「んぅ……ふぁ、やだよぅ……やだぁっ……!」
「魅了かかってんのに上の口は素直じゃないなぁ〜。下のお口はこんなにも素直なのに」
「きひぃっ!? ふぁ……ぁあっ!」
気品があるデザインのキングサイズのベッド。そこでは二匹の雌の星晶獣が交尾の真っ最中だった。
ベッドの下側に頭を向け、貪られている金糸のショートヘアを持つ少女体の星晶獣はジータ。
彼女は天司の前身として研究所所長のルシファーによって造られたが、その特異性から天司が量産されるようになっても廃棄をまぬがれ、現在はルシファーの身の回りの世話をしていた。
そんな彼女の着ているワンピースのスカート部分をまくり上げ、股の間に顔をうずめて蜜を啜る星晶獣はベリアルといって、狡知を司る堕天司でルシファーの願いを叶えるために暗躍する女だ。
なぜ二人がまぐわっているのか。その理由は単純明快。ベリアルがジータを味見したかったから。
崇拝する創造主の世話をし、ときにはその体も差し出す彼女。
性に興味のなさそうな顔をしているルシファーが唯一触れるジータは一体どんなふうに啼くのか。最初は小さな興味だったが、日を重ねるごとにそれは膨れ上がり、こうして実行した。
いくらベリアルのほうが高性能でも星晶獣であるジータに抵抗されるのは面倒だと早々に魅了をかけ、ベッドに押し倒して今に至る。
ジータの潤んだ秘所は数え切れないほどにルシファーに愛されてなお、処女を思わせるような綺麗なサーモンピンクをしていた。
愛液を溢れさせる膣口にぴったりと唇をつけ、彼女の羞恥心を煽るように音を立てて淫水を吸い上げる。
味は他の女と変わりないが、思慕する相手が同じモノを啜っていると思うと、ベリアルの興奮は留まるところを知らない。
「こんなのダメぇっ! こんなっ、お母さまの部屋でっ……!」
「ウフフ。キミとファーさんが使ってるベッド。その上で大好きなママ以外の女に抱かれる感想はどう? ジータ」
ジータの言うとおり、ここは研究所の一角にあるルシファーの私室だった。彼女の生活の世話をひと通りするジータも一緒に暮らしている部屋。
寝室もここだけしかない。だからこそ、キングサイズのベッドなのだ。これなら二人で寝ても問題ない。
ベリアルの意地悪な言葉にジータは鼻を鳴らし、無言を貫く。本当に嫌なら思い切り泣き叫べばいいのにそれすらしない。
星晶獣なのに人間のように感情豊かでお人好しの彼女。叫び、ルシファーを呼んだらベリアルがどうなるのかを想像して声を上げられないのか。
*
「なにをしている」
熱に包まれたジータの頭に冷水を浴びせたのは底冷えする声だった。魅了によって思考能力を奪われていたジータだが、部屋に入ってきたルシファーの姿をひと目見ると一瞬で元に戻る。
自然と震える体。溢れる涙の意味もベリアルによって与えられるモノに対してではなく、ルシファーへの恐れに変わる。
ジータがなによりも優先する存在。お母さまと呼び、慕う存在に見られて意識がベリアルからルシファーに釘付けになった。
「ごめんよファーさん。あまりにもジータが可愛いから、つい」
「お前たちの交接に興味はない。が、私の部屋でするな」
「ファーさんのベッドでするほうがジータの刺激になると思って。それより、興味がないなら続けても?」
「…………」
沈黙は了承の意だとベリアルは汲み取り、再びジータの秘裂に唾液で濡れた舌を這わせた。愛蜜を舐めとり、小さいながら存在を主張しているクリトリスに吸い付く。
ジータの視界に星が散り、声が抑えられない。魅了の精神的な影響はなくなっても体のほうは未だ健在。敏感になった体はベリアルから与えられる快楽を余すことなく享受する。
「あっあっぁ、やだぁ! 見ないで、見ないでお母さまぁっ!」
片脚を腹部に向かって折り畳まれ、更に舐めやすくなった恥部。赤く色づいた花びらはしっとりと濡れ、艶めく。
ベリアルの長い舌が無遠慮に侵入してきて、肉襞を丁寧になぞられると快感電流がほとばしり、ジータに襲いかかる。
ルシファーの前で他の誰かの手で乱れることなどあってはならない。否、ルシファーがいなくても駄目なのだ。
この体は創造主であるルシファーのモノ。彼女以外で感じるわけには……! 頭では分かっているのだが、体は思いどおりにいかない。
脳髄が痺れ、あらゆる分泌液がジータの肌を濡らす。平時は可愛らしい花のような面容が淫らな女へと変わり、閉じることを忘れた口からは舌を突き出し、その双眸からは大量の涙を流しながらルシファーを見つめていた。
ルシファーに見られて恥ずかしいのか、悲しいのか、はたまたベリアルに与えられる淫熱のせいか。涙の理由ももう分からない。
目の前にぱっくりと口を開く肉悦の扉。誘われるように快感の波に押し流され、あと少しで扉をくぐる──。
「その女の手で達することは許さん」
造物主の声で肉欲の海に溺れかかっていた意識は急上昇する。ぼやける視界で捉えたのは自分を見下ろしている美しき顔。
ルシファーによって調教済みのジータは彼女の言葉にこくり、と首を縦に振ると自分の意志で絶頂から遠のいた。
「えぇ……? そんなのアリ? それにしても酷いなぁファーさん。ジータはワタシの魅了にかかってるんだぜ? 精神的な面は自分で解除したみたいだけど、体のほうは……」
「ひぐっ!?」
あと少しでジータをイカせられたのに、ルシファーの一言でそれは叶わなくなったと悟ったベリアルは大人しく顔を彼女の下半身から上げる。
ジータの淫らな体液でベトベトに濡れた口元を緩め、苦笑しながら一気に三本の指を挿入すれば、ジータの背がしなった。
引きつる声。内部を圧迫する感覚にジータの息が詰まる。それでも痛みは感じなかった。逆に咥えたモノを離したくないと強く締め付けてしまう。
へそ側にあるざらざらした部分を異なるタイミングで撫でられるとどうしようもなく気持ちよくて。
けれどルシファーの言いつけを忠実に守るジータには絶頂を迎えるという選択肢はない。迎えられるとしたら、それはルシファーが『よし』と言ったとき。
「すごいな……少し刺激しただけでビショビショだ。羨ましいよ、ファーさんの手で開発されるなんて」
「ふ……ぁ、っ……うぅ……!」
「ファーさんばかりじゃなくてさっきみたいにワタシを見てくれよジータ。寂しいじゃないか」
額をこつん、とくっつけられると視界がベリアルでいっぱいになる。美しい宝石が間近に見ることができてジータの胸が高鳴った。
雌同士でも反応してしまうくらい、ベリアルの造形は整っていた。彼女に大きな二つの実りがなければ男性にも見える中性的な顔。
短いダークブラウンの髪は見た目だけで柔らかそうで、白い肌を引き立てるカーディナルレッドは星の民さえも魅了してしまう。
ウソとマコトを織り交ぜた言葉を音にする声は少し低くて、纏わりつくような甘さを孕む。
身長も少女の体をしたジータと比べて高い。星の民の女性の平均から大きく外れ、男性並だ。
ベリアルと同時期に造られた姉妹のような存在、ルシファーが最高傑作と称えるルシフェルも彼女とほぼ同じだったはず。
男女問わず惹き付ける存在が、自分を……理由はどうであれ、抱いている。
改めて意識するとジータは赤面してしまう。とにかく顔がよすぎるのだ。さらにはジータの膣壁を撫でる指使いも絶妙で、ルシファーがイクなと言わなければとっくに彼女という毒に堕ちている。
ベリアルの先ほどの言葉を思い出す。ルシファーに対して苦笑しながら“酷い”と言っていた。本当にそうだと思うが、ジータの中にはルシファーに逆らうという考えそのものがない。
創造主であるルシファーの命令は絶対。ジータに許されたのはベリアルに堕ちてしまいそうになりながらも必死で抗うことのみ。
「ふぁ、ぁ……」
ひとときの間、一人の世界に耽っていた彼女を引き戻したのはベリアルの口付けだった。ガードの弱い唇を舌でこじ開け、にゅるりと押し入る。
ルシファーは体には触れてもキスはあまりしてこないので、ジータは不慣れで受け身になってしまう。
じぃっ、とこちらを見つめられるのが恥ずかしくて目をきつく閉じると感覚が冴え、ベリアルの指の動きがよく分かり、じわじわと甘い痺れが腰から這い上がってきてジータを苛む。
さらに責苦は続く。下半身で精一杯だというのに残った手がほどよい膨らみを揉み、硬くなった乳首を親指で押し潰したり、弾いたりしてくるではないか。
上下に責められて、でもイケなくて……。おかしくなってしまいそうになる意識をなんとか繋ぎ止めながら耐えるが、彼女は目を閉じるのさえ限界なのか開眼すると、目の大部分が白目に変わる。
「可愛い顔が台無しの酷い顔だ。いや、キミの貴重なイキ顔を見れて僥倖、の間違いか」
上半身を起こしたベリアルは満足そうに舌なめずりをすると最後の仕上げにかかった。数え切れないほどの女をイカせた指でジータを堕としにかかる、が。
「その女の手で達するのは許さん、と言ったはずだ」
「ひぃッ!? あ、ぅぁ……!」
傍観していたルシファーが動き出す。凍てつく青の瞳はジータの痴態を無表情で見つめ、右手を彼女の胸元へと伸ばす。
ズブズブ。そんな擬音が聞こえてきそうな動きでルシファーの手はジータの胸に沈み、その手は彼女自身を捉えた。
「コアなぞに触れられてなにがいいのか分からんが、お前はコレが好きだろう? ジータ」
「あぁぁァッ! こあ、コアっ! お母さまにコア触られるの好きぃっ!」
瞳の奥にハート模様が見えそうなほどに蕩け、喜びの涙を流してよがる。
ジータ自身も分からない。ルシファーにコアを触れられただけで、ベリアルに与えられる以上の快楽が全身に走る理由が。
コアが自分自身だからか。体と多少リンクしている球体に触れられると直接神経を撫でられている感覚だ。軽く握られると魂を犯されているような気分にもなってくる。
「へぇ、キミもなかなか偏った性癖だねぇ。またこういう機会があったら触ってあげるよ」
ルシファーに全てを持って行かれたベリアルは独り言を呟くと大きくなる水の音に指を引き抜き、洪水状態の性器の窪みに口を付ける。
そのまま喉を上下させ、粘性のある体液を飲み込む。
二人の愛撫に体が灼熱のように熱い。輪郭がぼやけて溶けていくような心地よさをジータは感じていた。
「あっ、あッ! ん、はぁ……っ、おかあさま、もうだめ、もう許してぇっ!」
口の端から唾液を垂らしながらあられもない顔で訴える。これ以上我慢したら確実におかしくなると懇願すれば、ルシファーはフッ、と口を緩め、ジータの望む言葉を放った。
「よし。イけ」
たった一言。これだけでジータの顔は喜びに蕩け、幸福に包まれる。
今まで我慢していたせいか、悲鳴に似た嬌声を上げると体をがくがくと震わせた。
淫裂から歓喜の蜜の飛沫が水鉄砲のように飛び、ベリアルの顔を濡らす。
それを受けるベリアルの顔も赤く染まり、恍惚な表情を浮かべながら体を振動させていた。
独特の甘さと熱気に包まれる部屋でルシファーだけが冷静だった。ジータの胸から手を引き抜くと、ベッドの上で震えて動こうとしない二匹の獣を見遣り、嘆息する。
「おいベリアル」
「あー……なに? ファーさん」
快楽に浸っていたベリアルが鈍い動きでジータの下腹部から顔を上げた。顔全体が彼女の恥飛沫で濡れ、ぽたぽたと滴っている。
「私が戻ってくるまでに片付けておけ」
「ウフフ。オーケイ……任せてよ」
全ての元凶に命令を下すとルシファーは部屋を去っていく。残されたベリアルは未だに体をいやらしく顫動させるジータを見てうっとりと頬を緩ませると、優しく額に口付けるのだった。
終