不実の愛

「こんなところに一人とは。特異点たちとはぐれたのかい?」
「あ、あなたは……! ベリアル、さん……」
 穏やかな陽気の島。人々が行き交い、賑やかな街も一歩奥へと踏み入れると日の当たらない場所がある。
 ひと気のない路地裏。そこに澄み渡った空を思わせる美しい髪を持つ少女がいた。名前はルリア。いつも誰かと一緒にいる彼女だが、今は一人きり。
 ルリアは髪と同じ蒼い目で地面に倒れる男を見下ろすと、吸い寄せられるように顔を上げ、男を気絶させた人物を見上げた。
 彼女の視線の先にいるのは黒い服を着た女。ダークブラウンの長髪はよく手入れされているのか艶やかで、風にそよぐ姿が美しい。
 窪みに嵌まるワインレッドは人々を惹きつけ、鼻筋の通った完璧な造形は誰をも魅了してやまない。
 胸の下あたりにあるボタンを一つだけかけているシャツは形のいい胸の谷間を強調し、思わずなぞりたくなるくびれも丸見えだ。
 スラリと伸びる双脚は長く、身に纏うパンツが線を目立たせる。なにもかもが人間離れした彼女の名前はベリアル。狡知を司る堕天司で世界を滅ぼそうとした人物である。
 まさかこんなところで出会うなんて……と、ルリアは表情を硬くすると後ずさった。
「おおっと。そう警戒するなって。それに……」
「ベリアルッ! ルリアから離れろっ!!」
「グラン!」
 緊張が支配する場に割って入ったのは茶髪の少年だ。彼はグラン。ルリアの半身であり、騎空団の団長である。
 グランはルリアを庇うようにベリアルの前に立つと剣の切っ先を向け、背後に倒れる男をちらりと見遣り、黒衣の女を睨みつける。
 ピリピリとした空気が満ちるなか、ベリアルはため息をつくと肩をすくめた。
「おいおい、ワタシはそこの男に絡まれていた蒼の少女を助けただけだぜ?」
「グラン、本当です……。あなたとはぐれてしまって、気づいたらこんな場所に……。この人に声をかけられて困っていたら、ベリアルさんが助けてくれたんです」
「……本当なのか」
「蒼の少女の言うとおりだよ。ワタシもたまたまこの街に来ててね、散策途中に彼女を見かけたんだ。なにやら困っていたようだし、助けてあげたのさ。……ウフフ。ワタシが助けなかったら今頃どうなっていたか、ねぇ?」
 ルリアの肯定と、ベリアルの最悪の展開を想像させる言葉を聞いてグランは剣を収めた。敵であれ、大切な人を助けてくれたのは事実。グランは礼を言い、ルリアもぺこりと頭を下げると感謝の言葉を述べた。
「ドウイタシマシテ。ところで特異点、コレを……いや、蒼の少女のほうがいいか」
「?」
 女性らしい潤みを帯びた唇を緩く上げ、握られた右手をグランの前に出したベリアルはパッと手を開く。するとなにも持っていなかったはずなのに、開かれた手のひらには小さな箱があった。
 気品あふれる白い箱は縦に長い。中身がなにかはグランは分からないが、警戒した彼は険しい顔をしながら手の中の箱を見つめた。
「コレさ、貰ったんだけど要らないからあげるよ」
 グランの後ろに隠れるルリアに向かってベリアルは箱を差し出した。困惑の表情をしながらもルリアは前に出て、箱を受け取ると、ベリアルに開けるように促される。
 ベリアルに言われ、開けようとするルリアにグランは心配そうに声をかけた。それもそうだ。彼女は人を騙すのが生きがい。箱を開けた途端に爆発する小型爆弾かもしれない。
 それ以外でも、こちらに危害を加える罠を仕掛けている可能性を捨てきれない。とにかくベリアルは信用するに値しないのだ。
「罠だと思っているだろう。けどよく考えてみろよ。ワタシがそんなつまらないものでキミたちをイかせると思うか?」
 ──その気があれば、カナンでヤッている。
 鋭い犬歯を覗かせ、ベリアルは悪辣な笑みを浮かべる。一瞬で変わる空気にグランとルリアは戦慄するが、すぐにベリアルは表情を和らげるとルリアの手にある箱を自ら開けた。
 中身は小瓶だった。宝石を思わせるカットが施されたひし形のクリアピンクのガラス瓶の中には、液体が詰まっている。
 蓋の部分も高級感がある装飾がなされ、それは団のお姉さんと呼べる年齢の女性が持っている物を思い出させる。ルリアも年頃の女の子。キラキラとした物を見て目を輝かせた。
「これ……香水、ですか?」
「いいや。たしか……ヘアオイルだった気がする」
「なんだよそれ。覚えてないのか?」
「記憶力はイイほうだが、興味のないことはそもそも記憶しない質でね。マァ、高級店の商品だし悪い物ではないよ」
 グランに記憶力を指摘され、ベリアルはいま一度記憶を巡らせてみるが本当に思い出せない。
 覚えているのはこの島の女と一夜を共にしたことと、その人物に髪を褒められたこと、成り行きで一緒に高級化粧品ばかり扱う店に行き、別れ際にその店で買ったであろうあの箱を渡されたくらいだ。
 ベリアルにとってセックスは欲を発散させる手段であり、ときに人間を堕落させる手段の一つ。女がどのような容姿をしていたのかなにも思い出せないが、顔や体は悪くなかった……はず。
「ありがとうございます、ベリアルさん。大事に使いますね」
「あぁ、そうしてやってくれ。それにキミが綺麗になると特異点も喜ぶだろう」
「はぁっ!? なんで僕が喜ぶんだよ! いや、ルリアが綺麗になるのは嬉しいけどっ!」
「はわわ……! なんだか恥ずかしいですけど、ベリアルさんみたいな綺麗な髪になれるように頑張りますね?」
「ベリアル? ……たしかに綺麗だな」
「褒めてくれてウレシイよ」
「その割には顔と声に感情がこもってないけど」
「だってキミらに褒められても、驚くほどコアが反応しないからさ」
 少年少女の可愛らしいやり取りから、ベリアルの話へと変わる。髪を褒められたベリアルは言葉では喜びを口にするも、グランの指摘のとおり表情と声には反映されていない。
 その理由を悪気がないかのようにニッコリと、わざとらしい笑みを貼り付けながら口にしたベリアルは「それでは、い週末を」とグランたちと別れた。

 現在、ベリアルは六枚羽を広げて空を飛んでいた。先ほどまでいた島とは遠く離れた場所。騎空艇よりも遥かに速いスピードで目的の島まで飛んでいる最中、脳裏に浮かんだのは顔が思い出せない誰かと、グランとルリアに髪を褒められたことだ。
 コアが反応しないというのは本当だ。人間や他の星晶獣ならば嬉しいのかもしれないが、ベリアルはなにも感じない。
(ファーさんだったら嬉しいんだけど……言われたことないな)
 ベリアルを初めとする星晶獣の礎を作った人物。星の民ルシファー。ベリアルは彼女を崇拝しているが、そういったことに興味のない彼女からは言葉にされたことがなかった。
(ならワタシのコアが反応するのは──あの人だけか)
 移動しながら想起するのはかつての記憶。ルシファーが生きており、ベリアルも補佐官として研究所で稼働していたときのことだ。
「本当にあなたの髪って綺麗ね」
「そう? キミが手入れしてくれるおかげだよ」
「お母さまやルシフェル、それに私も髪が短いから……誰かにこういうことするの、密かな夢だったの」
 研究所の一室。落ち着いた雰囲気のインテリアに囲まれた部屋に二人の女の姿があった。
 ドレッサーの前に置かれている椅子に座るのは軍服を思わせる白いレオタードを着たベリアルだ。その後ろの椅子に座り、彼女の髪を丁寧にブラッシングするのは金髪の少女。
 星晶獣は不変の存在。少女は自分の髪が短いので背中まで伸びる髪を持つベリアルを羨ましがるように見つめながら、髪を梳き続ける。
 一度も引っかかることなくブラシの間を通っていく艶髪に少女──ジータは感嘆した。
 彼女は天司の前身として造られた星晶獣。当然天司のような羽もなく、規格も少しだけ違う。
 ルシフェルやベリアルが造られた今では廃棄されて当然の存在なのだが、母と呼び慕うルシファーの身の回りの世話をするという役目を与えられ、廃棄をまぬがれていた。
 ジータはベリアルを妹のように可愛がり、造物主であるルシファーに代わって愛情を注いでいた。ベリアルもその愛を拒絶することなく受け入れ、彼女になにかを褒められるたびにコアを熱くしていた。
 その中でも髪を褒められるのが好きだった。ルシファーに与えられた髪。彼女が計算し尽くした長さと性質。完璧な黄金比。
「あっ、そろそろルシフェルのところに行かないと。またあとでね、ベリアル」
「……ああ。またあとで」
 一段落したところでジータはブラシをドレッサーにしまうと、ルシフェルの名を口にして部屋を出ていった。
 その背を見つめるベリアルの顔は酷く冷めた顔をしている。
 ルシフェル。ベリアルと同時期に造られた、完璧で、公明正大で、無私無欲な存在。造物主と同じ顔をした存在の名を呼ぶジータの顔は一人の女の顔をし、その声は愛しい人を呼ぶ感情を秘めていた。
 天司長であるルシフェルとルシファーの作品の一つであるジータ。仲睦まじく寄り添う二人の姿は番そのもの。
 何度自分もその顔で、声で、名を呼ばれたいと思ったか。ジータに向けられる親愛を心地よく思うのと同時に、決して向けられない感情を思ってコアが苦しくなる。

「ただいま」
「おかえりなさい。ベリアル」
 辺境の小さな島にベリアルの姿があった。島全体が緑に覆われ、なにかを隠すにはもってこいの場所。街もないこの島に来る者がいるとすれば……よっぽどの物好きくらいだろう。
 森林地帯の奥の奥。近くに川が流れ、せせらぎの音と木漏れ日で癒やしあふれるここに小屋があった。木製の小屋の扉を開けて中にいる人物に声をかければ、床をホウキで掃いていた少女が顔を上げた。
 太陽を思わせる温かな笑み。その持ち主は──ジータだった。その姿は二千年前と変わらない。
「ジータ……」
「わっ……どうしたの? 急に」
「理由がなければキミを求めちゃ駄目かい?」
「そんなわけないよ。だって私は“ベリアルの番”だもの」
 小さな体を腕に閉じ込め、輝く金髪に顔を寄せれば彼女が使う洗髪剤と彼女自身の香りが鼻腔を撫でる。そのどちらもベリアルに安らぎをもたらすが、やはり一番はジータ自身の香りか。
 肺いっぱいにジータを堪能しながら抱きしめる力を強めると、手に持っていたホウキを壁に立て掛けたジータからも抱擁が返される。
 求め合うこの状況にコアから発せられる熱で全身が熱くなる。突き上げるような衝動を我慢することなくベリアルは行動に移った。
 身長差から胸辺りにあるジータの顔を両手で包み込み、上を向かせると唇を寄せた。重なる赤い唇は互いを欲するようにぴったりと合わさり、ジータの下唇を優しく食みながら舌を伸ばせば彼女の舌が迎えてくれた。
 淫らな水音を奏で、興奮に息を荒げながらベリアルはジータを愛し続ける。
 性的興奮はさまざまな場面で数え切れないほどにしてきた。だがジータとの行為は別格。触れる場所から溶けてしまうようなくらいに熱くなってしまう。
 さらにずっと欲しいと思っていた人が相手だ。たとえ今の状況が彼女を壊した結果の果てだとしても、ベリアルにとってはどうでもよかった。
 ジータが壊れたすべてのきっかけはカナンにある。あの日、ルシフェルがベルゼバブの凶刃に倒れたあの日に──。
「やめてっ! その繭を壊さないで!」
「やはりルシフェルと一緒にいたのか。……ジータ」
 ベルゼバブがルシフェルを倒したあとのことだ。ルシフェルが守ろうとしていたサンダルフォンが宿る繭にベリアルが近づけば、奥のほうから久方ぶりに聞く声が響いた。
 剣を携え、現れたのは金髪の少女だった。彼女は繭を庇うように前に出ると剣先をベリアルへと向けるが、その刀身は震えている。
 琥珀色の双眸からは大粒の涙を流し、その涙の意味は最愛の番を奪われた悲しみと、自分ひとりでは立ち向かえないほどに強大な力への純粋な恐怖。だが彼女は引かない。ルシフェルが守ろうとした子を守り抜く。
 恐れを押し殺し、刃を向けてくるジータを見てベリアルの中に黒い感情が湧き立つ。中庭で珈琲を飲みながら彼女の作った菓子を食べるルシフェルとジータ、そしてサンダルフォンの三人はまるで母たちと娘のようで……家族のようだった。
 そんなに守りたいのか。その不要品を。
 だがそこは狡知。決して激情を表に出すことはせず、一歩踏み出すと、ジータは「来ないで!」と声を張り上げる。
 力なき者の精一杯の虚勢。ベリアルは臆することなく歩み、ジータの剣を掴むと己のコアの場所に当てた。
「ほら、ここだよ。ワタシのコアは。キミに貫けるかい?」
「っ……!」
 ジータが貫けないことを分かりきった上での煽り。ベリアルの読みどおり、ジータは剣を押し込むことができず、力なく腕を下ろした。
 できるわけがなかった。造物主ルシファーの思惑に則って行動する敵だとしても、一時期は愛情を注いだ相手。非情になりきれない。
「お願い。私はどうなってもいいから。だから、だからサンダルフォンだけは……!」
 懇願するジータにベリアルのコアが強く反応するのと同時にやはりイラついてしまう。ルシフェルが造った天司を自分の子供のように思うジータが腹立たしい。
 ──壊してしまいたい。一度壊して、自分好みの獣にしてしまいたい。ルシフェルやサンダルフォンのことを忘れ、ルシファーに尽くし、自分のことを番と呼ぶ獣へと……。
「オーケイ。ならキミにやってもらいたいことがある。そうしたらサンディには手を出さないであげるよ」
「分かった……」
「さあ、おいで」
 剣を持っていないほうの手を優しく握ると、ベリアルはジータを伴いながら歩いていく。
 ルシフェルと戦っていたベルゼバブの姿はどこにもない。ルシフェルを仕留め、目的を果たした彼女はもう用はないと先に帰っていた。
「ルシフェル……!」
 サンダルフォンの眠る揺り籠から遠く離れた場所に仰向けに倒れ、血溜まりの中にいるルシフェルの姿を視認したジータは声を詰まらせ、立ち止まるが、ベリアルは無理やり引っ張ってルシフェルのそばまで連れて行く。
「さて……と。ジータ。サンディを守りたいなら──ルシフェルの首を切り落とせ」
「そんなことっ……!」
 床に膝から崩れ落ちるジータを背後から抱きしめると、囁く。それはジータにはもっとも残酷な言葉。そんなことできるわけがないと反射的に口にするが、ベリアルは真っ赤な瞳を愉快げに細めながら見つめるばかり。
 無言の圧。ジータは彼女の本気が伝わり、生唾を飲み込む。サンダルフォンを魔の手から守るためには自らの手で最愛を殺さなければならない。
「ジー……タ」
「ルシフェル!」
「サンダル、フォン……を……」
 微かに目を開けたルシフェルはサンダルフォンを気にかける言葉をジータへと告げ、一つ頷いた。
 彼女の願いを受け取ったジータの両目からは涙があふれ、頬を伝う。滴る雫はジータの服を濡らし、いくつもの染みを作る。
 両手で剣を握るも、ベリアルと対峙したときよりも震えが大きく、とてもではないが狙いを定められない。視界もぼやけ、せめてひと思いにと思うのに、それすらできない。
「綺麗に切断してくれよ? 体はファーさん復活のために使うんだから。キミも嬉しいだろ? ママにまた会えるんだから」
「お母さま、に……」
「おやおや、これじゃあいつまで経っても終わらないなぁ。よし。ここはハジメテの共同作業とイこうか」
「ひっ……ぃ……!」
 後ろから腕を回すとジータの手を上から握り、彼女の代わりにベリアルが剣を動かす。ルシフェルの首の真ん中にゆっくりと刃を沈め、力を込めていく。
 刃から伝わる肉の感触はジータの記憶に生々しさを刻みつけ、時間をかけることでルシフェルを苦しめようとするベリアルの残忍さにジータは全身全霊で叫び、自らの意思でルシフェルの首を両断した。
「あ……アァ……わたし、私っ……ルシフェルを……ぁ──アあああアあああああァァぁっ!!!!」
 胴体と離ればなれになった首を見て、現実を受け止めきれなくなったジータは血塗れの剣を手放すと頭を抱えながら錯乱し、ベリアルの腕の中でひっきりなしに暴れ、吼える。
 そんな彼女をベリアルは愛おしい者を見るかのように優しげな表情で見つめ、慟哭するジータの髪を何度も撫でつける。
 やがてジータは気を失い、ベリアルは小さな体を担ぎ、もう片方の腕でルシフェルの体を抱えると、悲しみに包まれたカナンの地をあとにした。
 その後、ベリアルはルシフェルの体と一緒にジータをこの島に隠した。四大天司も、誰も助けにこないであろう孤島。
 ベリアルはジータの精神を壊すかのように彼女を陵辱し続けた。ルシフェルの前で彼女の純潔を奪い、魔力で操ったルシフェルの体を使ってジータを蹂躙したりもした。
 限界を迎えたジータが逃げても翼なき彼女はベリアルから逃げられず、連れ戻され、絶望に打ちひしがれた彼女は防衛本能だろうか。ある日、記憶喪失になってしまった。
 ルシフェルやサンダルフォンのことを忘れた彼女にベリアルは己の都合のいい記憶を植え付け、ジータに番であると刷り込んだ。その結果、ジータはベリアルの番として日々を静かに暮らしていた。
「本当に綺麗ね、ベリアル……」
「ん?」
 大きなベッドに二人の姿はあった。仲睦まじく互いに裸で抱き合い、ベリアルの胸に顔を寄せるジータは小さく呟くと艶めく茶髪をひと房手に取り、口づけた。
 鼻腔をくすぐるのは女性らしい甘やかな香り。軽く指を通せば一回も引っかかることなくサラサラと落ちていく。
「あなたの髪。ずっと触っていたいくらい」
「……アリガトウ。嬉しいよ」
 眩しいくらいの笑み。かつての記憶の中と同じかんばせのはずなのに──ベリアルのコアが反応することはない。
 ジータを壊し、偽りでもいいからと愛を向けさせ、満足したはずなのに。コアまでは欺けないようだ。
 けれどもう昔の彼女に戻すことはできない。仮に記憶を取り戻したとしてもルシフェルを殺させた相手を許すはずがない。
 狡知の堕天司は疼くコアを認めず、己を偽る言葉を吐き出すとジータと同じように笑む。だが、その横顔はどこか……寂寞せきばく感に満ちていた。