をすればふくらはぎも攣りそうだ。
「あん、あぁぁんっ! まってふわくん、これ前と違うっ……! やだっ、やだ! なにか出ちゃう!」
甘い汁がかき混ぜられる音とは妙に違う水の音が恥部から発せられる。このままだと小水が出てしまうような不快感も。けれど本能で感じるのだ。我慢せずに欲望のまま解放すれば絶対に気持ちいいと。
「ふ……ッ、でるぅっ……! ンあぁ……ンうぅぅぅッッ!!!!」
内側から突き上げる衝動に耐える術など未来にはない。圧倒的な解放感とともに噴き出す透明なサラサラ液は不破の顔面に直に当たり、彼女は目を閉じて受ける。
壊れた蛇口のように止まらぬ水鉄砲をガクガクと全身を振動させながら、まるで他人事のようなフワフワとした感覚で見下ろしていればすぐに水は収まった。
しかし震えは止まらず、あまりの快楽の強さに目の前に星が散る。目線は不破に向けられているが、彼女を映してはいない目は疲労の色を見せ、未来は脱力感に壁に寄りかかった。
肩で大きく呼吸を繰り返すこと数回。少しだけ落ち着き、改めて不破を見てぎょっとする。湯に入っていることで血色のよくなった顔から滴る無数の雫は紛れもなく自分の体液。
綺麗なものを汚して興奮する、という癖はないはずだが、不破に対してだけは別のようだ。だって、こんなにも高揚しているのだから。
「フ……。派手に達したものだな。潮まで吹くとは」
「しお……?」
「男で言う射精みたいなものだ」
「ッ……しゃ、射精? じゃあ不破君にされたら赤ちゃんできちゃう……??」
くらくらとする頭で普段ならば絶対に言わないことを口走る未来は明らかに混乱状態。強い快楽に加えて浴室での性行為は体温を高め、榛色の瞳はアニメや漫画の混乱状態を表すぐるぐる渦巻きが見えると錯覚してしまうほど。
けれど不破は呆れたりせず、無言のまま立ち上がると女神の身体から湯を滴らせながら未来の顎を片手にのせ、軽く口付ける。
「いずれはお前を孕ませる算段だ。もちろん俺の遺伝子を使ってな」
人間は男と女の交わりで新しい遺伝子の螺旋を紡ぐ。神が定めた理を破壊するなんて、とは思うものの、彼女ならば本当に成し遂げそうな気がする。漠然と感じながら、未来は熱に浮かされた顔をふにゃりと緩ませた。
「極度の興奮からのぼせかけている、か。出るぞ。立てるか」
「ふぁい……」
***
素肌に浴衣一枚という破廉恥ながらもまたすぐに裸になるから、という合理性を伴った格好で未来は居間でゆったりと過ごしていた。
のぼせかけた未来は不破に介抱してもらい、冷房の利いた涼しい空間でちょっとお高いアイスを食べ、不破が使っている大きなクッションに半身を沈めて天井を見つめながら極楽顔。
今日がお泊りの日だったらいいのに。そうすれば時間を気にせずだらだらと、気が向くままに彼女と愛し合えるのに。
エッチなことばかり浮かんでしまい、短い期間で思考回路が不破によって変えられてしまった。
「ふぅ…………」
部活も引退し、高校生に向けて進路を決めなければならない。不破と本当の意味で恋人になる前は県内の剣道が強い学校に入るつもりではあったが、今は正直迷っていた。
おそらく不破は東京のレベルの高い高校に進学するだろう。きっと織部も。
遊んでいる見た目とは裏腹に彼は不破のする難しい話を理解できるほどに頭がいいのだから。そしてなにより彼女のことを心から大切に想っている。未来とはまた違うベクトルで。
遠距離恋愛。三年間耐えられるだろうか。もしかしたら大学卒業まで長引くかもしれない。たまには会えるとは思うが、今のように気軽に会うことはできない。
「気難しい顔をしてどうした」
未来自身気づかぬうちに険しい表情になっていたようだ。
台所から戻ってきた不破の手には麦茶が入ったグラスが両手にあり、氷が涼し気な音を立てて揺れた。
「ありがと。…………実はね、進学先で悩んでて。不破君は東京の学校に行くよね?」
飲み物を受け取りながらはにかむが、どこか元気がない様子。未来と同じく素肌に浴衣姿の不破は隣に腰を下ろすと、麦茶を飲みながら横目に恋人の姿を見る。
「肯定する。周辺には偏差値の低い学校しかないからな」
「あはは……」
彼女らしい回答に苦笑いするしかない。実際なぜこんな田舎の学校にいるのか不思議なくらいだ。噂では大学受験用の全国模試で首位を独占したというのもあり、こんな狭いところにいるのはもったいないくらいの逸材。
けれど理由はどうであれ、一度は離れたこの土地に戻ってきてくれたおかげで今がある。改めて考えると、やはり運命的なものを感じてしまう。そういったものを信じない不破に話せば「くだらん」と否定されそうだが。
さて。自分は当初、その偏差値の低い学校の中で剣道が強い高校に進む予定だったが、ここで迷いが生じていた。不破と離れたくないという淡い乙女心。
「なにを悩む必要がある。都内にある剣道強豪校に入学しろ。そこにはスポーツ推薦があり、お前のレベルならば十分推薦を受けられるはず。仮に落ちても一般入試がある。勉強は今までどおり俺が見るから問題ない。住居もすでにマンションを用意してある。一応は別室だが、実際には俺と同居だ。生活面では不自由ない暮らしを約束してやる。お前は親を説得しろ。学費もお前の両親の収入を考慮しても問題ないはず。もしなにかあれば俺が裏でどうとでもしてやる。分かったか?」
「……………………」
矢継ぎ早に繰り出される言葉を受けて顔が焼けるように熱い未来は壊れかけのロボットのような、ぎこちない動きで麦茶を一気に煽ると少しでも冷静になろうと静かに息を吐く。
天才ゆえにその思考は常人には理解できぬ彼女。まさかここまで考えているなんて。逃げ場がない。逃げるつもりもないが。
強豪校に進めて、さらに不破との同居。マンションを用意という言葉もきっと一棟丸々購入して、という意味だろう。スケールが違い過ぎるが、未だ謎である不破家の財力を想像すれば難しいことではない。
「まさか、俺から逃げられるとでも?」
無言の反応に違う方向に勘違いをした不破に押し倒され、背中に畳の感触が広がる。
逃げるなんて考えもしなかった。そうじゃないよ。誤解だという意味を込めて至近距離で見下ろしてくる不破の両頬を手で包み、触れるだけの口づけを贈る。さすれば彼女の眉間に寄った皺が薄くなった。
「驚いただけ。心配しないで? あなたが私を手放したくなっても、逃げてやらないんだから」
幼少の頃からの自覚なき恋。夢にまで見て泣くほど焦がれた人。自分が彼女のもとから去るなんてありえない。
あぁ、それよりかも。一度引いた熱が簡単にぶり返す。今まで自覚がなかっただけで性欲が強いのかもしれない。不破君限定で。
ぐつぐつと熱せられた頭の片隅で考えながら、薄氷の宝石を見つめる少女は抑えきれない激情を視線に込める。
さすればおもむろに女の手が未来の頬を撫でながら唇へ指を這わせる。人差し指と中指。弾力を確かめながら、これからの行為を連想させるように、二本の指が下唇を撫でる。
「ん……ふぁ……ぁ、ちゅ、くちゅっ……ふ、ぁあ……」
指を押し込まれ、口の中がいっぱいになる。あぁ、人の指を咥えている……。自分の指だって咥えたのは幼い頃だけ。倒錯的な行為にどんどん深みにハマっていくのを自覚しながら、未来は赤ん坊のようにちゅうちゅうと舐めしゃぶる。
上の口でご奉仕している指たちが下の口を可愛がってくれるのが勝手に脳内に浮かぶ。彼女以外経験がないし、これから先も他の人とする予定はないが、不破のテクニックはなかなかのものだと未来は思っていた。
イイところを的確に攻めてきて、少しでも長く楽しめるようにと寸前で別の場所に変え、最後は一気に攻めてきて。頭が真っ白になってなにも考えられなくなる。
(不破君の指……長くてっ……、あぁっ、また濡れて……!)
唾液で口周りを汚しながら妄想に耽り、それは発情裸体に変化をもたらす。風呂から出る前にぬめりを洗い流したことで一度はリセットされた恥蜜。それがもう溢れてきたのだ。
「はっ……、不破君……私、また…………っ」
指が抜かれたタイミングで請う。淫らな熱を宿した頬に、淫情きらめく濡れ瞳。不破に愛されたくてたまらなくなった未来は自らの手で浴衣の帯を解き、はだけさせた。
汗ばみ、しっとりとした肌。丸みを帯びた果実の先端は紅色に熟れて天を仰ぐ。
くびれた腰からさらに下れば見える幼い秘処はぴったり閉じてはいるものの、透明な蜜で輝いていた。
○学生がしていい表情とは思えぬ雌顔を愛しい人に向けながらのおねだりは、常に冷静沈着の女にも刺激が強すぎた。
青い瞳をわずかに細め、顔は無表情ながらもその心はぐつぐつとマグマが煮えたぎる。
「…………淫乱が」
「あぁァッ……! あっ、ん、ぁぁああ……!!」
言葉は辛辣ながらもそれは本心からではない。行為を盛り上げるためだけのもの。とは未来も理解しているものの、行為中だからこそ不破からの言葉ひとつにでさえも快感を感じてしまう。
吐き捨てるように呟いた不破は未来に覆い被さったまま、体を下へ移動させ、唇を首に寄せてネットリと舐めながら鎖骨へ。
肉厚な舌が這うゾクゾク感。不破の呼吸が直に当たり、好きという気持ちが止まらない。それは震えに直結し、彼女の動き全てに大げさなくらいに反応してしまう。
今日だけでもう数回しているのだから少し余裕があってもいいはずなのに。おかしくなってしまうくらいに気持ちがよくて、されるがまま喘ぐばかり。
「ほう。風呂場のときより濡れているな。すんなりと挿入ったぞ」
いきなり挿入される二本指。しかし未来の膣口は軽々と飲み込み、ずっと待っていたのと言わんばかりに襞で揉み込む。
「んぁぁぁ……! っ、いたっ……?」
身体のナカで蠢く待ち望んだ圧迫感に蕩けた顔になりながらも、胸元に走ったわずかな痛みに声を上げ、視線をそちらに向ければ不破が顔を持ち上げた。
熱を秘めた青の美しさに視線を奪われそうになりながらも己の肌を見れば、そこだけ赤くなっているではないか。
性知識に疎い未来はなんと声をかければいいのか分からずに思考停止状態に陥るが、そんな彼女に不破は涼しげに笑うと、
「自分の持ち物に名前を書くだろう? それと同じことだ」
極めて簡素に説明すると見せつけるように再び吸い、鬱血痕を残す。
「でっ、でも、そこだと見えちゃいそうで……」
「下着で十分に隠れる場所につけてやっているが?」
不破の言い分は最も。ブラジャーだけならば見えてしまうが、キャミソールなどのインナーを着れば見えない場所ではある。
自分のモノだと印をつけてくる行為に執着の感情が読み取れ、彼女にとってそれほど特別な存在なのかなと嬉しさが込み上げてきた。
「……なにを笑っている」
「えへへ……愛されてるなぁ、って」
「まだ無駄口を叩く余裕があるか。ならば手加減する必要はないな」
「ふぁぅっっ!? そんな同時にっ、あんっ、うぅっン!」
美味しそうな色をしている乳首を食べられ、口の中で舐め潰してくる。繊細な舌の動きにくすぐったさと同時に快楽を感じ、時折吸われると思わず背中も浮いてしまう。
それに加えて指もイイところを攻めてきて、拡張するように左右に開いたりなど腰がいやらしく揺れるのを止められない。
「は……んぁっ、きゅふぁぁ! 不破、くん……、手、繋ご……!」
自分から不破の手を取り、開いた形からそのまま握れば、彼女の指の間に未来の指が入り込む。すると不破の方からも握り返され、嬉しいという感情が精神を満たしていく。
幸せな上におかしくなってしまうほどに気持ちがいい。そこでふと思う。不破君は私と同じように気持ちいいのか。
初夜のときは一応は濡れていたので興奮はしていたようだが……。
「ね、不破君……私もあなたを気持ちよくしたい……」
されるのはもちろん好きだ。けれど自分も彼女を気持ちよくしたいし、なにより乱れる不破が見たいという不埒な考えもあった。
美しくて、クールな彼女。それが快楽に酔い、どんな表情を見せてくれるのか。想像するだけで子宮が甘く疼く。
「お前にタチが務まるとは思えんがな。……まぁ、気が向いたら奉仕させてやる」
奉仕させてやる。上から目線の言葉ではあるが、しっくりとくる。ふにゃりと顔をほころばせると、思い出したかのようにもじもじとし始めた。
この短い会話の間も陰部は愛されており、今にも絶頂の高みへと至りそうなのだ。話に意識が向いていたが、会話が終わると必然的に集中するのは下腹部。
このまま指でアクメを迎えるのもいいが、やはり最後はアレがしたい。初夜で経験した互いの秘部を合わせてこする行為。初めてではあったが、すっかりと虜になってしまったのだ。
擦り合わせる快楽はもちろん、見た目も淫ら。それだけで性感が高まる。
「ん……ッ、不破君……私、あれがしたい。あそこ同士をくっつけるやつ……」
「貝合せのことか。気に入ったのか?」
「貝合せ……。不破君のあそこと私のあそこが重なって、すごく気持ちよくて、幸せな気分にもなって……初めてしてもらったときから好きになっちゃったの……」
素直に告白すれば不破は一旦起き上がり、未来に跨ったままの状態で浴衣の帯を取り去り、前を開いた。
眼前に晒される裸体は何度見ても美しい。周囲に男と認識されている人物の服の下にこんなにも極上の身体が隠されているなんて、誰も思わないだろう。
不破は自らを女の魅力に乏しいと言っているが、未来にとってはこの世の誰よりかも綺麗で魅力にあふれた身体。ごくりと唾を飲み込み、視線を下へ下へと向けている最中に不破が再び覆い被さってきた。
「ふわ、くんっ……ぁ、あああぁぁ……っっ! はひゅ、おっぱい、乳首、こすれてっ……!!」
今回は正常位での貝合わせ。不破が動けばしとどに濡れた少女器官の陰唇がぐねぐねと絡み合い、くちゅくちゅと卑猥な音を立て始める。
動き方によっては粘膜同士が触れ、彼女と繋がっていると錯覚してしまうほど。ぷっくり膨らんだクリトリスもこすれ、途方もない快楽の波に未来は即堕ち。
彼女の大きめな乳房が不破の平らな胸に潰され、凝り固まった紅い種同士も濃厚なニップルキスに耽る。
ああ、なんてエッチなんだろう。そういうコトをしているのだから当たり前だが、顔を真っ赤にしながら漠然と思い、未来は不破の首に腕を回した。
「あんっっ、ァああ! 不破君、んっ……ふわ、くん……好きっ、好きぃッ……!」
快楽に濡れた妖艶な顔をした未来とは反対に不破はほんのりと紅潮する程度。全身を使っての動きに息を乱しつつも、目の前にあったエロティックな唇に吸い付き、深い深いキスをすれば未来は喘ぎながらも素直に愛を伝えた。
するとどうだ。不破は内側から突き上げるなにかを抑えるように苦しげな表情をすると、
「未来……俺の、俺の名前を呼べ……ッ!」
「っ、大黒──だ、だいちゃん……! だいちゃん……!」
未来にとって大黒よりかも“だいちゃん”というあだ名が思い出になっているため、自然とそちらを口走っていた。
不破の片手によって頭部を固定され、逃げ場を失った未来ははふはふと酸欠気味になりながらも舌愛撫に応え、快楽の大波にその身を投げ出していた。
ズチュッ! ズチュッ! と音を奏でながら摩擦熱で熱くなっていくソコ。お腹がじんじんして今にも弾けてしまいそう。これは、ずっと待ち望んでいたもの。まるで階段を駆け上がるように急上昇する快感パルス。
不破とより密着するために自ら大きく開脚している未来は襲い来る絶頂に足の指先がぎゅっ、と丸まる。
「未来ッ……!」
「あぁ、ぁぁぁぁっっ!! だいちゃん、気持ちいいの来ちゃう! も、ダメ……ッ! ぁ、……っッ〜〜〜〜!!!!」
言葉にしてすぐだった。弾けた性感が一気に全身に強烈な電撃となって走り、快感痙攣が止まらない。
不破を迎えるために開いた脚も大きな振動を伴ってだらりと床に投げ出され、だらしなく出たままの舌で浅い呼吸を繰り返すばかりの未来ではあるが、心身ともに満ち足りていた。
好きな人との行為はきっとこれから先も飽きることはない。そう断言できるほどの幸福。だってしょうがないじゃないか。相手は初恋の人なのだから。
「…………」
アクメにひとり浸る未来をよそに、不破は緩慢な動きで上体を起こして数秒思案すると、
「んぶっ!?」
「俺に奉仕したいと言っていたな。気が向いた。今させてやる。俺を満足させてみろ」
未来の顔の下半分、ちょうど口が当たる場所に自らの性器を押し付けるように座った不破。いわゆる顔面騎乗だ。
いきなり顔に乗るという大胆過ぎる行為に大混乱に陥る未来ではあるが、余韻が抜け切らないとろんとした瞳で不破の顔を見上げれば、熱を宿したままの様子から彼女が達していないことを知る。
自分だけ高みに至るのは駄目だ。相手にも同じ場所に昇ってほしい。
(それに……エッチな匂いがいっぱいして我慢できないッ……!)
本来の匂いや味は知らないものの、不破のアソコからは未来を発情させるには十分な淫乱な香りを漂わせており、口に流れ込む甘露は砂糖のように甘い。正直もっと欲しい。
イッたばかりだというのにもうスイッチが切り替わった未来は涙で濡れた目の奥にハートマークを宿す。
不破の太ももを抱え込むように両手を回すと、はふはふと獣の息遣いで割れ目の奥深くへと舌を潜り込ませる。
唾液とシロップでヌメつく舌先で膣前庭を行ったり来たりすればダイレクトな肉の感触に脳が沸騰してきて、自分が今なにをしているのかを妄想すればあまりの卑猥さに様々な感情が綯い交ぜになった雫が目尻から溢れて落ちる。
「は、んっ……はふ、ん……、ちゅっ、ンっ……ぅぅ、ちゅぱっ、くちゅ……」
際限なく滴る恥蜜に溺れそうになりながら一生懸命に舌を動かす。小さな花びらを左右に弾き、吸い付けば不破も快楽を得ているのか触れている足が小さく振動し、わずかな──くぐもった喘ぎが降ってくる。
目線をそちらに向ければ感じ入るようにブルースピネルは閉じられていたが、未来の視線に気づいた不破は自分が感じているのを見られたくないのか、片手を未来の顔上部に押し付けて視界を遮った。
彼女の手によって閉ざされた視界。指の隙間から微かに見えるものの、よく見えないからこそ感覚が研ぎ澄まされ、なにかに目覚めそうになる。
まだ楽に数えられる回数しか行為をしていないというのに。たった数回で色んな性癖が不破によって開拓されていた。
(ある意味では少し酷いことをされているのに、不破君にならむしろされたいと思ってる自分がいる……)
おかしいな。こんなことされて喜ぶなんて。内心自重気味に呟きながら矮小な穴に舌を侵入させれば、みっちりと隙間無い襞の感触に感動すら覚える。
「ふーっ……んぅぁ、ん、だいひゃんの、おいひぃよ……。んっ、んっっ……」
「っ……」
ぬるぬる粘膜の熱に舌が溶けてしまいそう。なにもかもが卑猥な現状。精一杯舌を伸ばして粘膜の味を楽しんでいると、細く開けられた口から静かな熱を吐き出した不破がおもむろに空いている手を後方へと伸ばす。
向かうは奉仕活動をしながら切なげに収縮している割れ目の中心部。
「んぁぁっ!? ぁああ、あッ! しょんな、らめ、らめぇぇっ……!! きもちよくなったばっかだからぁ、ふみゅぅぅ!? あぁぁぁぁぁっ!!」
挿入された二本指。最初から遠慮なく快楽を感じるスポットを攻め、未来は悲鳴のような嬌声を止めることができない。先ほどの絶頂感がやっと少し引いてきたというのに。これではすぐに達してしまう。
このままだと同じことの繰り返し。彼女にも気持ちよくなってもらわないと……! その思いだけで未来は下半身から突き上げる性激情に耐えながら舌ご奉仕を続ける。
不破の太ももを掴む手に力を入れて固定すると頭を少し上げて顔面をうずめ、文字どおりむしゃぶりつく。
きっと酷い顔をしているとは思うが、下は不破に乗られているので見えないのと、上も彼女の手によって視界がほぼ閉ざされている。つまり不破からもはっきりとは見えない。
(あン、うンっああんっっ! だいちゃんの指っ……好きぃ……! 気持よすぎてすぐダメになっちゃう……!)
自分でも訳が分からなくなるくらいに一心不乱に舌や口を動かす。くぐもった声と粘っこい音で淫らなハーモニーを奏でながら、二人の体液が溶け合った愛液をローション代わりにして赤い花びらや膣粘膜を愛撫すれば、不破の指の動きも未来を中イキアクメに昇らせるために快楽ポイントを重点的に攻め始める。
(きゃふぅっ!? このままじゃ、また私ばっかり……!)
子宮が疼き、気を抜けば不破よりも先に気持ちよくなってしまう。自分ばかりしてもらっては駄目だ。これはご奉仕。奉仕相手より先に達するわけにはいかない。
「っ……! く……!」
こうなったら、と未来は攻める場所を変える。自分もされて一番気持ちいいところ、クリトリス。赤ちゃんが乳首を吸う要領で小さな快楽種に吸い付けば分かりやすい反応が頭上から降ってくる。
強張る下肢。声を我慢しているのか不破からは苦しげな喘ぎが漏れ、未来は確かな手応えに舌で縦横無尽に舐めしゃぶった。
「ン、ふああぁぁぁ……っ! はっ、ふっ、ン……ぢゅるっ、ちゅぷ、ん……ふ、んふぅぅ、うう〜〜!!」
コリコリとした蕾を可愛がればお返しと言わんばかりに不破の親指がヌルついた肉芽をなぶる。中と外を同時に攻められ、荒れ狂う官能熱に未来の脳と身体は揉みくちゃにされ、目の前に火花が散り始める。
もう、ダメ……! 耐えられる容量を超えてしまい、淫楽に満たされた器が崩壊し──。
「は……、……ッう……!!」
先に動きを止めたのは不破の方だった。小さく開かれた唇から漏れる声こそ未来と違って抑えられてはいるが、ぎゅっと閉じられた瞳、下腹部から脳天へと突き抜ける甘悦に耐える表情は視界を中途半端に遮られた未来にも見え、不破が絶頂快感に震える姿に安心して自らも果てた。
ほぼ無言でぐったりとするように身体から力が抜け、不破の太ももに回されていた手も肌から離れ、畳へと下ろされる。
やがて落ち着きを取り戻した不破も未来から下り、そのまま隣に身体を横たえると涙と不破の体液によって淫らに濡れた未来の顔を引き寄せ、唇に噛み付くように自らのを重ねた。
「ふ、ふっン……ぷはっ、ぁああ……ん……ちゅぷっ」
濃厚な唾液交換に耽る少女ふたり。目を閉じている未来の方から不破の身体を抱きしめ、彼女もそれに応えるように腕を伸ばす。
周囲に冷たい人──実際に冷めた人ではあるが、こんなにも情熱的な一面があるだなんて。
そのギャップにさらに不破という沼にハマっていくのを感じながら睦み合っていると。
「ひゃっ!?」
淫熱に満たされた部屋に響く電子音は紛れもなく自分のPHSの着信音。
夢見心地から一気に現実に引き戻された未来は閉じていた目を開き大げさなほどに肩を跳ねさせると、不破の腕の中で鞄が置いてある後方を見た。
この電話には出ないといけない。漠然と思うが、立ち上がるのは億劫。なので不破の手から離れ、畳の上を這って鞄の中のPHSを手に取れば相手は母親だった。
慌てて出れば遅いから心配したこと、今どこにいるの? という至極真っ当な言葉がかけられる。母の言葉に耳を傾けつつ、壁に掛けられた時計に吸い寄せられるように視線を向ければ普段の帰宅時間をだいぶ過ぎていた。これならば連絡が入るのも頷けるというもの。
「ごめんね、お母さん。友達の家で勉強してたんだけど捗っちゃって時間忘れて、っひ……!?」
電話に意識が向いていたため、背後に近づく存在に気づくことができなかった。
後ろから未来の腹部に腕を回し、肌を寄せながらうなじにキスをされた未来は変な声を出してしまい、さらに不破は片手で胸、もう片方で臀部に触れると怪しい手つきで揉んだり撫でたり。
『未来? どうかしたの?』
「ぁ……なんでもないよ……! えと、今すごくいいところだから、帰るのもう少し遅くなるかも。友達の家を出たらまた電話するね!」
早口気味に告げると一方的に電話を終わらせた。だって身体がじんじんしてツラい。疲れはあるはずなのに心も身体も不破を求める貪欲さや性欲の強さに呆れてしまうが、未来は衝動のまま、振り向きざまに不破に抱きつくと片足を上げて彼女の下半身に回した。
脚で抱くような形は逃さないと暗に言っているようで。
「あともう少し……しよ。だいちゃん♡」
終