夏の夢見心地─甘やかな夜に蕩けて─

「ふ〜……気持ちいい……。それにしても檜風呂、しかも広いしお金持ちってすごい……!」
 学校が夏休みに入って少ししての土曜日。現在の時刻は夜の九時に近い時間だ。そしてここは不破の家のお風呂。足を伸ばし切ってもまだ余裕がある檜風呂は置かれている浴室自体がまるでお高めの旅館の部屋風呂のように広々としており、一般庶民である未来からすれば別世界。
 つい数ヶ月前までは本当の意味で不破の恋人になるとは思わなかった関係であったが、今では立派な恋人同士。
 周囲に男だと思われている不破が実は女であると知る一部の人間の仲間入りもした。かといって不破のことを特別女の子扱いしたりはせず、普段どおりに接していた。
 そんな未来がなぜ不破の家にいるのか。簡単に説明すれば夏休みということで不破に泊まりに来いと言われたからである。家族には友達の家でお泊りなの、と告げて土日の二日間といえどお世話になるのだからと、ちょっとお高いゼリーの詰め合わせを持たされて不破の家へ。
 両親は友達=女子と考えており──確かに不破は女の子なのだが、男して通っているので家族に対して少々背徳感がありながらも不破宅に向かったのが数時間前。
 夕食はなんと織部が作ってくれ、デザートに手土産のゼリーを食べていつもとは違う夜ご飯を楽しみ、不破との時間を楽しんだところでそろそろお風呂を……ということで冒頭に戻る。
 檜のいい香りやお湯の温度の心地よさに完全にリラックス状態の未来。しかし次の瞬間、浴室の扉がいきなり開かれ、入ってきた人物の姿にフリーズしてしまった。
 未来と同じように全裸で入ってきたのは当たり前だが不破だ。しかし未来は彼女の裸を見たことがないので初めて見るその美しさに思わず見とれてしまう。
 顔はもちろん中性的で美しいことに変わりないのだが、衣服の下に隠されている女体がこんなにも綺麗だなんて。
 身長も高く、男相手に正面から喧嘩することもあるからか女子にしては体つきがしっかりしているが、雪を連想させる白い肌はなめらか。胸部は平らながらも桃色の飾りは自分と同じもので、どこか可愛らしい。
 さらに視線を下へと移動させれば、そこには未来の陰部と同じものがあった。桜色に色づいた恥部。当たり前といえばそうだが、こうして実際に見ると本当に不破は自分と同じ女の子なのだと改めて認識する。
 それにしてもなんて綺麗なんだろうか。まるで美の女神。
「……っ! ふ、不破君! 私まだ入ってるのになんで入ってくるの!?」
 すっかり不破に誘惑されている未来を現実に引き戻したのは彼女がシャワーを浴びるために動いたからだ。はっ、として我に返った未来はくるりと体を回転させて不破に背中を向け、見ないようにしながら声を上げれば、
「出るのを待ってやったがお前が一向に出てこないからだろう。それにどう考えても同時に入った方が効率的だ」
「でっ、でもぉ……」
 それ以上はシャワーの音にかき消されてなにも言えなかった。
 結局不破のシャワーが終わっても未来は湯から出られず、一緒に浸かることになった。ふたり入っても窮屈感のない浴槽に隣同士。不破は当然のように無言。未来は沈黙の気まずさを破ろうとなにを話すか話題を考えるが、全裸の不破が隣にいるという事実に緊張を極め、考えが纏まらない。
(心臓が痛い……!)
 なんたって不破は極上の美少女。加えて好きな人が裸でいることにドキドキしない人間はいないだろう。どうしようと思考がぐるぐると堂々巡りしている未来をずっと横目に見ていた不破は、ついに動き出す。
「ひぁ!? あのっ、ん、んっ……! ふわ、君……!?」
 背後から未来に忍び寄ると不破の両手は彼女の乳房へ。発育のいい胸は不破の手にフィットし、自身にはない柔らかさを楽しむようにむにゅむにゅと手の中で形を変えて遊ぶ。
 ぞわっ! と未来の背筋に甘い電流が走り、初めての性的な快楽に戸惑いながらも目線は自らの胸元へ。見慣れている胸だというのに彼女に揉まれ、手の形に合わせて姿を変える乳房を見ていると視覚的にも変な気分になってきてしまう。
「お前の年齢にしては育ち過ぎではないか?」
「そ、そんなこと、ない……もんっ……! ぁ、ン……!」
 耳に直接吹き込まれる言葉と低音に未来は身体を跳ねさせると水面が音を立てて乱れる。言いながらも胸愛撫は止まらず、薄紅色の乳輪を撫でたり、まだ柔い乳首を摘んだりとこれは明らかな性的接触。
(も、駄目……これ以上は……!)
 これ以上されたらどうなってしまうのか。未知の体験への恐怖に似た感情と、自分たちにはそういった行為がまだ早いと未来は不破の腕から逃げるように立ち上がり、「もう出るね」と言い残して足早に脱衣所へ。
 ある意味では不破を拒絶してしまった。嫌われちゃったかな……? と不安になりながらも濡れた身体をバスタオルで拭き、下着を着て用意されていた浴衣に腕を通す間も不破が出てくることはなかった。
 風呂場での出来事があっても不破の機嫌は幸いなことに悪くはなっておらず、風呂上がりにアイスを食べながら一緒に涼み終わる頃には寝るにはちょうどいい時間になっており、不破の案内でとある部屋へと未来は招かれた。
 てっきり不破の部屋で寝ると思っていた未来なので別室というのは少し意外だったが、通された部屋はまるで旅館のような一室になっていた。
 ふたつの布団が隣同士に置かれ、頭の方には行灯型をしたライトがある。未来がスイッチを入れれば柔らかな光がぼんやりと辺りを照らし、ますます趣を感じる部屋へと変わった。
「この雰囲気好きかも。落ち着く……。不破君が用意してくれたの?」
「いや。織部だ」
「織部君が? 夜ご飯も作ってくれたし、お風呂だって。それに加えて部屋の用意までも……。明日、改めてお礼を言わなきゃ」
「言う必要などない。あいつが勝手に行動しただけだ」
 まさか織部が全てやってくれたとは。だが考えてみると不破が自分でこれらのことをするのが想像できないため、ある意味納得である。
 不破はこう言っても明日絶対にお礼を言おうと決めると、未来はどちらの布団を使うかを聞くが──不破はどちらでもいいと言うだろうし、実際に未来が考えたとおりの結果になった。
 未来も特にこだわりはないので入り口側に敷かれている布団を選ぶと横になる。家ではベッドなので布団は新鮮味があり、掛け布団もふんわりしていて気持ちがいい。やっぱり布団も良いものを使っているのかな? そんなことをつらつらと考えていると、
「おい。お前……このまま寝るつもりじゃないだろうな?」
 隣の布団の上に座っている不破の声と顔はどこか不満げ。
 寝室に布団。あとは寝るだけ。そういった知識に疎い未来にしてみれば寝る以外にはない。なので不破は行動で分からせることにした。
「え? 寝る以外になにがあるの? って、わぁぁ!?」
 不破は未来の掛け布団を引き剥がすと、そのまま未来の腹部に馬乗りになった。以前嫉妬した彼女に襲われかけたときのことを思い出し、未来は“そういうこと”をするのだと理解したが、その顔には羞恥心が宿る。
 不破に求められるのは正直嬉しい。しかし男女だってどうするのかなんとなくしか分からないのに、女同士はどうやってするのか。
 未来は不破の視線から逃げるように目を逸らすと呟く。
「そ、その……私たち、まだ子どもだから、そういうのはよくないと思うの……」
「だからなんだ。偏見にまみれた常識というものに囚われるのはやめろ」
(……あのときと同じ目。冷たい瞳の奥に揺らぐ炎……)
 不破に初めて押し倒されたときと同じ炎を見つけ、それを見ていると自分も彼女に触れたいという気持ちが溢れてくる。
(本当にこのまま流されてもいいの……? でも……正直、彼女に触れてほしい、私からも触れたいという欲もある。なら……)
 不破の言うとおり常識に囚われ過ぎているのかもしれない。今ここには不破と自分しかいない。互いに求めても咎める人間は誰もいない。
 少しだけ悪い子になろうと、未来は──受け入れることにした。
 未来の様子に彼女が堕ちたことを知った不破は不安が宿る目を見てまずはそれを解きほぐしてやろうと思ったのか、半身を折ると未来の唇に吸い付いた。
 柔らかな少女たちの瑞々しい膨らみは戯れるように重なり合い、リップ音を奏でながらさらに湿った音を鳴らす。不破から伸ばされた舌を見て未来も同じように伸ばし、先端同士を絡ませて慣れさせると不破の舌が未来の中へと侵入した。
 深いキスはもう何度も経験しているというのに不破が初恋のあの子だったと知った今では信じられないくらいに心臓が高鳴って、未来はすぐにいっぱいいっぱいになってしまう。
 ぐるりと口の中を一周する不破の舌に思わず未来の腰が逃げてしまうと、それを許さないと言わんばかりに不破の片手が未来の頭を抱え込む。さらに深まる接吻に未来の薄く開かれたままの目は潤み、エッチなことをしているのだと脳が判断しているのか背中に走る痺れは普段と違ってさらに甘い。
 ピクピクと小刻みに揺れる体。上昇する体温。いやらしく蠢く舌の動きや水の音に未来は不破に縋るように抱きつく。
「はっ……不破君……」
 唇が離れ、透明な糸が引く。彼女の透き通る香りや低めの体温が火照った身体に心地いい。キスだけでこんなにも熱を上昇させる自分がどこかはしたない女のように思えて未来は恥ずかしくなったが、そんな考えを砕くように不破の片手が浴衣の帯を解き、前を開くとキャミソールの裾から中に侵入してきた。
「あっ……! っ、っ……!」
 不破の手は未来の柔い肌の感触を楽しむように撫でながら上へと向かう。思わず目を瞑ってしまう未来を不破は至近距離で見下ろしたまま、たどり着いた乳房に手を添えると丸みを帯びた輪郭をなぞり、乳輪を繊細な指先で撫で回す。
 わざと乳首には触れぬじれったい愛撫ながらも初めての未来は声が抑えられない。小さな喘ぎを上げながら胸から全身へと広がる悦に酔う。徐々に先端が凝り固まっていく感覚。
 不破君の指に摘まれて、くりくりされたら気持ちよさそう……。そんな妄想が自然と浮かんできてしまい、未来は恥ずかしげに口を真一文字に結ぶも、その目は自身の胸元へ。
 彼女の視線の意味を感じ取った不破は一旦体を起こすとキャミソールを脱がせ、未来を半裸にした。将来が楽しみな白桃は横に流れ、未来は不破の目を感じて隠そうとするが、その前に彼女の両手が側面から乳房を掬うように触れてたぷたぷと寄せたり離したり。
 ただ遊ばれているだけだというのに未来は流れる媚電流に身体を顫動せんどうさせる。胸に触れられるだけでこんなにも気持ちがいいんだと、未知の快楽の虜になっていく。
「ひぁっ!? 不破君、なにを……!」
 おもむろに未来の上にのしかかる体勢を取った不破の頭は現在胸元にあり、片方の乳蕾に吸い付いた。にゅるりとした唾液と舌の合わせ技は指とはまた違ったソフトな快楽を与え、また、不破に胸を吸われている事実に恥ずかしさと同時に優しい気分になってくる。
「あっあっあぁ……ッ……! ふわくんっ……!」
 未来の恍惚の表情をじっくりと観察するように目を開けたまま、口の中の乳首を舌の肉厚な部分で舐めたり、先の方で弾いたり。時折強く吸われるとぬめり快楽に未来は翻弄されるしかない。
 これだけでも未来は精一杯だというのにさらに不破はもう片方の胸に手を伸ばす。勃起している薄紅山を人差し指の腹で押しながらくるくると回す。初めてだからという配慮も少しはあるのか、ソフトタッチで攻める様子。
(うぅ……! あそこ、むずむずするし、濡れてるような……?)
 胸を愛撫されていると少しずつ、確実に下腹部へとむず痒い感覚が忍び寄る。自身でさえまともに触れない場所は割れ目がじゅん、と濡れ始め、もしや粗相をしてしまったのでは!? と不安になってしまう。性知識があればこれは愛液だと分かるのだが、なにもかもが初めてなので未来は分からない。
 急にそわそわと他のことに意識が集中しているのを未来の様子から感じ取った不破は彼女の考えていることを読み取ったように顔を上げると、濡れた小山を指で撫でながらもう片方の手をしっとりと汗ばむ生肌を滑りながら下へ。
 ショーツのゴム側から中へと侵入すると、中指を柔らかな脂肪の割れ目にぴったりと添え、軽く掬う動作をする。さすれば指先には粘着質な体液が纏わり付く。
「んっ! ンっ……! 不破君、その……私、もしかしたら……」
「粗相をしたか?」
「…………」
 不破はもちろん“これ”がなにかを知っているが、微笑しながら問い掛けるものだから未来は顔を真っ赤にして──今にも泣いてしまいそうなくらいに目を潤ませながら視線を逸らす。ぱちり、と彼女が瞬きした刹那、きらりとした雫が頬へと流れ不破は顔を寄せると、その水分を舐め取り、水源へと吸い付く。
「心配せずともこれはお前の考えているものではない。性的興奮時などに膣壁から分泌される体液だ」
「じゃあ不破君も同じだったりする?」
「さあな」
「……ねえ、不破君も脱いでほしいな。私ばっかり恥ずかしいし、不破君の身体、綺麗だもん。見たいよ」
「…………」
 ひとまず最悪の予想は外れたので未来は一安心すると、ひとつの興味が湧いてきた。性的興奮ならば不破はどうなのかと。触る側なので濡れていないのか、それとも脳で興奮して濡れているのか。そもそも彼女の身体を見たいという欲求があった。
 風呂場で少し見ただけだが、彼女の白磁の肌は美の女神を見ているように美しかった。もし許されるならばまた見たい。あわよくば触れたい。
 不破は未来のお願いに無言で見つめ返すと、一旦未来の上から下り、身に着けているものを淡々と脱いでいく。緩みかけている浴衣の帯を外し、その下に隠れていた黒のタンクトップと同じ色のショーツも恥ずかしげもなく脱ぎ、あっという間に全裸になる。両膝を布団につく形で立つ彼女の陶磁器の肌はライトの淡い光に照らされて神秘的な美しさを放つ。
 未来は息をするのを忘れてしまうほどに見入ってしまう。一度見た女体ではあるが、何度見ても魅了される。
 未来はまさか不破が下まで脱ぐとは思っていなかったが、彼女が脱いだのだ。自分も脱がなければフェアじゃないと起き上がると、不破の視線を受けながらも自分で脱ぎ、彼女と同じ産まれたままの姿になって向き合った。
「不破君……すごく綺麗……。さ、触ってもいい……?」
「俺の身体は女の魅力に乏しいが、それでも触りたいのか?」
 暗に胸のことを言っているのだろうか。確かに年齢の割には少々成長し過ぎな未来と比べると雲泥の差だが、彼女はそんなことは気にしない。
 不破の問いに未来は頷くことで返事をすると、彼女の片手を取って自身の心臓部分に当てた。
「分かるかな。すごくドキドキしてるの。私、不破君の裸を見てすごく……その、興奮っていうか……えっちな気分になってる……」
 身体だけでなく、脳も極度の興奮に陥っている。なにか他のことを考えようとしても不破との行為に関することしか浮かばず、どうにもならない桃色一色の脳内。
 本来ならば聞こえないはずの心臓の鼓動も耳の奥で聞こえ、呼吸も浅くなっていく。未来は片手を不破の胸部へと伸ばし、平らな胸を優しく撫で回す。彼女もこうした性的な接触は慣れていないのか余裕たっぷりの表情がほんのりと歪む。
(触っているだけなのに、アソコがどんどん濡れてきちゃう……!)
 不破の反応や肌の感触に触っている方の未来の気分が高揚し、秘裂から愛蜜が溢れるのを肌で感じる。ぬるりとした体液が重力に沿って下へと落ちていき、布団に恥ずかしい染みをひとつ、ふたつと作り出す。
 不破君にこのこと知られませんように。そんなことを願いながらも未来は彼女のすべすべな肌をもっと感じたくなり、両手を彼女の背中へと回すと自分からすり寄る。女友達とふざけて抱きしめ合ったりしたこともあるが、互いに裸というのもあるのか、不破の極上の肌の感触を全身で感じられ、さらには体温が心地よくて非常に気持ちがいい。
 うっとりしながら彼女の片口に顔を乗せて目を閉じればボディソープの微かな香りに混ざって不破自身の冷ややかな香りが鼻腔をくすぐる。
 性行為に緊張していた心と身体はリラックスしていき、未来はおもむろに片手を不破の足の間に移動させる。指先でなぞるようにして肌を滑り下りていくものだから、さすがの不破の身体もぴくりと反応し、それが直に伝わって未来の中に可愛いという感情が芽生える。きっと不破本人に言ったら不機嫌になるだろうが。
 たどり着いた先はしっとりと濡れていて、指にぬるりとした感触があった。未来から性的な触れ合いはなかったため、自分の乱れる姿を見て興奮してくれたのだと思うと恥ずかしさと嬉しさが込み上げてくる。同時に軽くといえど不破の性器に触れている事実に未来の身体はさらに熱くなっていく。
「不破君……不破君の、触りたい……」
 肩に置いていた顔を上げ、不破を見つめる。自分だって彼女を気持ちよくしたい。攻めたい、というよりかは奉仕の精神が強いか。未来は不破に望むが、
「却下だ」
「ふぇ……? ンっ、ああぁぁぁぁ……!?」
 短く拒否すると不破は未来の股の間に左手を突っ込み、中指にたっぷりと膣液を纏うとそのまま狭い入り口へと指を押し込む。意外とすんなりと入った指を歓迎するように──実際は異物を排除しようとする動きだが、膣壁がきゅうきゅうと締まって指を揉んでくる。未来はいきなりの行為に驚きながらも痛みはなく、異物感となにかを探るように胎内で蠢く指に両手で不破の肩にしがみつく。しかし顔だけは彼女の右手に顎を掴まれ固定されたために今も不破と見つめ合ったまま。
「狭いな……。確か、織部が言っていた場所は……」
「はっ、ぁ、うぅ……ぁ!? まって、そこ、ああッ!」
 不破がなにかを言っていても未来の耳には届かない。全ての意識は内部で動く指に持って行かれていた。じっくりと未来の顔を見ながら膣内のとある場所を不破が撫でた瞬間、未来の表情はどこか苦しげなものに変わり、嬌声も甲高いものへと変わった。
 ぶわりと快感が広がり、肩を掴む手に力が入る。未来自身も知らなかった弱点を集中的に攻められれば逃げるように腰が揺れ、いやらしく乱れる。
 悩ましげに寄せられる眉。双眸のまなじりに浮かぶ雫に紅潮した頬、湿った息を繰り返しながら絶え間なく発せられる声は自分が出しているとは思えないほどに艶やかで。
「不破君っ、や、こわい……!」
「未経験の快感が恐ろしいか。だが直に虜にしてやる」
「やっ、ぁ……!? そこぉ! だめ、気持ちよくてっ、ぐりぐりやめてぇぇぇ……!」
 未知の快楽に肌が粟立ち、恐ろしいと訴える未来に対して不破は涼しい顔で逆に嗜虐心を刺激されたのか親指でクリトリスも弄り始めるではないか。
 小さく顔を出している朱珠。指でナカを擦りながら親指で左右に弾かれればより鮮明な性感電撃が未来の身体を中心から貫き、下腹部に渦巻く快楽の詰まった風船が今にも弾けてしまいそうになる。
 未来が知らない気持ちのいい場所を攻めまくる不破の顔は美しいながらもサドっ気に溢れたもので、その面様を涙で滲みながらも見た未来は心臓を握られたような衝撃が走った。
 唇の両端は楽しげに持ち上げられ、青の瞳の奥に宿る冷たい炎を揺らめかせながら攻めの手をやめるどころか、逆に強めてくる不破。甘いえっちよりかも少々激しい行為だが、未来は心身ともに満たされていく感覚があった。
 好きな人が自分の身体に触れて、楽しんでくれている。そんな彼女に犯されている自分の姿を第三者視点で想像すると、より快楽が増していく気がした。
「ふわ……くん……! なんか、へん……っ、あそこ、きゅって、してぇ……!」
「ほう。ならばその感覚に抗わずに解放しろ。俺が見ててやる」
「あっ……ん、んんっ!! だめ、だめっ!」
 蠢く指の動きに合わせてぷしゃぷしゃと蜜が割れ目から噴き出し、ぬるついた陰核を絶え間なく攻められ続ければ痺れるような感覚が強まり、なにかが来てしまうような気配に未来は不破の肩にしがみつく片手を下ろすと、そのまま彼女の手を握った。その力も強く、不破からも握り返してくれたことが嬉しくて「あ、」と思った刹那、
「ぁ……ああああああッ!! ンっっ、は……ぁ、ああぁ……!」
 溜まる一方だった淀みが弾け、圧倒的な開放感とともに未来はあられもない声を上げながら脱力し、布団へと倒れた。全身が痙攣しているが下半身の震えは顕著で、今の今まで指が挿入されていた小さな穴はひくひくと収縮を繰り返していた。
 苦しみから解き放たれ、幸福感が内側から溢れて止まらない。不破が虜にしてやると言っていたが、なるほどこれは癖になってしまう快感だと未来は目を閉じて息を整える。
 不破は絶頂を迎えた未来の姿を見て満足気に口角を上げると未来の胎内に埋めていた中指を舐め、彼女自身の味を堪能すると動き出す。未来の片足を担ぎ、卑猥に輝く桜色の恥部を大きく晒すとその間に自らの半身を滑り込ませる。
「不破君っ、なにを……」
 自分と不破の秘処が合わさる淫猥な光景に未来は目を丸くする。想像していなかった光景に口の中に自然と唾液が溢れ、ごくりと音を立てながら飲み込む。視覚的にも非常にエロティックで、たった十年と少し生きただけの小娘には刺激が強すぎた。
「織部が言っていたが……こうすると互いに快楽を得られるそうだ」
「な、なんでそこで織部君が出てくるの」
 普段ならば特別気にしたりはしないのだが、こういう雰囲気のときに男の子の名前を出さないでほしいと願うのは我儘だろうか。いいや、違うと自問自答しながらも不破に少々の抗議をすれば、
「……嫉妬か? ただ単に奴が──女性器は傷つきやすいからと俺の爪にヤスリをかけながらベラベラと一方的に喋っていただけだ」
 不破はなにを勘違いしているんだと、小首を傾げながら告げる。その言葉につられて彼女の手を見れば爪は短く整えられているではないか。まさかあの織部君が……と未来は驚くが、夕食の用意やこの部屋のセッティングも彼がしてくれたことを考えると納得がいく。
 頭では分かっているのだ。不破と織部はそういう関係ではないと。男女の組み合わせというのも知ってもそういった雰囲気は一切ない。けれど織部のスペックが高すぎるゆえに時折心配になってしまう部分があるのも事実。
「俺を前にして他のことを考えるなど、随分と余裕があると見える」
「ぁ、そんな、きゃぅぅっ!? あそこ、こすれてっ……!?」
 意識が他に向いている未来を咎めるように不破が動き出す。担いでいる未来の足を支えにしながら、ぴったりと合わさった性愛器官をくねらせれば互いの体液が混ざり合って滑りがよくなっていく。
 くちゅくちゃと淫らな音を奏でながら摩擦熱で熱くなっていく恥部は濡れ花同士の濃厚キスをしながら肉貝が絡み合い、クリトリスがこすれる度に快楽の深みに堕ちていくような錯覚さえ未来は感じる。
 不破に上に乗られて腰をぶつけられると指のときよりかも彼女に犯されているという認識が強まり、快楽が増幅される。性器が重なり合う気持ちよさはもちろん、見た目、そしてなにより不破の顔がよく見えることに満足度も高い。
(不破君、顔が……赤くなってる。ちょっと苦しそうだし、もしかして私と同じ……?)
 どこか苦しげに寄せられた眉。細められた青目に小さな口から漏れる荒めの呼吸。速度が上がる腰の動き。未来も達したばかりでの次なる行為に先ほど自分が経験した感覚がすでに訪れているので、あと少しであの解放感が得られると慣れないながらも自分からも腰を動かし始める。
 自分もそうだがなにより不破君に気持ちよくなってもらいたい。彼女にもあの快楽を経験してほしいと、名前を何度も呼びながら擦り上げる。
「ふわくんっ、あぁんっ……! ふわ、くんっ……! ぁああっ、はひゅ……これ、気持ちよくてッ……! 私、また……ひぁぁああっ!!」
「ッ……は……、はぁ……!」
 互いにシンクロしたように陰唇がキスをし、粘着質な音を立てながら淫核が互いを求める。凄まじい快感の波に両名とも同じタイミングで絶頂の兆しへと急速に駆け上がる。
「も、もうダメまた変になるぅっ! あァああぁッ、不破君っ、ふわくんも、一緒に……っ!」
 悦の波に溺れそうになりながら未来は不破を求めて両手を伸ばす。最後は彼女とともに至りたい。不破も未来の願いどおりに両手を伸ばしてやり、指先が触れ合うか否かの瞬間。
「あ──ああァぁぁあアアッッ……!!」
「ッ……!」
 ぎゅっ、と目を閉じながら嬌声を上げる未来は突き上げる衝動のままに不破の手を強く握り、また未来と同じく絶頂を迎えた不破も目を閉じ眉間に皺を寄せながら、一気に押し寄せる甘やかなアクメに耐え、それは未来の手を握る力に反映される。
 胸を大きく上下させ、口で荒い呼吸を繰り返しながら未来は不破と同時に至れたことに至上の幸福を感じていた。愛する人と──しかも何年も恋い焦がれていた人との行為がこんなにも幸せなものだなんて。こんなの、何回も欲しくなってしまう。
「不破君……」
 呼吸が落ち着いてきたところで不破を呼べば、彼女は未来の足を下ろすとそのまま覆い被さり、口付けてきた。最初から舌同士を戯れさせる深いキス。口周りが汚れるのも気にせずちゅるちゅると淫らな接吻に耽りながら、未来は不破の背に両手を回して引き寄せる。
「ふわ……君、……気持ち、よかった……?」
「……ああ」
 彼女から流し込まれる唾液を飲み込み、蕩けた目で見つめれば不破の瞳の奥の炎が未だに消えていないことに一旦は引いた熱がぶり返す。じわじわと弱火で炙られているようなもどかしさに未来は誘うように不破の足に自らの足を絡ませ、
「不破君……もっと……したい」
「最初からその予定だ。これだけで済ますつもりはない。覚悟するんだな」
 自分から求める恥ずかしさに視線を逸らしながら控えめにおねだりすれば彼女からは当然だと、さらなる濃密な時間を示唆する発言が。
「うん……。不破君にもっと触ってほしい……めちゃくちゃに、されたい……」
 こんなことを言ったらエッチな女の子と思われるかもしれないと思いながらも、素直な気持ちを口にする。彼女の手でもっと乱れたい。彼女を感じたい。タガが外れたように淫乱欲求が未来の脳内を埋め尽くし、不破に支配され、彼女に奉仕したいという感情が溢れ出す。
 未来の告白に不破は珍しく瞠目して驚くが、すぐに元に戻ると未来の唇に吸い付きながらその手は少女の柔らかな肉体を愛するためにそれぞれの場所に伸びていく。
「ン、ちゅ……ぁ、ふわ、くん……好き……すき……っ」
 終わりの見えない肉欲に従い、ふたりは溺れていく。互いに愛し合い、まるで溶け合ったように身体の境界線が分からなくなるまで何回も、何回も。
 途中で休憩を挟みながらも雌交尾を続け、ようやくひと区切りついた頃にはとっぷりと夜も深まっている時間だった。普段ならば未来は就寝している時間だ。
 寝るにしても体液でべとべとになったまま眠るわけにはいかないと身体を綺麗にするために風呂へと入ったが、そこでも愛欲を貪り、最後は未来がのぼせてしまうからということで終わりを迎えたのだった。
 下着を着るのも億劫なため素肌に浴衣一枚という背徳的な姿だが、両名ともに疲れ果てていたので気にせず。織部が用意した部屋の布団は体液で濡れてしまっているので使えず、不破の部屋に置かれているベッドで眠ることになった。
 疲労を極めているのもそうだが、不破の香りに包まれながらなので未来はすぐに意識を手放し、不破も未来を抱き寄せながら眠りに堕ちる。多幸感に包まれたふたりの寝顔はとても安らいだものだった。

   ***

 翌日。朝の八時。隣の家に住む織部は不破に断りもなく作った合鍵を使って彼女の家へと上がり込む。目的は朝食と昼食の用意だ。食材は事前に冷蔵庫に詰めてあるのであとは料理をするだけ。なので彼が向かう先は本来であれば台所なのだが、ピカロな彼は不破と未来のために用意した寝室へと向かう。
 足音を立てずに部屋へと着くと、中の様子を伺うように耳をそばだてるがなにも聞こえない。寝ているのかと細く襖を開ければそこはもぬけの殻。人ひとりが通れるくらいに襖を大きく開けば乱れたベッドと脱ぎ散らかされた衣服があるのみ。行灯型ライトもつけっぱなしだ。
 だが織部は部屋の様子を見て湿った息を吐き、上唇を舌で舐める。彼女たちがここで激しく愛し合ったのは明白だからだ。
(あとで布団を干して、服も洗濯──おおっと、未来ちゃんに怒られちまうかな)
 不破の服の洗濯はいつもしているのでなにも言われないが、未来は違う。異性に、しかもクラスメイトに下着を見られたとなると話は別だ。ここは手を付けずにいようと織部は退室すると、次は不破の部屋へと向かう。ここにいないのならば彼女の部屋しか考えられない。
 こちらもそぉっと忍び込む。デスクなどが置かれている部屋と寝室を隔てる襖があるものの、開け放たれているために丸見え状態。それでも真ん中からガン見するという下品なことはしないようで、織部は襖に体を隠すと目元だけ覗かせる。
 するとそこには天国が広がっていた。白い掛け布団に包まれながら眠る美少女たち。互いに向き合うようにして横になっており、目覚めれば相手の顔が見える。
 さらには布団から覗く肩口は浴衣が脱げかかっており、ここでも愛し合ったのか、それとも寝返りで緩んだか。
 不埒な妄想をしていると鋭い視線を感じ、そちらへと目を向ければ「失せろ」というような眼差しが織部に注がれており、未だ完全覚醒には至らぬものの、不破は掛け布団を顔まで隠すように掛け直す。織部の前から未来を隠すように。
「はいはい。お邪魔虫は退散するよ。冷蔵庫の中に作った飯を入れておくから、あとで未来ちゃんと食べて」
 小声での言葉だが不破には聞こえているだろうと、織部は大人しく部屋を出る。今度こそ向かうは台所。彼女たちのためにも精がついてとびきり美味い食事を作らなければ。