誘惑のサマーナイト

「ちょっ、駄目だよこんなとこで……!」
「大丈夫だって。誰もいないし」
「ぁぁっ……! や、うぅっ……!」
 町から外れた森の中。木々が生い茂るこの場所は夏の季節だというのに涼し気で爽やかな風が吹き抜ける。そんな森の奥まった場所で木の陰に隠れて妖しく絡むのは二人の女性。
(えっ、ウソ!? あれって、そ、そうだよね……!?)
 依頼のためにこの島に滞在していたジータは魔物討伐の仕事を単独で終え、町に戻る最中だった。その途中で人の気配を感じ、気になったのでそちらに向かえば木を背に一人の女性が、その女性に覆い被さるように立つもう一人の女性の姿が目に入った。
 木を背に立つ女性は誰かに見られるかもしれないという心配から駄目だと訴えるがタチの女性は大丈夫だと言い聞かせ、キスを交えながらその手はネコ側のスカートの中へ。
 ジータはまさかの展開に目を白黒させ、恥ずかしさから黒のロンググローブに包まれた両手で湯だった顔を隠すも、やはり気になるのか指の間に隙間を作り、こっそりと二人の様子を伺う。
 頭では駄目だと分かっている。すぐに立ち去るべきだと。しかし女性同士の行為に興味がないかと聞かれれば、それはノーで。
 サラサラと風に揺れる蒼穹の髪は強者の証。全空一の強さなのでは? と噂されるほどに強大な力を有する彼女も実は処女。
 想っている女性はいる。だが、その相手に大きな問題があり、誰にも言えないでいた。
(指……アソコに触ってるってことだよね……? されている方の人、気持ちよさそう……)
 クイッ、クイッと動いている手の動きや、ネコ女性の甘く蕩けた顔を見ていると自身の脚の間も疼いてくる。無意識の内に片手が顔から離れ、股間へと伸びるが、ハッと我に返ると気配を消したまま、その場から立ち去った。

   ***

「はぁ〜〜……」
「そんなに大きなため息をついて……なにか悩みごと?」
「うふふっ……特異点の悩みなんて、昼間のアレしかないだろ」
(また勝手に顕現してる……)
 時は流れて深夜。グランサイファーのジータの部屋にて。なんとなく町の宿屋ではなく、艇で休みたかったジータは宿屋に宿泊するルリアたちと別れて行動していた。
 団員たちも多くは町に出ており、艇に残っている者は少なめだ。団長としての仕事を終えたのが数十分前。シャワーで身を清め終え、あとは寝るだけだと黒のタンクトップにショートパンツという楽な格好で部屋に戻れば、我が物顔でベッドに寝転がるのは同じ顔をした二匹の星晶獣。
 堕天司ベリアルの羽根から力を勝手に借り、戦闘のお供として毎日のように連れ歩いている召喚石のベリアル。堕天司の女王ルシファーと共に次元の狭間に幽閉されているベリアルと同じ姿をしたベリアルはベッドに寝転び、肘枕をしながらこちらを見つめる。
 もう一人のベリアルは夏の季節にいつの間にか石がジータの枕元にあり、顕現するようになった際どい水着を着たベリアル。彼女はうつ伏せに寝転びながら頬杖をして通常ベリアルと同じようにジータの方を見ており、両者ともに言えるのはそのマシュマロのように柔らかな胸を強調していること。
 気まぐれに部屋に勝手に顕現してはジータにちょっかいを出す二人。ジータがやめてと言って大人しくするような人物ではないため、今では好きなようにさせていた。
 元はシングルサイズだったベッドも彼女たちに占領されては寝るところがなくなるため、今ではキングサイズ。部屋の大部分を占めるが、仕方のないこと。
 二人のベリアルは召喚効果こそクセのあるものだが──特に通常の方のサブ効果には常時お世話になりっぱなし。水着の方も特定の戦闘には連れ回しているのでジータもそこまで強くはいえないのだ。
 ベリアルといえど召喚石。本体と比べてそこまで害はないので気まぐれな性格も相まって猫ちゃんのように思っている節があるジータはベッドに近づくと、水着ベリアルの喉に向かって手を伸ばす。
 こちらのしたいことが分かっている水着ベリアルは顔を上げて喉をさらけ出した。無防備な白い喉を指先でコショコショと撫で上げれば、機嫌が良さそうに声を転がす。正直可愛い。
 召喚石のベリアルたちに対して、だいぶ絆されている自覚はある。砕けと言われたら「無理」と即答するのが簡単に想像できる。
 ベリアルたちの効果は唯一無二。加えて戦力強化のために貴重な金剛石を使ったりもした。それ以外にも……。
(やっぱり顔がいい……。声だって)
 ジータは面食いだった。
 故郷で暮らしているときにも顔が整った村人はいたが、外の世界の顔面レベルはジータの想像以上。仲間たちも顔が整った者ばかりだが、そこは仲間なので恋愛感情は抱かず。
 そんなときに出会ったのがベリアル。最初の出会いは最悪だったが一目見た瞬間その美貌の虜になってしまった。けれど彼女は敵。サンダルフォンの大切な人を奪い、さらにはその体を使って最愛の人を復活させ、終末を齎そうとした。
 この気持ちは誰にも言えない。墓まで持っていくべきだ。考えた末に出した結論は想うだけにすること。半身のルリアにも、相棒であるビィにも、誰にもこの気持ちは知られるわけにはいかない。
「昼間のアレを見たキミ、ヴァージンぶって可愛かったなァ」
「これだけの大所帯。そしてキミに想いを寄せる団員たちの多さ……。入れ食い状態だしな」
 ベッドに腰かければベリアルたちがおもむろに動き出し、挟まる形になる。両側からの囁きは昼間の女たちの蜜事を鮮明に思い出させ、風呂から出て少しだけ冷めたはずの体が一気に熱を帯び、ジータは溢れる生唾を飲み込む。
 愛のこもったキスに、性器を撫でる指先──。もしあれが自分とベリアルで、彼女の白くて長い指で触れられたらと思うと……。少し妄想するだけで脚の間は蜜を滲ませ、下腹部がうずうずとしてくる。
 ベリアルたちはもうジータが性行為を経験していると思っているがそれは見当違い。戦闘面ではとても強い彼女だが恋愛や性に関しては初心者。自慰すらしたことがないレベル。
「そういえばキミって想い人はいるのか? キミのような人間なら告白して断るような奴はいないと思うぜ?」
 背後から通常ベリアルが抱きついてきた。背中に押し付けられる膨らみは柔らかくて、布越しではなくて直接肌で感じたいと思うほど。
「それは……」
「もしかして蒼の少女?」
 分け身とはいえベリアルなのだ。言い淀むと、水着ベリアルが横から這い上がってきた。ジータの胸に顔を載せながら告げる彼女の緩くかけられた赤いサングラスの奥にある瞳は笑っている。
「ルリアは違うよ! 大切な人だけど、そういうのじゃないの……」
「なら誰? ワタシたちに教えてくれよ……」
 二匹の猫たちがジータの身体に絡みつく。背後からまるで恋人のように首に回される腕。耳へと吹き込まれる言の葉と湿った息は微かな身体の震えとなってベリアルたちに伝う。
「なあ、特異点……?」
 ジータと視線の高さを合わせた水着ベリアルの豊満な胸が少女の成長途中の胸と押し合い、意識がそちらに取られてしまう。ベリアルも分かった上でふにゅふにゅと何度も身体を揺らし、ジータを誘惑しにかかる。
 こうして絡まれることは初めてではない。しかし、昼間の出来事が鮮明に記憶に残っているからこそ、性的な熱がジータを支配する。
 内側から徐々に大きくなる炎。それは正常な思考回路を奪い、快楽を求めてしまう。ジータも人間。そして性に対して耐性がないからこそ、早々に陥落してしまいそうになる。
 もう言い訳ができないくらいに顔は真っ赤に彩られているだろう。けれど言うわけにはいかない。いかないのだ。
「そ……れは、秘密……!」
 いっぱいいっぱいになりながらも、淫らに絡む女神たちに訴えれば、彼女たちは「ふぅ〜ん」と鼻を鳴らす。そこまで聞きたいわけでもないのか、反応は薄め。
「ならせめて男か女かは教えてくれよ」
「そのくらいは構わないだろう?」
「……お、女の人……」
 性別くらいなら、と教えたあとに少しだけ後悔。なぜなら水着ベリアルが怪しい笑みを浮かべているから。この様子だと背後にいるベリアルも同じ表情をしているはず。
「女ね。なるほど。昼間の情事を熱心に盗み見ていたのも頷ける」
「それで、特異点はその相手を満足させられそう? フフ……それともキミがネコちゃんなのかな?」
 二人のベリアルが左右の耳に向かって囁きかける。くすぐったい感覚にジータは小さいながらも情けない悲鳴を上げ、瞳を潤ませると、ベリアルたちはクスクスと笑いだす。
「あぁキミ──本当にヴァージン?」
「なら練習しておかないと」
 どちらのベリアルがどのセリフを言ったのかを気にする余裕は今のジータにはない。
 背後のベリアルに抱きしめられながら、ベッドの上に引き込まれる。ヘッドボードを背にジータを抱きかかえたベリアルの脚の間にすっぽりと収まっているジータの前には、水着ベリアルが座った。
「ちょ、ちょっと、なに……!」
「ナニ、っていざ想い人と本番になったら──キミが上でも下でもイイ反応ができるようにワタシたちが教えてあげるよ」
(うわわっ……!)
 ふにゅっ。と水着ベリアルの胸が胸部に押し付けられ、巨大なたわわに柔らかく押し潰される感触は極上。自身の柔らかさをアピールするようにグッ、グッ、と前へと力を加えられる。豊かであるのと同時に計算され尽くした美乳は黒い水着によって大事な部分は隠されているものの、布の面積が圧倒的に少ない。そんなセクシーな格好をしながらくっきり谷間を見せつけ、こちらの胸を覆い隠す姿は圧倒の一言。
 これといった性癖がないジータではあるが、この感覚がとても良いものだとは本能で理解できた。そして早々に堕ちてしまいそうにも。ベリアル本人ではないが、彼女もベリアルなのだから。好きな人からされる性的接触を意識するなというのが無理な話。
 胸から視線を外せば至近距離には獲物を定めた女豹の顔。星の天才に造られた美はたかが十年と少し生きた少女には刺激が強すぎる。
 通常時と違い崩された髪型は前髪が意外と長く、特徴的な赤いサングラスから覗く瞳は暴力的にギラついていた。純粋な力量ならばこちらの方が強いというのに、この状況下では狼に喰われるのを待つばかりの赤ずきん。
「キスしても?」
 背後のベリアルが頬をぴったりと合わせて聞いてくる。どんな表情をしているかはジータからは見えないがきっと悪い顔をしているだろうなとは想像に難しくない。
 キスの問いにジータは逡巡するが他の誰でもないベリアルからのお誘い。もうここまで来たら身を預けてしまおうという気持ちもあったために控えめに頷くとベリアルの大人の手がジータの頬を包み、横を向かせると柔らかい膨らみが唇に触れ、それがベリアルの唇だとジータが理解したときには彼女の長い舌が口内に侵入していた。
「ンッ……! んふぅぅ……! ン、んんンッ……!!」
 自然と閉じてしまう目には涙の雫が溜まり、舌と舌の唾液をまとった触れ合いはにゅるりとした粘性快楽が脳髄を痺れさせる。背筋に媚電流が走り、下腹部がもどかしい。ぴちゃくちゃと湿った音が耳を犯し、口の中を我が物顔で舐め回す舌にジータはされるがまま。
 薄く目を開ければ潤んだ視界の先には三日月に歪んだ血のまなこ。ベリアルはジータの様子をじっくりと見つめて視線でも犯しているようだった。
「次はコッチ。ン、フフ……」
「ふぁ……ン、ちゅ、んっ、ふぁぁ……」
 ベリアルとのキスに一旦の終わりを迎えて唇同士が離れると近づいてきたのは水着ベリアル。ジータのだらしなく開かれた唇は二人の唾液が混ざって卑猥に光っており、舌に吸い付くと水着ベリアルは舌同士を濃厚に絡ませながら時折ジータの下唇を食んだり唾液を飲ませたりして翻弄する。
 ジータにとってはこれが初夜であり、しかも二人同時に相手をしているためにもうなにがなんだか分からない。目を閉じて思うのはこれからどうなってしまうのかという不安。酷いことにはならないと思うが、性知識があまりないために怖いという感情があった。
「怖がる必要なんてないさ。ただワタシたちに身を委ねるだけでいい」
「そうそう。リラックスした方が快感を得やすいぜ?」
 前と後ろからそれぞれ同じ声で左右の耳に息とともに声を吹き込んでくるのだからジータはたまらずに身震いする。すると水着ベリアルが再びキスをしてきて背後のベリアルは黒のタンクトップの上から胸に触れた。
 ハリのある瑞々しい膨らみは大人の女の手にフィットし、彼女の手の中でむにゅむにゅと形を変える。強弱をつけて円を描くように揉まれればゾクゾクとした快感が胸から全身へと広がり、胸の先端がもどかしくなる。
「んはぁ……あッ、はぁ……っ、ンっ、あっ、ぁ……!」
「胸……しかも服の上からなのに結構敏感なんだねぇ? もうとろっとろの雌の顔をしてるじゃないか」
「どれどれ? へぇ、普段は凛々しい特異点もこうなると年相応の女の子だな」
 二人のベリアルが揶揄してくるがジータはそれに反応している余裕はない。可愛らしい嬌声を上げながら体をくねらせる以外には。すると水着ベリアルがタンクトップの裾に手を伸ばし、焦らすようにゆっくりと捲っていく。徐々に露わになる健康的な肌は腹、そして無防備な胸をさらけ出し、最後には無用の布はベッドの上に放り投げられてしまった。
 まろび出るふっくらとした乳房。だがジータはすかさず両腕で隠してしまう。それは本人の考えというよりかは反射的な行動。官能的な接吻を交わしたというのに服を脱がせただけでこれとは、と二人のベリアルは喉の奥で笑う。
「そうだな。特異点だけ裸になるのはフェアじゃない」
「ほら、これでキミと同じ」
 それぞれ口にすると上半身に纏っている布を脱ぎ、ジータと同じように半裸になる。そこには恥ずかしさの欠片もなく、むしろルシファーの造ったパーフェクトなボディを見せつけられ、ジータは喉を鳴らす。背中にはぴったりと抱きつくベリアルの豊満な胸。すべすべの肌やふわふわ感触に変な気分が溢れて止まらない。そしてその中心、硬くなっている乳蕾の存在がハッキリと感じられてよりエロティックな雰囲気を醸し出す。
 ジータの目の前にいる水着ベリアルは元から布面積が少なかったといえど今まで隠されていた薄紅色の尖りが現れただけでその綺麗さに思わず見惚れてしまう。
 他の女性の胸をじっくりと見たことはないが少なくとも自分よりかは圧倒的に美しい。滑らかな白い肌に映える乳輪、そして種はベリアルが悪女とは思えないほどに可憐だ。
「あ……っ……!」
 その重たい実りが自分の方に近づいてくると気づいたときには水着ベリアルはジータを抱きしめ、彼女の胸にジータの胸が覆い隠されていた。見ているだけで柔らかいものが押し付けられている音がどこからともなく聞こえてくるようだ。
「あっ、ぁ、」
 二人のベリアルにサンドされているジータは前も後ろも大振りな肉果実によって微弱な、そして甘美な快楽を与えられて緊張の糸がほどけていく。特に前からの肉悦はいつの間にか硬くしこっていたジータの乳首と水着ベリアルのモノがまるでフレンチキスをするかのように絡み合い、決定的な快楽とは言えないものの胸同士が合わさっているという視覚的快楽も手伝って少しずつジータの心の壁を崩していく。
 水着ベリアルも口の端を持ち上げて腰をくねらせ胸を揺らし、背後のベリアルはジータのくびれをなぞったり太ももを撫でたりといやらしい快感を与え、やまぬ刺激に少女の小柄な体は快楽痙攣が止まらずに顫動せんどうし続ける。
「ほら、胸をパイズリしてやるよ。キミの成長途中の実りがワタシの胸に挟まれて……可愛いなァ」
 なにを思ったのか水着ベリアルは体を軽く離して自分の両手で胸を支えると、そのままジータの片胸を谷間に迎えて挟むと強弱をつけながら擦り上げる。ソフトな感触ながらも胸で胸を扱くという行為が先ほどのニップルキスと同じく視覚的快楽にプラスするスパイスとなりとても気持ちがいい。
「はぅぅ……! そんな、おっぱいが、んぁぁっ……! 柔らかくて、どんどん変な気持ちになっちゃう……! ッ!? ぁ、だめ、そんなふうに揉んでもなにも出ないからぁ……!!」
 前にいる水着ベリアルに集中してしまっていると背後の存在が己を主張するように残りの乳房に手を伸ばす。牛の乳搾りを連想させる──だが決して先端には触れない動きにジータのぷっくりと膨らんだ乳芽はもどかしさを感じ始める。他のところと同じようにもっとちゃんと触ってほしい。湿った喘ぎ声を断続的に上げながら顔を横に少し動かせばベリアルが覗き込むように顔を前に出していたために頬同士が触れる。
「ン〜〜? どうした特異点。そんなカオして」
 ジータがいま、なにを願っているかを知っている上での問いに快楽に身を委ね始めている少女の口が真一文字に結ばれる。
 ベリアルの性格はよろしくない。彼女が優しければジータがしてほしいことをなにも言わずにしてくれるだろうが……。あぁ、その目はこの口からいやらしいおねだりが出てくるのを待っている。目で笑う悪魔にジータは負け、頬に口づけを送るとジットリと這い寄る堕落の気配に唇を震わせながらしてほしいことを囁く。
「お願いベリアル……もっとちゃんと触って……」
「どこを?」
「ちっ、乳首……を。さっきからジンジンしてつらいの、だからお願い……」
 右手でベリアルの手に触れ、指先を手に取ると目的の場所に触れさせる。ただ乳首に指を重ねただけだというのに尖りから快楽が広がり、この先を望んでしまう。
「ンんッ、ひっ……ぅ、うぁ……あんっ……!!」
 かりかりかり、と、ベリアルの人差し指が勃起した乳尖りを軽く引っ掻き、こそばゆい感覚に喘ぐとぐにぃぃっ、と鈍い痛みが胸に走る。目をそちらへと向ければ指の第一関節が胸の中に沈んでおり、乳首を強く押し込んだ上で指を左右に揺らして刺激を送るという初心者向けではない攻めにジータは口から溢れそうになる唾液を飲み込む。痛いのに、気持ちいい。
「うんうん。快楽に素直になるのはいいことだ特異点。ご褒美にもっと気持ちよくしてやるよ」
 パイズリをしていた水着ベリアルはジータの体にもたれかかると胸に顔を近づけ、そのまま大口を開けて乳輪ごと乳種を口に含む。あーん、ぱくっ。と、まるでお菓子でも食べるかのように。
 れろっ、ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅぷん。
 吸ったり舐めたりと気まぐれな舌の動きに耐えられずジータは背中にいるベリアルにぐったりと体を預け、彼女の首元で雌声を上げ乱れる。しだいに脚の間が湿ってくるのを感じ、漏らしちゃった……? と不安に思うもその思考はベリアルによって乳頭をつねられたことで強制的に中断させられた。
 右の胸は痛みによる快楽、左の胸は舌と唾液によるねっとりとした快楽。相反する性質にジータの頭は混乱を極める。二人による入念な乳愛撫によって全身が性感帯と化し、彼女たちのザラつきとは無縁の肌に触れているだけで快感を感じてしまう始末。
 だらしなく舌を突き出し、はふはふと獣の呼吸をしながら身体を微痙攣させていると水着ベリアルがさらに動く。胸から顔を離すと濡れに濡れた乳首が部屋のランプを光を受けて卑猥に輝き、それを見つめるジータと水着ベリアルの視線が交わる。星の獣は悪戯っぽい笑みを浮かべると最後のお別れとでも表現するように長い舌でベロリと勃起乳首をひと舐め。
 そのまま腕や胸の輪郭、腹部などにキスしたり舐めたりしながら下へと向かっていく。ジータは段々と股間に向かっていく女の顔にどこか期待を込めた眼差しを向けていると後ろで自分を抱えているベリアルの片手に顎を取られ、口を塞がれる。残りの手も片方の胸に伸ばされ弄ばれながら口内を犯されていく。
 無遠慮に口の中を支配する舌に意識が取られ、ぼうっとした頭で蕩けた目をしていると不意に脚の間からぬめり快楽が襲いかかった。ジータの目は見開かれ、同時に顎を掴む手が弱まったことに自然と顔が離れ、口周りが濡れた顔を下半身へと向ける。するとどうだ。ショートパンツと下着がいつの間にか脱がされ、自分は一糸まとわぬ姿になっているではないか。
 自分でも入浴のとき以外まともに触らない女性器。そこに水着ベリアルは顔をうずめてわざと下品な音を立てて吸い上げると性電気が突き上げ、ジータは悲鳴に似た嬌声を上げた。
「アァっ! なんで、ぁ、ンァァァァっ!! そんなとこ、やっ、ひッ、ン、ン〜〜〜〜っ!!!! ぁ、んぐっ、ン……、ン……!!」
 その声はベリアルの人差し指、中指が口に突っ込まれたことで一旦止む。しかし淫性器快楽による声はんぐッ、んぐ、とくぐもった声となってベリアルの指を唾液で濡らしていく。
 柔らかくて人間より明らかに長い舌が胎内の奥深くへと伸びていく。しなやかな物体だからこそ痛みは一切なく、少々の異物感とそれを超える快感パトスにジータの少女器官からは泉のように透明な体液が溢れ、ベリアルはそれを美味しそうに啜っていく。
 ズジュッ、ジュルルルルッ!! クチュッ、くちゃっ! ぴちゃっ……!
 大事なところを蠢く存在に子宮の辺りがキュッと切なくなり、今にも快感という名の風船がはち切れそうになる。鼻で呼吸をするのも忘れ口を大きく開け、突っ込まれている指の隙間からはふっ、はふっと荒い呼吸をすれば二本の指が舌を挟んでぐにぐにと揉んで邪魔をしてくるのだから息苦しさと肉快楽によってジータの目からは涙がこぼれ落ちて肌を濡らしていく。
(くぅぅッ……! 初めてなのにいっぱい舐められてっ、恥ずかしいのに気持ちよすぎて頭が変になるぅぅぅっ……! あッ、もうダメ……なにか、なにかおっきいの来ちゃうよぉッ……!!!!)
「その様子だとそろそろイクかい? 特異点」
 指を抜いたベリアルがなにやら言っているが今のジータの耳には届いていない。人外が成せるクンニに耽る水着ベリアルも膣内の収縮からジータがアクメを迎えようとしていることを感じ取り、最後の仕上げだと舌を素早く引き抜くと神経が集まった快楽器官クリトリスを力強く吸引し、今までのナカの悦を軽々と超える強烈な刺激は下半身から脳天へと突き抜ける雌絶頂となってジータを襲う。
「ンっ!! んんーーーンッ!!!! あ、アっ、ああああああぁあッッ!! はぁっ、あッ、はひゅっ、ぅ、ア、ぁぁぁァァっ……!!!!」
 あまりの快楽に首を大きく反らせて頭をベリアルの肩に載せる形になりながら、みずみずしい若い肉体をこれでもかと揺らして乱れるジータを楽しげにベリアルは見つめる。水着ベリアルも同じ表情をしているがその顔は濡れていた。絶頂を迎えたときに吹き出したジータの愛液を受けたからだ。
「はっ……ぁ……あぅ……、はぁ……うっ……」
「よしよしいい子だ特異点。ハジメテなのに派手にイけたじゃないか」
 ぐったりと脱力し、ベリアルの首筋に顔を預けて息を整えているジータを褒めながら頭を優しく撫でる手とは逆──先ほどまで咥えさせていた方の手をジータの火照った肌をすべりながら洪水状態の秘処へと伸ばすベリアル。
 また、水着ベリアルも起き上がるとジータの両脚をより大きく広げて自らの片手、人差し指と中指で熟れた花の割れ目に溜まっている蜜を掬うと淫核へとまぶす。
 イッたばかりだというのに遠慮なしに与えられる繊細な指の調べにジータは甘ったるい喘ぎを漏らしながら顔を下半身へと向ければ、計四本の指が胎内へと続く矮小な穴へと今にも入ろうとしていた。
「いきなり四本か……まぁ特異点なら大丈夫か」
「なぁに。最初は苦しいかもしれないがすぐにヨくなるさ」
「は……ぐっ、ぁ……!? くるし……ッ……! うっ、ふぅっ……ふ、ハァっ……ぁ……!」
「見ろよ、ワタシたちの指をぐっぽり咥え込んでるぜ?」
 とても小さな穴。それなのにベリアルたちはジータを気遣うことはせずに自分たちの欲望のままに指を沈ませていく。乙女の内部は異物を押し返そうと締め付けてくるが、それがより彼女たちのサディズムを煽って奥へ、奥へ。
 堅牢な壁を突破してきた指たちにジータは息が詰まるが痛みよりかも苦しみが勝っていた。お腹の中がベリアルでいっぱいなのだから。しかし同時にどこか満ち足りている──妙な感情が顔を出してくるのも事実。どちらにせよ、今のジータに抵抗する余裕はない。
「あぁッ……! ゆび、ばらばら、はっ、はっ……、お腹、変なのに、きもち、い……っ……!」
 二人の指がランダムに動き回る。みっちりと連なった膣襞の一つひとつを丁寧になぞり、かと思えば別の指がざらざらとした場所をこすったり、一定のリズムで叩いたり。もうどれが誰の指なのかさえも分からない。ただ言えることは初めてなのに、しかも彼女たちの口ぶりから相当無理をしているというのに気持ちがいいことか。
 自分の身体が淫乱体質なのか、ベリアルたちのテクニックのおかげなのかはもうどうでもいい。そんなことを考えていると二人のベリアルが顔を寄せてきた。ジータはどうすればいいのかこの短時間で教え込まれたので、理性という光を失った目をしながら自然と自らの舌を伸ばす。
 生娘が娼婦になったかのように三人で舌を絡ませ、互いを貪るように口づけを交わす。ジータも段々と苦しさに慣れると目の前にある魅惑の実たちに自分から触れたりと蕩けるように濃厚な女同士の時間はさらに深まるばかり……。

   ***

 その後も二人に「まだ体力は余ってるだろう?」と言われて数回、さすがにもう限界だとシャワーで汗や体液を流そうと部屋に備え付けられている小さな浴室に向かったのはいいものの「洗ってやるよ」とベリアルが入ってきて、そこでも追加で一回と濃密過ぎる初夜がようやく終わる頃にはあと数時間で夜明けになる時間だった。
 ふらふらな状態で脱衣所から部屋に戻ると愛蜜で濡れたベッドは綺麗になっており、我が物顔で寝転がっている水着ベリアルにげっそりとした顔を向ければ“気が利くだろう?”と薄く笑うが、ジータはベッドに倒れ込むのと同時に短く礼を言うだけ。さすがにもう寝かせてほしい。
 あとに続くベリアルはぐったりとベッドに身を預けているジータの横に疲れを一切感じさせない優雅な動きで添い寝し、頬杖をついて見下ろしている。
 二人のベリアルにサンドされているジータの腕に身を寄せる水着ベリアルは胸を押し付け、谷間に腕を挟みながら「少しは勉強になったかい?」と聞いてくるが疲れ果てているジータは億劫そうに見遣り、目を閉じた。
「私は……告白するつもりはないよ。その人にはもう愛する人がいるから」
「へぇ……寝取ればいいんじゃないか?」
 指先にジータの蒼い髪をクルクルと巻きつけて弄りながらベリアルが言う。
「もう……。私はね、その人の心も体もほしいの。だから……このままでいい」
「まさか世界の中心であるキミでさえ手に入れられないオンナがいるなんてねぇ」
 水着ベリアルが肩を軽く上げて茶化すがジータからすれば本当に分かっていないのか、分かった上でからかっているのか。今ここであなただよ、と告げたらベリアルの余裕の表情を少しは崩すことができるのかな? と一瞬だけ想像したが、またややこしいことになるのは必至。喉元まで上がってきていた言葉をそのまま飲み込む。
「だったらこのままワタシたちと淫蕩にまみれた関係を続けるのはどうだい? 一度蜜の味を知ったら病み付きになっちまっただろう?」
「特異点の乱れた顔を知っているのはワタシたちだけ。そう考えるだけで腰にクるものがある……」
 妖しく囁くとベリアルは片手をジータの下腹部へ。ショートパンツのゴム側から中へと侵入し、下着に隠された柔肌へと指を伸ばす。
 水着ベリアルは抱きついているジータの手を操り、己の水着のボトムの中へと誘い込むとすでにしっとりと濡れている割れ目にジータの中指を沿わせた。が、ジータは二人の悪戯に対して冷静にどけたり、手を引き抜いたりしてベッドに下ろす。ベリアルたちは元気かもしれないが自分は──いくら体力には自身があるといっても初めての経験で、しかも何回もして疲れているし起きたら依頼だってある。少しでも睡眠時間は確保したい。
「分かったから……今は寝かせて……」
 自分が好きなのは狡知の堕天司ベリアル。だが彼女はルシファーを愛している。それこそ二千年ものあいだ孤独に生き、造物主復活の機会を伺っていたのだ。そこに自分が割って入れるわけがない。ならばこの仮初めの関係に身を任せるのもいい。それがいつか破滅へと導くものだとしても。ベリアル本人ではなく召喚石の彼女だとしても。
 堕落への誘いを受け入れたジータは静かに眠りにつき、誘惑の美女神たちは自分たちのいる深淵に少しずつ堕ちてくる至高の存在にそっと、ほくそ笑むのだった。

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