R18ジタファー

(ま、まずい……!)
 静まり返る研究所。ジータの部屋、その寝室にて。清潔なシーツに包まれたシングルサイズのベッドの上はジータが身動ぎを繰り返したことにより白く波打っていた。
 そんな彼女の顔は赤くなっており、呼吸は艶っぽく乱れている。数ヶ月前に発情してしまい、ルシファーの寝込みを襲ってしまったときと同じだとジータは途切れそうになる理性で思う。
 あのとき。ルシファーとの一夜が明けるとジータはなんてことをしてしまったんだと大きなショックを受けたが、ルシファー本人はそこまで気にしていないのか発情したら俺のところに来いと言った。
 それからは薬で強制的に発情させられたことはあれど、自然に発情するということはなかった。今日までは。
「ふぅっ……ふー……! ルシファー……!」
 彼のナカにまた入りたい。包まれたい。彼の熱を感じたい。
 少しでも気を抜くとルシファーが欲しいという欲望が理性という名の鎖から解き放たれてしまいそうだ。
「ルシファーのとこ……いかなく、ちゃ……」
 熱っぽい身体を気だるげに起こすとジータは暗闇の中、よろよろと扉へと向かって自室を出た。
 廊下にはひんやりとした空気が満ち、足音ひとつも聞こえない。ぼんやりする頭で左右を確認し、誰もいないことを確認すると隣にあるルシファーの部屋の扉を開けた。
 昼間ならばまだしも、今は深夜。そしてジータは白のキャミソールにペチパンツという格好。そんな服装の雌の獣が男性である主の部屋へと向かうのだ。誰にも見られるわけにはいかない。
 ルシファーの部屋に入って真っ直ぐ向かうのは寝室だ。今頃彼は深い眠りに就いているはず。今度は欲望のままに襲わないようにしようと途切れそうになる思考で考え、寝室へ。
 広い部屋にひとりで眠るには巨大すぎるベッド。そばに置いてあるナイトテーブルに近い場所でルシファーは眠っていた。就寝前にいつものように読書をしたのか、ナイトテーブルには分厚い本が置かれている。
「っ……は……!」
 麗しき愛し人が眠っている姿に全身の血液が股間に集中していくのが分かる。クリトリスがドクドクと脈打って、ペチパンツの布地を異常なほどに盛り上げていく。
 本来、雌であるジータにはない男性器。それがなぜか発情するとクリトリスが大きく発達し、男性器と同じ形になり、さらには先走りや精液まで出すようになるのだ。
 検査によって一種のバグというのは分かっているが、今の彼の興味は天司という存在を造り出すことに集中しているのと、性的興奮を伴って陰核が異常発達し、男性器になるだけ──ということで、放置されていた。
 実際にジータも日常生活で困ったことはなかったのと、一度満足すれば治まること、なによりルシファーが相手をしてくれるというのでこのままでもいいかと思っていた。
「はぁ……はぁ……っ……」
 初めての発情のときは理性を飛ばしてしまったが、今度はそんなことにはならないと気持ちを強く持ち直すと、ジータはベッドへと上がった。
 四つん這いになると白い薄手のタオルケットに包まれるルシファーの肉体に覆い被さり、のそのそと上に移動する。細身の身体から漂う清潔な幽香ゆうこうはジータにとっては誘惑の香り。鼻を鳴らして嗅げばさらに股間が熱くなる。
「……なにをしている」
 襲われかけているというのに無防備な主の姿に私が敵だったらどうするんだろう? と思いながらも、首筋に顔をうずめて夢中になってルシファーの香りを堪能していると、頭上から降ってくるのは寝起きの掠れた低い声。
 ジータはビクッ! と体を小さく跳ねさせるとゆっくりと顔を上げる。ルシファーの目と鼻の先にある双眸はカーテンの隙間から入り込む月明かりに反射して今にも男を喰らおうとギラつき、濡れていた。
「自然発情はこれで二度目か。……俺が欲しくてたまらない、という顔をしてるな」
 アイスブルーの瞳を細め、フッ、と笑うとルシファーの体から力が抜ける。それはジータを受け入れてやるという彼の言葉なき意思表明であるが、ジータは悲しげに眉間に皺を寄せるとそのまま彼の首筋に再び顔を伏せた。
 嫌だと言うように首を左右に軽く振るジータ。一度目は無理やりして成り行きで最後までしてしまったが、同じ失敗はしたくない。
 ジータからすればルシファーは抵抗しても無駄だと思っているから、仕方なく身体を使わせてやるとしか思えなかった。
 だから、許してほしいのだ。彼に。
 その身体を愛する許しが、欲しい。
「ゃ……だ……! 無理やり、したくない……!」
「……は?」
 ルシファーからすればこれは合意。和姦である。ここまでお膳立てしてやってなぜジータが拒むのかが理解できない。
「あなた、からの……許しがっ、ほしい……! 造物主であるあなたに……触れる、許しを……!」
 今にも鎖から解放されたいと暴れる本能をわずかな理性で制御しての訴えにルシファーの目は丸くなる。妙なところで真面目な獣に目を閉じて嘆息すると、
「お前、俺が抵抗しても無駄だと、諦めているとでも思っているのか? 巫山戯るな」
 今度はジータの両目が見開かれる番だ。てっきり諦めて受け入れているのだと思ったら、違うというのだから。
「……お前なら、許してやってもいい」
 ──どうして、とは聞けなかった。たぶん彼も分からないだろうから。
 ルシファーは理解しているのだろうか。自分がいま、どんな顔をしているのか。
 自分でもジータを許す理由が分からないという表情をしているのだ。
 ジータはルシファーからの、ある意味では愛の告白に脳内は混乱を極めていた。
 お前なら許す。少なからず好意を抱いていなければ出てこない言葉。けれど彼は他人を愛しいと思う感情とはかけ離れた存在。だからこそ困惑の面様なのだ。
 愛というものを知るジータは突然の告白にどうにかなりそうになりながら、喉を鳴らす。もし自分の行動を許してくれるなら──。
「……キス、しても……いい?」
「……ああ」
 平坦な声ながらもジータのコアを鷲掴みにするには容易い言葉。機能が停止してしまいそうになりながらジータはルシファーに顔を近づけ、その白い肌を片手で撫でた。乾燥しているのか少しだけカサついているが、彼の顔に触れていることに高揚感が溢れる。
 薄く開いた唇がとても美味しそうに見え、ジータは縋るように空いている手でルシファーの手を握った。握り返されることはないが過度な接触を許してくれることが嬉しい。
 意を決してさらに顔を近づけるにつれて閉じる両眼。ふわりと優しく重なる唇同士。ルシファーの香りに包まれながら触れた唇は手入れをしていないために決していい感触ではないが、愛しい人にキスできたという事実がジータを天国へと導く。
「ん……っ、」
 ちゅ、ちゅ、と啄むようなキス。ルシファーの下唇を軽く喰んだり、角度を変えてのプレッシャーキスはソフトなものだがジータは満足感でいっぱい。しかしルシファーは焦れったい接吻はもういいのか、目を閉じて夢心地なジータを氷の瞳で見つめたまま彼女の後頭部に片腕を回すとそのまま押し付けた。
「んっ!? ん……、ちゅるっ、ぁ……! くちゅ、んふぅぅ!?」
 ジータの唇を舌でこじ開けるとそのまま暴れるルシファーに攻め側であるはずの少女は翻弄されるしかなかった。彼に強くされて背徳的な快楽が背筋を甘く痺れさせ、閉じられた目尻からは涙が一筋。紛れもなく快楽による涙だ。
 彼からも求められて嬉しい! 嬉しい!
「ふぁ、あンぅ……! ふ……、ン、んんっ……!」
 ジータが薄く目を開ければ潤んだ視界の先に目を開けたままこちらを見つめるルシファーが見える。その青と目線を交差させるとどうしようもなく身体が熱くなって、布越しにルシファーの肌に押し付けられているメスペニスがさらに硬度を増すような気がした。
「フ……。この程度で音を上げるとは。本能に従うお前ならまだしも、今のお前に上が務まるのか?」
 一旦は終わりなのか、後頭部を押さえつける腕の力が弱まるとジータは息を整えるためにルシファーの顔の横に倒れ込む。肩で大きく呼吸をするジータに対してルシファーは余裕たっぷりな表情で煽ると、彼女の身体が一瞬強張った。
 彼からの言葉に女性器が反応するようにうねり、割れ目からじっとりと愛蜜が滲む。ジータも女の子。愛しい人に言われて“彼に抱かれたい”という感情が生まれる。しかし今は彼を抱きたい──奉仕したいという気持ちが強いため、それはまたの機会に……と気持ちを切り替える。きっとこれが最後ではないだろうから。
「今は……あなたに、奉仕……したいの……」
 相変わらずルシファーの上に乗りながらジータはのっそりと顔を上げると、茹だった顔で告げた。ルシファーがフ、と口元を緩めたのを見てジータは下へと移動すると彼の黒のインナーをまくり上げる。
 筋肉よりも頭脳で勝負なルシファーの体は一般的な男の体と変わらない。シミひとつない白磁の肌の美しさに目尻を下げて恍惚の表情をしながらジータは胸と胸の間に耳を当てた。
 皮膚の奥からはドクン、ドクン、と心臓の音が聞こえ、彼が生きていることを示す。自然と下がっていく目蓋。暗闇に閉ざされた視界の中で生命の音を感じていると、安心感がジータを包み込む。
 優しく彼の体を抱きしめるとより一層安堵感が強まる。すると動かなくなったジータを訝しんだルシファーが、
「男の胸なぞに顔をうずめて何になる」
 呆れが含まれた声音にジータは顔を上げて彼を見ると艶然えんぜんと一笑する。濡れた目元に火照った顔、艶めく唇は見た目の年齢と釣り合わないほどに妖艶だ。
「心臓の音を聞いてるとね、あなたが今、ここにいるんだ、って安心しちゃって。……ねえルシファー。私のコアに触って……? 私がどれだけドキドキしているのか」
 起き上がるとジータはルシファーの腹部に馬乗りの形になる。キャミソールの肩紐が落ちたことで布も下がり、ほぼ胸が見えている状態のままジータはルシファーの片手を両手で包み込むようにとって自身の──人間でいうところの“心臓”がある部分に触れさせるとそのまま前進させた。
 彼女の皮膚に吸いこまれる手。彼女がアクセスを許しているため血が出たり、痛みもない。骨に邪魔されることなく星晶獣の生命の核であるコアにルシファーの指先がコツン、と軽く当たるとコアから広がる電流にジータの肉体がぶるりと震え、半開きの口からは甘い嬌声が漏れた。
「コアの鼓動、速くて、強いの……分かる?」
「性的興奮に伴い──オーバーフロー、まではいかんが。コアが発熱しているな。加えて、ただ触れているだけで快楽を得ているとは……。コアの異常か?」
「ッ……、あ……! はっ、ちがっ……! あなた、だから……! 他の人、じゃ……! 絶対に、感じない……!!」
 球体の表面をルシファーが親指で何度もなぞってくるためにジータは全身の震えを抑えることができない。快感の波が押し寄せ、均等の取れたボディが煽情的に揺れる。
 定期検査もルシファーがしているために他の人間に触れられたことはないが、彼以外に触れられたとしても絶対にこんなふうにはならないという確信めいたものがあった。
「ほう? ならば他の人間で試してみるか」
「……あなた自身がそれを許さないのに? っああッ!!」
 微笑し、挑発するように口にするジータにお仕置きといわんばかりにコアを握る力を強め、ルシファーの口元は愉悦に口角が少し上がる。
「ンぁあああっ! コア、こあ、触られてるだけなのにぃっ! ンっ、ふぅぅっっ! だめ、だめぇぇっ……!!」
 顔を真っ赤にして快楽の雫を流しながら善がるジータ。程よい大きさの乳房がたゆん、たゆんと揺れ、キャミソールもさらに下がってしまい、胸が丸出しになる。
 白桃の中心の薄紅は完全に勃起し、触って欲しそうに存在を主張しており、ルシファーの片手が伸びると柔らかな膨らみを手中に収めた。
「ひゃぁぁんっ! おっぱい、ン、ンンッ……! っは、びりびりしてっ、あぁぁぁっ!」
 ルシファーの指が沈めば指の間に肉が盛り上がり、感触を確かめるように何度も揉まれればジータは首を反らせて喘ぐ。気の置けない星晶獣の甘い声にルシファーも男ということか、もっと声を聞かせろという欲求が手の動きへと直結していく。
「ふぁ……あぅっ、乳首っ、痛いのに……ひぃっ、ぃ……! だ、め……! あ……ッ!」
 親指の腹で乳頭をぐりぐりと捏ねられ、痛みと悦が襲ってくる。加えてコアも弄られてはたまったものではないと、ジータは釣りたての魚のように身体をくねらせて不意にやって来た絶頂感に身を任せ、糸が切れた人形のように半身が倒れた。ルシファーの首筋に顔を埋めてガクガクと震えるジータ。検査のとき、コアに触れられるだけで変な気持ちになると知ってから今まで秘密にしてきたが、こうして必要以上に弄られるとその快楽が癖になってしまい、背徳の行為の虜になってしまいそうになる。
 少しのあいだ呼吸を整え、ジータは再び動き出す。今度はルシファーに奉仕するためだ。顔を上げると静かに佇む彼の頬を包むと唇に吸い付き、そのままキスを織り交ぜながら下へと向かう。
 皮膚が薄い場所に触れればかすかに反応する男の身体に、彼も人の子なのだと感慨深いものが感じられ、より一層愛おしさが深まる。
 下半身に纏っている衣服を全て脱がし、彼の足の間にジータはその身を滑り込ませると緩く勃ち上がっている局部を見て妖艶に笑む。
 彼の裸は風呂に一緒に入るので数え切れないくらいに見たことがある。当たり前のようになんの反応も示していなかったソコが、今は反応している。
 ルシファー本人が性欲とかけ離れている存在なので、ジータには性知識が皆無。なので初めての発情を経験したあと人間の男の身体について本を読み漁って知識を蓄えた。
 これは勃起。自分との触れ合いで彼が興奮してくれたのだと思うと嬉しくてたまらず、ジータの股間部はルシファー以上に膨れ上がり、大きなテントを張ってシミまでできている始末。本当は今すぐにでも彼のナカに入りたいところだが、まずは慣らさなければ。それに、
(舐めたい……)
 ごくり、と音を立てて飲み込まれる唾。ルシファーの性器を見ているとたまらなくお口でご奉仕したくなってくるのだ。彼の大事な場所を丁寧に舐めしゃぶって、もっと大きくしたい。口の中で大きくなる肉を感じたい。彼に気持ちよくなってほしい。
 ルシファーの足の間で座っているジータはキャミソールを脱ぐ。ハリのある柔らかな乳房がぷるん♡ と揺れながら現れ、両方の飾りが痛いほどに勃起している様が彼女の興奮具合を示す。
「あ〜ん♡ ……ん、くちゅっ♡ ちゅるっ、ちゅ、ちゅぱっ……」
 そのまま半身を屈ませると大きく口を開けてルシファーの男性器を咥える。亀頭部分を棒アイスに見立ててレロレロと舌先でカリ部分を細かく舐めれば、ジータを見つめるルシファーの顔がわずかに歪み、我慢するような声が漏れる。