雲ひとつない青々しい爽やかな空。穏やかな風が島の木々や草花を優しくそよぎ、外で過ごすには快適な日。
ここは研究所のある島。研究所の奥には中庭と呼ばれる場所、天司長ルシフェルの安寧であるサンダルフォンという星晶獣が住まう一角があり、現在彼はひとりガゼボの下で珈琲を嗜んでいると。
「やあ、サンディ。今ひとりかい?」
白い軍服に低い声。顔を向ければどこか艶が感じられる男の姿。彼はベリアル。ジータを造った存在。つまりは親である。
彼がここに来る用事といえばルシフェルを訪ねてか、娘であるジータを迎えにくる程度。
「所長補佐官……! はい、今日はまだジータは来ていません」
「フフ。別にジータのことは聞いてないが……」
「あ……!」
彼にとってベリアルは目上の存在だ。自然と椅子から立ち上がり、ジータが来てないことを告げるも彼は微笑しながら違うという。
確かに彼の言うとおりジータに関して聞かれたわけではない。けれど自然と浮かんだのだ。それがサンダルフォンにとってジータがいることが当たり前になっているということ。
なんとなく気恥ずかしくなって視線をベリアルから少し外せば、彼はうぶな雛を見てくつくつと喉奥で笑った。
「まぁオレがここに来る用事といえばルシフェルに用か、ジータを迎えにくらいだもんな。けど今日はキミに用があるんだ。サンディ」
「俺に……」
「バレンタインって知ってるかい?」
「バレン、タイン?」
ガゼボの中に入ってきたベリアルがバレンタインという言葉を告げるもサンダルフォンはピンと来ない。空の世界のなにかだろうか。
「空の民の風習のひとつ。愛する人や大切な人にチョコや菓子を贈る日がちょうど今日なんだ。ジータはキミに渡すつもりで朝からキッチンに篭りきりだよ。フフッ、妬けるねぇ」
(ジータが……! 俺もなにか贈りたいがすぐに用意できるもの……珈琲しか思い浮かばない……!)
なるほど空の民の風習ならば知らないわけだ。サンダルフォンはまたひとつ知識をつけたが問題はそこではない。
ジータが自分のために朝から用意をしているという。それを聞いたからにはこちらもなにか用意したいと思うのは当然。しかし今の今まで知らなかったので彼女に贈れるものといえば珈琲しかない。
特別な豆でもあればよかったのだが、あいにくそういったものはない。いつも出している珈琲では特別感が感じられないか……。
ベリアルの前だというのに悩みの深みにはまっていくサンダルフォンを見て、軍服の男は目を細めて口元に弧を描く。
「悩んでるねぇ、サンディ。そんなキミにオレからプレゼントだ」
「これは……?」
サンダルフォンに片手を伸ばし、上を向いている手の甲を掬うような動きでくるりと翻せば、手の平には中サイズの瓶があった。
透明な瓶はコルク栓がされ、ご丁寧に細めの赤いリボンで軽いラッピングが施されている。
肝心の中身はハート型をした漆黒の石。小ぶりサイズが数個入っていた。これもサンダルフォンにとっては初めて見る物体だ。
「見た目は黒曜石だが立派なチョコでね。これに手を加えたものをジータへのバレンタインの贈り物にするといい。キミにもできる簡単なレシピを教えてあげるよ」
「あ、ありがとうございます! でも……どうして俺にそこまで?」
「んん〜? どうして、って。大事な大事な愛娘が想っている相手には優しくシてあげないとねぇ。これからもオレの娘と仲良くしてやってくれ」
***
「…………」
愛しい男の閨に侵入すればレースカーテンのみ引かれた窓から柔らかく差し込む月明かりが室内を薄暗く照らしていた。
サンダルフォンは安眠の世界に旅立っているのか、安らかな表情で仰向けになっている。起きているときもどこか幼い部分が垣間見える彼だが、眠っていると本当にあどけない。侵入者──ジータのコアがとくん、と反応し全身を蝕む性熱を伴う湿った息を吐き出す。
こうなった理由は昼間のできごとにある。今日はバレンタインデー。空の民の風習に倣ってジータも朝早くからチョコの用意をしてサンダルフォンが待つ中庭へと向かった。
すると彼もチョコを用いた贈り物があるというではないか。そこで互いに贈り合いということでジータはおしゃれな彩りをした固形のチョコレート、サンダルフォンはチョコを溶かした飲料であるホットチョコレートを贈ったのだ。
これだけならばジータが発情する要因はない。しかし、サンダルフォンの使ったチョコレートに問題があった。彼が使用したチョコは愛貯古齢糖という──平たく言えば“媚薬入り”チョコ。
魔物を倒した際に出てくるという、見た目は黒曜石に似た結晶には催淫効果があると言われている。魔物と戦ったことなど中庭の雛にはなく、そもそも仮に戦って入手したとしてもこれがチョコレートだということや、ましてや媚薬入りなんて分かるわけがない。
彼は自分と違ってどこまでも純粋で清らかな存在。彼との違いを思って寂しそうな目をするジータだが、それも一瞬のこと。
淫熱が再び宿る。チョコの入手方法はおそらく、というよりかは絶対ベリアルだ。面白がってだろうがもう理由なんてどうでもいい。たまには変わったシチュエーションで楽しむのも一興。
一定の間隔で膨らむ彼の胸部。白い掛け布団の下はきっと薄着のはず。媚薬入りチョコを大量に摂取した影響でジータの顔はどうしようもなく緩み、視線は隠された股間部分へ。
薄く開いた口の隙間から唾液が零れそうになるのを飲み込むと、熱い滾りへと思いを馳せる。可愛い顔をしながらその凶器はなかなか立派。硬度や角度、太さ……様々な要素が自分と相性抜群。
彼を組み敷き、思うがままに腰を振って攻めれば甘い嬌声を上げて快楽に溺れる顔を思い出せば……あぁ、子宮が疼いて仕方がない。もう我慢できない。
彼が用意したチョコでこうなったのだ。責任を取って貰わなければ。
服装はベリアルとほぼ同じデザインの軍服だが、その純白のプリーツスカートの中身は今はなにも穿いておらず、あふれ出した甘露が太ももを伝う様子が痴女を思わせる。
(はぁ……♡ はぁ……♡ サンダルフォン……っ♡)
ベッドに歩みながら衣服を脱いでいき、床に散る布が軌跡となって寝台まで続く。
柔らかな丸みを帯びた乳房。その尖端は凝り固まり、くびれた腰の先、下腹部には無毛の丘。肉付きのいい太ももの付け根に挟まれた逆三角形の奥まった部分はぐちょぐちょに濡れ、今すぐに挿入可能状態。むしろ一秒でも早く彼を感じたい。
ケダモノが迫っているというのに彼は未だに夢の世界。無防備な寝顔をしっかりと目に焼き付けたのちにジータはベッドの下部から布団に潜り込む。
ほどよい熱がこもった布団の中は真っ暗闇だが、ジータは星晶獣なので昼間と同じく鮮明に見えた。彼の寝るための衣服は思ったとおりシンプル。脱がせるのも楽だ。
「ん…………」
布団越しのくぐもった声が聞こえる。けれど起きる様子はない。違和感に目覚め、全裸の僚機に襲われている状況を目にしたとき、彼は一体どんな反応をしてくれるだろうか?
イタズラをする子どものような気分になりながらボトムと下着に指をかけてゆっくりと、自らを焦らしながら下ろす。
露わになる肌はシミやくすみとは無縁の白い肌。そして当たり前だが陰茎は萎えたまま。まずはこれを勃たせなければ。
(それにしても本当によく寝てる……)
下を完全に脱がせてもサンダルフォンは眠っている。さすがに危機感がなさすぎでは? いくら中庭に入れる人物が限られているといえど。
(はぁ……♡ サンディの肌、すべすべモチモチ……♡)
すりすりと妖しい手つきで太ももを撫で上げればその感触の良さに顔全体が緩む。
こうして触り心地を堪能していたいところだが、洪水状態の肉壺が咥えるモノを求めてヒクヒクと蠢いて止まらない。
突き上げる性衝動に身を任せたジータは伏臥位の体勢になると、大きく口を開けて──肉槍を一気に呑み込んだ。
「はふっ、んぐ、んっ、んん……ッ、ぐぽっ、ふうっ……!!」
唾液たっぷりの口の中が陰茎でいっぱいになる。温かく独特の食感の肉を喉奥まで招待すれば苦しくて自然と涙が滲むが、それ以上に好きな人の身体の一部を悦ばせているという事実がたまらなく愛おしい。
「んッ……? んん……?」
さすがのサンダルフォンも陰部を襲う違和感に意識が浮上しかけている。するとジータは完全覚醒を誘うかのように攻めを強めた。
ぬぼぉ、と口から陰茎を解放すると棒付きのキャンディを舐める要領で小さな舌で四方八方から舐め上げる。
粘着質で卑猥な水音を立てながら、れろぉ、と舌を下から上へ。性器への刺激で緩いながらも勃起してきた肉棒を片手で固定すると、肉傘を口に含んで吸いながら真っ赤な舌を小刻みに動かし舐めた。
「っは……! な、なんだ……? んひぃッ!? な、ジ、ジータ!?!?」
「こんばんは、サンディ♡」
「は、え? なぜキミが……って、なにしてるんだーー!?」
ようやく目覚めたサンダルフォンが下腹部を襲う違和感に勢いよく掛け布団をまくり上げればそこには股間に顔を埋めている僚機の姿。
彼を挑発するような眼差しを向けながらジータは簡単な挨拶をすると、ちゅっ♡ と鈴口に唇を押し付けた。
小さな刺激だというのに大げさなほどに下肢を震わせると、サンダルフォンは混乱を極めているのか目を白黒とさせる。
自分とジータはそういう関係まで進んではいるが、まさか寝込みを襲われるとは思ってなかったようだ。
「なあにその顔。君が誘ってきたんじゃない」
「さ、誘ってなんか……!」
「ちゅぷっ、だって……愛貯古齢糖を使ったホットチョコを出してきたじゃない。ンッ……てっきり、誘っているのかと思って私、おかわりまでして君のために身体を媚薬漬けにしたのに……」
言いながらも丁寧にご奉仕を続ける。起きたことにより一気に硬度が増した肉勃起は今ではジータが手を添えなくても天高く反り勃ち、ガチガチだ。
ジータの唾液とカウパーによって淫乱に輝く剛直。その立派さにジータは唇の端を妖艶に上げると、流れるようにサンダルフォンを組み敷く。
呆気ないほどに簡単に押し倒された男は戸惑いながらも抵抗する気はない様子。
「ら、ラブチョコレート? というのか、アレは。補佐官が俺から君にバレンタインのチョコを渡せるように頂いた物だったんだが、まさかそんな催淫効果があるチョコだなんて……」
(まあそんなことだろうとは思っていたけど)
中庭からほとんど出ることがない彼が空の世界の行事に詳しいはずがない。
なのでサンダルフォンからバレンタインのチョコ、ましてや愛貯古齢糖を出されたときに十中八九ベリアルが関わっているとは考えていた。当たり前のように予想的中だ。
「私、もう我慢できないの。知らなかったとはいえ媚薬入りチョコを出したんだもの。責任取ってくれるよね……っ!」
「あぁぁっ!? っ、ぁ……く! じぃた……! いつもより、ぅああ……! 締め付けがっ……!」
サンダルフォンの両脚を彼の胸へと折り畳み、ひっくり返った蛙のような姿にすると、ジータはその上にのしかかる形で待ちに待った雄勃起を膣内へと迎えた。
隘路が太幹によって拡張され、粘膜越しに感じる彼の存在に静かに息を吐くと、ナカに力を入れて扱いてやる。ベリアル製のボディは内部にもこだわっており、人間でいうところの“名器”。雄を魅了して虜にする性能に特化していた。
なのでビッシリと連なった肉壁を自在に操り、キツい内部の膣肉で揉んでやることなど造作もないこと。
(か〜わいい♡)
組み敷く雄の顔は熟れた林檎のように赤い。ベリアルに似た色をしたオルディネシュタインはギュッと閉じられ、すぐに達してしまいそうになるのを我慢しているのが丸分かり。
目尻には快楽の雫が輝き、軽くピストンしてやれば形のいい唇からはジータを満たす甘い声。現在の体位も相まってジータは自分が男になったような錯覚を覚える。
ただの騎乗位とはまた違ったこの体勢はジータの心にある野性的な、男性的な欲望を煽りに煽り、腰を引けばグチョグチョになった結合部は淫らな糸を引く。
ジータから溢れる膣蜜は薬の影響で分泌量が増え、サンダルフォンのアヌスまで垂れ、肉を子宮口に叩き付けるように腰を下ろせば繋がった場所からは卑猥な音が響く。
(あぁっ♡ いいッ……! 子宮ッ、びりびりきちゃう……♡♡)
心に決めた雄を迎えにきた子宮口に、ジータは亀頭を小刻みに擦り付ける。腰を巧みにくねらせ、ぐっぽりと咥えたままの長大を思うがままに楽しめば顔が蕩けて止まらない。それは、サンダルフォンもなのだが。
「っひ、あぁぁぁっ! あっあっ、」
ジータのリズミカルな腰遣いに合わせて心地のいい低音が淫らな音楽祭を奏でる。強制的な快楽の坩堝に叩きつけられた若い雄は雌のように喘ぎ、それを聞いているだけでジータの股間が燃え上がるように熱を持ち、ほとばしる電撃のような快楽が背筋を走って脳天を貫く。
悩ましげに下がる眉、潤んだ紅玉、白い肌は血色がよくなり、額から汗を滲ませる。ケダモノのような荒い呼吸を繰り返す唇からは下品に舌を突き出し、膨らむばかりの性欲を雛へとぶつける。
「ハァっ……、ははっ……サンディ、他の人にそんなエッチな顔──見せちゃダメだよ?」
「なぁっ……! くっ……!」
ぐぐぐっ……! と体重を前にかけ、さらに深くのしかかる。サンダルフォンにとって苦しい体勢ながらも、天司長が造り上げたボディというのもあって柔軟性に富んでいるため苦痛は感じていない様子。
それよりかも快楽を受け止めるのが精一杯だ。
ジータに揶揄されたのが恥ずかしいのか、サンダルフォンは両腕で顔を覆ってしまうがすぐさま白い両手が恋人繋ぎをして彼の手をベッドへと縫い止めてしまう。
「っ、うぅ、ぅぅ……っ! ジータ、見ないでくれ……! 俺、酷い顔を……!! ぁッ!? ん、む……ぁ……あ……!」
ジータにとっては愛い。サンダルフォンにとっては情けない。そんな顔を見たい・見せたくないの攻防は一瞬でジータの勝ちに決まる。
「ちゅぷっ、ふぁ……ん、もっと……くちゅっ、君のかわひぃ顔……ぁ、あ……っ、見せて。ふふ……キス、きもちいい……?」
サンダルフォンを喰らう勢いで口を開けたジータは舌で舐めとるようにして吸い付き、自動的に伸ばされる彼の舌をいやらしく絡ませる。
どこか及び腰な男の舌よりも小さな舌がチロチロとしつこく追いかけ、互いの口周りを唾液でベタベタに汚していく。
恋人同士の甘いセックスというよりかは快楽をひたすらに求めた獣の交尾だ。
「あっ、ひ……! んぅ、むっ……ふ、う……ちゅ、ン……、ぁ、ああ……! もっと……」
いくら羞恥心に身を焦がしても僚機が求めてくれるのが嬉しくて。性の空気に早々に飲み込まれた少年は妖艶なる美少女を少しでも喜ばせたい一心で素直な気持ちを言葉にする。
ジータも簡単に陥落したサンダルフォンに対してうっそりとした笑みを描くと、内側から突き破る勢いの激情に忠実になる。
「ぅああっ……! 耳っ、やめ──」
「やめてもいいの?」
「ッ!!」
両方の耳たぶを手でくすぐればサンダルフォンはとっさに口にしてしまう。彼が本当はどう思っているかなど分かりきってはいるが、いじわるしたくなって耳孔に向かって囁やけば組み敷く身体が釣りたての魚のように跳ねた。
ねぇ? とベロリと耳垂から耳輪に向かって舐め上げれば、全身性感帯と化した少年を受け止める白いシーツの皺がさらに深くなる。
「私、素直な子が好きなの。ねえ……君は私にどうされたい? サンダルフォン」
耳の穴に口をつけ、息を吹きかけながら囁く。
「も…………もっと、し……して、ほし……い。ジータ。君をっ……感じたい…………」
(……!)
鼻先が触れそうなほどの至近距離で見下ろせばサンダルフォンは顔を火照らせ、快楽の涙で潤んだ赤色を向けておねだりしてきた。
刹那、ジータの中には凶暴的なくらいの支配欲が渦巻く。背筋には興奮の電流が駆け抜け、サンダルフォンの言葉でわずかに残った理性さえ吹き飛ぶ。
「よく言えました♡ お望みどおりいっぱいシてあげるね♡♡」
「あっ! っ……、はっぁ、ああ……! じぃた、ジータぁ……ッ……!」
やや乱暴にサンダルフォンの前髪を撫で付けるとそのまま彼の片手を握る。さすれば当然のように握り返された。
爛々と輝くガーネットの瞳に乱れ、涙で濡れる雄の顔をじっくりと目に焼き付けながらジータは重たそうに腰を持ち上げ打ち付ける。
「あ……ッ、あぁぁぁぁっ……! っく、ふ……ぅッ……!」
「声も恥ずかしがらないでいっぱい出して……? 君のエッチな声をたくさん聞きたいの」
子宮リングに昂ぶりの先端をぴったりくっつけながら内部に力を入れ、腰をグラインドさせれば股間を襲う快感の荒波にサンダルフォンは身をよじるも雄という性別ゆえか。声を出すことに対して未だ恥ずかしさがある様子。
我慢しようとする彼の気持ちは分からないでもないが、心ゆくまで快楽に堕落していってほしいとさえ思うジータは聞くだけで蕩けてしまう声音で誘惑すると、彼はどこか迷うように視線を外すとちらりとこちらを伺ってくる。
性を司る女神の如く微笑む──番であり、姉のような、特別な存在は喉の奥で笑うと彼の嬌声を誘うように浅い律動をすれば、ギュウギュウと締め付けてくる膣肉のうねりにサンダルフォンはたまらなくなって両腕をジータの背中に回してすがりつく。
「ジータっ……! ふっ、ぁ、ぁぁあッ! もう出っ……!! あぁああああッ!!」
強く閉じられる双眸。ジータの背中を抱く力が強まり、密着すれば愛おしい震えを肌で感じる。
「あはぁ♡ 子宮にサンディの精液がビュルビュルしてるっ……♡ 種付けしたいってビクビク震えながらの射精は気持ちいいでしょう?」
子宮口とディープキスをしている亀頭からは濃厚な精液が放たれ、神秘の部屋を満たしていく。彼に注がれても獣同士の交尾では実らぬ愛の結晶。あぁ、でももし、もしも彼との絆が形として生まれたらそれはどんなに素敵なことだろうか。
「はぁ……はぁ…………」
(…………。サンディはイッたけど私はまだなんだよね。……そうだ!)
気だるげに肩で呼吸を繰り返す番を見下ろしながらジータは己のナカにくすぶったままの熱に思いを馳せる。この性なる炎が鎮火するまで彼には付き合って貰わなければ。
ペニスも若干柔らかくなったがまだまだ硬度はある。このまま連続でしても問題はないだろう。仮に萎えてしまっても魅了を付与して強制的に勃起状態にするまでだが。
さて。このままの──まるで男女が逆転したような錯覚を覚える体位もいいが、なにか変化が欲しい。自らの頭脳に蓄えられた性知識を広ければとある体位が浮かぶ。そうだ。これにしよう。
決めるとジータは一旦サンダルフォンから降りるとそのままベッドからも降りた。
くるりと体を翻し、ぼんやりとしているサンダルフォンの脚を掴むと自分の元へと引きずり込む。ずるずるずる……。
現在彼の長い脚はベッドから投げ出され、臀部もギリギリベッドに載っている状態だ。
「ジ、ジータ……?」
彼女がなにをしようとしているのかが分からず、少年の顔に困惑が浮かぶ。しかしその瞳には淫らな炎が宿り、期待が感じられる。
「さて……どうかな〜。よいしょ……っと」
自分が想像するようにうまくいくのか。ひとり呟きながらジータは肉竿に手を伸ばす。ふたり分の体液が混ざった蜜によってぬめった棒は女の手の中で滑りそうなほど。それをジータは立ったまま腰を前進させることで、ぬかるんだ自らの女陰に咥え込む。
「ッ゛!? うぐぅ……! これ、はッ……!」
にゅるん♡ と簡単に飲み込まれる肉柱。繋がるその姿はジータがサンダルフォンに挿入しているように見える。
「ねえサンディ。まるで自分が女の子になったような気分になるでしょう? ウフフッ。初めて試してみたけどかなりいいね、この体位。病みつきになっちゃいそう……♡ 私に犯されて気持ちいい?」
「ひぐっっ!? ひ、ぁ、あぁっ♡ 俺……いま、ジータにっ……?♡♡」
「さっきみたいに脚を開いて自分の方に折り畳んで? うん。そうそう♡ じゃあ両手は私とにぎにぎしようねぇ〜♡♡」
ジータがそう言うならとサンダルフォンはおずおずとM字開脚をした。残された羞恥心の欠片や激しい運動によって血色の良くなった頬、彼の顔が中性的なために本当に女の子を犯している気分になってくる。
これはハマってしまいそう……。背徳感という名の媚毒が全身に巡るのを感じながらジータはサンダルフォンの両手を握るとそのまま身体の中心を通って局部辺りでギュッと繋ぐ。
仮にサンダルフォンが女性体であれば乳房が強調され、突き上げる度に小山が淫らに揺れるだろう。
「っ、うぅ、んぅん♡ ぁ、きもちいい……♡ ごつごつくるぅ♡」
「ふぅっ♡ ぁ……あッ、ああぁ♡ はっ、ンんっ!」
より深く繋がれるようになり、巧みに腰の律動を開始すれば自分に男性器が生え、それをサンダルフォンに挿入している気分になって先程よりかも心身ともに快感で満たされていくようだ。彼の反応も男としての受け身……というよりかは女性寄りの甘さが含まれている。
(あん♡ んぁぁッ♡♡ サンディに挿入るの……ッ、おかしくなっちゃうほどに気持ちよくて、ンンっ……♡)
決して普通の女性優位の体位が物足りないというわけではない。彼との行為はいつだって最高。けれどその度合いが少しばかり違うだけで。
「っひ、あっぁあ!♡ ジータ、またぁッ♡ イクっ♡ も、射精ッ♡♡」
達したばかりでの新たな強すぎる性快楽からサンダルフォンは逃れたいように目を強く閉じて首を左右に振る。強制的に与えられる悦楽。ジータのナカにある彼の分身も激しく脈打って暴発寸前だ。
(あとちょっと……! 私ももうイク……っ♡♡)
一回目でイキ損ねてしまった故にジータも達する直前。頭の中が沸騰したように考えがまとまらず、ひたすらに絶頂することだけを求めて身体が動く。
サンダルフォンの手を握っていた手は彼の腰に。力いっぱい掴んでガツガツと腰を前後に激しく振れば膣襞をエラが張ったペニスがえぐり、愛液と精液が綯い交ぜになった淫乱白濁が交接部で泡立つ。
ギシギシと音を立てるベッド。サンダルフォンの声。股間から這い上がる快感電撃にジータの視界に火花が散り始める。
「もうだめぇッ♡ いくっ、いく、ぁああッ♡♡ サンディのナカでイクぅぅぅぅっ!!!!」
頭の回線が焼き切れてしまったのか。ジータは己の男性器が彼に包まれているような、不思議な悦楽が陰部を激しく襲い、バチバチ! と電撃が脳天を貫く。
アヘ顔を晒しながら首を反らし、天国への階段を駆け上がれば──世界は真っ白に染まり、多幸感に身体も精神も溶けていくよう。
「ひっ、あっ♡ ジータっ♡ 俺も、ぁ──」
ジータとほぼ同時にサンダルフォンもアクメを迎え、少女の子宮に向かって大量の精液を流し込むのだが男女逆転の錯覚セックスはその逆。自分がジータに中出しをされているような感覚に陥っていた。
激しい交尾の雰囲気にすっかり呑み込まれた少年の整った顔も甘く歪み、ジータの親であるベリアルに似た赤色の瞳の奥にはハートが見えるかのように激しい熱を揺らめかせる。
「ぁあ♡ ん……ふぅ、ふぅぅ……。……サンディ、まだまだイケるよね?」
「え……?」
硬度を失いつつある陰茎がずるり♡ と抜ければ体液でぐちゃぐちゃになった秘処からは白濁が流れ落ちる。粘性のある液体が太ももを伝うのを感じながらジータはニヤリと笑い、絶頂の余韻に浸る番の頬を片手で撫でる。
するとサンダルフォンの蕩けた目がジータを映す。普段からジータは回数が多いのだが、今の言葉はいつもよりも多くする……という意図がひしひしと感じるのだ。
彼女に付き合いきれるだろうか。普通の人間の男と比べて回復は天司だからか早いが、さすがに限度がある。不安げに寄せられた眉を見てジータは不敵に笑った。
「この程度で愛貯古齢糖漬けにされた身体が満足すると思う? フフフ……。大丈夫。君が勃たなくなっても欲望を発散させる方法は色々あるから。責任、取ってくれるよね?」
サンダルフォンに覆い被さり、くっつけるだけのキスをして悪戯っぽく微笑む。そう。方法ならいくらでもある。手や口で奉仕させたり、魔法を使ってクリトリスを男性器化させることだって。彼にだって穴はあるのだから。
色々妄想を繰り広げていると彼の両腕がジータの背中に回る。ぎゅっ、と抱きしめられることで無言の了承を訴える彼からも柔らかな唇が重ねられ、ジータが舌を出せば彼も同じように伸ばす。
ちろちろと戯れながらジータはこれから先の予定を組み立てる。
ああ、どうやってこの愛しい雛を自分と同じところまで堕落させようか。
終