秘蜜の園で逢いましょう

 とある島に補給のためにやって来たジータたち。艇の整備するということで数日の間はこの島で過ごすことになり、団員たちは久しぶりの休みをそれぞれ過ごしていた。
 それは団長であるジータも同じ。昼間はルリアたちと食べ歩きや街の散策をしたり、買い出しなどをし、すっかりと夜の帳が下りた現在は宿屋で一人の時間を過ごしていた。
 ベッドの上に仰向けに倒れ、天井の木目を見つめる彼女の顔は、なにかを悩んでいる様子。
 その原因は昼間の出来事にあった。ルリアとビィが二人で露店の品を見ているときに偶然耳に入ってきた会話。それはこの街には女性専用の娼館があり、それ目当てに訪れる女性客が多いらしい。また、秘匿性も高く、有名人も利用しているという噂もある。
 そんな会話が聞こえてきたジータの頭に浮かんだのは堕天司であり、ジータにとって破滅をもたらす女ファム・ファタールであるベリアルの顔。
 当時は知らなかったとはいえ彼女に心まで奪われ、正体を知ってもなお求めてしまう存在。ルシファーの思想をなぞって行動し、世界の敵である彼女とは今でも仲間たちに秘密で逢瀬を繰り返している。
 彼女以外と性行為がしたい、というわけではないが、他の人でも体は気持ちはいいのかという純粋な疑問。好奇心は増すばかりで娼館の話を聞いてからはどこか上の空で今に至る。
 うんうん唸った末に導き出した答えは一回だけなら、というもの。決心したジータは部屋を抜け出すと、闇夜に紛れるように夜の街へと姿を消した。

   ***

 会話の中で娼館の場所は大体分かっていたので比較的すぐに見つかった。街の中心から離れた場所にひっそりと建つ大きめな建物。特に看板も出てなく、見た目では娼館──そもそも店なのかすら分からない。だが直感した。目的の店はここだと。
 今からベリアル以外とそういうコトをする。未知の体験に喉を鳴らすと、ジータは意を決して扉を開けた。
 内部は上品で落ち着いており、高級ホテルのような場所に目を丸くする。有名人が来る、というのもなんだか納得できるような気がする。
「あら。可愛いお客さまね」
「っ……!」
「驚かせてしまったかしら。さあこちらへどうぞ」
 中へ入り、きょろきょろと周りを見ていると正面のカウンターに立つ女性に声をかけられた。はっ、として体をこわばらせるジータに対してカウンターの女性はにこやかに話しかけ、秘蜜の園へといざなう。
「いま一人しか空いていないのだけれど、いいかしら」
「はっ、はい。誰でも……」
「名前はソドミちゃん。きっとあなたを極楽浄土へと導いてくれるわ」
 優雅な笑みを浮かべる女性に対し、緊張してしまうジータだが、ルピを支払うとカウンター横の扉に入るように促される。女性によれば魔法で空間を管理しているので客同士が鉢合うことがなく、安心して嬢と過ごすことができるらしい。
 言われた通りに扉を開ければ赤い絨毯が敷き詰められている廊下に出た。その空間には扉が一つのみ。この先に嬢がいるはず。
(ソドミちゃんってどんな人だろう)
 女性なのは確定だが、ヒューマンなのかエルーンなのか。もしくはドラフかハーヴィン……相手の種族は不明だが、とにかくここに来た理由はベリアル以外の女性との行為は気持ちがいいのか。それを知るためにやってきた。
 逸る胸の鼓動を感じながら、ジータはドアノブに手を伸ばした──。
 その頃、カウンターでは。
「……あら? 私ったらなにを……。たしか黒い服を着たお客様と話をして……それから?」

   ***

「やあ、特異点」
 その声を聞いた瞬間、ジータは声の持ち主を確認することすらせずに扉を閉めた。頭が真っ白になり、冷や汗が頬を伝う。
 扉を背にぐるぐると考えていると、ドアノブを回す音が聞こえたと同時に体が後ろへと倒れたが、柔らかい脂肪が受け止めたために床に倒れることはなかった。
「逃げることはないだろう? それにしてもキミ、こんなところに来るなんて他の女にも興味が出てきたんだねぇ」
「な、なんで、あなたが!? ソドミちゃんは、」
 ジータを背後から抱きながらベリアルは扉を閉め、薄暗い部屋に二人きりになる。ベリアルと密着していることで感じる胸の感触や彼女から香る甘い毒に囚われて、ジータは動けない。
 さらには体に回されている腕が妖しく動き、人差し指で子宮の場所を何度も撫でてくる。全身が発熱し、疑問符ばかり浮かぶ思考で本来いるはずの嬢のことをジータはなんとか口にした。彼女は一体どこへ?
「ソドミちゃん? あぁ、“ソドミーはいいぞ”」
「あっ……!」
 ベリアルがよく使う言葉である“ソドミー”。少し考えれば分かる単純な名前に気づけなかったのは他のことに気を取られていたのと、まさかここにいるわけがないという思いからだった。
 だがなぜベリアルがここに? どうして自分がこの場所へ向かうことを知っていたのか。聞こうと思い、ベリアルの腕の中から抜け出すと向き合うが、今度は正面から抱きしめられ、顔がベリアルの豊満な胸の谷間へと沈む。
 互いに向き合っての抱擁は、ベリアルの香りが音もなくジータを内側から犯していく。勝手に下がる目尻はどうしようもなくベリアルが欲しい証。
 娼館に来た理由など、もう頭になかった。
「正直キミにはガッカリだ」
「はっ……? いきなり、ひゃっ!?」
 蕩けていた精神がベリアルの言葉に引き戻される。なにがガッカリだと口を開きかけたジータだが、背中を指でツツ、と撫でられたことで言葉にできない。
 上下に往復する指はジータの背を触れるか触れないかの具合でなぞり、くすぐったい。
「ワタシという存在がいながら他の女と一夜を共にしようとは」
「わ、訳の分からないこと言わな、んぁっ……! そもそもっ、恋人でもないのにっ……!」
 ジータを浮気者となじるような言葉。気の向くまま快楽を貪るベリアルにだけは言われたくないとジータは睨む。
「ワタシはキミとコイビトというやつになってもいいと思っているんだぜ? キミをドロドロに甘やかして、溶かしてやるよ。その代わり終末の手伝いをしてもらうが」
「嘘つき。それに……」
 二人は肉体関係はあるが心までは繋がっていない。
 ジータからは求める糸が伸びていても、ベリアルの糸は別の人物へと向けられている。その人物からは気持ちが返ってこないと分かっていてもベリアルは求め続けている。二千年もの間、一人でずっと。
「それに?」
「……なんでもない。私、帰る」
「そんなつれないコト言うなよ……」
「っ、っ……! ん、や、んぅ……!」
 ベリアルが腰を折り、ジータの耳に囁いてくる。甘ったるい声が鼓膜を犯しつつ、細く美しい手がジータのワンピースの裾からショーツへ向かって侵入してきた。
 クロッチ部分をずらすのではなく、腹側から秘められた場所に手を突っ込まれ、乾いた秘処に触れられる。
 だがクリトリスを重点的にこすられ、刺激を与えられるとすぐに恥裂から愛蜜が滲んできた。下半身ががくがくと震え、ジータはたまらず太ももを閉じ、ベリアルの胸に顔をうずめ、体にしがみつきながら甘い声を上げ始める。
 湿り気を帯びてきた陰部から溢れるトロリとした液を人差し指と中指で掬い、快楽の種に塗り付けられれば電流を流されたようにソコが悦を訴えてくる。
 あぁ、駄目だ。やっぱりこの人のことが好きでたまらない。たとえ想いが通じなくても、仲間を裏切ることになっても、この気持ちに嘘や偽りはない。
 一夜の過ちから始まった淡い恋をそう簡単に諦められるほど、ジータはまだ大人ではなかった。
「はっ……、あぅっ……!」
 手淫によってジータの脳内がスパークし、立っていられなくなった彼女をベリアルはしっかりと抱き止めた。胸元に感じる荒い呼吸にベリアルも感化されたのか、顔色が悪いようにも思える白い肌が紅潮し始める。
「決して安くはないルピを払ってキミはここにいるんだ。今日は嬢としてキミに尽してあげるよ。ほら、こうして広い風呂場もあるわけだし、普段できないプレイを楽しもう」
 ベリアルの言葉にジータは重たそうに首を動かし、たわわな果実の間から顔を上げると、今いる位置の真横にある広い風呂場を見た。
 浴室も脱衣所もガラス張りでこちらから内部の様子が丸見え。広すぎるほど広い浴室は同時に五人くらい入っても問題なさそうだ。
 さらには壁に立てかけてあるピンク色のエアーマットがジータの目を引く。だがそれをなにに使うのかは分からない様子。
「さあ、イこうか」
 ベリアルに連れられ、脱衣所に行くと彼女の白魚の手がジータの服を脱がしていく。少女の体に対して視姦するような目を向けながら、ワンピースや下着、靴を脱がせ、あっと言う間に裸に剥く。
 何度もベリアルに素肌は見られているが、やはり恥ずかしいとジータは胸と秘部を手で隠す。いつまでもウブな少女にベリアルは軽く笑うと、自らはまるでストリップショーのように腰を揺らしながらゆっくりと服を脱いでいく。客はジータ一人。
 そのジータも少しずつ露わになるベリアルの極上のカラダから目を離せないでいた。黒いシャツのボタンを外し、はだけさせたことで見えた乳房は大きいながらも形が整っており、母性よりも魔性を感じさせる。誰もが羨む陶器を思わせる肌の色に映える薄紅色は見ているだけでクラついてくる。
 ジータの口内に唾液が溢れてきた。どうしようもなくベリアルの体に興奮している自分を見つけ、口の中に溜まった唾液を音を立てながら飲み込む。心臓も力強く脈打ち、その音が聞こえてくるようだ。
 ぱさりと床に落とされるシャツを目で追いながら、今度は短い金属音にジータは顔を上げた。まるで尻尾のように長いベルトは束縛にも使えそうだ──なんて思ってしまい、ジータはいやらしい考えを霧散させるように首を左右に振った。だがベリアルの顔を見る限り、ジータがなにを妄想していたかは分かっているらしい。
 そういった性癖はなかったはずなのに、ベリアルに出会ってからは色々と捻じ曲げられた気がすると思いながら、ジータは服と同じように床に落とされたベルトを目で追った。
「特異点。脱がしてくれ」
「じ、自分で脱ぎなよ……」
「いいから」
 なにがいいのかさっぱり分からないが、ベリアルの言葉には魔法がかかっているのか、ジータの体はふらふらと彼女の前に立ち、その場で両膝をついた。
 目の前にはベリアルの下半身を覆う革のパンツ。彼女は下着類は身に着けていないのでこの下はジータと同じモノがある。
 いつもは一方的に脱がされ、いつの間にかベリアルも裸になっていることが多いのでこうして脱がせるのは正直恥ずかしいが、それ以上に早くベリアルのが見たいという淫らな欲望がジータの胸に渦巻く。
 チョコレート色の目は蕩け、性欲を煽るように濡れている。頬は熱でもあるように赤くなり、脚の間にある性器はじくじくと甘い疼きを訴えた。
 逸る気持ちを抑えながら留具を外し、チャックを下げると緩慢な動きで下ろしていく。徐々に露わになる肌と甘美な毒の香りはジータの思考を緩やかに、そして確実に破壊していく。
 熱に浮かされたようにぼうっとした瞳を向ける彼女の視線はベリアルの女性器に釘付けになっている。数え切れないほどに使われたであろうソコ。しかし処女を思わせるように色は綺麗で、形も整っている。
 細部まで拘る造物主の熱量が、時代を超えてジータへと伝わってくるようだ。
 パンツを下げる手も止まり、興奮に満ちた呼吸を繰り返すジータの後頭部をベリアルの手が軽く押す。そうすれば鼻先が陰部に触れ、許しを乞うようにジータが淫蕩を司る女神へと顔を向ければ、ベリアルは慈愛に満ちた表情で一言「いいよ」と告げた。
 さすればジータはふにゃりと笑い、ベリアルの太ももに触れると肌触りを楽しむようにスリスリと撫でながら顔を女性器へと押し付け、乾いた性愛器官へと舌を伸ばす。
 自分の唾液で濡らすように淫裂を丁寧に舐めしゃぶり、上側にちょん、と存在する小さな珠を舌先で左右にねぶる。
 舐めているだけなのに中心がじんじんともどかしくなり、ジータは片手を己の股の間へと伸ばそうとしたが、ベリアルが「ダメだ」と禁止したことによりそれは叶わず。
 代わりに両手をベリアルの臀部を抱くように回す。張りのある二つの桃を指の間に肉が盛り上がるほどに掴めば、どこまでも芳醇で甘い肉体にジータは完全に酔ってしまう。
 なにも考えられないとはこういうことなんだろうな、と微かに残った意識で思い、ジータはベリアルの濡れ花を貪り続ける。
 ジータの愛撫によって愛液が分泌され、ぬめりを帯びた溝に溜まった体液を舌で舐め取り、ベリアル自身の味を堪能する。彼女以外と性行為をしたことがないのでジータには他人との違いは分からないが、ベリアルの体液は甘く、いつまでもこうしていられるほどだ。
 もっと欲しいと言わんばかりに大きな吸引音を立てながらクンニし続けるジータの頭をベリアルはいい子いい子と撫で、それもまた少女の思考をバラバラにしていく。
「んっ……! はぁ……。もういいよ、アリガトウ」
 イッたのか、ベリアルの下半身が震え、頭上からは甘さを含んだ声が聞こえた。もういいよ、と終了を告げられ、今にも涙がこぼれそうなくらいに濡れた瞳をジータはベリアルに向けつつ、名残惜しそうに顔を離せば口周りが恥液で濡れ、照明の光を反射して卑猥に光る。
「次はキミの番だ。昇天させてあげるよ」
 反応の薄いジータを他所にベリアルは中途半端に脚に残っているパンツを自分で脱ぐと、ジータの手を取り、立ち上がらせると浴室へ。
 ジータがこの部屋に入る前から用意していたのか、二人で入ってもまだ広いバスタブには並々とお湯が張られている。
 ベリアルは股部分が妙に凹んでいる風呂椅子を用意すると、ジータを座らせ、自分はボディソープの入ったポンプボトルを数回押して泡立てると己の体に塗りたくった。
 泡まみれになった体でなにをするのか。自分だけ先に洗うのか、などとジータは考えていたが、違った。白い泡に包まれた体のまま、ベリアルは正面からジータを抱きしめたのだ。
 むにゅりとした豊満な膨らみは泡で滑りがよくなっており、硬くなった先端をジータの乳頭へと押し付けたり、乳首同士でキスをするかのように絡ませる。
 もたらされる快楽は微弱なものだが、大きな果実に自分の果実が押しつぶされ、いやらしく絡み合う様子はジータの視覚的興奮を激しく煽った。
 ベリアルの性器を口にしていたときから疼きを訴える少女器官が再び激しく反応する。早く触ってほしい。その指でクリトリスやナカを弄られたい。脳内には今まで経験したベリアルとの行為によって与えられた悦楽の記憶が怒涛のように溢れ、ジータの艶やかな欲望は急激に膨らむばかり。
「ふっ、ぁ……! あっ……んッ……! ちゅ、ふぁ、ぁ、あぁ……!」
 胸で胸を洗うように体を揺らしながらベリアルはジータの桜色の唇に自身を重ねた。下唇を食み、抵抗なく開かれた口に舌を忍ばせるとジータから積極的に絡められ、角度を変えながら濃厚な口づけを交わす。
 好きな人との深い繋がりはジータに多幸感を感じさせ、彼女は目をつむりながらそれに浸る。ジータからもベリアルを抱きしめ、大人の女性の柔らかさを堪能しつつ、送り込まれるベリアルの唾液を余さず飲み込む。
 どんどん高みへと上っていき、それに合わせて脳髄が痺れていく。キスだけでイけそう……。なんてジータが思い始めたとき、その気配を感じ取ったのかベリアルが離れていってしまった。
「イくのにはまだ早いぜ? 特異点。お楽しみはこれからだ」
 言って、ベリアルはジータの片手を取るとくっきりと線を描く谷間へと導いた。胸と胸の間に挟み込むように自らの腕で胸を寄せ、いわゆるパイズリ状態にすると上下に動き出す。
 腕を胸で洗われているという普段経験しない行為にジータは目を離せない。にゅるにゅると泡が潤滑剤の代わりになり、スムーズに肌を滑っていく。片方が終わると残りの腕も同じように洗われ、それも終了するとベリアルはジータの背後へと回った。
 すぐにむにゅりとした感触が背中に感じられ、その中心の硬い蕾が這いずり回る感覚にジータは胸で背中を洗われていることを理解した。
 ただの入浴がこんなにもエロティックなものへと変貌するのかと、ジータは翻弄されるばかりである。同時に病みつきになりそうだとも。
「ひゃんっ!? おっぱぃ……くりくり、しちゃ、あぅ……!」
 ぎゅっ、と背後から密着され、ベリアルの腕がジータの脇の下を通って前へと回された。その先にあるのは成長途中の幼い膨らみ。それでも同年代のヒューマンの平均よりは大きい。
「今度新しい下着をプレゼントしてあげるよ。さっき脱がせたときに思ったが、アレだとキツいだろう」
 可愛らしい色をした突起を親指と人差し指で摘み、転がしながらの言葉。ジータの胸を大きくした人物は妖しく笑いながら先ほどの抱擁で泡に包まれた胸を揉むが、ぬるりと手の中から逃げるばかり。
 現在進行形でお預けを受けている肉体はどこも鋭敏になっていて信じられないくらいに気持ちがいい。我慢を重ねた先に最高のエクスタシーが待っているとベリアルに言われたことがあるが、ここまですると逆に体に悪いような気もする。
 ベリアルにくったりと寄りかかり、委ねていると胸を弄っていた手の一つが柔肌を撫でながら背中へと戻り、下半身へと向かっていく。桃尻の割れ目へと指が触れると、ベリアルが口を開く。
「この椅子、妙な形をしていると思わないか?」
「たしかに変だとは思うけど……」
「こういうふうに使うんだ」
「っ!? は、ぁ……!」
 ベリアルは凹み部分に腕を通し、秘められた乙女の場所を腕の内側で洗っていく。触ってほしいと思っていた場所にようやく触れてくれたのは嬉しいが、いくら敏感になっているとはいえ、この程度の刺激では達することができない。
 もっと決定的な快楽が欲しいとねだるように腰をくねらせれば、ベリアルは素知らぬフリをして腕を引き抜いてしまった。
「ベリアルっ、いじわるしないでっ、もうイかせて……」
「もう少し我慢だ。ほら、マットにうつ伏せに寝て」
 泡をシャワーで流し、壁に立てかけられているマットを床に置きながらベリアルはジータに指示し、彼女は不満げな顔をしながらも言う通りにした。
 背後ではなにかを用意する音が聞こえ、クチュ、クチャッと卑猥な音が聞こえるとジータは息を呑んだ。いったいベリアルはなにをしているのか。
「始めようか、特異点」
「なっ、なにこれ……!? ヌルヌルしてっ……!?」
「キモチイイだろう?」
 ベリアルがのしかかると、ジータはようやく音の発生源を理解した。これはローション。ベリアルは自分の体にローションを塗り広げていたのだ。
 しっとりと濡れたジータの肌をベリアルの体が滑り、ローションまみれにしていく。どこもかしこも柔らかい中に二ヶ所だけ硬い部分があり、全身を愛撫されてジータの嬌声が浴室に響き、またそれが彼女の気分を高揚させる。
「今度は前だ」
 ベリアルによって仰向けにされると胸と胸が再び合わさった。上から押し潰されて苦しいが、同時に気持ちがいい。
 普段とはまったく違う快感にジータははふ、はふ、とだらしない顔で荒い呼吸を繰り返し、体を這うベリアルに酔っていた。なにもかもが気持ちよすぎて、ハマってしまいそうだ。
「特異点。脚を広げて」
 ジータが一番触ってほしい場所には触れずにベリアルは起き上がると、新たな指示を出した。いつものジータならば恥ずかしいと訴えるところだが、トロトロに溶かされてしまった彼女は虚ろな目を向けながら自ら大きく開脚し、ベリアルの前にヒクつく穴を晒す。
「イきたいかい?」
 コクコクとジータは首を縦に何度も振り、目で哀願する。これ以上のお預けはやめてほしい。もう許してほしいと。するとベリアルは目を三日月の形にして手で口元を隠した。きっとその手の下はジータの痴態を笑っているのだろう。
「なら今からキミが達するまで、ワタシにどう触れられているか、触れられてキミがなにを感じているか逐一報告すること」
「そんなっ……」
「恥ずかしがることはないだろう? ここにはワタシとキミ、二人きりだ。それともここでやめようか?」
 決してジータが拒否をしないと分かっていての言葉。ベリアルの読み通り、ジータは観念するように「分かった……」と呟き、答えを聞いたベリアルは動き出す。
 ジータの幼花に胸を押し付けるように寝そべり、胸を寄せるとその尖りで小さな種をズリズリと扱き始めたのだ。指でされるのとは違う感覚に早くもジータは悶え、足の指をぎゅっ、と丸めた。
「さっそく教えてくれ、特異点。キミのココはどうなって、なにを感じている?」
「ベ、ベリアルのぉっ、あっ、ンっ! ベリアルのおっぱいがっ、私のクリトリスをごしごしして、あうっ、ぁ、すごくっ……気持ちいい……!」
 柔らかい感触の中に主張する性電気はぴりぴりと淫突起を包み込み、ジータは苦そうに声を上げる。勃起した乳首での刺激は指よりも控えめだが、見た目からの興奮がジータの精神を甘く溶かしていく。
 乳房が蠢く度に濡れ花も押され、じわじわと弱火で炙りながら確実に性熱を上昇させ、ジータの目の前が白く灼け始める。
「はぅ、はっ、イクっ……ベリアルのおっぱいでイかされちゃう──ひぃっ!? いまナカ触られたらっ、ぁ、あ、あぁぁッ!!」
 夢見心地な表情をしながらの言葉はまるで幼子。襲い来る快感の波に素直に飲まれようとしたとき、一際強い電撃がジータを貫き、彼女は目を見開きながら大きく背をしならせた。
 ベリアルはというと、収縮を繰り返す膣肉から人差し指と中指を引き抜き、べったりとつく恥蜜を舌で舐め取ると眼下でビクッ、ビクッ、と下半身を振動させているジータを見て軽く笑む。
「どうだった? いつもと違うプレイは」
 一時的に熱から解放され、浅い呼吸を繰り返しているジータへとベリアルは覆い被さり、額に口づけながら聞く。
「……すごかった」
 一度熱を解放したことにより、思考が平時のものに戻りつつあるジータは横に寝転ぶベリアルを目で追いながら素直に認めた。彼女を堪能できるこのプレイには中毒性があり、非日常感もあってそれがまた感情を煽るのだ。

   ***

 ローションまみれの体をシャワーで流した二人は現在湯船に浸かっていた。ベリアルの膝の上にジータは座っており、その背中を彼女に預けている。ベリアルもジータの胸や腹に腕を絡ませ、密着状態。ジータの精神はお湯の温かさに癒やされ、永遠に若いまま変わらないベリアルの体に肉体は仄かな熱を下腹部に宿していた。
 男ならば射精という終わりがあるが、女性同士にはない。互いに求めるがまま、体力が尽き果てるまで、半永久的な快楽を得られる。
 そしてここは閉鎖された空間。本当の意味でベリアルと二人きりということでジータはかなり積極的になっていた。みんなの団長や特異点という仮面を捨て、一人の女の子になっていた。
「ベリアル、交代しよ」
 ベリアルの膝から下り、反対側に座り直したジータは伸ばした脚の上に手を置いた。つまりは今度はベリアルが乗れということ。
「いつもと違って積極的だな、特異点。フフ」
 口ではそう言いつつも、ベリアルは大人しくジータの膝の上に乗ると、体を預けた。
 ジータはベリアルを深く抱き、肩口に顎を乗せる。どこに触れてもなめらかなベリアルの肌。恋心を抱く相手との触れ合いは胸が痛いほどに締め付けられる。体中の血液が沸騰し、ドッ、ドッ、という音が聞こえてくるようだ。
「どうした特異点。呼吸が乱れてるぞ? それに──フフッ、我慢することはない。ほら、触っていいんだ。キミが望むように」
 腹に回されていた両腕をベリアルは手に取ると、自らの乳房へと導く。下から支えるような形にジータの手を添えると、少女の理性の壁を壊すような甘言を囁き、その言葉を聞いたジータは白い果実に軽く指を沈ませた。
 ただ揉む、という行為がこんなにも興奮するものなのか。揉まれるのとは違う法悦に身を任せ、自分がベリアルにされているときのことを思い描きながら、子供の手には到底収まらない媚肉を愛していく。
 みずみずしい膨らみをマッサージしながらその感触を楽しみ、腫れた乳頭を指先でこねれば、ベリアルからは気持ちのよさそうな声が出てくる。彼女の声には催淫効果があるのかと思ってしまうくらいにジータの理性は音を立てながら崩壊し、嬌声に似た切なそうな声が漏れてしまう。
 好きな人の体を愛することができて嬉しい。それがたとえ一方通行な想いだとしても。
「そんなにがっつかなくてもワタシは逃げないぜ? このままするのもオツだがキミがのぼせてしまうだろう。時間はまだある。この先はベッドの上で楽しもうじゃないか」
 蕩け堕ちた光を瞳に宿すジータの唇を軽く啄み、ベリアルは微笑む。
 相手は淫らで狡猾な女だとは分かっている。それでも自分の心に嘘はつけないとジータはどこか諦めるように口角を上げると、YESと答えるようにベリアルを抱き寄せ、自分から口付けた。