お姉ちゃんの処理は弟の仕事です!

「あれっ? ジータがいません」
「む。またか。最近多い気がするが……」
「姉さんちょっと天然なところがあるから……! また僕が探してきます。二人は先に町に戻ってシェロさんに報告をお願いします」
 木々がグランたちを囲む爽やかな森林。魔物討伐依頼をシェロカルテから受注した一行は団長のグラン、副団長でグランの姉であるジータ、ルリア、カタリナのメンバーで依頼をこなし、今はちょうど目的の魔物を倒した後だった。
 つい先ほどまで一緒に戦っていた少女の姿が見えず、ルリアとカタリナは声を上げるが、いつものことなのでそこまで慌ててはいない。
 カタリナの言葉どおり最近ジータはふらりと一人でどこかに行ってしまう。それを弟のグランが探しに行き、一緒に帰ってくるというのが定番になりつつある。
 今回もこのパターンかとカタリナは軽く息を吐きつつも、ジータ本人の高い実力を知っているのでおかしなことにはならないと考え、グランの申し出どおりにルリアを連れて町へと続く道を歩き出す。
 遠くなっていく少女と女性の背中を見えなくなるまで見つめていたグラン。完全に一人になったところで踵を返し、ジータの捜索を行うために脚を動かし始める。
(本当に最近多いな……。もっとしっかりヌいてあげる方がいいのかな。なかなか二人きりになれないけど、時間を作ってあげないと)
 乾いた地面を踏む音が規則正しく続き、周囲を注意深く確認しながら進むと不意に湿った音が聞こえた。
 立ち止まり、耳を澄ませるとそれは喘ぎ声のようにも聞こえる。あんっ、あんっ、と甘くて淫靡な声。それはグランにとっては耳馴染みのいい音。
 溢れる生唾を飲み込み、気配を消して近づく。様々なジョブをマスターした彼にとっては容易いことだ。
「んっ……♡ んっ……!」
(姉さん……やっぱり)
 木に背を預けて自慰に耽るジータの背後にグランがいるというのに彼女は全く気づかない。声が漏れないように必死に抑えながら快楽を得ることに一生懸命になっている。
 血の繋がった実の姉だというのにその声を聞いていると尻の穴が疼いてくる。彼女にここを塞いでもらったのはもう一週間以上も前。そろそろあの気持ちよさを感じたい。
「駄目じゃないか。姉さん」
「ひゃぅぅぅっ!?」
 我慢ができなくなり、彼女の前に回ると悲鳴を上げる姉をよそに両膝をつき、女であるジータの股間にあるのが異質なモノを口に咥えた。
 一瞬で口内に満ちる肉と性臭。汗で蒸れたふたなりペニスは決していい匂いではないが、大好きな姉のモノだと思うと世界で一番愛おしい。
 ──ジータは女性器と男性器を持つふたなり。ふたなりの性欲が強いのか、ジータ自身がそうなのかは不明だが強すぎる欲に悩んだ果てに相談したのは弟のグランだった。
 ザンクティンゼルの村人や親代わりのビィには言えない悩み。グランとしては大好きな姉に頼ってもらえたことに喜びを感じ、それからはジータの性処理をグランが行っていた。それは当然今も同じ。
 しかし村に住んでいたときと騎空団として多くの団員と生活を共にする今では以前と同じ頻度では処理できていなかった。それがジータがいなくなる理由。
 ふらりと姿を消すとなんとか発散しようとしていたが、グランに性処理を任せきりだった彼女の男性器は自ら鎮める行為では満足せず、欲は溜まるばかり。結局はこうしてグランに抜いてもらう日々。
 可愛い少女についているのが酷く違和感を感じさせる怒張の先端を頬の柔らかな部分に押し付け、鈴口から垂れ流されるカウパーを唾液と一緒に飲み込む。
 味は正直美味しくはないが、大好きな姉のものだと思うと欲しくてたまらない。これが他の男のモノならば咥える妄想さえも忌避するものだが、ジータだけは別なのだ。
 頬をすぼませて卑猥な音を立てながら強めに吸えば、口の中のいやらしい棒は快楽を訴えるように震えた。
「んっ、ふぇぇふぁんのひょり……」
「あんっ、だめぇ……! 咥えながら喋らないでぇっ……!」
 しゃぶりながらの会話は敏感な性器に新たな刺激を与え、ジータは悶える。その様子にグランは満足そうに口を離した。
「姉さんの処理は僕がするって約束だろ?」
 弟が姉の処理をする──世間的に言えば近親相姦だが、グランは特に重く感じてはいなかった。ジータは最初は申し訳なさそうにしていたが、今では逆に弟との行為を自ら望んでいる。それはグランも同じ。
 ジータが他の誰かで欲望を発散することを考えると、なんとも言えないドロドロとした重苦しい感情が胸に渦巻く。
「ふぁぁんっ……! 出ちゃう、からぁ……! だめ、グランっ……!」
 性熱で赤く染まった二人の顔。グランはジータの柔らかな太ももに手を置くと、姉の身体を自らの方に引き寄せる。
 喉の奥深くまで姉を迎えて何度も締め付けてやれば、触れている脚からは小刻みな振動。脳へと作用する甘ったるい声はグランの下腹部へキュン♡ キュン♡ とした疼きを与え、この先をしたいという衝動が溢れる。
「んっ♡ んん〜〜〜〜ッッ♡♡」
「んぐぅぅっ……! ん、おぉぉ……ッッ……♡」
 弾ける白濁液。喉の奥はネバネバとした体液で溢れ、濃厚な雄汁の味と香りにむせそうになるのを堪えながらゆっくりと飲み下す。忙しなく動く喉仏。少しすると精液の量が減り、楽になってきた。
「ふみゅぅぅぅっ!? だめっ♡ だめっ♡ ちゅっちゅっ、ってしたらダメなのぉぉぉ……♡」
(姉さん……かわいい……♡)
 余裕が生まれるとグランは咥えたままの剛直をまるで母親の母乳をねだる赤子のように小刻みに吸う。
 顔を上げれば愛しい姉が顔を真っ赤にしながらもだえ、手に持っていたスカートの裾がぱらりと落ちる。
 薄暗くなる視界。閉じ込められたことで体感温度が上昇していく。
 今の自分の姿を想像すると笑ってしまいそうになる。はたから見れば年頃の女の子のスカートの中に頭を突っ込んでいる変態なのだから。
 口の中に残っている性汁と一緒に尿道に残っている残滓を吸い上げれば、触れている太ももがガクガクと激しく震え、それが姉がどれほど感じているかのバロメーターとなってグランを満たす。
「あひぃっ、ひっ♡ せーえき吸われてるぅぅ♡♡ ふぅ、ふぅぅ♡ そんなに吸い付いてお姉ちゃんのえっちなお汁、美味しい? グラン♡」
 スカート越しに頭を撫でられ、もうそんな歳でもないのにという思いもあるが、身体の方は素直で。下着の中でビキビキッ! と男根が激しく存在を主張する。衣服によって抑えつけられているのが酷く窮屈に感じながらも、より疼くのは後ろの方。
 不浄の穴。本来ならば排泄器官だというのに、グランのモノは度重なる禁断ソドミーによって立派な性器の一つに変わり果て、ジータの御神体を鎮める重要な役割を得ていた。
 あぁ、身体の奥が熱くてたまらない。口に咥えているこの凶悪な槍で一息に貫かれたい。細いながらも自分よりかも腕力のあるその腕で腰を鷲掴みにされて、乱暴に甚振られたい。
 マゾ思考に染まったグランが名残惜しいながらもおしゃぶりをやめるのとほぼ同時。ジータの両手が脇に回され、子どもを抱き上げるように軽やかな動きで立たされる。
 ボウっとした視界には雄を淡々と狙う一匹の雌の顔。気づけば両頬は彼女の手に包まれ固定され、艶やかな顔が近づいてくる。
 キス、される。そう判断を下したグランは自分の口が精液で汚れていることを思い出し、顔を背けようとするが、それを許さないと言わんばかりの手の強さに顔を動かすことができない。
「だっ、駄目だよ姉さん。今、口汚れてるから……」
 控えめな声はそのまま口づけによって封じられた。
「ん、ふぁ……わたひをきもひよく……ちゅるっ♡ ひてくれたお口が、んっっ♡ 汚いわけ、なひれしょっ……♡♡」
 甘ったるい女の香りや口の中を這いずる濡れた舌に、グランは簡単に堕ちてしまう。口内の上側を柔らかな舌先でレロレロと舐められるとくすぐったくて、気持ちよくて。抵抗する素振りなど、もう見せる余裕すらない。
 こんな情けない姿、誰かに見られたら終わりだという破滅の気配がまた快楽を手伝い、背中にビリビリと媚電流が走り、身を震わせる。
「ちゅっ……♡ そんなに蕩けた顔して。キス気持ちよかった? ふふ。……ねえ、挿入いれたくなっちゃった。一回だけでいいから……しよ?」
「一回……だけ、だよ? あんまり遅くなるとルリアたちが心配するから……」
 身を蝕む熱。それを解放してくれるのは姉であるジータしかいない。本当は一回でなんて終わりたくない。しかし仲間が心配することを考えると、団長としての自分が勝った。
 早くその肉棒が欲しい。内蔵を満たす肉塊の感触。前立腺を潰されながら奥まで突かれると、腰が砕けてしまうくらいの電撃快楽が身体を駆け巡り──。
 想像するだけで唾液が溢れてくるのを飲み込み、耐え難い尻穴の疼きを抱えながら姉と位置を入れ替わる。
 姉に背中を向けて木の前に立つと、ベルトを緩めて下着もろとも落とす。太もも辺りで布たちが止まると、手を木の幹について腰を突き出した。
 引き締まった男の双丘。その中心の奥まったところに位置する穴はジータの怒張を待ち望み、ヒクついている。
(姉さんに僕のアソコを見られてる……! 恥ずかしいはずなのに、身体はどんどん熱くなって……! 正真正銘の変態だ、僕は……)
 自虐すらもこの場を盛り上げるスパイスでしかない。
 ジータの腕が腰に周り、抱きしめられる。耳元では濡れた吐息が耳穴へと吹き込まれ、欲情されているという事実に頭が蕩けていく。
 そんな中、少しだけ残念に思うことがひとつ。軽鎧だ。装備していなければ今頃は背中に姉の膨らみを感じられたかと思うともどかしい。
(あぁ……ッ……! 姉さん、擦り付けて遊んでる……♡)
 尻の谷間に熱杭を滑らせて、先走りを塗りつけている姉の顔は想像するに容易い。きっと悪戯っぽい笑みを浮かべているはず。こちらの気も知らないで。いいや、知っているからこその焦らしなのかもしれない。
(はぁっ……はぁっ……姉さん、早く来て姉さん……!)
 もう脳内は雌ペニスのことしかない。姉に開発され続け──今では雄膣となってしまった場所が疼いて仕方がない。長大に貫かれて、快楽のままに狂いたい。思考回路が焼き切れてしまいそうなくらいの欲にグランはあっさりと負け、無意識の内に片手を伸ばすと遊んでいる肉棒を掴んでそのまま腰を下ろす。
 小さな穴だというのに簡単に極太肉魔羅を飲み込み、ナカを満たす質量にグランは重い息を吐く。
「グランのえっち♡ 自分から挿入いれちゃうなんて。ね、そのまま自分で動いてみて」
「はーっ……はーっ……♡」
 誘惑の囁きにグランは操られたように頷くと、自分で動き出す。でっぷりと太った亀頭で前立腺を刺激し、入るところまでペニスを迎えると胎から甘い肉悦がほとばしり、男だというのに女の子のような声が出てしまう。
「っ……あぁ……♡ はぁ、うぅぅ……! んっ、はぁ……♡」
 腰を上げればカリ首が肉壁を巻き込んで引いていき、再び腰を下ろす。特にテクニックもない単調な動きながらも、ジータは愛しい弟の痴態を見て満面の笑顔を浮かべている。
 ぱちゅっ♡ ぱちゅ♡ と恥ずかしい音が鼓膜を犯し、野外でのセックスという誰かに見られてしまうかもというスリルがグランの欲望をさらに駆り立てる。
 普段は爽やかな好青年であるグランも今ではその面影などない堕ちた雌の顔をしており、それが姉であるジータの興奮を煽り、アナルに埋まったままの雄槍はさらに太く大きくなっていく。
 みっちりとジータを咥えるグランのナカはすっかりと姉専用ちんぽケースとなっており、その温かな熱で優しく包み込み、肛門括約筋を不規則に締め付けてやることで姉へとご奉仕する。
 血の繋がった姉弟ということで禁忌の関係ではあるが、子どもの頃からずっとそばにいて誰よりも互いを理解し、心から愛し合っているため、心身ともにリラックスした上での甘々な性交の気持ちよさといったら言葉で表現するには難しいほどの快楽だった。
 だからこそ二人きりの秘密の時間はやめられないし、むしろ率先して作りたいと思うのだ。
「かわいい、可愛いよグラン♡ 女の子みたい♡ お尻でいっぱいイッちゃうもんね? もしこの先グランに好きな女の子ができて、男の子としてのセックスができなかったらごめんね♡」
「……ッ! そんなこと……! そんなこと、言わないでよっ……!」
 まるでいつか、ジータじゃない別の誰かを好きになるのが決まっているような……!
「グラン……?」
「ぁ……!」
 心の中で思うだけの感情が言葉となって出ていたようだ。気づいたときにはもう遅い。消し飛んでいたはずの羞恥心が戻ってきて、性欲とは別の熱が込み上げてくる。
 尻を突き出す態勢のまま、俯いて動きを停止しているグランは耳まで赤くなっており、彼の顔が見えないジータも弟がどんな表情をしているのか手に取るように分かる。
 小刻みに震える男の身体も、決して欲望からではない。
「ねえグラン。こっち向いて」
「…………」
 グランは動かない。ジータの声が聞こえていないはずはないのに。
 ジータもグランの地雷を無自覚といえど踏み抜いてしまったことに罪悪感を感じているのか、少しの間グランの様子を伺ってみたものの、なにかが変わる気配はない。
「グラン」
 ジッとしているのも彼女の性分に合わないようだ。弟の名前を極めて優しく呼び、一度男根を抜去するとグランを自分の方に向かせた。
 見上げてくる姉に対してグランは視線を合わせることができない。あんなものは冗談交じりで、どこまで本気なのか分からぬ言葉。それだというのに……なんて女々しい。
「……ごめんね」
「姉さん……」
 頬に添えられた片手。近づく唇。決して深くはならないプレッシャーキス。たったそれだけだというのに、落ち込んでいた心が天司の羽を得たように急上昇する。
「グラン。……グラン。私、あなたのことが大好き」
「あ……っ!」
 再び侵入してくる愛しい熱。肉縁は美味しそうにそれを食み、奥深くへと飲み込む。自らの胎内にジータがいる。ジータと一つになっている。その事実がグランを甘く堕落させていく。
「血の繋がった姉弟でこんな感情……世界では疎まれていることも知っている。でも、それでも私はあなたのことを、一人の人間として──愛してる」
 ジータの腕が背中へと回され、ギュッと抱きしめられる。密着しながらの愛の告白は心の暗雲を瞬く間に消し去り、グランの中にも姉と同じ気持ちが芽生える。
 誰にも……そう、ビィやルリア──父親にさえも言えない許されない関係。それでもいい。誰にも許されなくていい。二人の想いだけが通じ合っていれば、それで──。
「僕もだよ姉さん……」
 自分からも抱きしめ返し、同じ気持ちだということを伝えれば、赤く染まったジータの頬が歓喜に緩む。その感情のままグランに口付け、互いの体液を交換しながら下半身を何度も押し付ければ、グランは脳髄まで響く快楽電撃に思考が吹き飛んでしまう。
 ただひたすらに、激情のままに求め合い、快楽を分かち合う。
「はぁっ……! あッああ……!! 姉さんッ、もう……僕ッ……!!」
「うんっ♡ 私もっ、イキそう……! ねえグラン♡ ナカに射精していいよねっ?」
「イイっ! いいよっ! 僕のナカにたくさん──ッ゛、ああ゛ッ……! あ゛あ゛ぁぁ……ッ゛!!」
 いつも許可なく中出しをしてくるというのに。そんなことが刹那脳裏に浮かんだが、性熱によって焼き切れてしまった思考では反射的にジータを求め、媚びを売る言葉を口走っていた。
 互いにぎゅうぎゅうと抱きしめ合っての性の解放。胎の中には精液が力強くほとばしり、まるでお前は私のモノだという印をつけられているようにも思える。
 硬く天を仰ぐグランの逸物からは透明な汁が滴るばかりで、白濁が出る様子はない。すっかりとメスイキに慣れてしまった身体は男の快楽を少しずつ、確実に忘れていく。

   ***

「すっかり遅くなっちゃったね」
「ルリアたち心配してないといいけど……」
 行為を終えた二人は近くに流れていた小川で汚れた身体を拭いていた。濡らし、固く絞った布は清らかな冷たさを感じさせるが、火照った肉体を元の体温に戻すまでには至らない。
 愛し合いの最中にさらりと本音を言ってしまい、こうして理性が戻ってきた今、ジータが言っていたあの言葉は本当なのだろうかと気になってしまう。
 いや、疑っているわけではないのだ。ジータはいつも真摯に向き合ってくれている。けれど……。
「あのね、グラン。あのとき言った言葉は嘘じゃないよ。……駄目なお姉ちゃんでごめんね」
 隣で清め終わったジータがぽつりと呟く。
 グランはちらりと横顔を見る。快活な少女の面影は今はなく、俯くその表情は曇っていた。
 彼女が駄目ならば自分だって同じ。たまらなくなったグランは突き上げる衝動のまま、ジータを自分の胸に閉じ込めた。
 グランを抱く側のジータも女の子。すっぽりとグランの腕に包まれ、彼女から香るほのかな甘い匂いに男として、ジータという女性が好きだという気持ちを再確認した。
 ああ、なんで自分たちは血の繋がった姉弟なんだろうか。もし他人だったらこんなにも彼女を苦しめることなんてないのに。誰にも隠さずに恋人という関係を表に出せるのに。
「グラン……?」
 上目遣いで見つめてくるお揃いのブラウンの瞳に吸い寄せられるように──口付ける。激しいものではなく、初心な少年少女がするような可愛らしいキス。
 ──言葉にせずとも、この気持ちが伝わればいいのに。
「僕も姉さんのことが好きだ。許されないことだって、この先誰にも言えずに、祝福すらされない関係だって分かってる。それでも僕は姉さんのことが……! 姉さんが駄目なら、僕だってそうさ」
 言葉にして伝えれば、ジータの黄星の目は見開かれ、嬉しさを隠しきれないように目尻が下がった。ぎゅっ、と抱きつかれ、彼女の顔は見えなくなったが、正真正銘好き同士になった今、グランの胸は満ち足りていて、このまま天国まで昇れそうな気すらする。
「幸せすぎて死にそう……」
「大袈裟だなぁ、姉さんは」
 幸せすぎて、なんてこちらのセリフだと心の中でごちると、ジータが体を離した。その顔は普段の彼女に戻っており、にこっと笑うと手を繋いできた。
「もうしばらくこうして二人きりの時間を過ごしたいけど、そろそろ帰らないとね」
「……そうだね」
 誰にも邪魔されない濃密な時間に終わりを告げられて少し残念に思う気持ちはあれど、さすがにこれ以上遅くなったら仲間が心配してしまう。
 グランは頷くと自分からも手を握り返し、町へ向かって歩き出す。
 二人の間にある愛の証は固く、固く繋がれていた。

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